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PAGETOP
Vol.
12

佐藤振一 × PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED

PC-E 45mm f/2.8。佇まいが写るレンズ。

12
建築にはそれぞれの“佇まい”がある。周囲の空間・環境の中に存在するその姿をこの眼が捉えたままに再現したい。人の眼は巨大なイメージサークルを持つレンズである。見たい場所を選択して常にその視野を補正する能力を持っている。だから、木立やビルを見上げても上部に強いパースがかかり極端にすぼまって見えるようなことはない。PC(Perspective Control)レンズはそうした肉眼の自然な見え方を再現できるレンズなのだ。山形県庄内地方、出羽三山の羽黒山。杉の巨木の中に建つ五重塔に向かい、この、数百年を経た木造建築が見事なまでに自然と同化していることを感じた。
(次へ続く↘)

メインカット

・カメラ : D800 ・レンズ : PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED ・画質モード : 14ビットRAW(NEF) ・撮影モード:マニュアル、1/20秒、f/8 ・ホワイトバランス : オート1 ・ISO感度 : 100 ・ピクチャーコントロール : 風景

作品2

・カメラ:D800・レンズ:PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED・画質モード:14ビットRAW(NEF)・撮影モード:マニュアル、1/10 秒、f/8・ホワイトバランス:オート1・ISO感度:100・ピクチャーコントロール:スタンダード
12
レンズは、PC-E 45mm f/2.8。肉眼に近い穏やかなパースペクティブを持つPCレンズである。ボディーには高画素・高画質のD800を選んだ。早朝から山に入り機材をセットする。PCレンズ特有のシフト機構を使い、撮像面に対して平行に光学系を11mmライズする(上げる)。狙った構図で撮ろうとした場合、通常のレンズであればカメラを上に向けなければならず、それにより杉木立の上に向かってパースがかかることで木立の上部がすぼまり、見たままの巨木の重量感が削られてしまうからだ。
(次へ続く↙)
12
ここ何日も続いた雨がようやくおさまったが、雲の多い空模様。刻々と変化する光を見ながら撮影を続ける。そして二日目、待ち望んでいた瞬間が訪れた。雲と杉木立を割って差し込んだ光が塔を照らす。手前の木々は暗く落ち、その中で塔に寄り添うように見える一本にだけリムライトが当たる。塔のすぐ上には明るい空が広がっていた。たとえフレームの外であっても、強い光はフレアなどを発生させる原因となるが、ナノクリスタルコートがその影響を抑えてくれている。霊山の厳かな空間、深く自然と溶け合う建築の凛とした佇まいを捉えることができた。これからも、この眼で感じた建築を撮る
―― 私のNIKKORで。

作品3

・カメラ:D800・レンズ:PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED・画質モード:14ビットRAW(NEF)・撮影モード:マニュアル、1/2.5 秒、f/8・ホワイトバランス:オート1・ISO感度:100・ピクチャーコントロール:スタンダード

INTERVIEW
MOVIE

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PHOTOGRAPHER

佐藤振一(さとう しんいち)

NIKKOR

PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED

BEHIND THE SCENE

撮影レポート
01
羽黒山 五重塔、幽玄な杉木立の中に佇む国宝

  • 出羽三山 羽黒山の入り口


  • 神聖な空気が漂う杉木立の参道を歩く

山形県庄内平野の東側に位置し、日本屈指の霊山・霊場として名高い出羽三山(でわさんざん)。三山とは、羽黒山(はぐろさん)、月山(がっさん)、湯殿山(ゆどのさん)の総称です。今回の撮影はその中の羽黒山で行われました。被写体は、山頂へ続く参道の途中にその姿を現す、国宝、羽黒山五重塔。千年以上前に建立されたと伝えられ、現在の搭は約600年前に再建されたもの。高さは29m、着色などを施さない素木造(しらきづくり)で屋根は木の薄い板を用いた杮葺(こけらぶき)。質素なそれでいて力強い印象の木造建築です。巨大な杉の木立の中に、まるで溶け込むように佇むその姿はとても神秘的です。かねてより、この塔を撮ってみたいと思い続けていたという佐藤先生。朝もやが残る森の中、古い石畳の参道から初めてその姿を眼にしたとき、黙ってしばらく立ち止まっていました。
02
人の眼に近い、PC-E 45mm f/2.8

  • 蜘蛛のような三脚でカメラ位置は約3mに


  • D800+PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED
    シフト機構を操作中
    左手の上にボディーへ装着したWR-10が見える

そして撮影。佐藤先生は超高画素カメラD800にPC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D EDを装着。それを取り付けた三脚の脚を3メートル近く伸ばします。そして脚立の上に立ってPCレンズのシフト機構を使い調整を始めました。今回は上に伸びる塔や杉木立を撮影するために、カメラ自体を上に向けるのではなく、レンズだけを上に移動させるシフト機構を使いました。これによってレンズ面と像面(撮像素子の面)が塔や杉木立と平行になり、画面の上へのすぼまりが補正されます。このようなフォルムの補正は撮影後にソフトを使って行うこともできますが「それだと撮影時、直感的に構図が決められないのでやはりPCレンズが必要」と佐藤先生。ちなみに上への移動はライズ、下への移動をフォールといいます。また、首を左右にふるようにレンズを傾けてピントの合う範囲を調整するティルト機構もあります。長い三脚を使った理由は、アイレベルでは手前に茂る下生えで、塔の最下層が隠れるからでした。そしてカメラにはケーブルレリーズではなくワイヤレスリモートコントローラーセット WR-10を装着。「電波式なので屋外でも正確に反応するすぐれモノだよ」と絶賛でした。
03
待ち続けた光、待ち続けた瞬間

  • さまざまな場所とアングルで塔を撮り続ける


  • 1日目の夕方、
    このときから決定作品の光のイメージを持ち続けていた

撮影は2日間に及びました。雲の多い不安定な天候。時間とともに状況はどんどん変わります。佐藤先生はさまざまな場所とアングルで五重塔を撮り続け、時にはすぐそばまで近づいて、塔の基壇(基礎)と一層(重)だけをアップで撮影することも。時間と位置の関係で逆光や半逆光になるケースもありましたが、ナノクリスタルコートの効果で、ゴーストやフレアが抑えられ、安心して自由に撮影ができたようです。そして2日目のお昼近くに、待ち望んでいた瞬間が訪れました。塔の真上に開けた雲間からスポットライトのような光が降り注ぐ一方、手前の杉木立は暗く落ちている。ただ塔と重なるような場所にある一本にだけ斜め後ろからリムライトのような光が当たり、塔と杉の木の境界を明確にする。さらに地面に反射した光が、塔の軒を照らし、緻密な木組みの美しさを際立たせました。待ち続けたからこそ訪れた奇跡の瞬間でした。

こちらに掲載されている情報は、2013年9月現在のものです。

DATA

撮影日: 2013.8.6-7
写真家: Shinichi Sato
レンズ : PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED
カメラボディー : Nikon D800
キーワード : その他
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