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2024年3月の星空

北天の「おおぐま座」や南天の「うみへび座」など大きな動物の星座たちが、冬眠から覚めたかのように見やすくなってきます。「しし座」も南東の空を元気に駆け上っています。気温の変化や木々の様子に加えて、星々の移り変わりにも春の訪れを感じてみましょう。

星空写真

群馬県妙義町にて
高崎市、富岡市の街明かりがふんわりと照らす、山里に咲くしだれ桜と、天の川のマリアージュは、何か心をリラックスさせてくれるように思います。

2023年4月1日 4時15分
ニコン Z 6II+NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S(24mm、ISO12800、露出5秒×8枚を合成、f/2.8)
撮影者:高岡 誠一

3月の星空

南の空

南の空

2024年3月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、満月(25日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2024年3月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(17日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

天文カレンダー

3日(日) 未明~明け方、月とアンタレスが並ぶ
4日(月) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
未明~明け方、月とアンタレスが並ぶ
10日(日) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
14日(木) 夕方~宵、細い月と木星が並ぶ
15日(金) このころから、夕方~宵の西の空にポン・ブルックス彗星が見えるようになる(「今月の星さがし」で解説)
17日(日) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
19日(火) 夕方~翌20日未明、月とポルックスが接近
20日(水) 春分
22日(金) 夕方~翌23日未明、月とレグルスが接近
25日(月) 満月。次の満月は4月24日です
水星が東方最大離角(夕方の西の低空に見えます。「今月の星さがし」で解説)
26日(火) 宵~翌27日明け方、月とスピカが大接近
31日(日) 未明~明け方、月とアンタレスが大接近

3月の惑星

水星

13日ごろから、夕方の西の低空に見えます。

日の入り30分後(東京で18時10分ごろ)の高度は10度前後あり、これは水星としてはとても好条件です。25日に太陽から最も離れる「東方最大離角」という状態になり、このころが最も見ごろです。

好条件で見ごろとはいえ、10度というのはかなり低いので、西の空の見晴らしが良い場所で観察しましょう。肉眼でも見えますが、双眼鏡を使うと見つけやすくなります。「今月の星さがし」も参考にしてください。

金星

「明けの明星」として明け方の東南東の低空に見えますが、日の出30分前(東京で5時20分ごろ)の高度が5度ほどと非常に低く、見づらいでしょう。

火星

明け方の東南東の低空に見えますが、日の出30分前(東京で5時20分ごろ)の高度が8度ほどとかなり低いため、見づらいでしょう。スマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめて、双眼鏡を使って探してみてください。金星よりは高いですが金星よりもずっと暗いので、見つけにくさは似たり寄ったりです。

木星

「おひつじ座」にあります。19時ごろに西の空に見え、21時40分ごろに沈みます。明るさは約マイナス2.1等級です。

空がすっかり暗くなるころには西の空の低いところに移ってしまうので、なるべく早めに観察しましょう。低いため天体望遠鏡での観察にはあまり向いていません。

14日の夕方から宵、月齢4の細い月と並びます。

土星

太陽に近く、見えません。4月中旬ごろから、明け方の東南東の低空に見えるようになります。

今月の星さがし

2つの「すいせい」が夕空に見えます。どちらも双眼鏡で探してみましょう。とくに「彗星」のほうは、70年に1度きりのチャンスです。

「水星」が見ごろ

太陽系の一番内側の惑星である水星は、地球から見るといつも太陽の近くにあります。そのため、日の出前の東の低空か日の入り後の西の低空にしか見えません。つまり、空が暗くない時間帯に、低いところにしか現れないので、観察が難しいのです。

この水星が、3月中旬から下旬にかけて観察チャンスを迎えます。25日に見かけ上で太陽から最も離れて、「水星としては」見やすい条件になるのです。夕方の西の空に見えますが、太陽を基準にして考えると水星は東に離れているので「東方最大離角」と呼びます。図の横線は地平線から10度の高さを表していて、とても低いことがわかりますが、これでも好条件です。西の空の見晴らしが良いところで探しましょう。スマートフォンのアプリなどで位置を確かめるとわかりやすくなります。

3月13日から31日まで3日ごとの、日の入り45分後の西の空の様子(場所の設定は東京)

図では日の入り45分後の様子を示していますが、もう少し前、日の入り30分後くらいから見え始めるでしょう。時間が早ければそれだけ高くなりますが(天体は西に沈んでいくので、時間が前なら西の空での高度が上がります)、一方で空がまだ明るいということでもあるので、その点では見づらくなります。西の空が暗くなってきたらできるだけ早く、という気持ちで探してみてください。肉眼でも見つけられますが、双眼鏡をつかうと見やすいでしょう。

図を見るとわかるように、水星の明るさは短期間で大きく変わります(地球との位置関係によります)。西方最大離角の25日ごろまではマイナス等級です。「おおいぬ座」のシリウスと同等ほどの明るさなので、もし夜空で見ることができれば眩しいほどだろうと想像できるでしょう。実際には薄暮の時間帯で周りが明るく、地球の大気の影響を受ける低空で光っているので、強く輝いているという印象には見えません。金星や木星、シリウスのような光ではありませんが、小粒の輝きの美しさを味わってみましょう。

