今年一番の注目、紫金山・アトラス彗星が夕空に姿を見せると期待されています。明るさや尾の長さの予想は難しいものですが、その難しさが面白いところでもあります。実際に観察して確かめましょう。宵空では環が細くなった土星や、天頂を飛ぶペガスス座が見ごろを迎えています。
星空写真
愛知県北設楽郡 茶臼山にて
愛知県の最高峰、標高1400mほどの茶臼山での撮影です。星空は秋口の様相を見せ、ケフェウス座からカシオペヤ座が昇り、さらにペガススの四辺形の一部も顔をのぞかせています。矢筈池にリフレクションする星々とともに、ちょっぴり雰囲気を醸し出す秋の星空が近づいてまいりました。
2024年5月10日 1時44分
ニコン Z7+NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S(14mm、ISO8000、露出15秒×16枚を合成、f/2.8)
撮影者:石橋 直樹
3日(木) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) 南米などで金環日食(金環食となるのは日本時間4時~5時半ごろ) |
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5日(土) | 夕方、細い月と金星が並ぶ |
6日(日) | 夕方、細い月と金星がやや離れて並ぶ |
7日(月) | 夕方~宵、月とアンタレスが並ぶ |
8日(火) | 夕方~宵、月とアンタレスが並ぶ |
中旬以降 | 夕方~宵、西の空に紫金山・アトラス彗星が見える(「今月の星さがし」で解説) |
11日(金) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) |
14日(月) | 夕方~翌15日未明、月と土星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
17日(木) | 満月(今年最大の満月、「今月の星さがし」で解説)。次の満月は11月16日です |
19日(土) | 宵~翌20日明け方、月とプレアデス星団が大接近 |
21日(月) | 宵~深夜、月と木星が並ぶ |
23日(水) | 深夜~翌24日明け方、月と火星が接近 深夜~翌24日明け方、月とポルックスが大接近 |
24日(木) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
25日(金) | 未明~明け方、月とプレセペ星団が接近 |
26日(土) | このころ、夕方に金星とアンタレスが接近 |
27日(日) | 未明~明け方、月とレグルスが接近 |
月末に夕方の西南西の低空に見えますが、日の入り30分後の高度が3度未満と非常に低いため、観察は困難です。
「宵の明星」として、夕方から宵の西南西の低空に見えます。明るさは約マイナス4等級です。
日の入り30分後(東京で17時35分ごろ)の高度は10度前後で、依然としてかなり低めですが、とても明るいおかげで視界さえ開けていれば肉眼ですぐに見つけられます。もう少し遅い時間になると、高度は下がりますが空がもっと暗くなるので、明星の輝きが増して見えるでしょう。
5日の夕方、月齢3の三日月と並んで見えます。さらに、翌6日の夕方にも細い月と金星が並びます。美しい共演を見たり撮ったりしてお楽しみください。また、26日前後には「さそり座」の1等星アンタレスと接近して見えます。
「ふたご座」にあります。日付が変わるころに東北東の低空に見え、2時ごろに東の空、4時ごろには東南東の空の高いところに見えます。明るさは約0.3等級です。
未明から明け方の東の空には、木星や冬の星座の星々など明るい天体が多く輝いていて、そのなかで火星もよく目立っています。「ふたご座」のポルックス、カストルの近くを移動していくので、「三つ子」のような光景が見られそうです。特徴的な赤っぽい色にも注目してみてください。
23日の深夜から24日の明け方、下弦前の半月と接近します。
「おうし座」にあります。20時ごろに昇ってきて、日付が変わるころに東の空、3時半ごろに南の空の高いところに見えます。明るさは約マイナス2.6等級です。
未明から明け方の空には華やかな冬の星座の星々がたくさん輝いていますが、木星はそのなかで圧倒的に明るく目立ちます。明るいだけでなく、瞬きが少ないので落ち着いた印象があり、風格のようなものも感じられそうです。
