saizou
NIKKOR Z24mm f/1.8 S
「風景に三次元の表現力を」
寸暇を惜しんで撮影に向き合っている。時間との、距離との、自らの集中力との勝負が続く。もっと先へ、あの景色の向こうへ、この森の奥へ。そう思うときこのレンズの軽快さが頼れる力になる。しかし最も素晴らしいのは、ピント面の驚くほどの解像感とそこから前後に広がる美しいボケ味だ。今までつぶれていた小さな苔や葉のディテール、樹木や岩の質感を徹底的に描写する。そして広角レンズでありながら、なめらかで自然なボケがその描写を際立てる。この解像とボケの絶妙なコントラストが立体感を生み出すのだ。写真は二次元である。しかしこのレンズは、私に三次元の表現力を与え続けてくれる。
奥大山を流れる木谷沢渓流。その豊かな水の流れはブナやケヤキなどの広葉樹を育み、苔の密生する美しい森をつくり出す。長秒時露光することでこの森の神秘的で幻想的な世界感を表現したいと思った。周辺まで解像される高い描写力が、まるでその場にいるかのような没入感を生み出す。
出雲大社のそばにある夕日スポット、稲佐の浜を撮影。太陽を真正面に捉えたにも関わらず高い逆光性能によりまったくゴーストやフレアが出ていない。大きく絞り込むことでより鮮明さを増す光条も美しく表現できた。逆光時の撮影スタイルがガラッと変わる。そんな可能性を秘めている。
開放のf/1.8で撮影。広角というとパンフォーカスのイメージが先行するが、このレンズはボケも非常に美しい。高解像なピント面からのアウトフォーカスが非常になだらかで、写真という二次元の表現に立体感を演出してくれる。そして、難しいと言われる前ボケと後ボケの両立も見事にクリアされている。
大山を主題に新月の夜の星々を撮影。このレンズの非常に高い点像再現性を実感した。特に絞り開放からのサジタルコマフレアの抑制は素晴らしい。この作品ではf/2まで絞ったが、開放であってもほぼ収差は見られない。画面の隅々までしっかり解像し、星を太らせることなく、明瞭な点像として捉えることができた。
コスモスの花を開放F値の1.8で撮影。淡い雰囲気にあわせクリエイティブピクチャーコントロールを使用。このように細い茎が重なり合っているとボケが汚くなりがちなのだが、理想的な美しいボケを得ることができた。一方、ピントの合っているシベの部分はしっかりと解像し、その1本1本の様子がはっきり見てとれる。
Interview
風景写真家
saizou(サイゾウ)
1980年、島根県生まれ。2012年にデジタル一眼レフカメラ「D5100」を手にして以来、本格的な写真撮影に傾倒。その後、主に風景撮影を通じて世界の美しさに魅了され、写真家への可能性を見つめ始める。2014年にログカメラの運営を開始。同年「D750」を購入し、数多くの作品を公開し続け、多くのフォロワーに支持される。現在の主機材は「Z 7」と「NIKKOR Z」。さらに精力的な撮影に取り組んでいる。2016年、「EXTREME TRAVELER 第2回フォトコンテスト」、「バンガード×東京カメラ部 三脚で広がる世界フォトコンテスト2016」を受賞。2017年には、「アサヒカメラ×東京カメラ部共催 [日本の47枚]フォトコンテンスト」に選出される。