日本を代表し象徴ともいわれ、日本最高峰である山「富士山」。
秀麗な円錐成層火山として、世界的にも有名な活火山です。
その荘厳で崇高な形姿は、日本人の山岳に対する信仰の在り方や、国外に影響を与えた19世紀後半の葛飾北斎や歌川広重などによる普遍的な価値を持つ「浮世絵」など、日本独特の芸術文化を育んだ山でもあります。
富士山は、4つの火山から成っているといわれています。今から数10万年以上前に先小御岳が、10万年以上前に小御岳火山が誕生し、その後、古富士火山、新富士火山の2世代にわたる噴火活動で、美しい円錐形をした現在の富士山ができあがりました。
その昔、富士山は何度も噴火を繰り返す山でした。古来の人々はその荒ぶる自然に怒る神の姿を重ね、「神が宿る山」として恐れ、遠くから拝んできました。平安時代になると、噴火はますます激しくなり、その恐ろしい富士山の神は「浅間大神(あさまのおおかみ)」と呼ばれるようになります。そこで人々は噴火を鎮めるために、浅間大神を祀った神社を山の麓に建てました。それが、富士山本宮浅間大社の始まりといわれています。
平安時代後期になると、富士山の噴火はようやくおさまってきます。すると富士山の神や仏の力を手に入れようと、「修験者」と呼ばれる宗教者たちが山を登り、神・仏の世界があると言われた山頂をめざすようになりました。大宮・村山口、吉田口などの登山道が開かれると、武士や庶民も登山するようになり、富士山は遠くから拝む山から、実際に登って拝む山として広く知られるようになりました。
朝や夕暮れどきに、富士山頂で太陽が重なる瞬間、ダイヤモンドのように輝く現象「ダイヤモンド富士」が見られることがあります。見ることができる場所はさまざまですが、静岡県田貫湖や山梨県山中湖が有名です。一瞬で終わってしまうため、ダイヤモンド富士を撮影する場合は前後の時間に余裕をもって、その瞬間を待つことをおすすめします。
また、例年5月初旬から6月初旬の雪解けの時期に、須走口に「幻の滝」が出現します。富士山に降った雪が溶けて流れていくために、発生する滝。年にわずかな期間しか見ることができないものゆえ、幻の滝に出会えた時の感動はひとしおです。
2015年12月現在、わたしたちが日々使用している、千円札の裏面にも富士山があります。本栖湖に映る富士山で「逆さ富士」と呼ばれ、写真家岡田紅陽氏の写真「湖畔の春」をもとにデザインされました。本栖湖の「逆さ富士」、出現のチャンスを伺い観に行ってみると、よい作品が撮れるかもしれません。
取材協力:静岡県 文化・観光部 富士山世界遺産課
実際にここで知ったことを活かしながら、富士山の写真を撮ってみませんか?天候、撮影場所などにより、いろいろな姿を見せてくれる富士山を撮るコツをご紹介しています。