まちゅばら
NIKKOR Z14-24mm f/2.8 S
「高いレベルで
なんでも撮れる懐の深さ」
このレンズを手にしたとき、とにかくそのコンパクトさと軽さに感動した。さらに絞り開放からシャープで圧倒的な描写力を誇り、周辺までしっかりと解像してくれるこのレンズは目の前の光景を目で見た以上に美しく、ダイナミックに描写してくれる。小型軽量な鏡筒は、手持ちでローアングルから撮るような厳しい体勢でも苦にならず、機動力を求められる場面でも楽に扱える。逆光耐性も優秀でボケも美しく、星景はもちろん、さまざまなシーンでの活躍を約束してくれる懐の深さ。このレンズは私の撮影スタイルに欠かせない1本となった。
山梨県にある富士山の名所、春の新倉山浅間公園。ややピークが過ぎていたこともあり、所々枝が見えている桜もあったが、細密な花弁や枝、町並みまでしっかりと解像しているのが分かる。周辺まで像の乱れはなく、木々の立体感や奥行きは肉眼で見た光景をそのまま再現している。
晩秋の兵庫県・玄武洞。美しいラインを描く壁面が池に映り込み、手前のモミジが風情を高めている。どちらも鮮明に写すため、Z 9のフォーカスシフト撮影を使用して6枚の写真による深度合成を行った。レンズの高い解像力も手伝って、狙い通り全面シャープな納得の1枚に仕上がった。
もう少しで満開を迎える京都府の北山友禅菊に早朝の雲を添えてドラマチックに。手前の花は最短撮影距離ギリギリまで寄り、フォーカスシフト撮影で得られた6枚の写真で深度合成を行った。奥の木々や家の瓦、電線に至るまで精細で、レンズの優れた描写力を示している。
よく晴れた新月の夜に訪れた長野県阿智村。星の美しさで有名なこの地で、ワクワクしながら本レンズによる初めての星景撮影を行った。できるだけ低ISO感度にするため開放F2.8を選んでいるが、周辺まで像が流れることなく点像が描かれ、サジタルコマフレアも見られない見事なクオリティーに仕上がった。
静岡県の弁天島花火大会。二分割構図で花火と水面の表情を対比した。レンズの解像力によって花火の細い線を的確に捉え、繊細な色も見事に再現されている。花火会場のような暗所でも被写体をシャープで立体的に写し取り、水面の質感や花火が反射するきらめきも美しい。
晩秋の長野県・霧ヶ峰は、緑豊かな夏場とは違う荒涼とした雰囲気が良い。広大な風景に1人ぽつんと佇む寂しさを表現するため、14mmの広い画角を活かして遠目から人物を小さく捉えた。どこまでも続く大地の細部まで解像し、草木や雲も立体的に再現されている。
薄暗い早朝の森の中、逆光を受けて赤く映えるヒガンバナの群生。手前の花を主役に、超広角のパースペクティブで奥へと続く群生の広大さを表現した。高い逆光耐性によりフレアやゴーストもほとんどなく、ピント面はヒガンバナの先端までシャープ。背景はなだらかにぼけ、この空間を美しくクリアに描写してくれた。
岐阜県・竜神の滝。観瀑台から見下ろす構図で撮るのが一般的だが、主役が小さくならないように滝つぼに一番近い場所から撮影。滝つぼを囲む木々の葉の1枚1枚まで緻密に解像されており、岩の立体感も相まって迫力が伝わる1枚になった。
神奈川県・みなとみらいの夜景。複数カットをフォトレタッチソフトで比較明合成を行い、星の軌跡と車の光跡を共演させている。超広角で夜景と星空をダイナミックに切り取るが、このレンズの解像力なら都市夜景で求められるビル群の精細さも申し分ない。
写真家
まちゅばら(Hiroki Matsubara)
1994年生まれ。岐阜県在住のフォトグラファー。2017年から写真を撮り始め、風景や野生動物など好きなものを幅広く撮影し、SNSや写真展などで発表している。国内外での受賞多数。東京カメラ部10選2023。