今月は彗星や流星群など大きな話題になる天文現象こそありませんが、宵空には木星と土星が輝き、有名なギリシャ神話に登場する星座たちが多く広がっています。特別な天体や現象をしっかり見るだけでなく、ゆったり空を見上げるという楽しみ方も、ぜひ試してみましょう。
星空写真
高知県 四国カルスト 天狗高原にて
天狗高原のカルスト台地を前景に、冬の大三角とカノープスの南中を星の軌跡表現でとらえました。緑色の大気光が加わり、神秘性が増しました。
2023年11月21日 1時53分
ニコン Z6II+NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S(14mm、ISO800、露出300秒×16枚を合成、f/4)
撮影者:高岡 誠一
1日(金) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
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4日(月) | 夕方、細い月とアンタレスが接近、金星がやや離れて並ぶ |
5日(火) | 夕方~宵、細い月と金星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説) |
7日(木) | 立冬(こよみの上で冬の始まり) |
9日(土) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) |
11日(月) | 夕方~深夜、月と土星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
16日(土) | 満月。次の満月は12月15日です 夕方~翌17日未明、月とプレアデス星団が大接近 |
17日(日) | 宵~翌18日明け方、月と木星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説) |
19日(火) | 宵~翌20日明け方、月とポルックスが接近 |
20日(水) | 宵、月とポルックスが並ぶ 深夜~翌21日明け方、月と火星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
21日(木) | 深夜、月とプレセペ星団が並ぶ |
23日(土) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) 未明~明け方、月とレグルスが接近 |
28日(木) | 未明~明け方、細い月とスピカが接近 |
夕方の西南西から南西の低空に見えます。
日の入り30分後(東京で17時5分ごろ)の高度は5度前後とかなり低めです。スマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめて、地平線まで開けた見晴らしの良い場所で探してみましょう。やや離れたところに輝く、宵の明星の金星との位置関係も手がかりになります。肉眼でも見える明るさですが、双眼鏡を使うとより見やすいでしょう。
「宵の明星」として、夕方から宵の南西の低空に見えます。明るさは約マイナス4等級です。
日の入り45分後(東京で17時20分ごろ)の高度は約15度前後で、先月までと同様に低めですが、とても明るいおかげで視界さえ開けていれば肉眼ですぐに見つけられます。もう少し遅い時間になると、高度は下がりますが空がさらに暗くなるので、明星の輝きが増して見えるでしょう。
4日の夕方、月齢3の細い月と並んで見えます。また、翌5日の夕方から宵にも細い月と金星が並びます。「今月の星さがし」も参考にして、美しい共演を見たり撮ったりしてお楽しみください。
「かに座」にあります。日付が変わるころに東の空に見え、3時ごろに南東の空の高いところに見えます。明るさは約マイナス0.2等級です。
未明から明け方の南から南東の空には、木星や冬の星座の星々など明るい天体が多く輝いていて、一番東にある火星もよく目立ちます。来年1月の地球最接近に向けて少しずつ明るくなっていくので、特徴的な赤っぽい色と併せて注目してみましょう。
20日の深夜から21日の明け方、下弦前の月と接近します。
「おうし座」にあります。18時ごろに昇ってきて、21時ごろに東の空、1時ごろに南の空の高いところに見えます。明るさは約マイナス2.8等級です。
深夜以降の空に広がる冬の星座には明るい星々が多いのですが、「おうし座」で輝く木星はそれらの星々に対しても圧倒的に明るく、とても目立ちます。この冬の主役となる天体ですが、すでに風格が漂っていますね。
天体望遠鏡を使うと縞模様やガリレオ衛星が見えます。機会があれば観察してみましょう。また、17日の宵から18日の明け方には満月過ぎの明るい月と並び、この共演は肉眼で楽しめます。
「みずがめ座」にあります。19時ごろに南、21時ごろに南西の空に見え、1時ごろに沈みます。明るさは約0.9等級です。
見やすい時間帯に見やすい高さにあり、観察の好期が続いています。今シーズンは地球と土星の位置関係により、環が細く目立ちません。科学館や公開天文台の天体観察会に参加して、天体望遠鏡で見てみましょう。タイミングが良ければ衛星タイタンも見えるかもしれません。
11日の夕方から深夜、上弦過ぎの月と接近します。この様子は肉眼や双眼鏡でよく見えるので、気軽に眺めてみてください。
大きな天文現象こそありませんが、土星と木星が見やすい時期です。金星・火星を含めた4惑星それぞれと月との共演を中心に、気軽に星空を楽しみましょう。
8月にペルセウス座流星群、9月にお月見、10月に紫金山・アトラス彗星と、ここしばらくは毎月、何かしら話題の天文現象がありました。今月はそうした大きな話題となるような、あるいは珍しい現象はないのですが、だからといって星空が寂しい、つまらないわけでもありません。宵の明星の輝きに見入る、土星や木星を天体望遠鏡で観察する、月の満ち欠けを追いかける、星座をたどるなど、「今月だけしか見えないものではないが、何もないからこそあらためて見ておきたい」天体や現象に向き合ってみるのも良いものです。星空ではありませんが、活動期を迎えている太陽の観察も面白いですよ。安全に直接見る方法がなくても、SNSや画像投稿サイトなどをチェックすると、日々の活発な様子がわかるでしょう。