「ポン・ブルックス彗星」も見ごろ

水星は太陽系に1つしかありませんが、「彗星」はたくさんあります。彗星は固有の天体を表す言葉ではなく、天体のタイプを表す言葉だからです。「凍った泥団子」と形容されるように主に氷や砂粒で構成されている、本体は小さい(数km~数十km)、尾が伸びる、などの特徴があります。ほとんどはとても暗いのですが、年に数個ほど、肉眼や双眼鏡でも見えるような彗星が現れることがあります。

そのような彗星の一つ、ポン・ブルックス彗星(ポンス・ブルックス彗星などとも呼ばれます)が、今月から来月にかけて見やすくなると予想されています。ポン・ブルックス彗星は細長い楕円軌道で太陽の周りを公転していて、4月に太陽に近づくので、氷が溶けたりガスを噴出したりして明るくなると期待されているのです。3月中旬から下旬には5等級前後と予想されます。

3月1日から31日まで3日ごとの、日の入り1時間後の西から北西の空の様子(場所の設定は東京)。2等星より明るい星には名前を表示している(31日はハマルと彗星がほぼ同じ位置にある)。彗星の尾(青と黄色の線)は模式的に表示

5等級であれば、双眼鏡を使えば比較的簡単に見つけられます。星図に掲載した明るめの星々との位置関係を頼りにして探してみましょう。ただし、彗星は一般に点光源ではなくボンヤリと広がった形状に見えるので、双眼鏡の視野の中にあっても「ハッキリと見えない」ため見逃してしまうことがあります。光の点ではなく、小さな千切れ雲のようなイメージで観察してみてください。尾を見るのはおそらく難しいですが、よく見ると上方向に伸びているのがわかるかもしれません。

また、水星と同様に、空が暗くなりきっていない時間帯に西の空のやや低いところを観察することになるので、薄暮や地上光の影響を受ける、建物に隠されるなどの要因で見づらくなってしまいます。西の空の見晴らしが良いところで、なるべく地上の明かりが少ないところで観察しましょう。

ポン・ブルックス彗星は約70年周期で公転しているので、観察チャンスも70年に1回きりです。来月もご紹介予定ですが、まず今月、ぜひお楽しみください。

今月の星座

きりん座、やまねこ座

3月中旬の夜21時ごろに北の空を見上げると、正面に北極星、右手側(北東の空)に北斗七星、左手側(北西の空)に「ぎょしゃ座」のカペラが見つかります。また、頭の真上あたりには「ふたご座」のカストル、ポルックスが輝いています。こうした目立つ星々の間にひっそりと隠れているのが、「きりん座」と「やまねこ座」です。どちらも17世紀に作られた新しい星座です。

「きりん座」「やまねこ座」(銀河の画像クレジット:ESO DSS2 (AURA))

「きりん座」はカペラと北極星の間あたり、「やまねこ座」はカストル、ポルックスと北極星の間あたりに広がっているので、これらの星々を目印にすれば、星座の位置の見当をつけるのは簡単でしょう。ただし、「やまねこ座」で一番明るい星は3等級、「きりん座」のほうは4等級と、星座の領域に含まれる星が暗いため見つけるのはとても大変です。双眼鏡を使って探してみてください。

たとえ星が見えないとしても、「何もないように見える空の一角に、キリンやネコがいる」と想像するだけでも楽しいものです。北斗七星を含む「おおぐま座」や北極星を含む「こぐま座」などと共に、春の星空に踊る動物たちを思い浮かべながら北の空を見上げてみましょう。

銀河IC 342、NGC 2403

これら2つの星座には、天体望遠鏡向きの天体(二重星や見やすい星雲、星団)もあまりありません。その少ない中で「きりん座」のIC 342とNGC 2403という銀河は、天体写真の愛好家に人気の天体です(ICやNGCはカタログの符号)。IC 342は渦巻銀河を正面から、NGC 2403のほうは渦巻銀河をやや斜めから見る角度です。インターネットの画像検索などでお楽しみください。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は3月中旬の深夜1時ごろの星空です。4月中旬の深夜23時ごろ、5月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(月が見えることもあります)。

2024年3月中旬 深夜1時ごろの星空

冬の星座の明るい星々や木星が沈み、少し落ち着きが感じられる夜空になりました。南の空には「春の大三角」が大きく広がっています。また、北の空の「北斗七星」も高く見やすくなっています。北斗七星の柄の星々をカーブに沿って南へ伸ばしていくと、オレンジ色の明るい星「うしかい座」のアルクトゥールス、青白い明るい星「おとめ座」のスピカが見つかり、頭上に架かる雄大な「春の大曲線」が描けます。

西から北西の低空には、「こいぬ座」プロキオン、「ふたご座」ポルックス、「ぎょしゃ座」カペラが、こちらもカーブを描いて並んでいます。今月ご紹介した「やまねこ座」もネコが伸びをしたような曲線に星が並んでいますね。こうした長い星の並びを見ていると、私たちの気持ちも大らかに、伸び伸びとしたものになりそうです。

北東の「こと座」のベガなど、夏に見やすい星々も見え始めていますが、深夜の風はまだ冷たいでしょう。体調を崩さないようにご注意ください。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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