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2024年9月の星空

夜風が涼しく感じられ、空気が澄む季節がやってきました。秋の空の見ものといえば、やはり月。丸く明るい満月、シャープな半月、繊細な三日月、どれも美しいものです。月そのものや月と惑星の接近、月に照らされた風景など、いろいろな観点で楽しみましょう。

星空写真

群馬県 二度上峠にて
標高1380mの二度上峠から浅間山稜線に沈もうとしている満月をとらえました。日の出数分前に太陽と反対側の空に現れる、「ビーナスベルト」の淡いピンク色が加わり、心を揺さぶる光景になりました。

2024年7月22日 4時45分
ニコン Z6III+NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S(ISO100、露出1/125秒、f/4)
撮影者:高岡 誠一

9月の星空

南の空

南の空

2024年9月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(11日)、満月(18日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2024年9月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

2日(月) 明け方、細い月と水星が並ぶ
3日(火) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
5日(木) 水星が西方最大離角(明け方の東の低空に見えます)
夕方、細い月と金星が大接近(「今月の星さがし」で解説)
6日(金) 夕方、細い月とスピカが接近
9日(月) 土星が衝(一晩中見えるので観察の好機です)
10日(火) このころ、明け方に水星とレグルスが大接近
夕方~宵、月とアンタレスが大接近
11日(水) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
17日(火) 中秋の名月(「今月の星さがし」で解説)
夕方~翌18日明け方、月と土星が大接近(「今月の星さがし」で解説)
18日(水) 満月。次の満月は10月17日です
このころ、夕方に金星とスピカが接近
22日(日) 秋分
宵~翌23日明け方、月とプレアデス星団が大接近
23日(月) 深夜~翌24日明け方、月と木星が並ぶ
25日(水) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
26日(木) 未明~明け方、月と火星が接近
27日(金) 未明~明け方、月とポルックスが接近
28日(土) 未明~明け方、月とプレセペ星団が接近
30日(月) 未明~明け方、細い月とレグルスが並ぶ

9月の惑星

水星

中旬まで、明け方の東の低空に見えます。

日の出30分前(東京で4時50分ごろ)の高さは10度前後で、常に太陽に近いため地平線近くにしか見えない水星としては好条件です。とはいえ、やはり10度というのはかなり低いので、見晴らしが良い場所でなければ見えません。どの方向にどのくらいの高さで見えるのか、事前に確認しておきましょう。肉眼でも見える明るさですが、双眼鏡を使うと見やすく(見つけやすく)なります。

2日の明け方に新月前の細い月と並びます。また10日前後には「しし座」の1等星レグルスと接近して見えます。レグルスは水星よりも暗いので、これも双眼鏡で見つけましょう。

金星

「宵の明星」として、夕方の西の低空に見えます。明るさは約マイナス4等級です。

日の入り30分後(東京で18時20分ごろ)の高度は今月も10度未満とかなり低く、建物や山などに隠れてしまって見えないかもしれません。この点では水星と似ていますが、金星は圧倒的に明るいため、視界さえ開けていれば肉眼ですぐに見つけられます。日の入り後すぐでも見えるので、早めに見れば多少は高い位置で観察できます。

5日の夕方、月齢2の三日月と大接近します。「今月の星さがし」を参考に、見たり撮ったりしてみてください。また、18日前後には「おとめ座」の1等星スピカと接近して見えます。

火星

「おうし座」から「ふたご座」へと移動します。23時ごろに昇ってきて、3時ごろに東の空に見えます。明るさは約0.6等級です。

未明から明け方の東の空では木星のほうが明るく目立ちますが、火星の輝きや特徴的な赤っぽい色も目を引きます。同じく東の空に見えている「おうし座」のアルデバランや「オリオン座」のベテルギウスなどと、色や明るさを比べてみましょう。

26日の未明から明け方、下弦過ぎの月と接近します。

木星

「おうし座」にあります。22時ごろに昇ってきて、3時ごろに東の空の高いところに見えます。明るさは約マイナス2.4等級です。

未明から明け方には東の空に華やかな冬の星座たちが昇ってきていますが、木星の輝きにはその星々の輝きを圧倒する存在感があります。星々よりも瞬きが少ない(惑星には小さいながらも見かけの大きさがあるため)おかげで、落ち着いた雰囲気も感じられるでしょう。夜更かし(早起き)して実際に眺めて確かめてみてください。

天体望遠鏡で観察すると、縞模様やガリレオ衛星が見えます。肉眼では、23日深夜から24日明け方に下弦前の月と並ぶ様子をご覧ください。

土星

「みずがめ座」にあります。21時ごろに南東、23時ごろに南の空に見えます。明るさは約0.6等級です。

ほぼ一晩中空にあり、観察の好期です。天体望遠鏡で眺めれば、特徴である環が細く目立たなくなっていることがわかります。科学館や公開天文台で開催される天体観察会に参加して大きな望遠鏡で見せてもらうと、いっそう面白いでしょう。

