家族の一員である愛犬。日常的にカメラを向けてはその愛しい姿を写真に残している方も多いことと思います。ところが、飛んだり跳ねたり走ったり、アクティブに動き回る瞬間を撮ろうと思うとピンボケしたりブレてしまったり、うまく撮れなかったという経験はないでしょうか。
今回は、いきいきと遊んでいる犬の姿をしっかりと捉えるための撮影のコツをご紹介します。今回ワンちゃんには青空の下、飼い主さんとドッグランで思い切り遊んでもらいその様子を撮影しました。
撮影監修:斎藤勝則
撮影で使ったのは、「Z 6II」と望遠ズームレンズの「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」です。
Z 6IIは約14コマ/秒(高速連続撮影(拡張)時の最大撮影速度)の撮影ができる、速い動きの中の一瞬を切り取るのにより適したカメラです。また犬の顔や瞳を自動で検出しピントを合わせてくれる[動物AF]機能も搭載しています。
広いドックランでも大きく犬を捉えるために、望遠画角のレンズは必須です。今回は200mmまでをカバーする望遠ズームで撮影しましたが、どの程度の距離から撮影できるのか予測がつかない場合は、手軽に焦点距離を上げられるテレコンバーターを用意しておけるとさらに様々なシーンに対応できるため安心ですよ。
投げてもらったフリスビーをキャッチする様子を撮影しました。今まさに飛び上がろうとする瞬間には、飛び上がるタイミングを計っているような身体の動きだけでなく、フリスビーを目で追う犬の表情までハッキリと写っています。また、まさにキャッチするその決定的瞬間も精細にハッキリと、躍動感いっぱいに捉えることができました。
投げられたフリスビーをキャッチする犬を、横から狙って撮影しました。あまり近くから撮影するとカメラの方に興味が向いてしまうこともあるため、遊びの邪魔をしない程度の距離感を計りましょう。撮影者は座って、犬の目線程度のなるべく低い位置から撮影することで飛び跳ねたときの躍動感ある姿を撮ることができます。また撮影の前に何度か、同じ方向に、同じ距離感でフリスビーを投げて犬にキャッチしてもらうテストをしておくと、シャッターを押すタイミングや位置の目星がついて撮影しやすいですよ。
上手にキャッチできたら一緒に喜んだり、無理に何度もやらせたりしないなど、犬に負担を強いることなく遊びの中で楽しく撮影できる環境づくりを心掛けましょう。
俊敏に動く犬の一瞬をしっかり捉えるためのポイント、1つめはシャッタースピードを速くすることです。
全力で動き回る犬の動きは思った以上に早く、シャッタースピードは遅くとも1/1000秒以上、1/2500秒くらいあると安心です。シャッタースピードを確保するための撮影モードは[S シャッター優先オート]でもよいですが、今回は背景をなるべくボケさせることで犬の存在感を出す撮りかたをしたかったので、絞り値も開放ぎみにコントロールするため[M マニュアル]で撮影しています。
2つめのポイントは、速い動きに対応するオートフォーカスの設定に変えることです。「フォーカスモード」は動く被写体を撮るときは常に[AF-C(コンティニュアスAF)]にしておき、「AFエリアモード」は今回[ワイドエリアAF(L)]に設定しました。その他動くものを捉えるためのカメラ設定、オートフォーカスについては以下の記事も参考にしてください。
撮影時に設定しておきたいのが、「レリーズモード」です。シャッターボタンを全押ししている間に連写ができる[高速連続撮影]に設定しておきましょう。
やみくもに連写してもベストな1枚を撮ることはできません。撮りたい画の前後を補完するようなイメージで連写してみましょう。この写真ではボールをキャッチする瞬間を撮りたかったため、「ジャンプしそうだな」と思った瞬間から着地するまでシャッターを切り連写しました。
ボタンからメニューを表示、レリーズモードの項目から[高速連続撮影]に設定します。Z 6IIでは最速約14コマ/秒で撮影できる[高速連続撮影(拡張)]が選べます。
ボールを追いかけたり飼い主の呼びかけに駆けていったりと、全力で走っている犬の姿を切り取りました。長い毛並みの動き1本1本までしっかり写しとめたことで風を切るように走る躍動感、さらに爽快さも感じます。こちらも焦点距離は200mm、絞りをf/4まで開いて撮影しています。