天体望遠鏡を使うと縞模様やガリレオ衛星が見えます。宵の時間帯にはまだ低めですが、機会があれば観察してみましょう。21日の宵から深夜には下弦前の月と並び、この共演は肉眼で楽しめます。
「みずがめ座」にあります。19時ごろに南東、21時ごろに南の空に見え、3時ごろに沈みます。明るさは約0.7等級です。
見やすい時間帯に見やすい高さにあり、観察の好期です。今シーズンは地球と土星の位置関係により、環が細く目立ちません。科学館や公開天文台で開催される天体観察会に参加して、天体望遠鏡で見てみましょう。「今月の星さがし」も参考にしてください。
14日の夕方から15日の未明、上弦過ぎの明るい月と接近します。
話題の「紫金山・アトラス彗星」が夕空に見え始めます。明るくなって長い尾を伸ばすことに期待しましょう。見ごろを迎えている土星も楽しみです。
今年の春、宵空で「ポン・ブルックス彗星」が見やすくなりましたが、当時から「今年の本命は、秋の紫金山(ツーチンシャン)・アトラス彗星だ」と言われてきました。2023年1月に発見されたこの彗星は、9月末に太陽、10月中旬に地球にそれぞれ最接近し、明るくなると期待されています。太陽や地球に近づく彗星は毎年数十個はありますが、双眼鏡で見えるくらいの明るさになるものは数個程度で、肉眼で楽に見えるくらいのものになると数年~10年に1個くらいという、非常に貴重な機会です。
彗星の明るさは、遠く離れていた時の光度やその後の変化、軌道などから推測されますが、紫金山・アトラス彗星については10月中旬に2等級くらいと予想されています。ただし、太陽に近づいた時に崩壊するなどして、暗いままだったり消えてなくなったりする可能性もあります。SNSなどで最新の情報をチェックしておきましょう。
期待どおりに明るくなっていれば、夕方から宵の西の空に尾を引いた姿を見ることができそうです。もし少し暗い状態だったとしても、双眼鏡を使えば見られるはずです。双眼鏡で探すときには、明るい星を目印にするとわかりやすいでしょう。位置の確認にはスマートフォンのアプリが便利です。
紫金山・アトラス彗星の見つけ方や観察・撮影の方法については、特集ページでさらに詳しく解説しています。ぜひこちらを参考にして、すばらしい彗星の姿を記憶や記録に残してください。
9月に土星が「衝(しょう)」という状態を迎えました。衝のころ、惑星は地球を挟んで太陽と正反対の位置にあるので、一晩中観察することができます。また、このころに地球と惑星との距離が最も近くなるので、惑星が明るく大きく見えます。こうした理由から、土星は現在、本格的な観察シーズンの真っ最中ということになります。
土星は約0.7等級と明るく、街中でも肉眼で簡単に見ることができます。20~21時ごろに南の空に輝く、クリーム色の星を見つけましょう。土星の南(下)には「みなみのうお座」の1等星フォーマルハウトも見えています。明るさは土星と近いですが、フォーマルハウトのほうが低く、色が異なる(白い)ので、区別できるでしょう。14日から15日にかけては、明るい月と土星の共演が見られます。
土星の最大の特徴といえば環ですね。観察するには天体望遠鏡が必要ですが、大型・高倍率のものが必須というわけではありません。レンズの直径が5~10cm、倍率は80~100倍程度でもじゅうぶん見えます。望遠鏡をお持ちであればぜひ土星に向けてみましょう。科学館や公開天文台などで開催される天体観察イベントで、大きい望遠鏡を覗かせてもらうのもお勧めです。また、この機会に購入するのも一案です。冬には土星に加えて木星や火星も見やすくなるので長く楽しめますし、月や二重星などもよく見えます。メーカーや専門ショップ、科学館などに相談してみてください。
さて、実は土星の環の見え方は一定ではなく、地球や太陽と土星との位置関係によって変化します。昨年あたりから環の見え方がかなり細くなっていて、一見しただけでは環には思えないかもしれません。約15年ごと(土星の公転周期の半分ごろ)に見られるという珍しい状態で、2026年の中ごろまで続きます。環が見づらいことにがっかりするのではなく、レアな様子を目撃している面白さを味わってみましょう。
月は約1か月の間に、満ち欠けによって形(光っている部分)が大きく変化します。それだけでなく、月の「見かけの直径」も日々変わります。月は地球の周りを楕円軌道で回っているので距離が変化し、「近い時には大きく」「遠い時には小さく」見えます。
月と地球が一番近づいたタイミングの前後でちょうど満月になると、直径が大きく、光っている面積の割合も大きい月が見えることになります。今年の場合は10月17日の宵から18日の明け方にかけての月が「今年一番大きい満月」にあたります。
