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2024年6月の星空

夜が短いことと、梅雨時季で晴れ間が少ないことで、今月はなかなか星空が見られないかもしれません。チャンスがあれば5分でも10分でも、月や星を探してみましょう。雨の夜には、図鑑や解説書を読むのもお勧めです。

星空写真

愛知県新城市 桜淵公園にて
愛知県東三河地方での桜のメッカである桜淵公園での撮影です。桜のライトアップの名残で街灯があり、光の加減に苦労しました。豊川の流れの上部に、うしかい座とかんむり座が昇ってきました。かんむり座T星はまだ新星爆発していませんね。

2024年4月9日 21時07分
ニコン Z 6II+NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S(14mm、ISO3200、露出15秒×16枚を合成、f/2.8)
撮影者:石橋 直樹

6月の星空

南の空

南の空

2024年6月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(14日)、満月(22日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2024年6月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

1日(土) 未明~明け方、月と土星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説)
3日(月) 未明~明け方、細い月と火星が大接近(「今月の星さがし」で解説)
6日(木) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
9日(日) 夕方~宵、細い月とポルックスが接近
12日(水) 夕方~深夜、月とレグルスが接近
14日(金) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
16日(日) 夕方~翌17日未明、月とスピカが接近
20日(木) 18時30分~19時ごろ、アンタレス食(アンタレスが月に隠されます。「今月の星さがし」で解説)
夕方~翌21日未明、月とアンタレスが大接近
21日(金) 夏至(北半球では、一年のうちで一番夜が短い日)
22日(土) 満月。次の満月は7月21日です
28日(金) 未明~明け方、月と土星が大接近(「今月の星さがし」で解説)
29日(土) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)

6月の惑星

水星

月末に、夕方の西北西の低空に見えます。日の入り30分後(東京で19時30分ごろ)の高度は6度ほどとかなり低く、目印になるような天体もないので、見づらいでしょう。スマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめて、見晴らしの良い場所で探してみてください。位置がわかれば肉眼でも見える明るさですが、双眼鏡を使うとより見やすくなります。

金星

太陽に近く、見えません。7月下旬ごろから、「宵の明星」として夕方の西北西の低空に見えるようになります。

火星

未明から明け方の、東の低空に見えます。明るさは約1.0等級です。

日の出1時間前(東京で3時30分ごろ)には高度約20度まで昇ります。やや低めですが、見晴らしが良ければ見つけるのは難しくありません。特徴的な赤っぽい色を目印にして探してみましょう。

3日の未明から明け方、月齢26の細い月と大接近して見えます。早起きしてご覧ください。

木星

中旬ごろから明け方の東北東の低空に見えるようになりますが、日の出1時間前(東京で3時30分ごろ)の高度は約10度ほどとかなり低めです。見晴らしの良い場所で探しましょう。マイナス2等級と明るいので、位置さえわかれば肉眼でも見つけられます。時間帯と高度の観点から、天体望遠鏡での観察には向いていません。

土星

「みずがめ座」にあります。日付が変わるころに昇ってきて、3時ごろに南東の空に見えます。明るさは約1.1等級です。

まだあまり高くありませんが、機会があれば天体望遠鏡で観察してみましょう。環が細く目立たなくなっていることがわかります。

肉眼や双眼鏡では、月との共演が見ものです。1日は月齢24の下弦過ぎの半月と土星が並び、28日には月齢21の下弦前の半月と大接近します。「今月の星さがし」を参考にして、ぜひお楽しみください。

今月の星さがし

未明の空で土星が少しずつ高く見やすくなってきています。月初めと月末の2回、土星のそばに半月が接近します。20日夕方のアンタレス食は高難度ですが、珍しい現象なので観察に挑戦してみましょう。

1日と28日、半月と土星が接近

月は地球の周りを27日ほどで1周しているので、ある日に遠くの星や惑星の近くに月が並ぶと、その約27日後にも同じ天体と並びます。一方、月の満ち欠けの周期はおよそ29日なので、同じ天体に27日間隔で並ぶときの月の形は少しずつ変わっていきます。今月は1日と28日に月と土星が接近して見えるので、このことを確かめる良い機会になります。

6月1日、3日、28日の、未明の東の空の様子(場所の設定は東京)。大きい円は双眼鏡で見たイメージ(1日は視野7度、3日と28日は5度)、小さい円は月と土星の拡大イメージ(拡大率は異なる)

ピッタリ27日周期ではないことや土星が少し星空の間を移動することが理由で、月と土星の離れ具合や位置関係は1日と28日とで異なります。似ているところ、違うところを意識しながら、眺めたり撮影したりしてみましょう。28日は月2~3個分の間隔まで近づくので見応えがあります。

また、3日には月と火星が接近するので、これを1日(月と土星)と比べてみるのも面白いでしょう。この場合は惑星の色の違いや月の細さ、空の明るさの差などがポイントです。やや低いので見晴らしの良い場所で観察してみてください。

曇り空が多くなってくる季節ですが、雲が面白い光景を演出してくれることもあります。ちょうど雲の切れ間に月と土星が顔をのぞかせると感動もひとしおでしょう。狙って見えるものでもなく、雲を眺めるだけになってしまう可能性もありますが、ときには雲と仲良くしてみるのも良いかもしれませんよ。すてきな共演がご覧になれますように。

20日夕方、1等星アンタレスが月に隠される

月が太陽を隠す現象を「日食」と呼ぶように、月が星を隠す現象は「星食」(正確には「掩蔽(えんぺい)」)と呼びます。暗い星まで含めれば頻繁に起こりますが、明るい星や惑星が隠されることはなかなかありません。20日の夕方に起こる「さそり座」の1等星アンタレスが隠される「アンタレス食」は、貴重な機会です。

