8日に土星、14日におうし座のプレアデス星団(すばる)、25日におとめ座の1等星スピカが、それぞれ月に隠されます。事前にしっかり準備して観察しましょう。宵空で冬の星々を先導する木星の圧倒的な輝きは、年末の天上をいっそう華やかにしています。
星空写真
愛知県新城市にて
お彼岸の時期になると必ず咲き乱れる彼岸花ですが、今年は猛暑が原因か、遅れて咲いていました。東の空に、おうし座など冬の星座が続々と昇ってくるなか、ペルセウス座もしっかりと姿を見せています。さらに木星も、彼岸花の間から顔を覗かせています。
2024年10月1日 22時4分
ニコン Z6II+NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S(14mm、ISO3200、露出15秒×16枚を合成、f/2.8)
撮影者:石橋 直樹
1日(日) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
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3日(火) | このころ、深夜~明け方に火星とプレセペ星団が接近(「今月の星さがし」で解説) |
4日(水) | 夕方~宵、細い月と金星がやや離れて並ぶ |
5日(木) | 夕方~宵、細い月と金星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
8日(日) | 木星が衝(一晩中見えるので観察の好機です) 18時~19時ごろ、広範囲で土星食(土星が月に隠されます。「今月の星さがし」で解説)/夕方~深夜、月と土星が大接近 |
9日(月) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) |
13日(金) | 夕方~翌14日未明、月とプレアデス星団が大接近 |
14日(土) | 3時~5時ごろ、プレアデス星団食(星団の星々が月に隠されます。「今月の星さがし」で解説) ふたご座流星群の活動がピーク(「今月の星さがし」で解説) 宵~翌15日明け方、月と木星が並ぶ |
15日(日) | 満月。次の満月は来年1月14日です |
17日(火) | 宵~翌18日明け方、月とポルックスが接近 |
18日(水) | 宵~翌19日明け方、月と火星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
20日(金) | 未明~明け方、月とレグルスが並ぶ 深夜~翌21日明け方、月とレグルスが接近(明け方とは並び方が変わります) |
21日(土) | 冬至(北半球では、一年のうちで一番夜が長い日) |
23日(月) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
25日(水) | 3時~4時ごろ、スピカ食(スピカが月に隠されます。「今月の星さがし」で解説)/未明~明け方、月とスピカが大接近 |
29日(日) | 明け方、細い月とアンタレスが接近 |
31日(火) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
中旬以降、明け方の東南東から南東の低空に見えます。
日の出45分前(東京で6時ごろ)の高度は10度前後あり、太陽から大きく離れることがなく常に地平線近くにしか見えない水星としては、最も見やすい状態です。ただし「水星としては」好条件というだけであり、低いことに変わりはありません。スマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめて、見晴らしの良い場所で探してみましょう。双眼鏡を使うと見つけやすくなります。
「宵の明星」として、夕方から宵の南西の低空に見えます。明るさは約マイナス4等級です。
日の入り45分後(東京で17時15分ごろ)の高度は25度前後で、先月よりも高く見やすくなりました。冷たい空気の中で見る金星の輝きには、刺すような鋭さが感じられそうです。
4日の夕方から宵に、月齢3の細い月と並んで見えます。また、翌5日の夕方から宵にも細い月と金星が接近します。「今月の星さがし」も参考にして、夕空のグラデーションのなかに浮かぶ美しい共演を見たり撮ったりしてみましょう。
「かに座」にあります。21時ごろに東の空に見え、日付が変わるころに東の空の高いところ、3時ごろに頭の真上あたりに見えます。明るさは約マイナス0.8等級です。
木星や冬の星座の星々など明るい天体が多い夜空のなかで、火星の輝きと赤っぽい色もよく目立ちます。また、双眼鏡で眺めると「かに座」のプレセペ星団と並んでいる光景が楽しめます。ぜひ観察してみてください。
18日の宵から19日の明け方、満月過ぎの明るい月と接近します。