今年最小だった満月(2月24~25日)と比べると、17~18日の満月は直径が約14%、面積では約29%大きくなります(地球の中心から見た大きさで比較)。図を見るとずいぶん差があるように思えますが、実際の空で月を2つ並べて観察することはできないので、その差は実感しにくいものです。
最大の(一番近い)満月だからといって何か特別なことが起こるわけでも変わった様子が見られるわけでもありませんが、「一番」というものには普段以上の魅力が感じられることも事実です。思い込みも含めて大らかに、明るい満月をお楽しください。
10月中旬の夜21時ごろ、南の空に土星が見えています。この土星から頭の真上へと視線を移していくと、台形に並んだ4つの星が見つかります。「秋の四辺形」や「ペガススの四辺形」と呼ばれるこの台形は、翼が生えた天馬ペガススの胴体にあたり、そこから西(図では右)に伸びる長い首と合わせると「ペガスス座」が描けます。
四辺形には2等星が3つ(アルゲニブだけ3等星)含まれているので、見つけやすい星の並びです。また、ペガススの鼻先にある星エニフも2等星で、比較的目立ちます。四辺形の3つとエニフで、「ペガスス座」には2等星が4つあるように思えますが、実は四辺形の北東角(図では左上)の2等星アルフェラッツは隣の「アンドロメダ座」に含まれる星です。
秋以外の季節では「夏の大三角」のような三角形が有名ですが、秋には定番の大きい三角形がなく、代わりにこの四辺形がよく知られています。大三角は主に1等星で構成されるのに対して、四辺形には1等星がなく2等星がメインであることも面白いですね。四辺形とエニフを見つけて、秋の夜空を駆ける天馬を想像してみてください。
ペガススの鼻先には、数十万個の星がボール状に集まっている天体、球状星団のM15があります(Mはカタログの符号)。双眼鏡で見ると少しにじんだイメージで、普通の恒星とは違うことがわかります。天体望遠鏡で観察すると、周辺部の星が分離したり、丸くボンヤリとしたかたまりが星の大集団であることがわかったりして、さらに美しさを味わえるでしょう。
ペガススの前脚の付近にある5つの銀河が集まった銀河群には、発見者の名前を取って「ステファンの五つ子銀河」という愛称が付けられています。銀河群とは銀河(数百億から数千億個の星とガスや塵などの集合)が数個から数十個集まっている天体のことで、大規模になると銀河団と呼ばれます。詳しい研究により、五つ子のうちの1つは他の4つと距離が違うことがわかっています。
銀河群のように銀河同士が接近していると、互いに影響を及ぼし合って形が変わったり星形成活動が活発になったりします。アマチュアの機材で観察するのは難しいので、インターネットの画像検索などでお楽しみください。
秋の四辺形の、西の辺の中ほどにある5等星の「ペガスス座51番星『ヘルベティオス』」(図中、水色の矢印の先)は、太陽系以外で惑星が見つかった最初の星(太陽のような普通の星)です。1995年にヘルベティオスに惑星が発見されて以来、現在では7000個以上の太陽系外惑星が見つかっています。
双眼鏡や天体望遠鏡で観察してもただの光点にしか見えず、まして惑星そのものは暗いため決して見えませんが、いわば「人類の宇宙観を変えた」きっかけの天体です。こうした惑星に生命や文明が存在するかどうかはまだわかっていませんが、今後の観測、研究に期待しながら夜空を眺めてみましょう。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は10月中旬の深夜1時ごろの星空です。11月中旬の深夜23時ごろ、12月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。
「ペガスス座」は西の空で首を下げ、地平線に向かって飛んでいます。土星の高度も低くなり、明るい星が少ない西から南の空は少し寂しい印象です。
一方、南東の空には冬の星座の明るい星々が勢ぞろいし、とても豪華な眺めになります。今シーズンはこのエリアに木星と火星もあり、例年以上に華々しい光景が広がっています。惑星を含めて星の明るさや色を見比べたり、「オリオン座」や「おうし座」などの星座を探したりしてみましょう。北の空に高く昇った「カシオペヤ座」も見やすくなっています。
深夜の冬の星々は、冷たい空気も連れてきます。星空散歩は暖かくしてお楽しみください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。