松尾 憲二郎Kenjiro Matsuo
NIKKOR Z70-200mm f/2.8 VR S
「ようやく出会えた、
この手応え」
動体の描く瞬間のドラマを直感で捉えられる。それこそ、私が撮影機材に求めるもの。馬術を撮影したこの日は真夜中に準備を進め、夜明け前からシャッターをきり始めた。馬の体力や脚への負担を考慮して、跳躍の撮影を許されたのは二頭で三十分だけ。わずかなチャンスしかなかった。しかしこのレンズは俊敏なAFと5.5段※の高い手ブレ補正効果、優れた逆光耐性で的確に応え続け、さらに新開発のSRレンズが、目の前の世界を色にじみなく再現する。朝日を背景にした跳躍、美しい毛並みの描写など、すべてに満足できる結果を得られた。あらゆるシーンをリアルに表現できる。そんなレンズにようやく出会えた。
- CIPA規格準拠。[NORMAL]モード使用時。35mmフィルムサイズ相当の撮像素子を搭載したミラーレスカメラ使用時。最も望遠側で測定。
跳躍の軌跡を予測し、頂点で選手がフレーム内に収まるギリギリを攻める。高い精度のAFによって、狙った一瞬を的確に捉えることができた。レンズ内蔵のVR機構による安定したフレーミングが、私の集中力を高め撮影をサポートしてくれた。
跳躍の高さを表現するため馬場に座り込み空抜けで撮影。障害の手前で急加速し一瞬で飛び去る巨体。その不規則な動きを高精度なAFが確実に追い、狙い通りの結果を得られた。F値を7.1まで絞ったことで、選手の顔と馬の眼にフォーカスが合った。人馬一体となった姿は、このレンズとともに被写体に臨む自分と重なる。
日の出直後に跳躍が始まった。眩しい朝日を背景にした力強く美しい姿を狙う。被写体が暗くなっているにもかかわらず、AFは人馬の動きを追い続け、わずかしかない絶好の瞬間を捉えることができた。ゴースト・フレアが抑えられ、光と影のコントラストが際立ち、この一瞬のドラマをより鮮明なものにする。
跳躍を終えて呼吸を整える選手と馬。フレームを縦構図にし、前面に蹄の跡が残る馬場を大きく入れて撮影。絞りを開放にすることで、手前へとなだらかに変化する大胆で美しいボケが生まれ、被写体の存在感をより印象的に演出することができた。
跳躍で熱くなった馬体をクールダウンするシーン。脚をつたう水の流れと、足元の飛沫。新開発のSRレンズによる、色にじみない水の描写にはとても驚かされた。高い防塵・防滴性能、レンズ最前面のフッ素コートが、周囲に飛び散る水をまったく気にすることなく、撮影だけに集中させてくれる。
馬の厩舎には小窓から光が射し、馬体の艶やかな毛並みが輝いていた。少しうす暗い状況のため、絞り開放でシャッターをきる。焦点距離は200mm、シャッタースピードは1/125秒だったが、優れた手ブレ補正効果のおかげでその毛並みをリアルに描けた。ピント面から背景へのなめらかなボケがとても美しい。
早朝の強烈な朝日を思い切ってフレーム内に入れ、選手と馬体のシルエットを狙う。被写体は暗く落ちているが、高いAF性能で美しいボディラインをくっきりと描写することができた。さらに、アルネオコート、ナノクリスタルコートによってゴースト・フレアが抑えられ、人馬の凛々しさを強調するシャープな表現となった。
スポーツフォトグラファー
松尾 憲二郎(まつお けんじろう)
1985年、東京生まれ。都立工芸高校、東京造形大学卒業。エクストリームスキーヤーとしてアメリカを中心にワールドツアーを転戦。選手引退後、バックカントリースキーの撮影にあけくれ雪山を登ってきた。2014年より「アフロスポーツ」に所属。リオパラリンピック2016、平昌オリンピック2018を撮影。 日本スポーツプレス協会(AJPS)および、国際スポーツプレス協会(AIPS)会員。