未明から明け方の空に、火星・木星・プレアデス星団が集まっています。細い月が加わる日もあり、豪華な光景が見られそうです。翌朝の天気予報を確認してから寝て早起きする生活習慣を心がけてみましょう。梅雨明けの好天にも期待大です。
星空写真
高知県 四国カルスト 天狗高原にて
天狗高原の遊歩道と立ち昇る夏の銀河の組み合わせに雲海と大気光が加わり、相乗効果で神秘性が増幅されました。大気光は、高度約100kmに存在する酸素原子が昼間に太陽のエネルギーを受けて電離し、夜間に再結合する際に緑色の光を放つ現象です。
2023年7月17日 0時25分
ニコン Z 6II+NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S(14mm、ISO25600、露出6秒×8枚を合成、f/2.8)
撮影者:高岡 誠一
2日(火) | 未明~明け方、細い月と火星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
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3日(水) | 未明~明け方、細い月とプレアデス星団が接近(「今月の星さがし」で解説) |
6日(土) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
8日(月) | 夕方、細い月と水星が並ぶ |
9日(火) | 夕方~宵、細い月とレグルスが接近 |
10日(水) | このころ、未明~明け方に木星とアルデバランが接近(「今月の星さがし」で解説) |
14日(日) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) 夕方~深夜、月とスピカが接近 |
17日(水) | 夕方~翌18日未明、月とアンタレスが接近 |
21日(日) | 満月。次の満月は8月20日です このころ、未明~明け方に火星とプレアデス星団が接近(「今月の星さがし」で解説) |
24日(水) | 深夜~翌25日明け方、月と土星が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
25日(木) | 6時20分~7時30分ごろ、土星食(土星が月に隠されます。「今月の星さがし」で解説) |
28日(日) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
30日(火) | 未明~明け方、月とプレアデス星団が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
31日(水) | 未明~明け方、月と火星、木星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説) |
夕方の西北西の低空に見えます。日の入り30分後(東京で19時30分ごろ)の高度は約10度で、太陽から大きく離れることがない水星としては好条件です。
とはいえ、建物などに隠されてしまうこともあるので、簡単に見つかるわけではありません。スマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめて、見晴らしの良い場所で探しましょう。下旬には水星よりも低いところに明るい金星が見えるようになるので、位置関係を手がかりにすることもできるでしょう。位置がわかれば肉眼でも見える明るさですが、双眼鏡を使うとより見やすくなります。
下旬ごろから、「宵の明星」として夕方の西北西の低空に見えるようになります。
日の入り30分後(東京で19時20分ごろ)の高度は約3度ととても低いので、見晴らしが良いところで探しましょう。低いものの非常に明るいおかげで、建物の陰などになってなければ肉眼ですぐにわかります。
「おひつじ座」から「おうし座」へと移動します。1時ごろに昇ってきて、3時ごろに東の空のやや低いところに見えます。明るさは約0.9等級で、肉眼で簡単に見つかります。
2日の未明から明け方に月齢25の細い月と接近します。また、中旬から下旬にかけて「おうし座」のプレアデス星団と並び、31日には再び細めの月と並びます。「今月の星さがし」を参考にして、赤い火星・白い月・青い星団の星々の共演をお楽しみください。
「おうし座」にあります。2時ごろに昇ってきて、3時ごろに東北東の空の低いところに見えます。明るさは約マイナス2.1等級です。
同じ時間帯に同じ方向の空に見える火星よりも低めですが、火星よりもずっと明るいので、先に木星のほうが見つかるかもしれません。2つの惑星の間隔は日を追うごとに小さくなっていき、8月中旬に最接近します。並び方の変化の様子を追ってみましょう。また、木星は「おうし座」の1等星アルデバランとも接近中です。火星とアルデバランは色と明るさが似ているので、間違えないように気を付けてください。
31日の未明から明け方に月齢25の月と並びます。火星、アルデバランを含めた4天体の集合シーンを眺めてみましょう。
時間帯と高度の観点から、天体望遠鏡での観察にはあまり向いていません。
「みずがめ座」にあります。22時ごろに昇ってきて、3時ごろに南の空に見えます。明るさは約0.9等級です。
まだあまり高くありませんが、機会があれば天体望遠鏡で観察してみましょう。環が細く目立たなくなっていることがわかります。
24日の深夜から25日の明け方に月齢20の明るい月と大接近します。その後、25日の朝7時前後(日の出の後)に、土星が月に隠される現象が起こります。大接近は肉眼や双眼鏡で、隠される現象は天体望遠鏡で見ることができます。「今月の星さがし」も参考にして、ぜひご覧ください。
火星と木星が未明の東の空に見えています。おうし座の1等星アルデバランやプレアデス星団と並ぶ光景が見もので、月も近づく日はさらに見事な眺めです。24~25日の月と土星の大接近も見逃せません。
「おうし座」は一般に冬の星座(宵の時間帯に見やすいのが冬)とされますが、7月の夜明け前にはもう東の空に姿を見せるようになっています。この「おうし座」と一つ隣の「おひつじ座」に、明るい2つの惑星、火星と木星が輝いています。3時ごろの高さが20度前後(東京の場合)とやや低いので、見晴らしの良いところで探してみてください。木星のほうが低いのですが明るいので、より目立ちます。