アンタレス食の様子(広角星図の場所の設定は東京)。赤い円は目立たせるための表示で、拡大星図の範囲とは異なる

東京の場合、アンタレスが月に隠される(潜入)のは18時47分ごろ、月から出てくる(出現)のは19時ごろです。日食と同様に、観察する場所によって現象の時刻や見え方(月の縁のどの位置に入って出るか)が変わります。事前によく調べて準備しておきましょう。北陸から関東よりも北東のエリアでは、残念ながら食現象は起こりません。

時間帯が日没前後なので空がまだ明るく、さらに高度が10度前後とかなり低いため、観察の難度は高めです。双眼鏡を使っても見えない可能性が大きく、天体望遠鏡でも見づらいのですが、月のすぐそばのアンタレスを探してみてください。出現時はアンタレスが月の縁から急に現れるため、潜入時以上に時刻と見え方の確認が必要です。

出現から1時間ほどすると空が暗くなってくるので、月とアンタレスが大接近している様子がわかりやすくなります。大接近状態も見ものですので、望遠鏡などを持っていない方は出現後の様子に注目してみましょう。食が起こらない地域の方も楽しめますよ。

今月の星座

うしかい座、かんむり座

夜21時ごろ、南の空の高いところにオレンジ色の明るい星が輝いています。全天でも屈指の明るさを誇る0等級の星、「うしかい座」のアルクトゥールスです(アークトゥルスなどとも表記されます)。「熊の番人」という意味の語に由来するこの名前は、隣の「おおぐま座」を見張っているような位置にあることから付けられたものでしょう。日本では麦の穂が実るころに天高く見えることから、「麦星」という名前でも呼ばれていました。また、梅雨の時季に高く昇るので「さみだれ星」とも呼ばれます。

「うしかい座」「かんむり座」

「うしかい座」の星々はアルクトゥールスを頂点の一つとして、ネクタイのような細長い形に並んでいます。アルクトゥールスを目印にしてほかの星をたどってみましょう。アルクトゥールスとその南にある「おとめ座」のスピカ、西にある「しし座」のデネボラを結ぶと、「春の大三角」になります。ページ上部「6月の星空」の半円星図で確かめてみてください。また、北西に見える「北斗七星」の柄の星をつないで伸ばしていくと、アルクトゥールス、スピカへと続く大きなカーブ「春の大曲線」が描けます。北から南へと夜空を大きく横切るカーブをつないでみましょう。

「うしかい座」の東には、半円状に星々が並んだ「かんむり座」があります。暗い星が多いのですが、2等星のアルフェッカは街中でも見つけられるでしょう。アルフェッカの由来は「欠けたもの」、星の並びが完全な円ではないことから付けられたと考えられます。別名のゲンマは「宝石」という意味です。冠にはこちらの名前のほうがお似合いですね。

二重星イザール

「うしかい座」で2番目に明るい星のイザールは、黄色っぽい星と青っぽい星が並んだ美しい二重星です。別名をプルケリマと言い、これは「最も美しいもの」が由来です。

イザールは2等星なので見つけるのは簡単ですが、2つの星であることを確認するには性能の良い天体望遠鏡が必要です。口径10cm程度以上の望遠鏡で、倍率を高めにして観察してみましょう。

再帰新星かんむり座T

星図で「かんむり座T」とラベルを付けた矢印の先には何もないように思えますが、実際には肉眼や双眼鏡では見えないほど暗い星があります。この星の正体は「再帰新星」(反復新星などとも呼びます)に分類される天体で、約80年ごとに爆発することが知られています。

その爆発時期が今夏ごろと予想されていることから、天文ファンの間で注目を集めています。爆発すると2等級に達し、アルフェッカやイザールと同じくらいの明るさの星が「突然」現れたように見えるはずです。ただし、いつ爆発するのかを正確に予測するのは難しく(今夜かもしれませんし、秋以降になるかもしれません)、そのうえ肉眼で見えるほど明るいのは数日間しかないので、常にチェックしておく必要があります。科学ニュースを参照するなどして、貴重な現象を見逃さないようにお気を付けください。

かんむり座カムイ

「かんむり座」の領域にある星に、2019年にカムイという名前が付けられました。この年に実施された「恒星と、その周りを巡る惑星に名前を付ける」というキャンペーンで世界中から様々な提案があり、そのうち日本の案として採用されたものです。アイヌ語で「神」を意味する語に由来しています。ちなみに惑星のほうはチュラという名前で、こちらの由来は沖縄・琉球語で「自然の美しさ」を意味する語です。

カムイは7等級なので双眼鏡があれば見えますが、「この星だ」と特定するには星図と見比べて根気よく探す必要があります。半円の星の並びなどを参考にして探してみましょう(惑星のチュラは暗すぎるので見えません)。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は6月中旬の深夜1時ごろの星空です。7月中旬の深夜23時ごろ、8月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。

2024年6月中旬 深夜1時ごろの星空

頭の真上に輝くのは「こと座」の1等星ベガ、七夕の織姫星として有名な星です。パートナーの彦星は、ベガの南にある「わし座」の1等星アルタイルです。この2つとベガの東にある「はくちょう座」の1等星デネブをつなぐと、「夏の大三角」のできあがりです。空が暗ければ、夏の大三角から南の地平線に向かって天の川も見えるでしょう。南東の低空には土星が姿を現しています。

一年のうちで最も夜が短く、そのうえ雨が多いこの時期は夜空を眺める機会がなかなかないかもしれませんが、機会を見つけて星空観察をお楽しみください。かんむり座Tが明るくなっていないかどうかの確認もお忘れなく。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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