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2025年2月の星空

南の空に冬の大三角が広がり、オリオン座やおおいぬ座が寒さに負けず元気よく躍動しています。明るい2つの惑星、天頂の火星と南西高く輝く木星も、見ごろが続いています。春の暖かさが待ち遠しい時期ですが、今のうちに冬空の美しさをたっぷりと楽しみましょう。

星空写真

山梨県北杜市 美し森展望台にて
富士山と、未明に昇ったばかりのさそり座、天の川の中心部が共演する様子を撮影しました。甲府の街明かりがアクセントとして加わり、心揺さぶられる星景になりました。

2024年2月14日 4時55分
ニコン Z6II+NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S(35mm、ISO3200、露出5秒×8枚を合成、f/2.8)
撮影者:高岡 誠一

2月の星空

南の空

南の空

2025年2月1日ごろの22時、15日ごろの21時、28日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、満月(12日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2025年2月1日ごろの22時、15日ごろの21時、28日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(5日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

天文カレンダー

1日(土) 夕方~宵、細い月と土星が接近、細い月と金星がやや離れて並ぶ(「今月の星さがし」で解説)
2日(日) 夕方~宵、細い月と金星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説)
3日(月) 立春(こよみの上で春の始まり)
5日(水) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
6日(木) 夕方~翌7日未明、月とプレアデス星団が大接近
7日(金) 夕方~宵、月と木星が並ぶ
9日(日) 夕方~翌10日未明、月と火星が大接近(「今月の星さがし」で解説)
10日(月) 未明、月とポルックスが並ぶ
夕方~翌11日未明、月とポルックスが並ぶ(10日未明とは並び方が変わります)
12日(水) 満月。次の満月は3月14日です
宵~翌13日明け方、月とレグルスが接近
13日(木) 宵~深夜、月とレグルスが並ぶ
15日(土) 金星が最大光度(「今月の星さがし」で解説)
17日(月) 深夜~翌18日明け方、月とスピカが大接近
21日(金) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
未明~明け方 月とアンタレスが並ぶ
22日(土) 未明~明け方、月とアンタレスが並ぶ
28日(金) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)

2月の惑星

水星

下旬から、夕方の西の低空に見えます。

日の入り45分後(東京で18時15分ごろ)の高度は3度前後と非常に低めです。スマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめて、見晴らしの良い場所で探してみましょう。マイナス1.2等級と明るいので位置がわかれば肉眼でも見えますが、双眼鏡を使うと見つけやすくなります。すぐそばに土星も見えるかもしれません。

金星

「宵の明星」として、夕方から宵の西の低空に見えます。明るさは約マイナス4.6等級です。

日の入り45分後(東京で18時10分ごろ)の高度は約30度あり、空が暗くなり始めたらすぐ見つけられるでしょう。天体観察に慣れれば日の入り前でも見えます。太陽に気を付けて探してみてください。15日には「最大光度」という状態を迎え、マイナス4.9等級まで明るくなります。

2日の夕方から宵に、月齢4の細い月と並んで見えます。

火星

「ふたご座」にあります。19時ごろに東の空の高いところに見え、21時ごろに頭の真上あたりまで昇り、1時ごろに西の空に見えます。明るさは約マイナス0.7等級です。

宵から深夜の見やすい時間帯に高く、観察の好期が続いています。先月12日の地球最接近のころと比べると少し明るさが減りましたが、冬の華やかな星々に引けを取らない輝きや美しさは健在です。「ふたご座」のポルックスとカストルと並んでいる光景も面白いでしょう。機会があれば天体望遠鏡でも観察してみてください。表面の模様がうっすらと見えるかもしれません。

9日の夕方から10日の未明にかけて、月齢11の満月前の明るい月と大接近します。「今月の星さがし」も参考にして観察をお楽しみください。

木星

「おうし座」にあります。19時ごろに頭の真上あたりに見え、2時ごろに沈みます。明るさは約マイナス2.4等級です。

宵の時間帯に高く、火星と同様に見ごろが続いています。冬の星々をリードするような見事な威光をご覧ください。天体望遠鏡で縞模様やガリレオ衛星も観察してみましょう。衛星の並び方が日々変化する様子は、毎日見ていても飽きないものです。

