ポン・ブルックス彗星が見ごろを迎えています。彗星との出会いは多くの天文現象のなかでも「このとき限り」感がとくに高いものです。夕方の西の空に注目しましょう。夜空では全天最大の「うみへび座」の長さを確かめられるシーズン到来です。全身をたどれるでしょうか。
星空写真
愛知県田原市加治町にて
渥美半島は早春の菜の花が有名で、ドライブしていると道路わきに、大小いくつもの菜の花畑に遭遇します。夜半過ぎから菜の花畑にかわいらしい四角形のからす座が昇ってくるところを撮影しました。からす座の東側の1等星はおとめ座のスピカです。菜の花畑に街灯が当たっていたので、露出と感度の設定に苦労しました。
2024年2月8日 0時42分
ニコン Z 6II+NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S(24mm、ISO4000、露出10秒×16枚を合成、f/2.8)
撮影者:石橋 直樹
4月中 | 夕方、西の空にポン・ブルックス彗星が見える(「今月の星さがし」で解説) |
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2日(火) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
6日(土) | 明け方、細い月と火星が並ぶ |
7日(日) | 明け方、細い月と土星が並ぶ |
9日(火) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) アメリカなどで皆既日食(皆既食となるのは日本時間3時~4時半ごろ) |
10日(水) | 夕方、細い月とポン・ブルックス彗星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
11日(木) | このころ、未明~明け方に火星と土星が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
13日(土) | このころ、夕方に木星とポン・ブルックス彗星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
15日(月) | 夕方~翌16日未明、月とポルックスが接近 |
16日(火) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) |
18日(木) | 夕方~翌19日未明、月とレグルスが接近 |
22日(月) | 深夜~翌23日未明、月とスピカが並ぶ |
23日(火) | 夕方~翌24日未明、月とスピカが接近 |
24日(水) | 満月。次の満月は5月23日です |
26日(金) | 深夜~翌27日明け方、月とアンタレスが大接近 |
太陽に近く、見えません。
太陽に近く、見えません。7月下旬ごろから、「宵の明星」として夕方の西北西の低空に見えるようになります。
明け方の東南東から東の低空に見えますが、日の出1時間前(東京で4時10分ごろ)の高度が5度ほどととても低いため、見づらいでしょう。スマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめて、双眼鏡を使って探してみてください。明るさは約1.2等級です。
6日の明け方、月齢26の細い月と接近します。また、11日ごろに土星と大接近します。「今月の星さがし」も参考にしてください。
夕方から宵の西北西の低空に見え、日の入りから2時間ほど(東京で20時15分ごろ)に沈みます。明るさは約マイナス2.0等級です。
すっかり低くなったので天体望遠鏡での観察には向いていません。見晴らしの良い場所で、肉眼や双眼鏡で今シーズン最後の輝きを見届けましょう。
13日ごろにポン・ブルックス彗星と接近し、彗星を見つけるよい目印になります。
明け方の東南東の低空に見えますが、日の出1時間前(東京で4時10分ごろ)の高度が6度前後とかなり低いため、見づらいでしょう。スマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめて、双眼鏡を使って探してみてください。明るさは約1.1等級です。
7日の明け方、月齢27の細い月と並びます。また、11日ごろに火星と大接近します。「今月の星さがし」も参考にしてください。
ポン・ブルックス彗星が見ごろを迎えます。やや低めですが、双眼鏡で観察したりカメラで撮ったりして、70年に一度のチャンスを楽しみましょう。
先月もご紹介したポン・ブルックス彗星(ポンス・ブルックス彗星などとも呼ばれます)が、夕方から宵の早い時間帯に、西の空に見えています。彗星の名前は発見者に由来していて、19世紀初めにポン(ポンス)さんが発見、19世紀末にブルックスさんが再発見したものです。軌道を計算したところ2人が見た彗星が同じものとわかり、この名前になりました。発見史からもわかるように、約70年で太陽の周りを公転しています。
彗星の本体は数km~数十kmしかないので、太陽や地球から離れているときには見えません。太陽に近づくと氷が溶けたりガスを噴出したりして明るくなり、尾を伸ばすので見やすくなるのですが、こうした観察に適した期間は70年の周期の間でほんの数か月程度しかありません。彗星はたくさんあるものの、このポン・ブルックス彗星に限って言えば、多くの方にとって今回が人生で一度きりのチャンスということになります。
4月のポン・ブルックス彗星の明るさは4~5等級と予想されています。薄明が残る空の中で肉眼で見ることは難しいですが、双眼鏡を使えば比較的簡単に見つけられます。「おひつじ座」の2等星ハマルや木星を目印にすると良いでしょう。10日には細い月と木星の間に彗星があるので、位置のわかりやすさという点では一番の好機です。かなり低いので、西の空の見晴らしが良いところをあらかじめ見つけておいて、空が暗くなってきたらなるべく早く観察を始めましょう。
