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2024年8月の星空

絶好条件のペルセウス座流星群、伝統的七夕、火星と木星の大接近と、今月は注目の天文現象が目白押しです。旅行や帰省で、普段よりも暗く広い夜空を見上げる機会もあるでしょう。明るい星々から小さい星座や天の川まで、星や宇宙を存分にお楽しみください。

星空写真

愛知県新城市にて
愛知県東三河地方の新城市にある一本桜での撮影です。桜のピークを少し過ぎたころ、こと座、わし座、はくちょう座の1等星で構成される夏の大三角が昇ってまいりました。七夕にはまだ早いですが、織り姫星と彦星が仲良く輝いています。

2024年4月11日 4時1分
ニコン Z6II+NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S(14mm、ISO4000、露出15秒×16枚を合成、f/2.8)
撮影者:石橋 直樹

8月の星空

南の空

南の空

2024年8月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(13日)、満月(20日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2024年8月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

3日(土) 明け方、細い月とポルックスが接近
4日(日) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
5日(月) このころ、未明~明け方に火星とアルデバランが接近(「今月の星さがし」で解説)
6日(火) 夕方、細い月と金星が接近
7日(水) 立秋(こよみの上で秋の始まり)
10日(土) 伝統的七夕(「今月の星さがし」で解説)
20時~21時ごろ、スピカ食(スピカが月に隠されます。「今月の星さがし」で解説)
12日(月) ペルセウス座流星群の活動がピーク(「今月の星さがし」で解説)
13日(火) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
14日(水) 夕方~深夜、月とアンタレスが接近
15日(木) このころ、未明~明け方に火星と木星が大接近(「今月の星さがし」で解説)
20日(火) 満月。次の満月は9月18日です
21日(水) 未明~明け方、月と土星が並ぶ
宵~深夜、月と土星が並ぶ(明け方とは並び方が変わります)
25日(日) 深夜~翌26日明け方、月とプレアデス星団が接近
26日(月) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
28日(水) 未明~明け方、月と火星、木星が並ぶ
30日(金) 未明~明け方、細い月とポルックスが接近
31日(土) 未明~明け方、細い月とプレセペ星団が並ぶ

8月の惑星

水星

太陽に近く、見えません。

金星

「宵の明星」として、夕方の西の低空に見えます。明るさは約マイナス4等級です。

日の入り30分後(東京で19時ごろ)の高度は5度前後とかなり低く、建物や山などに隠れて見えないかもしれませんが、見晴らしが良いところであれば肉眼ですぐに見つけられるでしょう。街中で見る場合は、ビルの隙間を見つけたり高いところから探したりしてみましょう。

火星

「おうし座」にあります。日付が変わるころに昇ってきて、3時ごろに東の空のやや低いところに見えます。明るさは約0.8等級です。

木星と接近して見えます。最接近は15日ごろです。「今月の星さがし」を参考にして、明るい2惑星の共演をお楽しみください。28日の未明から明け方には下弦過ぎのやや細い月も並びます。

木星

「おうし座」にあります。日付が変わるころに昇ってきて、3時ごろに東の空のやや低いところに見えます。明るさは約マイナス2.2等級です。

火星と接近していて、明るいほうが木星です。最接近は15日ごろです。「今月の星さがし」を参考にして、共演をお楽しみください。28日の未明から明け方には下弦過ぎのやや細い月も並びます。

時間帯と高度の点から天体望遠鏡での観察にはあまり適していませんが、望遠鏡で覗くと縞模様やガリレオ衛星が見えます。

土星

「みずがめ座」にあります。20時ごろに昇ってきて、23時ごろに南東の空、1時ごろに南の空に見えます。明るさは約0.7等級です。

今月もまだあまり高くないので天体望遠鏡での観察にはあまり適していませんが、機会があれば望遠鏡を向けてみましょう。環が細く目立たなくなっていることがわかります。

21日の未明から明け方、満月過ぎの明るい月と並びます。また、21日の宵から深夜にも月と並びます。この様子は肉眼でよく見えるので、気軽に空を見上げてみてください。

今月の星さがし

一番のお楽しみはペルセウス座流星群。12~13日を中心に、多くの流れ星が見られそうです。夜明け空の火星と木星の大接近も見逃せません。天体観察は、夏休みの自由研究のテーマにも良さそうですね。

10日は伝統的七夕とスピカ食

七夕は古くからの行事で、もともとは旧暦の7月7日に行われていました。そこで、この旧暦7月7日(※)を「伝統的七夕」と呼び、天文行事として親しまれています。伝統的七夕の日は毎年日付が変わり、今年の場合は8月10日です。

※旧暦は現在公的には使われていないため、伝統的七夕の日は「太陽太陰暦と同じような方法で求めた7月7日に近い日」として、太陽の位置や月の満ち欠けをもとにして決められます。

伝統的七夕の8月10日と新暦七夕の7月7日、旧暦の7月1日にあたる8月4日の、夜21時の空(場所の設定は東京)。7月7日には地平線(図の円周)に近いベガとアルタイルが、8月10日には天頂(図の中心)付近まで高く昇ることがわかる。
また、8月4日は新月で月明かりがないので、この前後の日は天の川が見やすい