遠くから飼い主に呼んでもらい、そこに向かって走る姿を横から撮影しています。犬は自由に動き回るため走る道筋を予測するのが難しいこともありますが、飼い主や好きなおもちゃなど目標物に向かって走ってもらうことによりカメラで追いやすくなります。
このカットも撮影者は座って、犬の目線程度のなるべく低い位置から撮影しています。走っているときの足の動きがよくわかり、撮影シチュエーションによっては両足が地面から離れ空中に浮いているような瞬間を撮ることができます。
簡単にピントを合わせるならカメラが自動でピント合わせをしてくれる[オートエリアAF]モードに設定しておけば良いのでは? と思うかもしれませんが、もし違う場所にピントが合ってしまった場合、ピント位置を設定し直していてはシャッターチャンスを逃してしまいます。
また、フォーカスロックした被写体にピントを合わせ続けてくれる[ターゲット追尾]が有効にも思えますが、遊んでいるときの犬は思った以上に素早い動きをします。ある程度動きが読める場合はよいのですが、ピントが抜けてしまうことも考えられます。
確実にピントを合わせるなら、今回設定した1点ではなく広いエリアで被写体にピントを合わせてくれる[ワイドエリアAF(L)]がおすすめです。
思い切り遊んでいる途中に大好きな飼い主に向かって一途なまなざしを向ける、「もっと遊んで!」と言っているかのようないきいきとした表情を捉えました。楽しいな、うれしいなと感じていれば犬も自然と目を輝かせ、笑っているかのような顔を見せてくれます。キラキラしたかわいい表情、自分の愛犬であればなおさら逃さず写真に収めておきたいですね。焦点距離は140mm、絞りはf/4に設定、背景の玉ボケが犬の表情を効果的に引き立てています。
おもちゃを見つめて立ち止まったり、ボールを投げる飼い主をじっと見つめたり、アクティブに動き回る中でもふいに犬が何かに集中している瞬間があります。その一瞬の動作を逃さず、カメラを向けてみましょう。飼い主に協力をあおげるのであれば、少しの間、その集中を切らないよう犬をコントロールしてもらってもよいでしょう。
目をクリっと見せるには日陰や逆光などまぶしくない場所で撮影し、また口もとは開いている方がニコッと笑った印象になります。ただし、舌は出過ぎない方がかわいく撮れます。疲れていたり緊張したりしていると舌があごの方まで出てしまうことがあるので、気をつけましょう。
「動物AF」とは、AFエリアモードを[オートエリアAF(動物)]または[ワイドエリアAF(L-動物)]に設定したとき(※)、カメラが犬や猫の顔や瞳を認識して自動でピントを合わせてくれる機能のことです。
動物の撮影では基本的に目を中心にピントを合わせます。それをカメラが自動で行ってくれるので、フレーミングやシャッターチャンスに集中して撮影することができるとても便利な機能です。なお、素早く動いているときや写っている顔が小さいとき、体毛などで顔や目が隠れているときなどは正常に認識されないことがありますので注意が必要です。そういったシーンでは[ワイドエリアAF]がおすすめです。
また動く被写体を撮影するときは後から拡大してみるとボケていた、ブレていたということが多々あります。この作例に関わらず、撮ったらその都度ピントがしっかりきているか、手ブレ、被写体ブレはないかを画像を拡大してしっかり確認する癖をつけておきましょう。
EXPEED 6を2基搭載した画像処理エンジン「デュアルEXPEED 6」を採用。高速連写性能が向上し、AF/AE追従で約14コマ/秒※1、最大124コマ※2までの連続撮影が可能となったミラーレスカメラです。ネイチャー撮影、鉄道撮影など、最高の一瞬を写し止める撮影を快適にサポートします。人物、犬、猫の顔や瞳を検出する「瞳AF・顔検出AF」と「動物AF」が、[ワイドエリアAF]にも対応、さらに使いやすく進化しました。
新開発のSRレンズをはじめ、EDレンズ、非球面レンズ、蛍石レンズと、高い補正能力を実現する光学性能の優れたレンズの数々を惜しみなく投入。同時に「マルチフォーカス方式」の採用で近距離性能を格段に高め、ズーム全域で、絞り開放から画像周辺部まで極めて高い解像感を実現した望遠ズームレンズです。野生動物や風景、スポーツシーンなど様々なシチュエーションで、望遠域の被写体を細部まで克明に描写します。
このギャラリーでは「カメラレッスン」で撮影した作品を掲載しています。
写真の目的で絞り込んで作品を検索することができますので、この目的でどんな作品が撮れるのか参考にしながらご覧ください。