「おうし座」にあります。19時ごろに東の空、23時ごろに頭の真上あたりに見えます。明るさは約マイナス2.8等級です。
木星と同じタイミングで「おうし座」や「ぎょしゃ座」が東の空に昇り、木星が高くなるにつれて「オリオン座」や「ふたご座」が地平線から姿を見せるというぐあいに、今冬の木星は星座たちを引率しているような印象です。圧倒的な明るさで堂々としていて、貫禄もたっぷりです。木星を含めた豪華な夜空をお楽しみください。
20時ごろには天体望遠鏡でも見やすい高さになります。縞模様やガリレオ衛星を観察してみましょう。
「みずがめ座」にあります。18時ごろに南南西、20時ごろに南西の空に見えます。明るさは約1.0等級です。
日付が変わる前には沈むのですが、空が暗くなるのも早い時季なので観察時間はじゅうぶんあります。科学館などで開催される天体観察会で、天体望遠鏡で環を見てみましょう。今シーズンは環の見え方が細いので、その様子をよく観察してみてください。
今月は何といっても、8日に起こる「土星食」が見逃せません。「今月の星さがし」を参考にして、自分の望遠鏡で見たり観察イベントに参加したり、中継を視聴したりして楽しみましょう。
様々な「食」が起こる1か月です。時間帯や見え方をよく確かめておきましょう。ふたご座流星群は月明かりの影響がありますが、それでも流れ星を待ちたいものです。
明るい月と惑星が並ぶ光景は肉眼でもよく見え、日常生活の中で気軽に眺められる天文現象です。今月見られる3回の現象を日付順にご案内しましょう。
まず1回目は5日の夕方から宵にかけて、南西の空のやや低いところに細い月と宵の明星の金星が並びます。日の入りが早く、暗くなるのも早いので、うっかり見逃してしまわないように気を付けましょう。双眼鏡で観察したり風景と一緒に撮影したりするのもお勧めです。
続いて8日、上弦の月と土星が大接近します。このイベントは単なる大接近ではなく、日本の広い範囲で、月が土星を隠す現象(食(しょく)、掩蔽(えんぺい))になります。月の欠け際に近い暗いところから土星が隠されていき、明るい部分から出てきます。食現象をじっくり観察するには天体望遠鏡が必要ですが、肉眼や双眼鏡で見ていても、土星の光がゆっくりと消えたり現れたりする様子が見られるかもしれません。望遠鏡なら拡大して見えるので、とても面白い眺めになります。
北海道や中国・九州の広範囲では、残念ながら食にはなりませんが、大接近は見られます。また、岡山市や能登半島、秋田市などでは土星が月の縁をかすめていく「接食」という現象になります。肉眼やお手持ちの道具で見る、観察イベントに参加する、インターネット中継を見る(各地の見え方の差がわかります)など、いろいろな方法で楽しみましょう。食が終わった後も月と土星が沈むまではずっと接近が見られるので、その光景も眺めてみてください。
3回目は18日の宵から19日の明け方(つまり18日の夜のほぼ一晩中)、明るい月と火星の接近です。マイナス1等級近くまで明るくなってきた火星は、まぶしい月の横にあってもよく見えるでしょう。火星の赤と月の白、色の対比も楽しみです。
月の形や惑星の明るさ、色、望遠鏡で見た姿、などにも注目しながら、それぞれの共演を観察してみましょう。どれも楽しみですが、とくに土星食は、ぜひ晴れますように。
火星は現在、「かに座」の領域にあります。「かに座」の真ん中には「プレセペ星団」という星の集まりがあり、今月はその星々に火星が接近しています。
最接近は3~4日ごろですが、12月中はずっと双眼鏡の同一視野内で見えるくらいの間隔です。火星に双眼鏡を向ければ、その近くに星団の星々も見えるでしょう。明るい火星が大人しい星団の星々に寄り添うという、美しく面白い光景です。継続的に観察すると、星団に対する火星の位置が変わっていく様子もわかります。長期的にお楽しみください。
毎年12月中旬に、ふたご座流星群の活動がピークを迎えます。活動が活発で安定していることや夜が長いことなど、一年で最も多くの流星が見える時期で、寒さを別とすれば一晩中でも空を見上げたいものです。
今年のピークは14日の朝10時ごろと予想されています。これは夜明け後なので、実際に見やすいのは14日の未明から明け方にかけての時間帯になります。「ふたご座」を中心として空のあちこちに流れ星が飛ぶので、空を広く見渡しましょう。月明かりの影響が大きいため、目にできる流星数は少なくなってしまいそうですが、月に背を向けるなどして離れた方向を中心に眺めると、多少は見やすくなります。寒さ対策を念入りにして、暖かい飲み物なども準備して、流れ星を待ってみてください。
さて、流星観察には不都合な月ですが、今年に限っては注目してみてください。2時ごろから5時ごろまで、月が「おうし座」のプレアデス星団(すばる)の手前を通り過ぎていくのです。プレアデス星団食(すばる食)と呼ばれる現象で、日本で夜間に見られるのは15年ぶりという貴重なものです。
