Lesson11
動きのある剣劇作品を撮る―和装でシャッタースピードを極める―
和装剣劇の「静と動」を
表現する
コスプレの中で絶対的人気のジャンルといえば「和装」。
いつも着慣れている洋服とは違う着こなしや振る舞い、世界観が求められる和装は、
やや上級者向けに思われるジャンルかもしれないが、そんな心配はご無用!
和装ならではのたたずまいや構図、シャッタースピードを意識した撮影テクで、
「静と動」を盛り込んだ和装剣劇の世界をシャッターにおさめよう!
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1 和装剣劇ならではの姿勢と構図
➀刀を使った躍動感のある動き
刀は和装男子のコスプレには欠かせないアイテム。鋭い視線で刀を構える姿は、和装コスプレの最大級の見せ場のひとつ! 利き手で鍔の近くを、逆の手で柄の下部分を握るのが刀の基本の持ち方。さらにコスプレ的には派手さをプラスすると見栄えの良い写真に仕上がっていく。豪快なキャラクターならダイナミックな構えに……と、キャラクターや作品の特性に合わせたポージングも意識しよう!
構え
抜刀
➁和装を美しく表現できる構図
より凛々しく、美しく見せるためには「和装ならではの姿勢」を意識することが大切。姿勢を少し変えるだけで断然かっこよく見えるようになるから驚き。立ち姿では足幅は肩幅よりやや広く、重心を後傾にすることがポイント。背筋がピンと伸び、和装男子らしい凛とした強さが表現しやすい。座り姿勢では、刀を胸に抱えたり、キセルをくわえるなど、和の小道具でアクセントをつけていこう。
立ち姿
座り
➂時代を意識した背景を選ぶ
和装コスプレで撮影するときに気をつけたいのが背景。時代にそった建物や大自然を背景にするなど、近代的なものが映らないように気をつけなければいけない。背景がミスマッチでは、せっかく気合の入った衣装も台無しになってしまう……。今回撮影した茨城県石岡市・善光寺のように、時代や作品の世界観にピッタリくるロケーションを探すことも和装コスプレの楽しみのひとつといえる。
石階段
山道
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2 刀の魅力を最大限に引き出す
撮影テクニックシャッタースピードを駆使して
「ブレ」を極める普段のコスプレ撮影では、意識することの少ない「シャッタースピード」。このシャッタースピードのコントロールで刀の見せ方を大きく変えることができる。シャッタースピードが速いと、振り下ろした刀をブラさず止めて写すことができ、逆に遅いと刀の残像がブレとして残ったり、意図しない手ブレでの失敗が起きやすくなる。動きを止めて写す「静」の写真か、ブレを活かした「動」の写真か、シャッタースピードの変化で表現の幅はぐっと広がるはず。
シャッタースピードが速い
同じ速さで振り下ろしても、シャッタースピードが速いと刀は空中でピタっと止まって見える。
シャッタースピードが遅い
遅いシャッタースピードで撮ると、振り下ろした刀の残像が残り「動き」を強調させられる。
「Sモード(シャッター優先オート)」がおすすめ!
シャッタースピードを変えると、適正の明るさにするために絞り値も変化させなければならない。(詳しくはニコンホームページ「露出を決定するシャッタースピードと絞り値」参照※1。シャッタースピードに慣れるまでは「Sモード(シャッター優先オート)」がおすすめ。選んだシャッタースピードに対して、適正の明るさになるように、絞り値をカメラが自動的に決めてくれるのでとても便利。
TIPS
刀のギラつきを際立たせ
臨場感をUP木製の模造刀にアルミテープを貼ることで、本物さながらに刀身を輝かせることができる。今回は自然光を利用して輝かせて撮影。できるだけ暗い場所に、ひと筋の光が差し込んでいる場所を選ぶことがポイント。刀身の輝かせたい箇所に差し込んだ光を当て、カメラに向けて反射させる角度で撮影する。被写体を含めて背景は暗い方が、刀の輝きが分かりやすくなる。
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3 瞬間を切り取り、
和装剣劇の「静」を撮るシャッタースピードのコントロールやスピードライト(SB-500)を使って、瞬間を切り取って写すことで、凛とした空気がただよう「静」の写真に仕上げることができる。
枯葉が舞い散る一瞬を
切り取って撮影する穏やかな表情で見上げる被写体の背後に枯葉を舞い散らす一枚。お手伝い2名が被写体の左右から枯葉を降らせ、その一瞬をカメラにおさめる。シャッタースピードのコントロールで、揺れ落ちる枯葉の表現を変化させることができる。秋から冬にかけては枯葉、春には桜の花びらがおすすめ!