7日の夕方から宵に、月齢9の上弦過ぎの月と並びます。

土星

夕方の西の低空に見えます。明るさは約1.1等級です。

日の入り45分後(東京で18時10分ごろ)の高度が10度程度と低く、天体望遠鏡での拡大観察には向いていません。肉眼や双眼鏡で土星の光を確認するだけになりそうですが、完全にシーズンオフになるまでは見続けたいものです。

1日の夕方から宵に、月齢3の細い月と接近して見えます。また、下旬には水星と接近し、双眼鏡の同一視野内に見えます。

今月の星さがし

上旬に月が土星、金星、火星に次々に接近していきます。宵の明星の金星は15日に「最大光度」という状態を迎え、今季一番の輝きを見せます。

月と土星、金星、火星が接近

立春のころになると、日暮れが少し遅くなってきたことを感じます。その夕空には、一番星の金星がキラキラと輝いて目立っています。空の色と明るさが刻一刻と変わっていく時間帯、どのタイミングで見ても金星は美しいものです。また、金星の下のほうには土星もあります。金星よりは暗いですが、いわゆる1等星と同じくらいの明るさなので、肉眼でもじゅうぶん見つけられます。

1日と2日の両日、この2惑星の近くに細い月が接近してきます。肉眼で眺める、双眼鏡で少し拡大して観察する、風景と一緒に撮影するなどして楽しみましょう。ちなみに1日のお昼には日本の広範囲で、月が土星を隠す現象(土星食)が起こります。日中の現象ということもあり、観察には機材と経験が必要となりますので、インターネット中継などを視聴するのがおすすめです。1日の夕方に見える月と土星は「食後」ということになりますね。

2月1日と2日 夕方の西南西の空の様子(場所の設定は東京)。大きい円は拡大イメージ(視野6度)、小さい円はさらに拡大のイメージ(正立像、月と惑星で拡大率は異なる)

3日以降は月は金星と土星から遠ざかっていき、冬の星々の中で輝く木星と火星に近づいていきます。そして7日に木星と並んだ後、9日から10日にかけて火星と大接近を見せます。冬の星たちや木星に見守られながら月と火星が仲睦まじく寄り添う姿は、少し早いバレンタインのお祝いのようでもあります。

2月9日19時と10日1時の、月と火星の接近の様子(場所の設定は東京)。大きい円は拡大イメージ(視野6度)、小さい円はさらに拡大のイメージ(正立像、月と火星で拡大率は異なる)

星図を見ると、6時間の間に月と火星の間隔が小さくなっていることがわかるでしょう。先に紹介した土星が月に隠される現象も同じで、月と惑星との位置関係が数時間で変化することによって起こるわけですが、こうした現象の時にはどうしても「月に隠れる/月から出てくる」こと自体に注目しがちなので、天体の並び方の変化は意識しないものです。9~10日はぜひ、この「並び方の変化」にも注目しながら月と火星をご覧ください。ちなみに月と火星の間隔がどんどん小さくなる結果、明け方には日本の一部で火星食となりますが、ほぼ月没のタイミングなので観察は非常に難しいでしょう。

金星の明るさの変化

惑星の明るさは地球からの距離などに応じて変化します。最もわかりやすいのは見ごろを迎えている火星で、現在は地球との間隔が広がっている最中のために徐々に暗くなっています(ほかの理由もあります)。

宵の明星の金星も同様に明るさが変わるのですが、その要因には地球との距離だけでなく、光っている部分の割合が変化していくことも大きく関係しています。金星も惑星なので太陽の光を反射して輝いて見えますが、地球から見ると半分だけ光ったり、三日月のように細く光ったりします。

1月15日から3月15日までおよそ10日ごとの、太陽系内での金星の動き(太陽と地球を固定した位置の変化)の様子。囲み内は地球から見た金星の拡大イメージ(上が太陽系の北)。この期間にはないが、金星が太陽よりも右にあれば、金星は丸く小さく見えることになる