プレアデス星団は普段は肉眼でも見える天体ですが、月が重なるほど近くにあると、さすがに星団の星々は負けてしまうので、双眼鏡や低倍率の天体望遠鏡で観察しましょう。後半にはかなり低くなるので、西北西の空が地平線まで開けている場所で見ることをお勧めしますが、前半だけ見てもじゅうぶん楽しめます。
星団の食の面白さは、多数の星々が次々に隠され現れるという連続性と、広がりのある星団に月が重なっている光景にあります。どちらも、単独の星の食ではなかなか感じられない魅力です。14日の未明は、15~20分くらい流れ星を待つ→プレアデス星団食の進み具合を観察する、というのを何回か繰り返してみてはいかがでしょうか。再度のご注意ですが、防寒の備えはどうぞ万全に。
8日の土星食、14日のプレアデス星団食に続き、25日の未明にも食現象が起こります。1か月の間に3回も見やすい(隠される天体が明るい)食が起こるのは非常に珍しいことです。この日隠されるのは「おとめ座」の1等星スピカです。
スピカが月に隠されるときは明るい縁での現象なのでやや見づらく、月から出てくるときは急に現れるのでタイミングが難しいと、少し注意が必要な現象ですが、それでも楽しみなイベントで見逃せません。南東方向に高い建物などがない場所で、双眼鏡や天体望遠鏡を使って観察しましょう。
3回の食を味わい尽くして、良い2024年の締めくくりとなりますように。
12月中旬の夜21時ごろ、北の空の高いところに「カシオペヤ座」、北東の空の高いところに1等星カペラが目印の「ぎょしゃ座」が見えています。これら2つの目立つ星座の間に広がっているのが「ペルセウス座」です。8月中旬の流星群で有名な星座ですが、宵空で見やすいのは晩秋から冬です。
ミルファク、アルゴルと2等星が2つあるので、比較的見つけやすい星座です。「カシオペヤ座」と「ぎょしゃ座」の中間を探すという方法や、「ペガスス座」の四辺形から「アンドロメダ座」を経由してミルファクを探すという方法がわかりやすいでしょう。振り上げた剣や足に当たる星々もつないでみてください。
ギリシャ神話でペルセウスは、王女アンドロメダを救ったヒーローとして描かれています。同じストーリーに登場する「カシオペヤ座」「くじら座」「ケフェウス座」「ペガスス座」も同じ時期に夜空に見えるので、全部見つけてみましょう。
ペルセウスの右手は妖怪メドゥーサの首をつかんでいて、そのメドゥーサの目の位置にアルゴルが輝いています。アルゴルは普段は2等級ですが、3日弱の周期で3等級まで暗くなります。明るさが変わる様子は、メドゥーサの魔力や不気味さを反映しているかのようですね。ミルファクと比べると明るさの変化に気づきやすいので、ときどき比較してみましょう。
「ペルセウス座」のあたりには天の川が流れているので、双眼鏡で眺めると視野いっぱいに多くの星が見えます。その中にところどころ、とくに集中して星が見える場所があります。このように数十個~数百個の星が集まっている天体を「散開星団」と呼びます。散開星団の星々は見かけ上同じ方向にあるだけでなく、実際の宇宙空間の中でもまとまって存在しています。
星図に見やすい散開星団を示しました。Mel 20(メロッテカタログの20番)はミルファクのあたりを、二重星団h-χ(エイチ・カイ、2つの散開星団が並んでいます)はミルファクの北西あたりを、それぞれ探してみましょう。いずれも双眼鏡で楽しむことができ、二重星団は低倍率の天体望遠鏡でも見ごたえがあります。星々の明るさや色、数、広がり具合といった個性にも注目してみてください。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は12月中旬の深夜1時ごろの星空です。来年1月中旬の深夜23時ごろ、2月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。
ちょうど真南の空に、夜空の星の中で最も明るく輝く「おおいぬ座」のシリウスが目立っています。その右上(北西)に「オリオン座」のベテルギウス、左上(北東)に「こいぬ座」のプロキオンが見つけられれば、「冬の大三角」の完成です。さらに今シーズン限定の、シリウス・木星・火星でできる「冬の特大三角」も見応えがあります。
これら以外にも1等星や2等星が多く、地上のイルミネーションと同じように星空も鮮やかです。暖かい服装で見上げてみましょう。運が良ければ流れ星も見えるかもしれません。
この空の様子は、2025年1月1日の0時とほぼ同じです。除夜の鐘を聞きながら夜空を見上げれば、こんな星々が見えるというわけです。2025年も美しい星空や天文現象に出会えること、安心して星空を楽しめる世の中であることを願いながら、よい新年をお迎えください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。