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石田美菜子 × AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G
DX Micro 40mm f/2.8。細部の中の世界を捉える。
対象をより深く見つめその本質に迫ることが、プロ写真家としての信条。だからこそ被写体を等倍までクローズアップし、細部まで写し出すことのできるマイクロレンズは、自分にとって大切な眼のひとつである。今回は、日本が誇る繊細な技の世界を表現するため京都を訪れ、ふたつの題材で撮影を行った。
ひとつは約700年前の室町時代を源流とし、江戸後期に確立されたという“割烹料理”。もうひとつは、千年以上の伝統を受け継ぐ“錦織(にしきおり)”の世界である。レンズはAF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G。明るく、小型・軽量で、さらに約16cmという最短撮影距離が、スペースの限られる織物工房や料理店の板場で、大きく被写体に迫ることを可能にしてくれると考えた。
ボディーには、光の少ない室内での撮影を考え高感度でも高画質を得られるD7200を選ぶ。錦織の撮影は、古代織物復元の第一人者として名高い、初代龍村平蔵(たつむら へいぞう)、二代龍村平蔵(号・光翔 : こうしょう)の家系となる、龍村光峯(こうほう)氏の工房で行った。緻密な構造の高機(たかばた)を駆使して紡ぎ出される絹織物の美しさに驚きながら、素材となる絹糸や、織り師の手元に迫った。
割烹料理は、祇園町の真ん中、花見小路を一筋入ったところにある「祇園 川上」の板場で、ご主人が丹精込めて仕上げる一品一品を撮影した。そしてメインカットとなった八寸のクローズアップ。金杯に盛り込まれた、冬の京都を彩る食材の放つ色香に魅せられながら、中央のふっくらとした黒豆に思いきってレンズを近づけ、そこに艶やかな金箔が散らされる瞬間を撮る。
素晴らしい解像力でその輝きの細部を捉え、さらに、大きく美しくぼかした背景で、一皿の中に広がる奥深い世界を表現した。これからも被写体の本質に迫る
―― 私のNIKKORで。
INTERVIEW MOVIE
PHOTOGRAPHER
NIKKOR
BEHIND THE SCENE
レンズを通して見るからこそ、肉眼では気付かない新しい世界に出合えるとおっしゃる石田先生。今回は日本の伝統的な匠の技を題材に、マイクロレンズでの撮影を行うことにしました。そこで、ひとつは世界遺産(ユネスコ無形文化遺産)に登録された“和食”を、もうひとつは、日本ならではの精緻な技の象徴でもある“織物”を対象としました。撮影地は京都。長い歴史の中でこれらの技と文化を継承し続けている場所です。和食の撮影は、最も京都らしい町といえる祇園に、趣のある店を構える割烹料理の「祇園 川上」さん、織物の撮影は、この世界の巨人とも言える初代龍村平蔵(たつむら へいぞう)の孫、二代龍村平蔵(号・光翔 : こうしょう)を父に持つ龍村光峯(こうほう)氏が主宰する錦織(にしきおり)の工房で行われました。「祇園 川上」のご主人加藤宏幸(ひろゆき)さんとお店の方々、錦織の撮影にお立ち会いいただいた、後継者の龍村周(あまね)さんと奥さま、織り師の福島喜道(よしみち)さん。それぞれの世界を伝えるため、石田先生と気持ちをひとつにしてくださいました。おかげさまでとてもよい作品撮影を行うことができました。
今回の撮影場所は、2箇所とも室内でかつ自由なポジションが取りにくい条件でした。しかし、だからこそAF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8Gの特性が最大限に発揮されたと言えます。まず、f/2.8の明るさが、光量の少ない室内での撮影を有利にしてくれました。そして0.163mという最短撮影距離が、対象に思い切り近づくことを可能にしてくれました。さらにレンズ自体が小型・軽量であるため、かなり入り組んだ場所からでも撮影をすることができます。効率的であるがゆえに決して広いとは言えない板場に立って、あるいは大きく複雑な構造の織機が置かれた工房で、ポジションの制約がありながらも、石田先生はさまざまなアングルからの撮影にトライされていました。実際、料理の器や織り師さんの手に触れるほどの近さで集中している光景は、いつもの撮影とはまったく異なるものでした。
今回のメイン作品は「祇園 川上」で撮られたものです。石田先生は、まず板場でつくられる一品一品の仕上げまでを撮り、それとは別に客室でも撮影を行いました。その部屋に自然光が入ることが大きなポイントでした。この季節の光ゆえ決して十分ではありません。しかしそれが柔らかな空気感を生み出していました。卓の上に仕上げ直前の一品を置き、最後のひと手間、汁を張る、柚子などを乗せるといった所作をご主人にお願いしました。海老しんじょう、炊き合わせ、そして八寸の撮影。八寸の仕上げは松葉に刺した黒豆の上に散らす金箔です。金箔は一度料理の上に乗せると貼りつくのでやり直しはききません。緊張の一瞬、ご主人と先生が呼吸を合わせます。そしてシャッターがきられました。浅い被写界深度の中に光輝く金箔の微細な皺までが克明に写し撮られ、大きくぼけた透明感のある背景がその美しさを際立てます。料理の世界の奥深さを感じさせる一枚。それは、料理人と写真家が創り上げた見事な作品でした。
こちらに掲載されている情報は、2015年12月現在のものです。
DATA
- 写真家:Minako Ishida
- レンズ:AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G
- カメラボディー:Nikon D7200
- キーワード :その他