地球との距離が小さくなると見かけサイズは大きくなるので、金星は明るくなるように思うかもしれませんが、実際には光っている部分の割合が減ってしまうため、単純に「近いほど明るい」とは言えません。極端な場合、地球と太陽の間に金星があれば距離は最も小さいですが、光っている部分がないため金星がほぼ見えなくなります。距離(見かけサイズ)と光る部分の割合(見かけの形)とのバランスによって、金星の明るさが決まるというわけです。

今月の15日はその絶妙のタイミングを迎えて「最大光度」という状態になり、計算上ではマイナス4.9等級にも達します(等級の数字が小さいほど明るくなります)。実際のところはこの日だけ特別に明るく見えるわけではないですが、太陽系の中での位置関係などを想像しながら金星の輝きを眺めると面白いかもしれません。機会があれば天体望遠鏡でも金星を観察してみてください。本当に大きさや形が変わることがわかり、さらに興味が深まるでしょう。

今月の星座

ふたご座

5月下旬から6月中旬ごろに誕生日を迎える人の星座として名前が知られている「ふたご座」、見やすいのは冬の時期です。2月中旬の夜20時から21時ごろ、南の空の高いところ、「冬の大三角」の上のほうに広がっています。

「ふたご座」(星雲の画像クレジット:ESO DSS2 (AURA))

「ふたご座」の目印は、2つ仲良く並んで輝く、まさに双子のような明るい星です。白っぽい色に見えるのが双子の兄の名が付いたカストル、黄~オレンジ色に見える星は弟のポルックスです。この冬は火星も2つの星の近くにあり、一時的に「三つ子」のようになっています。

兄のカストルは2等星、弟のポルックスは1等星で、ポルックスのほうが少し明るい星です。とはいえ、一見するとだいたい同じなので、確かに双子のようだと感じられます。火星はポルックスよりもさらに明るく光っています。3つの星の色や明るさを見比べてみましょう。

このカストルとポルックスを兄弟それぞれの頭として、「オリオン座」のほうに向かって二人それぞれの胴体や足が伸びています。星々をつないで、仲良し双子の姿を見つけてみてください。

散開星団M35

兄カストルの足先に、美しい散開星団(星の集まり)があります。メシエカタログ(天体カタログ)の35番目に収録されているのでM35と呼ばれます。

空が暗いところで双眼鏡を使って観察すると、ボンヤリとした像が見えます。天体望遠鏡を使うと暗い星まで見えるので星の数が増え、いっそうすばらしい眺めを堪能できます。星団全体が見渡せるように、倍率は低め(30~50倍程度)が良いでしょう。機会があれば、ぜひ観察してみてください。

くらげ星雲

カストルの足の先にはM35のほかに、「くらげ星雲」という愛称で呼ばれる天体(カタログ番号:IC 443)もあります。重い星が一生の最期に大爆発を起こし、広がった物質が見える超新星残骸の一つです。先月号でご紹介した「おうし座」のかに星雲も超新星残骸でしたが、偶然にも隣接する星座に、海の生物の名を持つ超新星残骸があるということになりますね。

くらげ星雲の見かけサイズは満月よりも大きいのですが、とても淡いため、眼視ではほとんどわかりません。インターネットで画像を検索して、くらげの傘や足の繊細なフィラメント状構造を確かめてみましょう。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は2月中旬の深夜1時ごろの星空です。3月中旬の深夜23時ごろ、4月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。

2025年2月中旬 深夜1時ごろの星空

「冬の大三角」が西の空に低くなりました。火星、木星、シリウスといったマイナス等級の明るい星たちは、沈もうとする間際まで目立っています。

冬の星座たちと入れ替わるようにして、南から南東の空には春の星座たちが広がっています。空高く「しし座」が走り、「おとめ座」のスピカと「うしかい座」のアルクトゥールスが美しい輝きを見せています。北の空では「北斗七星」も高く昇ってきました。

「しし座」や北斗七星が高くなると春の訪れを感じられますが、実際にはまだ寒い日々が続きます。寒さ対策や体調管理を万全にして、冬と春の両方の星々をお楽しみください。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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