17日の夕方から18日の明け方、中秋の名月でもある明るく丸い「ほぼ満月」と大接近します。「今月の星さがし」も参考にして、ぜひ名月と土星の両方を愛でてみてください。

今月の星さがし

17日の月は中秋の名月。「ほぼ満月」の丸い月が夜空を明るく照らします。名月の日だけでなく1か月を通じて、位置や形を変える月の様々な表情を眺めてみてください。

17日 中秋の名月

7月の七夕、8月の伝統的七夕やペルセウス座流星群は夏の風物詩です。これらと同様に、「中秋の名月(十五夜の月)」は秋の風物詩と言えるでしょう。澄んだ秋の夜空に昇る丸い月はとても美しく、心が洗われる思いがします。街明かりに溢れているようなところでも月はよく見えるので、日常生活の中で気軽にお月見を楽しめます。

「中秋」とは、秋のちょうど真ん中を指す言葉です。日本でかつて使われていた暦(いわゆる旧暦)では7~9月が秋なので、旧暦の8月15日が中秋ということになります。この日付は現行の暦(新暦)では毎年異なり、今年は9月17日です。そしてこの夜の月が「中秋の名月(十五夜の月)」と呼ばれています。

※旧暦は現在公的には使われていないため、中秋の名月の日は「太陽太陰暦と同じような方法で求めた8月15日に近い日」として、太陽の位置や月の満ち欠けをもとにして決められます。

十五夜の月は必ずしも満月とは限らず、今年は翌日の18日が満月の日付です。したがって、17日に見える名月はわずかに左側が欠けていますが、天体望遠鏡で大きく拡大して見なければ、ほとんどわからないでしょう。肉眼で眺める限りは、白く大きく丸い名月です。

9月17日深夜、真南の空に見える中秋の名月。赤い字は主な地形の名前と、今年1月に月に降り立った宇宙機「スリム」の着陸地点

十五夜前後の月にも様々な呼び名があります。前日は、名月を待っていることから「まつよい(待宵)」、翌日は十五夜よりやや遅く昇ることから、「ためらう」という意味の「いざよい(十六夜)」と呼ばれます。十六夜の翌日は「立って待っていると昇ってくる」ので「たちまちづき(立待月)」(以降、「いまち(居待)」「ねまち(寝待)」「ふけまち(更待)」)という名前です。こうした呼称は、日本で月が古来より親しまれ、生活の一部としても見られていたことの証でしょう。

9月の月の見え方(日本時間21時の形)。満ち欠けだけでなく、見かけの大きさや縁に近い部分の見え方も変わる

満ち欠けによる形の変化や、「うさぎ」に見立てられる表面の模様は肉眼でもわかります。望遠鏡で拡大すれば、海と呼ばれる暗い部分(うさぎの正体)や数々のクレーターも見えます。継続的に観察や撮影をすると、月の見かけの大きさが変化することや、月縁部分の地形の見え方が変わることもわかるでしょう。大きさが変わるのは月と地球との距離が変わるため(近いほど大きく見える)、縁付近の見え方が変わるのは月が地球に向けている面が微妙に変わるためです。

普段、星空を見るには眩しすぎるため月明かりはないほうが嬉しいのですが、反対にその明るさから、月はどんな場所からでも手軽に楽しむことができる天体です。お供え物を用意して、月の魅力をたっぷり感じてみてください。

月と金星、土星の大接近

月そのものの明るさや美しさだけでなく、月と雲が作り出す情景、月明かりに照らされた山や水面に揺れる月光なども面白いものです。また、明るい天体と月が並ぶ様子は印象的で人目を引きます。今月は水・金・火・木・土星のそれぞれと月が接近する光景が別々の日に見られますが、天体同士の間隔が近い「5日夕方 細い月と金星」「17日夕方~18日明け方 中秋の名月と土星」にとくに注目です。

9月5日 日の入り30分後の、西の空の様子(場所の設定は東京)。大きい円は双眼鏡で見たイメージ(視野5度)、小さい円は月と金星の拡大イメージ(正立像、月と金星で拡大率は異なる)

9月17日 21時の南東の空の様子(場所の設定は東京)。大きい円は双眼鏡で見たイメージ(視野5度)、小さい円は月と土星の拡大イメージ(正立像、月と土星で拡大率は異なる)