7月7日は多くの地域で梅雨の真っ最中のため、夜空に織り姫星(「こと座」のベガ)と彦星(「わし座」のアルタイル)が見えないことも少なくありませんが、8月中旬ともなれば梅雨も明け、晴れた夜空が見られる確率が高くなります。7月7日の夜21時ごろには東の空に見えていたベガとアルタイルは、伝統的七夕の夜21時には頭の真上あたりまで高く昇っています。また、旧暦では1日が新月なので、その6日後となる旧暦7日は必ず上弦の月のころになります。南西の空に見える半月が沈む深夜以降、空が暗いところではベガとアルタイルの間に天の川も見えるでしょう。

7月7日の七夕にはイベント的な楽しみや宇宙に親しむきっかけとしての意味合いがあり、伝統的七夕には古くからの人と宇宙のつながりを感じたり暗い星空に思いを馳せたりという良さがあります。伝統的七夕の夜にもぜひ、織り姫星と彦星を見上げてみてください。

また、この日の20時から21時ごろには、月が「おとめ座」の1等星スピカを隠す「スピカ食」と呼ばれる現象(正確には「月によるスピカの掩蔽(えんぺい))が起こります。

東京の場合、スピカが月に隠される(潜入)のは20時25分ごろ、月から出てくる(出現)のは20時51分ごろです。観察する場所によって現象の時刻や見え方(月の縁のどの位置に入って出るか)、方位や高さが変わるので、事前によく調べて準備しておきましょう。東北地方北部より北では残念ながらスピカ食にはなりませんが、月とスピカの大接近は見られます。

スピカ食の様子(広角星図の場所の設定は東京)。拡大図の月は北が上なので、空で見た傾き方とは異なることに注意

6月には「さそり座」のアンタレスが、7月には土星が月に隠されました。アンタレス食や土星食の時とは異なり、今回は空が暗くなってからの現象なので見やすいですが、かなり低空なので、見晴らしが良いところで観察しましょう。肉眼でも見えますが、双眼鏡や天体望遠鏡を使うと見やすくなります。

伝統的七夕の夜、ベガとアルタイルより「もっと接近」しているこの2天体にも、ぜひご注目ください。

12~13日、ペルセウス座流星群の活動がピーク

毎年8月13日ごろに活動がピークとなるペルセウス座流星群は、夏の定番の天文現象です。条件が良ければ1時間あたり数十個の流れ星が見られるという、一年のうちでも指折りの「流れ星が見やすい」時期です。夏休みシーズンであることや、寒くないので見やすいことも嬉しいポイントです。速く明るい流星が多いおかげで見応えがあり、流れ星が飛んだあとに煙のような「流星痕」が見えることもあります。

今年ペルセウス座流星群の活動が最も活発になるのは12日深夜23時ごろと予想されていますので、12日深夜から13日明け方にかけての夜が一番の見ごろになります。深夜には月が沈んで月明かりの影響がなくなるので絶好条件で観察でき、大いに期待がもてます。街明かりもなく見晴らしが良い場所であれば、1時間あたり50個前後の流れ星が見えるでしょう。街明かりがあったり高い建物などで視界の一部が遮られたりすると、この半分から3分の1くらいに減りますが、それでも1時間あたり約20個なので、かなり多いといえるでしょう。

8月13日0時ごろの空の様子(場所の設定は東京)。流れ星は放射点(「ペルセウス座」の方向)を中心とした空全体に飛ぶように見える

流れ星観察の重要なポイントは、空を広く見渡すことです。流れ星はペルセウス座の方向「だけ」でなく、空のあちこちに飛ぶので、なるべく広い範囲を眺めましょう。広く見ることが大切ですから、双眼鏡や天体望遠鏡は不要です。郊外などで観察する場合には、街灯から離れた方向や街明かりの影響を受けにくい天頂方向を中心にすると見やすくなります。西の空に流れれば夏の大三角の近くに、東の空なら(3時以降くらいに)火星や木星、「オリオン座」などと一緒に見えるかもしれません。

1時間に50個見えるとすると平均では約1分に1個見えることになりますが、流れるペースは不規則なので、立て続けに数個見えることもあれば5分以上も流れ星を目にできないということもあります。虫よけを準備して、安全やマナーに気をつけながら、少し気長に10~15分くらいは空を見上げてみてください。また、ピークの前後数日間も、数は少なくなるものの流れ星を見られるチャンスはあります。天候や体調のことも考えながら星空を見上げてみましょう。1つでも多くの流れ星が見えますように。

未明~明け方、火星と木星が大接近

未明の3時ごろに東の空を眺めると、とても明るく輝く黄色い星と明るく光る赤っぽい星が並ぶ光景が目を引きます。明るいほうは木星、もう一方は火星です。どちらの惑星も背景の星々の間を同じ方向に移動していますが、今の時期は火星のほうが見かけの動きが速いため、この8月中に火星が木星に追いつき追い越していくように位置関係が変わっていきます。並び方が日々変わっていく様子を眺めるだけでも楽しいのですが、写真などで記録すると、より面白そうです。