図の囲み内には拡大したイメージを表示していますが、眼視ではこれほどハッキリとは見えません。白いほうの尾が淡く見え、頭部がもう少しボンヤリと広がったような像として見えると思われます。空の透明度によっては広がりがわからず、ほとんど点にしか見えない可能性もあるので、よく観察してみてください。望遠レンズで撮影するとこのような姿になり、2本(かそれ以上)の尾が写ります。広角レンズで風景と一緒に撮影するのも面白いでしょう。
実はポン・ブルックス彗星は、昨年から何度か、急に明るくなる現象を繰り返しています。太陽に近づくことによって活動が活発になれば、また明るくなったり尾が長く伸びたりするかもしれません。こうした予想外の現象の可能性があることも彗星の魅力の一つです。一期一会の彗星がどんな姿を見せてくれるのか、ぜひご自身の目で確かめてみてください。
4月になると早朝にも暖かさを感じられる日が増えてきます。そんな夜明けの東の空で、中旬ごろまで火星と土星が接近して見えます。最接近となる11日ごろには、満月の見かけ幅ほどまで近づく大接近になります。
どちらの惑星も約1等級の明るさです。これは夜空で見る場合はとても目立つ明るさなのですが、夜明けの薄明の中、しかも低空という条件では、あまり目立ちません。肉眼でも見える現象ですが、双眼鏡を使って観察するほうがわかりやすいでしょう。青みがかった空をバックにして、火星の赤っぽさがわかるでしょうか。
最接近のころだけでなく、交差するように動いて並び方が変わっていく様子も楽しみです。かなり低いので、あらかじめ東の空の見晴らしが良い場所を探しておきましょう。新年度の始まり、ちょっと気合を入れて早起きしてご覧ください。
「うみへび座」は、全天に88個ある星座のうち最も広く大きな星座です。東西に長く伸びており、頭の先の星が昇ってきてから尾の先の星が昇ってくるまでに約8時間もかかります(東京の場合)。宵の時間帯に見やすいのは4月から5月ごろですが、明るい星は2等星のアルファルドしかないので、蛇の姿をイメージするのは難しいかもしれません。
4月の中旬ごろには、22時前後に南の空に全身が見えるので、双眼鏡を使って星を一つずつたどってみましょう。目安としては「しし座」の1等星レグルスあたりに蛇の頭があり、アルファルドが頭から1/5のあたり、さらに左(東)へたどって「おとめ座」の1等星スピカを通り過ぎたところで尾の先になります。星座の星のつなぎ方に決まりはないので、「何となくこんな感じで蛇だ」とつないでも大丈夫です。
「うみへび座」の背中にはいくつか星座が乗っています。アルファルドの左には、航海や天体観測で角度を測るのに用いられる道具の「ろくぶんぎ(六分儀)座」、スピカの右には、4つの星が台形に並んで見える「からす座」があります。その2つの星座の間にも、トロフィーのような形の「コップ座」があります。
このうち「からす座」の4つの星はいずれも3等星で、月明かりや街灯がなければ肉眼でもわかります。スピカを目印にして「からす」の姿を見つけてみましょう。ページ上部の「星空写真」では中央やや上に見えます。「ろくぶんぎ座」と「コップ座」はかなり暗いので、双眼鏡を使って挑戦してみてください。
「うみへび座」の尾のあたりにある渦巻銀河M83(Mはカタログの符号)は、「南の回転花火銀河」という愛称がつけられた見事な渦巻銀河です。ちなみに「(北の)回転花火銀河」は「おおぐま座」のM101で、こちらもやはり見事な渦巻銀河です。
中心部以外の腕の部分は淡く、また日本からは高度が低いため、眼視では美しさのすべてを味わうことは難しそうです。「すばる望遠鏡」などで撮影されたカラフルな画像を検索してみてください。
「からす座」にも「アンテナ銀河」という有名な銀河(カタログ番号はNGC 4038/4039)があります。アンテナとは昆虫などの触角のことで、画像中の明るい部分の左から上下に伸びる淡い部分が触角のように見えることから付けられた愛称です。ここでは2つの銀河が衝突していて、明るい部分がそれぞれの中心部です。お互いの重力の影響で形がゆがみ、一部が引き伸ばされて触角部分になっています。この銀河も検索してみると、宇宙望遠鏡などで撮影された美しい画像がたくさん見られます。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は4月中旬の深夜1時ごろの星空です。5月中旬の深夜23時ごろ、6月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(月が見えることもあります)。
今月ご紹介した「うみへび座」が南西の空に横たわっています。頭の部分やアルファルドは沈みかけていますが、尾の先はやっと真南に来たところです。星座の大きさや長さが実感できるでしょう。尾のさらに東には「さそり座」のアンタレスが輝き、「うみへび座」と正反対の北東の空には「夏の大三角」も見えます。
頭の真上を見上げると、北西から南西に大きくカーブした「春の大曲線」をたどることができます。「北斗七星」から「うしかい座」のアルクトゥールス、「おとめ座」のスピカを通り、「からす座」と続くアーチをたどってみましょう。このアーチよりも「うみへび座」のほうが長いというのは、驚くばかりですね。
今月注目の天体が夕方の彗星や明け方の火星と土星なので、深夜の空を眺めることはあまりないかもしれません。しかし、もし機会があれば、夜中の星々もぜひお楽しみください。特別ではない星空にも面白さや美しさがあることに、きっと気づけるでしょう。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。