5日の接近は日の入り後、西の空の低いところに見えます。まだ空が明るい時間帯なので細い月はやや見づらいかもしれませんが、宵の明星の金星は眩しいほどに輝いているので、金星を目印にすれば月も見えてくるでしょう。日の入り30分後の高さが5度程度とかなり低いため、見晴らしが良い場所をあらかじめ見つけておいてください。地上風景と一緒に眺めたり撮ったりするのも楽しそうです。

17~18日の接近は一晩中見られます。宵のころなら南東、深夜には南、未明から明け方になると南西の空です。中秋の名月として注目されている月のすぐそばに土星が見える光景には、趣深いものがあります。一晩のうちに何度か眺めれば、月と土星の間隔が少しずつ変わっていくことにも気づくでしょう。また、天体望遠鏡で月と土星を観察するのもお勧めです。土星の環が串のように細く見えることがわかります。名月と土星、両主役をぜいたくに味わえる夜になりそうですね。

他の惑星や1等星との接近の日も含めて、今月はできるだけたくさんの「月と○○」を眺めてみてはいかがでしょうか。

今月の星座

はくちょう座

9月中旬の夜20時ごろ、頭の真上あたりに「夏の大三角」が広がっています。三角形の頂点の星はどれも1等星で明るいのですが、そのなかでは一番暗いのが「はくちょう座」の目印となる星、デネブです。残る2つは「こと座」のベガと「わし座」のアルタイルです。

「はくちょう座」「とかげ座」
(星雲の画像クレジット:ESO DSS2 (AURA))

このデネブを目印にして星々を十字形につなぐと、首を長く伸ばし翼を大きく広げた白鳥が空を飛ぶ姿を夜空に描くことができます。十字の交点に輝く2等星サドルをはじめ、十字を構成する星は2等星、3等星が中心なので、比較的簡単に見つけられるでしょう。

また、空が暗いところでは「はくちょう座」のあたりにうっすらと天の川が流れているのも見えます。この天の川の流れを南へたどっていくと、「わし座」や「さそり座」を通って「南十字星(みなみじゅうじ座)」に行き当たります(日本では沖縄や小笠原で見られます)。「はくちょう座」はその形から別名「北十字」とも呼ばれますが、北十字から南十字まで天の川をたどってみたいですね。

二重星アルビレオ

白鳥の頭のところに位置するオレンジ色の3等星アルビレオを天体望遠鏡で観察すると、そばに青っぽい5等星があるのがわかります。色の対比がとても美しく、見飽きることがありません。

比較的小型の望遠鏡でも見えるので、お持ちであればぜひ向けてみてください。位置はおおよそベガとアルタイルの中間付近です。お持ちでなければ、科学館などの天体観察会で見せてもらえることもあるので参加してみてください。きっと何度も見たくなるはずです。

北アメリカ星雲、網状星雲

デネブのすぐ近くに「北アメリカ星雲」という愛称で知られている星雲があります。また、白鳥の南の翼のあたりには「網状星雲」という、ベールのような星雲があります。星雲の正体は宇宙空間に存在するガスやダストの集まりで、近くの星の光を受けてエネルギーを得て発光したり、星の光を反射・散乱して光ったりしています。

北アメリカ星雲も網状星雲も淡いため眼視で観察するのは難しいのですが、天体写真ではよく撮影される対象です。写真では全体的な形だけでなく複雑で繊細な構造も美しく楽しめるので、ぜひ写真集やインターネットの画像などでご覧ください。

とかげ座

「はくちょう座」の北隣には、ジグザグに星が並ぶ「とかげ座」という星座があります。小さく暗いので目立ちませんが、「はくちょう座」を見上げたときには「とかげ座」も忘れずに探してみましょう。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は9月中旬の深夜1時ごろの星空です。10月中旬の深夜23時ごろ、11月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。

2024年9月中旬 深夜1時ごろの星空

今月ご紹介した「はくちょう座」は西の地平線を目指して飛んでいます。西を向いて空を見る(図を時計回りに90度回転させる)と、地平線に十字が立っているようなイメージになります。「夏の大三角」も同じように西の空にあり、錯覚のために空の高いところにあるときよりも大きく感じられそうです。

頭の真上近くには秋を代表する「ペガスス座」の四辺形が広がっています。四辺形の西の辺(図では右の辺)を南(下)に伸ばしていくと、土星を経由して、秋の唯一の1等星、「みなみのうお座」のフォーマルハウトが見つかります。また、東の空には「オリオン座」をはじめとする、派手な冬の星々が昇ってきました。そのなかでも木星の輝きには目を奪われます。火星の色も見ものでしょう。

日中は暑さの残る日もありますが、深夜には肌寒さを感じることもある季節です。体調を崩さないようにお気をつけて、お月見や星座めぐりなどをお楽しみください。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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