空中に飛び散る
水しぶきを静止させる図のようにスピードライト「SB-500」を2灯使って、水しぶきを空中で静止させて写してみた。飛び散った水しぶきにスピードライトの光が当たり白く輝く。水しぶきを目立たせるために背景は暗い場所を選ぶのがポイント。「D7500」には、内蔵フラッシュによるコマンダーモードがあり、離れて設置したSB-500など対応したスピードライトを同調して発光することができる。
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4 スローシャッターで生まれる
「ブレ」を活かすここでは被写体の動きをブレで表現する「動」の写真について紹介しよう。被写体の身体の一部だけや背景をブレさせることで、動きの激しさやスピード感を強調して見せるテクニックをマスターしよう!
➀被写体の一部をブレさせる
「被写体ブレ」「被写体ブレ=失敗」とは限らない。例えば刀の残像など、意図した部分のみブレた場合は、写真に迫力や躍動感をプラスしてくれる。狙いすました被写体ブレを撮るときのポイントがひとつ。意図した部分以外は決してブレないこと! この写真のように、振り上げた刀だけがブレているからこそ動きのあるコスジェニックな一枚となるのだ。
➁背景をブレさせる
「流し撮り」動く被写体以外をブレさせて写すのが「流し撮り」というテクニック。写真のように走る被写体の背景のみがブレることで、疾走感が際立って見えるのが特徴。撮影では10メートルほどの距離を被写体に走ってもらい、ファインダーで追いながら撮影した。被写体がカメラからの距離を一定に保ったラインを走ることでピンボケの失敗を防ぎやすい。
「D7500」なら、最高約8コマ/秒の高速連続撮影が可能!
被写体の瞬間の動きをより確実に捉える最高約8コマ/秒の高速連続撮影が可能。スポーツなど動きのあるシーンはもちろん、コスプレで空中にジャンプした写真を撮影するときにも力を発揮してくれる。
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TIPS
飛び出すような迫力のある
写真を撮るには……?「露光間ズーム」という方法で、まるで漫画のひとコマのような放射状のブレを写すことが可能。シャッターが開いてから閉じるまでの間にズーミングする方法で、手動で操作出来るズームレンズがあれば簡単にできてしまう。写真のように、被写体の顔はブレが小さくなる中心部分におさめるのがポイント。
まとめ
和装コスプレは美しい姿勢と時代背景の再現が必須!
シャッタースピードを駆使した「静と動」の見せ方で、
ひと味違ったコスプレ撮影にチャレンジしよう♪
クレジット
撮影/山本哲也
- モデル:
- マヒオ(Mahio)
世界コスプレサミット2015・2017日本代表。企業の企画アドバイザーやイベント司会進行など、活躍の場は多岐にわたる。
Twitter:@mahigaku - モデル:
- 万鯉子(Mariko)
世界コスプレサミット2006・2013・2015・2017日本代表。公式衣装の制作請負や、鳥取県湯梨浜町観光大使も務める。
Twitter:@marigon1013
撮影協力/いしおかフィルムコミッション
※このページの写真はNikon D7500で撮影しています。使用した写真にはレタッチを施してあります。
※今回の撮影では木製の模造刀を使用しております。安全面に重々配慮し、適切な環境で撮影を行なっております。