「おうし座」には赤っぽい1等星アルデバランと、青白い星々が集まった星団であるプレアデス星団(すばる)という有名な天体が2つあります。10日前後は木星とアルデバランが近づき、20日ごろには火星とプレアデス星団が接近して見えます。とくに火星とプレアデス星団の共演は、赤と青の色の対比も見どころの一つです。双眼鏡で観察すると、より印象深い眺めとなるでしょう。地上の風景を入れて撮影するのも面白いものです。
月初めの2日と3日、さらに月末の30日と31日には、細めの月もこのシーンに加わってきます。1回でも多く晴れることを願いながら、早起きしてご覧ください。
7月の夜空で見やすい惑星は火星と木星だけではなく、土星もあります。土星のほうが早い時間帯から昇ってくるので、見やすいのはむしろこちらかもしれません。クリーム色の落ち着いた光には安心感をおぼえます。
この土星のそばに、24日の深夜から25日明け方にかけて明るい月が接近します。接近の様子は肉眼や双眼鏡でもよく見えるので気軽に空を見上げましょう。天体望遠鏡で観察すれば、月の模様やクレーター、土星の環も見えます。土星の環の見え方は地球との位置関係で変わり、現在はとても細い状態です。棒や線のように見えるかもしれません。
月と土星の間隔は夜明けが近づくにつれて小さくなっていき、太陽が昇った後にはとうとう重なってしまいます。すると、月のほうが手前にあり(地球に近い)、月のほうが見かけサイズが大きいので、月が土星を隠してしまうことになります。このような現象を土星食と呼びます(正確には「月による土星の掩蔽(えんぺい)」)。東京の場合、土星が月に隠される(潜入する)のは6時30分ごろ、月から出てくる(出現する)のは7時24分ごろです。観察する場所によって現象の時刻や見え方(月の縁のどの位置に入って出るか、月の方位と高さ)が変わるので、事前によく調べておきましょう。
夜明け後の青空の中では、肉眼で月は見えても土星はさすがに見えません。双眼鏡でも難しく、観察には望遠鏡が必要(望遠鏡でも高難度)です。望遠鏡をお持ちでなかったり、天候に恵まれなかったりした場合は、天文台などからのインターネット中継で楽しむという方法もありますので、これも事前に情報をチェックしておくと良いでしょう。36.5万km先の月と13億km先の土星がピッタリ重なる瞬間を、ぜひお楽しみください。
夜21時ごろ、南の空の低いところに赤っぽく光る1等星アンタレスが見えます。このアンタレスは「さそり座」の星ですが、そのさそりを踏みつけるように「さそり座」の上に大きく広がっているのが「へびつかい座」です。
「へびつかい座」の主な星々は五角形に並んでいて、全体としては大きな将棋の駒のように見えます。五角形の一番高いところにあるラスアルハゲと、アンタレスに近いところにある左下のサビクの2つは、2等星なので見つけやすいでしょう。
「へびつかい」を漢字で書くと「蛇遣い」で、その名のとおり蛇を両手に持っています。この部分は「へび座」という別の星座になっていて、右(西)が頭、左(東)が尾を表します。全天88星座の中で唯一、領域が分断されているという珍しい星座です。明るい星がないので目立ちませんが、「へびつかい座」の五角形から伸びる星の列をたどってみましょう。
「へびつかい座」のモデルは神話に登場する名医アスクレーピオスとされています。蛇の脱皮が再生や成長を思わせることから、蛇は医術の象徴とされており、蛇やアスクレーピオスの杖は医療機関のシンボルマークなどに使われています。
「へびつかい座」の足元には天の川が流れています。この天の川の流れの中に、ところどころ暗い部分がありますが、ここは星がない場所ではなく、宇宙空間に漂うガスや塵が背景の星の光を遮っている場所で、暗黒星雲と呼ばれます。
全天には様々な大きさや形の暗黒星雲がありますが、「へび星雲」はクネクネと曲がった形が確かに黒蛇のように見えます。「へびつかい座・へび座」の辺りにあることもネーミングの理由の一つかもしれませんが、ピッタリの愛称ですね。見かけの大きさは満月ほどで、眼視よりも拡大撮影したほうがわかりやすいでしょう。
「へび座」の尾側にあるM16(Mはカタログの符号)には「わし星雲」という愛称があり、天体写真では鳥が翼を広げたような形に見えます。その正体は、ガスが星の光を受けて光っているものです。
このような星雲ではガスを材料として新しい星が作られています(暗黒星雲も星の材料です)。見たり撮ったりして楽しむだけでなく、星の形成などに関する研究対象としても重要な天体で、2021年末に打ち上げられたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でも詳しく観測されました。趣味的な側面と学術的な観点の両方で、美しさや面白さを感じてみてください。
「へび座」の頭部にあるM5は数十万~100万個ほどの星がボール状に集まった、球状星団というタイプの天体の一つです。双眼鏡ではボンヤリとした丸い光のシミのように見え、天体望遠鏡で観察すると星がたくさん集まっている様子が何となくわかります。
「へびつかい座・へび座」の辺りには他にも多くの球状星団があります。一見しただけではどれも同じような印象ですが、大きさや星の集中度、形などにそれぞれ個性があります。より詳しい星図で位置を確かめて、ぜひ探し出してみてください。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は7月中旬の深夜1時ごろの星空です。8月中旬の深夜23時ごろ、9月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。
最も見やすく目立つのは、頭の真上あたりに広がる「夏の大三角」でしょう。「こと座」のベガ、「わし座」のアルタイル、「はくちょう座」のデネブを結んでできる三角形です。明るさの違いに注目して眺めてみましょう。
夏の大三角の星はどれも白色ですが、地平線近くに見える3つの明るい星はどれも赤~オレンジっぽい色をしています。西北西に「うしかい座」のアルクトゥールス、南西に「さそり座」のアンタレス、そして東北東に火星です。低いので山や建物に隠されて見えない可能性もありますが、空全体を使ったこの「赤い星でできる巨大な三角形」もぜひ、つないでみてください。
引き続き夜が短く晴れ間の少ない時季ですが、明るい星や月、土星など見やすいものを中心に、少しの時間だけでも星空を見上げてお楽しみください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。