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Vol.
18

熊切大輔 × AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED

35mm f/1.8。人をつつむ空気まで写す。

メインカット

メインカット

・カメラ : Df ・レンズ : AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED・画質モード : 14ビットRAW(NEF) ・撮影モード:絞り優先オート、1/60秒、f/2.8・ホワイトバランス : オート2 ・ISO感度 : 800 ・ピクチャーコントロール : スタンダード

人を撮るということ。それは、被写体となる人が生きている場所や環境の空気感までを捉えることだと思う。今回は京都、北野天満宮に近接する花街“上七軒(かみしちけん)”で日々修業を積む舞妓の市まりさんを撮影した。

場所はこれも天満宮の近くにある伝統的な数寄屋造りの家屋と、上七軒の目抜き通りや路地。レンズはシャープなキレと美しいボケを両立した35mm f/1.8。ボディーにはたとえ光の少ない室内でも優れた高感度性能を発揮してくれるDfを選んだ。

作品2

作品2:上七軒の目抜き通りにて

・カメラ : Df ・レンズ : AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED ・画質モード : 14 ビットRAW(NEF) ・撮影モード : 絞り優先オート、1/320 秒、f/2.8 ・ホワイトバランス : オート2 ・ISO 感度 : 400 ・ピクチャーコントロール : スタンダード

さらに、小型・軽量なレンズとボディーの組み合わせは、今回のようなスナップシューティングに最適と言える。春の陽が、庭に開けた大きな硝子戸から射し込んで、彼女を照らす。広い日本間の奥にある大きな床の間には、障子を通した柔らかな光がまわり、ゆったりとした空気感を醸していた。

短い会話を交わしながら、互いの間にある緊張をほぐし、撮影距離を少しずつ縮めていく。一歩、また一歩と、35mmの画角で最も背景が活きるあたりまで近づき、そしてこの若々しくも凛とした表情を捉えた。

作品3

作品3:数寄屋造りの家屋縁側にて

カメラ : Df ・レンズ : AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED ・画質モード : 14ビットRAW(NEF) ・撮影モード:絞り優先オート、1/200秒、f/4 ・ホワイトバランス : オート2 ・ISO感度 : 800 ・ピクチャーコントロール : スタンダード

はりのある肌の質感、おふくに結った髪の生え際や髪飾り、春を感じさせる利休地の着物の柄を克明に描写。それと同時に、床の間のある背景は柔らかくぼけながらもその輪郭を保ち、心地よい立体感を与えてくれた。

そして、手にした観世流水模様の扇子。手前のボケからシャープなピント面、さらに奥のボケに至る、自然で滑らかな変化も本当に素晴らしい。古都の伝統とともに生きる人の姿を確かに捉えた。これからも、人と、人をつつむ空気を写す ―― 私のNIKKORで。

PHOTOGRAPHER

熊切大輔
熊切大輔(くまきり だいすけ)

東京生まれ。夕刊紙写真部に入社後、フリーランスの写真家として独立。広告や雑誌などでドキュメンタリー・ポートレート・食・舞台など「人」が生み出す瞬間・空間・物を対象に撮影する、「人」写真家として活動中。月刊誌日本カメラでは「テストレポート」を連載中。ニコンカレッジの講師をはじめ、様々な写真講師を務める。写真展『演じるコト -俳優 石丸幹二の1 年-』、『TOKYO ZOO』、『浅草ラプソディ』を開催。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員

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プロフィール

NIKKOR

AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED

高い解像力とやわらかいボケ味が両立した大口径広角レンズ

高い点像再現性を実現した小型軽量の大口径広角レンズです。単焦点レンズならではの高い解像力とシャープな描写が得られ、大口径レンズならではのボケ味を生かした表現が可能です。スナップ撮影はもちろん、夜景、風景、ポートレートなど多彩なシーンが楽しめます。

製品情報more
レンズ解説

BEHIND THE SCENE

撮影レポート
01
古都、伝統が生きる数寄屋造りの家

立春から数日、まだまだ寒さが厳しい京都。しかしその陽射しには新しい季節の始まりが感じられます。今回の撮影は、京都市上京区の“北野天満宮”に近い“平野の家”で行われました。この数寄屋造りの屋敷は、大正から昭和にかけて活躍した日本画家の山下竹斎の邸宅兼アトリエとして、大正15年に建てられた木造建築が増築・改修されたもの。表通りから格子戸をくぐると風格のある家屋が静かな佇まいで迎えてくれました。数寄屋大工、左官職人、建具師たちの技がふんだんに注がれた屋内は実に落ち着いた雰囲気。一階と二階にそれぞれ庭に面した広い部屋があります。この家で、やはり北野天満宮の隣に位置する由緒ある花街“上七軒(かみしちけん)”の舞妓、市まりさんを撮影。また、季節を先取りした桃の節句の雛飾りを背景に、地元の女の子たちの撮影も行い、さらに、上七軒の通りまで出て、市まりさんの撮影を行いました。

02
高い解像感と美しいボケ、小型・軽量の35mm f/1.8

今回のレンズは、AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED。最大の特長は高い解像力によるシャープな描写と、大口径レンズならではの美しいボケを両立させたこと。これによって主題をくっきりと際立たせた立体感のある表現が可能となります。また、大口径の明るい単焦点でありながら、小型・軽量化を実現しています。ボディーには、室内での撮影を考慮して、高感度性能に優れたDfが選ばれました。こちらも、FXフォーマット最小・最軽量。描写力、表現力、取り回しのよさなど、まさに今回のようなスナップシューティングに最適な組み合わせです。さて、最初の撮影は二階の大広間にて、京都の伝統的な雛飾りを背景に着物姿の女の子たちを撮りました。光は外からの自然光のみ。ちょっと薄暗いかなと思われる状況の中、熊切先生は優しい表情で話しかけながら次々にシャッターをきり続けます。

03
春の光の中で舞妓さんを撮る

そして、市まりさんが平野の家に到着。春らしい華やぎのある衣裳に目を奪われ、穏やかで気品のある所作に、思わずため息が出ます。撮影場所は一階の日本間となりました。東側の庭に臨む大きな硝子戸から陽光が注ぎ室内を照らし、さらに障子を通した光がその奥に心地よく広がっていました。最初は離れた位置から撮影を始めた熊切先生。ごく短い会話を交わしながら場の雰囲気を和らげていきます。撮影後に伺ったのですが、人物の撮影には、いい表情を引き出すための「攻め」と、その瞬間を待ち続ける「守り」の姿勢があるとのこと。ここでは優しく積極的に、市まりさんのいい表情を引き出していました。そして今回のメインカット。このレンズの特性と硝子戸からの光、障子を通した光を効果的に活かし、人物はシャープに背景は柔らかく表現されたとても美しい一枚です。この後、上七軒の通りで撮影を続行。「人は街の血液だ」とおっしゃる先生。この場所で修業を積む市まりさんの表情を撮り続けていました。

こちらに掲載されている情報は、2014年3月現在のものです。

DATA

  • 撮影日: 2014.2.7
  • 写真家: Daisuke Kumakiri
  • レンズ : AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
  • カメラボディー : Nikon Df
  • キーワード :ポートレート
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