撮りたいものをはっきりと写すには、「ピント」をきちんと合わせて撮影することがとても大切です。今回はオートフォーカスを中心に、ピント合わせの基本と使いかたのコツをご紹介します。
撮影監修:斎藤勝則
魅力的な被写体を見つけて写真を撮ったあと、液晶モニターで確認したときは気にならなかったのに、帰宅後にパソコンの画面で見たら被写体がぼやけていた…という経験が誰でも一度はあるのではないでしょうか? そのような写真に多いのが「ピンボケ」と「手ブレ」です。
手ブレ防止にはしっかりとした構えかたで撮影することが重要です。詳しくは『Lesson1:カメラの構えかた』で紹介しています。
オートフォーカスは「カメラが自動的にピントを合わせる」便利な機能です。被写体にカメラを向けてシャッターボタンを半押しにすれば、誰でも簡単にすばやくピントを合わせることができます。
通常はオートフォーカスで撮影することをおすすめします。ただ、万能ではないためピント合わせの基準となるフォーカスポイントと、自分がピントを合わせたいところが微妙にずれてしまうときなどはマニュアルフォーカスを活用するといいでしょう。
マニュアルフォーカスは「手動でピントを合わせる」機能です。
こんな場合はマニュアルフォーカスでピントを合わせてみましょう。なお、オートフォーカスとマニュアルフォーカスの切り換えについてはお使いの使用説明書でご確認ください。
今回はオートフォーカスでのピント合わせについて学んでいきます。カメラのフォーカスモードがAFになっているかを確認しておきましょう。
オートフォーカスでの撮影中、「あれ? ねらいたいところに合ってくれない」というときがあります。実は、オートフォーカスが苦手とするシーンもいくつかあるのです。
オートフォーカスの苦手なシーンは最初からマニュアルフォーカスに設定して撮影するのをおすすめします。
被写体や撮影シーンに合わせて、AFモードとAFエリアモードを選択しましょう。
オートフォーカスがどのように機能するかを設定する機能です。
シャッターボタンを半押ししてピントを合わせると、半押ししている間はそのピントの状態を保ちます。ピントが合っていないとシャッターを切れません(※)。
シャッターボタンを半押ししてピントを合わせたあとも、半押ししている間は被写体にピントを合わせ続けます。ピントが合っていなくても、いつでもシャッターを切れます(※)。
ピントを合わせる範囲を設定する機能です。代表的なものをご紹介しましょう。
1つのフォーカスポイントを自分で選んで、そのフォーカスポイントだけを使ってピントを合わせます。
選んでいる1つのフォーカスポイントとその周辺のフォーカスポイントのピント情報を利用して、被写体にピントを合わせ続けます。AFモードが[AF-C]のときに設定できます。
カメラが自動的に写したい被写体を判別してピントを合わせます。人物の顔を認識すると顔を優先してピントを合わせます。
ほかにも、シングルポイントよりも狭い範囲でピント合わせをする[ピンポイントAF]、シングルポイントよりも広い範囲でピント合わせをする[ワイドエリアAF][グループエリアAF]、予測しにくい動きの被写体を追い続ける[3D-トラッキング][ターゲット追尾AF]など、いろいろなAFエリアモードがあります。設定できるAFエリアモードは機種によって異なりますので、お使いの機種の使用説明書を確認しておくようにしましょう。
撮影シーンに合わせた、おすすめのAFモードとAFエリアモードをご紹介します。
AFモードを[AF-S]に、AFエリアモードを[シングルポイントAF]に設定します。
[AF-S]であれば、「ピントが合っていないのにシャッターを切ってしまった」ということがなくなります。被写体が動かないので、[シングルポイントAF]で合わせたい位置にピントがあっているかどうかをしっかりと確認してから撮影するとよいでしょう。
AFモードを[AF-C]に、AFエリアモードを[ダイナミックAF]に設定します。[ダイナミックAF]で被写体を追い続ければ、シャッターを切るまでオートフォーカス機能がピントを合わせ続けるので、カメラで被写体を追うことに力を注げます。
AFモードを[AF-C]に、AFエリアモードを[オートエリアAF]に設定します。
ピントを合わせているうちにシャッターチャンスを逃してしまった……ということはありませんか? この組み合わせなら、被写体の判別とピント合わせはカメラに任せ、シャッターを切ることに集中できます。
ミラーレスカメラZ シリーズやデジタル一眼レフカメラD780には[瞳AF]機能が搭載されています(2020年6月現在)。カスタムメニューで「オートエリアAF時の顔と瞳認識」を有効にしておくと、AFエリアモードを[オートエリアAF]にしているときのライブビュー撮影で[瞳AF]機能が使えるようになります。[瞳AF]では、ピントを合わせる瞳を右目と左目で選択することができます。人物が複数の場合は、それぞれの人の右目と左目を選択できます。
[瞳AF]を使うときのAFモードは[AF-C]がおすすめです。人物の頭は常に動いているものですが、[AF-C]ならばシャッターを切る瞬間まで瞳をとらえ続けます。
フォーカスロックとは、ピントを合わせたい被写体がどのフォーカスポイントにも入らないときや、オートフォーカスが苦手な被写体を撮影するときに、ピントを固定して撮影する方法です。具体的な活用シーンを見てみましょう。
海岸でのポートレート撮影。日の丸構図を避けたいので、モデルを右側に配した構図で撮影しようとしたところ、ほしいところにフォーカスポイントがありませんでした。そこでフォーカスロックを使って意図どおりの構図をねらうことにしました。この撮影でのAFモードは[AF-S]に設定しています。
1.モデルにフォーカスポイントを重ね、シャッターボタンを半押しします。これでモデルにピントが固定されます(フォーカスロック)。
2. シャッターを半押しでフォーカスロックしたまま構図を変えて、シャッターボタンを全押しして撮影します。
ライブビュー撮影や電子ビューファインダーでのファインダー撮影では、ピントを合わせている部分を拡大表示してより正確なピント合わせが可能です。拡大表示するには、カメラのを押します。
マルチセレクターの中央ボタンを押すと、フォーカスポイントが中央に移動します。フォーカスポイントは撮影する前にいったん中央に戻しておくと、ピントを合わせたい位置までの移動が楽になるのでおすすめです。
[M/A][A/M]モードがあるレンズやAF-Pレンズを付けている場合、オートフォーカス中でもレンズのフォーカスリングを回してマニュアルによるピント合わせが可能です(※)。フォーカスリングはシャッター半押し状態で回します。
オートフォーカスでの撮影中、ピントが合いにくくなってしまったとき(ピント合わせに迷っているとき)などに、瞬時にマニュアルフォーカスに切り換えることができます。
撮影に夢中になって近寄りすぎたりするとあれ?ピントが合わない…というとき、ありますよね。
その場合は、被写体がレンズの最短撮影距離より近くにあるのかもしれません。最短撮影距離とは距離基準マークから被写体までの距離のことです。お使いのレンズの最短撮影距離を頭に入れておくと、いざというとき近すぎて撮れなかったということがなくなります。
いかがでしたでしょうか。オートフォーカスとマニュアルフォーカスそれぞれの特長と使いかたを覚えて、ピントが気持ちよく合った作品づくりを楽しんでください。