8月5日から25日まで2日ごとの、3時の東の空の様子(場所の設定は東京)。円は双眼鏡で見たイメージ(視野6度)、15日の小さい円は火星と木星の拡大イメージ

火星が木星を追い越す、つまり最接近するタイミングは15日ごろで、満月の見かけサイズよりも狭い距離まで近づきます。5円玉を持って腕を伸ばすと、穴の中に2惑星が両方見えるくらい近いので、ぜひ試してみてください。運が良ければ、ピークを過ぎたペルセウス座流星群の名残の流れ星が、近くに飛ぶかもしれませんね。

火星と木星は「おうし座」の領域を動いていますが、「おうし座」の1等星アルデバランも火星に似た赤っぽい星です。また、隣の「オリオン座」に輝く1等星ベテルギウスも同様に赤っぽい星です。火星とアルデバラン、ベテルギウスという3つの赤い星、それぞれの色と明るさの違いや、三角形の形の変化も見ものです。毎日夜更かし(早起き)して空を観察するのはちょっと大変ですが、数日おきでもじゅうぶん楽しめますので、ぜひご覧ください。

今月の星座

こと座、わし座

伝統的七夕のところでもご紹介したように、8月中旬の夜21時ごろ、頭の真上あたりに「夏の大三角」が広がっています。3つの星のうち一番明るいのがベガ(0.0等級)、次に明るいのがアルタイル(0.8等級)で、ベガを含むのが「こと座」、アルタイルを含むのが「わし座」です。

「こと座」「わし座」(M57の画像クレジット:NASA, ESA, and the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration)

「こと座」は、ベガを含む3つの星でできる小さい三角形と、その三角形につながる平行四辺形に並んだ星々で形作られています。ベガのほかは3等星かそれより暗くて見つけにくいので、双眼鏡を使って探してみましょう。平行四辺形のところに張られた弦を想像すると、竪琴(たてごと)がイメージできます。ギリシャ神話では音楽家オルフェウスの持ち物とされています。

一方、「わし座」はアルタイルの両隣に星があり、そこからさらに星をつなぐと鷲の胴体や翼を描くことができます。とはいえ、「こと座」と同様に「わし座」もアルタイルのほかは3等星以下の暗い星ばかりです。天空を悠々と飛ぶ鷲の姿をイメージするには、地上光の影響が少ない澄んだ夜空と想像力が必要でしょう。ギリシャ神話では大神ゼウスが変身した姿とされることが多いです。

どちらの星座も1等星以外の星は目立ちませんが、ベガとアルタイルは街中でも見えるので、これらの星座が空のどこにあるかはすぐにわかります。伝統的七夕に限らず、晴れた夜にはいつでも空を見上げて、ベガとアルタイルを、そして「こと座」と「わし座」を、探してみてください。

四重星ダブルダブルスター

ベガのそばにある「こと座ε(エプシロン、イプシロン)星」は、肉眼では1つの星にしか見えませんが、双眼鏡で観察すると5等星が2つ並んだ二重星であることがわかります。天体望遠鏡を使うとそれぞれが2つずつに分かれ、全部で4つの星が見えます。「二重の二重星」なので「ダブルダブルスター」という愛称で呼ばれ、観察会で人気の天体です。

環状星雲M57

「こと座」の平行四辺形に並んだ星のうちベガから遠い2つの星の間に、広がったガスが丸く見える天体があります。その形から「環状星雲、リング星雲、ドーナツ星雲」などの愛称で親しまれています。太陽のような星が一生の終末期に放出したガスが紫外線を受けて光る、「惑星状星雲」という種類の天体です。M57という番号は、天文学者メシエが編集したカタログの57番目の天体という意味です。

環状星雲は淡いので、空の条件の良いところで望遠鏡を使わないと見ることができませんが、機会があればぜひ観察してみましょう。なお、星図中の画像はハッブル宇宙望遠鏡が撮影したものでカラフルですが、眼視では光が弱いため色彩を感じられず、白っぽく見えます。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は8月中旬の深夜1時ごろの星空です。9月中旬の深夜23時ごろ、10月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。

2024年8月中旬 深夜1時ごろの星空

「夏の大三角」が西の空に移りました。頭の真上にあるときよりも少し低くなったほうが、かえって見やすいでしょうか。どの星がどれか迷ったら「一番明るいのがベガ、次がアルタイル」というのを思い出しましょう。夏の大三角の中を流れる天の川も見えるかもしれません。キャンプなどの機会に、ぜひ眺めてみてください。

南の空には土星が輝いています。深夜なので見やすい時間帯とは言えませんが、天体望遠鏡をお持ちであれば向けてみましょう。環というよりも串のような見え方になっていることがわかります。東の低空で接近中の火星と木星も見逃せません。

夜になっても暑い時季です。夏バテに気をつけながら星空散歩をお楽しみください。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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