さて、明るい惑星と月が並ぶ光景も比較的よく見られる、つまり今月に限らず目にする機会が少なくない現象ですが、実際に「毎回見ている」でしょうか。時間帯が合わなかったり曇ったりすると見えませんので、思ったよりも見ていないかもしれません。月と惑星の動きの関係上、ある一つの惑星に対しては多くの場合「1か月に1回」しか並ぶチャンスがないですから、見逃してしまうと1か月待つことになってしまいます。今月は金星・火星・木星・土星それぞれと月との接近を、全部観察するつもりで計画を立ててみましょう。
接近の様子の観察は肉眼や双眼鏡でできます。撮影するのも楽しみですが、惑星に対して月が明るすぎるため露出を合わせるのが難しいかもしれません。設定をいろいろと変えて試してみましょう。また、月のクレーターや木星の縞模様、細くなっている土星の環などの観察には天体望遠鏡が必要です。レンズの大きさが5~10cmくらいのものでもきちんと見えるので、お持ちであれば向けてみてください。持っていなければ天文台などで見せてもらうのも良いですが、月や惑星観察の機会はこれからも何度もありますから、購入を検討するのも一案です。
特別な現象がなくても、夜空は身近で面白いものです。気軽に眺めるだけで、心を休めたり気分転換したりもできるでしょう。「静かな」星空散歩の魅力も、ぜひお楽しみください。
11月中旬の夜21時ごろに頭の真上あたりを眺めると、先月ご紹介した「ペガスス座」の胴体に当たる大きな四角形「秋の四辺形」が見つかります。その一角から北東方向に伸びている星の連なりが、王女をモデルとした「アンドロメダ座」の星々です。
明るい1等星はありませんが、アルフェラッツ、ミラク、アルマクと2等星が似たような間隔で並んでいて、見つけやすい星座です。四辺形からどの方向を見ればいいか迷ったら、北の空に見える「カシオペヤ座」を見つけて、「秋の四辺形からカシオペヤ座のほうに伸びる星の並び」を探すとわかりやすいでしょう。
ギリシャ神話では、アンドロメダは国王ケフェウスと王妃カシオペヤの娘とされています。アルフェラッツが頭、ミラクが腰、アルマクが足の位置にあるとイメージすると、王女の姿を想像しやすくなります。怪物に襲われそうになったアンドロメダを、勇者ペルセウスが救ったというストーリーはギリシャ神話の中でも有名なものですが、「アンドロメダ座」の北に「カシオペヤ座」「ケフェウス座」、東に「ペルセウス座」と、この神話に登場する星座は今の季節の夜空に勢ぞろいしています。また、怪物は南の空の「くじら座」で、「ペガスス座」もこのストーリーに登場します。ページ上部の「11月の星空」の星図などを頼りに、全部の星座を見つけてみましょう。
さて、「アンドロメダ座」の隣には「さんかく座」という、その名のとおりの形に星が並んだ星座もあります。やや暗めなので見つけづらいのですが、ミラク、アルマクとの位置関係を手がかりにして探してみましょう。双眼鏡を使うとわかりやすくなります。
アンドロメダの足先に光るアルマクを天体望遠鏡で観察すると、黄色っぽい2等星と青っぽい5等星が並ぶ二重星であることがわかります。宝石の付いたアンクレットのような美しさを味わえます。
アンドロメダ座大銀河(M31は「メシエカタログの31番目の天体」の意味)は、私たちのいる天の川銀河から約250万光年離れたところにある巨大な渦巻銀河です。光の速さでも250万年かかるというと、途方もなく遠くにあるように思えますが(実際に遠いのですが)、形が整った銀河としては天の川銀河から一番近い天体です。宇宙の広さを感じさせられますね。天の川銀河とアンドロメダ座大銀河はゆっくりと近づいていて、数十億年後に衝突すると考えられています。
M31は空が暗いところなら肉眼でぼんやりと見え、郊外でも双眼鏡があれば見つけられます。ミラクを目印にして探してみましょう。天体写真でとらえられるような渦巻き構造の詳細な様子は天体望遠鏡を使っても見えませんが、250万年かけて宇宙を旅してきた光を直接観察すると、写真鑑賞とは異なる感動をおぼえられます。
また、「さんかく座」のM33も、M31よりは暗いものの比較的見つけやすい銀河です。ミラクを挟んでM31の正反対の位置、と見当をつけて双眼鏡を向ければ、淡い光の広がりをとらえられます。空の条件の良いところで探してみましょう。距離は約300万光年で、これも宇宙のスケールで考えれば私たちのすぐそばと言える近さです。渦巻き構造を正面から見るので、天体写真では「これぞ渦巻銀河」という形が楽しめます。
さらに、アルマクの近くには、渦巻構造を真横から見るNGC 891銀河(NGCは別のカタログの符号)もあります。こちらはM31やM33よりもずっと暗く、写真向きの天体です。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は11月中旬の深夜1時ごろの星空です。12月中旬の深夜23時ごろ、来年1月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。
「秋の四辺形」が西の空に低くなりました。アンドロメダは頭を地平線に、足を上に向けていて、少し苦しそうな体勢をしています。
秋の四辺形から南西の空にかけては明るい星が少ないですが、南から南東の空には色とりどりの明るい星々たちが輝いています。今シーズンはここに木星と火星もあり、例年以上に華やかなエリアになっています。星の色を見比べたり、「冬の大三角」や「ふたご座」などをたどったりしてみましょう。目が慣れてくると暗い星々も見えるようになるので、そこから西の空に戻れば、少し暗めの「さんかく座」「うお座」なども見つけられるかもしれません。
寒さを忘れて見入ってしまいそうですが、深夜から明け方はかなり冷えます。防寒をしっかりとして星空散歩をお楽しみください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。