河野 英喜Hideki Kono
NIKKOR Z24-70mm f/2.8 S
「あらゆる光を
表現力に変えるズーム」
このレンズなら、さまざまな光の条件を表現の手段として活かせる。たとえば日中のロケーション。優れた逆光耐性がフレアやゴーストを気にせず、自由なアングルに挑むことを可能にした。たとえ太陽光がフレーム内に入ってもその影響を最小限に抑えるからだ。そして日没後の薄明の中でも、絞り開放からの高い解像力を発揮する。何よりも、美しくなめらかなボケによって表現主題がより印象的に際立つ。さらにこのレンズの速く正確なAF。被写体の微妙な表情の変化を追い続ける私にとって、今や欠かせない一本となった。
あえて画面に太陽光を入れ、光を背景に凛とした表情を狙った。通常ならフレアが出て表情も見えないが、ナノクリスタルコートとアルネオコートによる耐逆光性能で、フレアは最小限に抑えられ狙い通りの光と表情を捉えることができた。
すでに夕陽は山の陰に隠れていた。空からのわずかな光を活かすために俯瞰から撮影し、低いコントラストの中で虚ろな表情を狙った。焦点距離51mmでその表情に寄って撮影。ザワつきやすい地面の雑草も、このレンズのボケの柔らかさで優しい背景として表現できた。
印象的な色彩の岩肌を背景に順光で撮影。樹木の影が光のムラを作っていたので、これを活かして被写体の顔に陰影を加えた。広角の24mmでも周辺部に至るまで高い解像力を発揮し、全画面にわたってクリアーでキレの良い画質を得ることができた。
日は完全に暮れ空が焼け始めていた。このレンズに期待したのは絞り開放からの高い解像感と自然な描写。背景となった浜辺から山の稜線、夕焼け空へと続く滑らかで美しいボケが、被写体の横顔をよりドラマチックに際立ててくれた。
日没後はコントラストが落ちて立体感を出しにくい。緑を背景にして被写体を引き立てるのがこの作品の狙いだった。もっともボケ感の大きい開放絞りで撮影。背景の枯れ木と緑が美しくぼけて、彼女の存在を立体的に表現できた。
閃いたイメージは「祈り」だった。空を仰ぐようなポーズをとってもらい、その頭上に太陽を配置した。焦点距離を選ばないアルネオコートの効果で、その光に接する顔の輪郭のラインもしっかり表現され、逆光を感じさせない表現力に驚いた。
Interview
ポートレートフォトグラファー
河野 英喜(こうの ひでき)
中学生で写真に目覚め、高校時代から写真専門誌のポートレート部門入選の常連に。23歳で広告・ファッション誌を中心にプロフォトグラファーとしての活動を開始する。その後、女優や俳優、各界のアーティストなどを撮影するとともに、数多くのアイドル写真集を手掛ける。出版された写真集・書籍類は150冊を超す。また、大判フィルムによる風景の撮影や、伝統工芸職人のポートレートなども撮り続ける。公益社団法人日本写真家協会(JPS) 会員。