半田 菜摘Natsumi Handa
NIKKOR Z70-200mm f/2.8 VR S
+ Z TELECONVERTER
「頼もしい相棒に
出会えた歓び」
野生動物の撮影で大切にしていることは、できるだけ彼や彼女たちにストレスを与えないこと。無神経に近づけない状況が多い中、単焦点の超望遠ももちろんよいが、画角の制限や重さが気になるときもある。その点、このレンズなら70mmから200mmまでをカバーでき機動性も非常に高い。さらにZ TELECONVERTER TC-1.4x / TC-2.0xを装着すれば、超望遠の領域まで狙える。実は、今回初めてこのテレコンバーターを使った。解像度やAFスピードが落ちるのではないかと思っていたがその予想は見事に裏切られた。本来このレンズの持っている素早く正確なAFはもちろん、ボケのなめらかさと美しさ、なにより毛の一本、羽根の一枚まで描写する高い解像力がそのまま活かされていたのだ。今後、私にとっての頼もしいバディとなるだろう。
シロヨモギの種を食べに海岸の砂地にハギマシコの群れが集まっていた。驚かさないよう細心の注意をはらって撮影を行う。無理には近づかず2倍のテレコンを装着し、焦点距離を400mmとした。撮影後、さらにトリミングしたが、羽の一枚一枚や食べかけの種、それを見つめる目の瞳孔までくっきりと解像している。
オジロワシは警戒心が強く超望遠が必須なため、テレコンバーターを装着。今回は無理かと思っていたとき、突然オジロワシが飛んできた。急いでファインダーの中に捉えシャッターをきる。このレンズ本来のAF性能は落ちることなくその姿を捉えた。大胆にトリミングしても解像力は高く保たれ、拡大すると外鼻孔がわかるほど鮮明なことに驚く。
ユキホオジロがハマニンニクの種を食べていた。穂の上に乗ったり、穂の間を素早く動き回るため、AF性能が重要となるシチュエーションだ。焦点距離は400mm。ユキホオジロが種を食べる動きを止め、顔を上げたタイミングを狙いシャッターをきる。レスポンスのよいAFのおかげで、まさに飛び立つ瞬間を収めることができた。
雪が降る中トドマツの葉を食べるエゾモモンガの姿を焦点距離400mmで捉えた。トドマツは冬でも落葉しないため、背景に美しい玉ボケを取り入れることができる。テレコンバーター装着時の開放F値5.6であっても、なめらかでやわらかい上質なボケ味が心地よい。シャープに描写された毛並みが主役の存在感を引き立てる。
日が暮れる間際、枯木の上をキタキツネが歩いていた。少しだけ離れていたため1.4倍のテレコンバーター(Z TELECONVERTER TC-1.4x)を装着し、焦点距離280mmで撮影。薄暗い中でもAFはキタキツネの瞳を捉え、次々とシャッターチャンスを与えてくれる。高い解像力でその姿を克明に写しとめることができた。
夕刻の光に染まり雪上を歩くエゾシカの群れ。焦点距離400mmで木々のシルエットを圧縮して背景に活かし、被写体の存在感をより印象的に演出した。半逆光であったが、ナノクリスタルコートとアルネオコートがフレアやゴーストを抑え、エゾシカのディテールをくっきり捉えることができた。さらに雪面の表情や輝きも克明に描写されており、美しく壮大な一枚となった。
動物写真家
半田 菜摘(はんだ なつみ)
1986年、北海道旭川市生まれ。2013年より写真を撮り始める。看護師としての勤務を果たしながら夜勤明けや休日に北海道の野生動物を撮影。作品をSNS、写真展で発表するほか、雑誌、企業広告、カレンダーなどにも幅広く提供。また、フジテレビ系列のドキュメンタリー番組“セブンルール”に出演。動物たちの美しい毛並みや愛らしい表情、生命の営みが伝わる作品づくりを目指す。