一年で最も寒い季節は、一年で最も華やかな星空が見られるシーズンでもあります。厳しさの中に美しさや力強さも感じられる、そんな世界が広がっています。「オリオン座」や「おおいぬ座」、木星など見やすい天体が数多く輝く今月の夜空を、ぜひ見上げましょう。
星空写真
静岡県掛川市にて
少し遠出して、掛川市の潮騒橋から撮影しました。橋自体の明かりで苦労しましたが、なるべく照明の直射を防ぐ撮影ポイントを探して、オリオン座からおおいぬ座、こいぬ座の星々をつなぐ冬の大三角が表現できました。
2023年1月18日 20時18分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED(14mm、ISO2500、露出15秒×16枚を合成、f/3.2)
撮影者:石橋 直樹
1日(木) | 未明~明け方、月とスピカが並ぶ |
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2日(金) | 未明~明け方、月とスピカが接近 |
3日(土) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
4日(日) | 立春(こよみの上で春の始まり) |
5日(月) | 未明~明け方、月とアンタレスが大接近(沖縄や小笠原では日の出後の10時半~11時半ごろにアンタレスが月に隠されます) |
8日(木) | 明け方、細い月と金星が並ぶ |
10日(土) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
11日(日) | 夕方、細い月と土星が接近 |
15日(木) | 夕方~深夜、月と木星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
17日(土) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) |
20日(火) | 宵~翌21日未明、月とポルックスが接近 |
21日(水) | 夕方~深夜、月とポルックスが並ぶ |
23日(金) | このころ、明け方に金星と火星が大接近(「今月の星さがし」で解説) 深夜~翌24日明け方、月とレグルスが接近 |
24日(土) | 満月。次の満月は3月25日です 夕方~深夜、月とレグルスが並ぶ |
28日(水) | 深夜~翌29日明け方、月とスピカが大接近 |
3日ごろまで明け方の東南東の低空に見えますが、日の出30分前(東京で6時10分ごろ)の高度が3度前後と非常に低いため、観察は困難でしょう。
「明けの明星」として、未明から明け方の南東の空に見えます。
日の出30分前(東京で6時ごろ)の高度は10度前後とかなり低いのですが、マイナス4.0等級前後ととても明るいので、山や建物に隠されていなければ見つけられるでしょう。見晴らしの良い場所で観察してみてください。
8日の明け方に細い月と並びます。月のほうが低いので、よく探しましょう。また、月末ごろに火星と大接近します。「今月の星さがし」を参考に、早起きしてご覧ください。
明け方の南東の低空に見えますが、日の出30分前(東京で6時ごろ)の高度が6度ほどとかなり低いため、見づらいでしょう。明るさは約1.3等級で、これも夜明け空の中で見るには少し不足といったところです。
月末ごろに金星と大接近するので、金星を目印にすると見つけられるかもしれません。「今月の星さがし」を参考にして探してみましょう。
「おひつじ座」にあります。18時30分ごろに南西の空の高いところに見え、23時ごろに沈みます。明るさは約マイナス2.3等級です。
日没時に真南(=最も高くなるところ)を越えているという点では、最盛期は過ぎたと言えますが、それでも空が暗くなってから2時間程度は見やすい高さにあり、まだまだ観察の好期です。明るいおかげで街中でも目立ち、肉眼でもよく見えます。
天体望遠鏡で観察すると縞模様や4つのガリレオ衛星が楽しめます。ガリレオ衛星は双眼鏡でも見えるかもしれません。衛星の並び方が日々変わる様子を追ってみましょう。
15日の夕方から深夜、上弦前の月と接近します。
10日過ぎまで夕方の西の低空に見えますが、日の入り30分後(東京で17時50分ごろ)の高度が10度前後とかなり低いので、見づらいでしょう。天体望遠鏡での観察には向いていません。
11日の夕方に月齢1の極細の月と接近します。肉眼では見づらいので、双眼鏡で眺めてみましょう。
縁起が良いとされる星「カノープス」を探してみましょう。明け方の空では金星と火星が大接近します。双眼鏡で火星を見つけられるでしょうか。
「冬の大三角」や「冬のダイヤモンド」を形作るカラフルな冬の1等星たちが夜空を飾るころ、南の空の低いところにカノープスという名前の1等星も姿を現しています。「一目見ると寿命が延びる、縁起の良い星」という言い伝えがあり、七福神の一人「寿老人(福禄寿)」は、このカノープスの化身である「南極老人」が元になったとされています。
夜空に見える星としては「おおいぬ座」のシリウスに次いで2番目に明るい輝星ですが、地平線に近いため大気の影響で暗くなってしまい、建物に遮られたり街明かりに紛れてしまったりすることもあるので、見つけるのは大変です。関東より北の地域では地平線より高くならないので、残念ながら見られません。一方で鹿児島や沖縄などでは少し高くなるので、カノープスが見やすくなります(とはいっても5~10度程度です)。オーストラリアなどではほぼ一晩中沈むことがなく、一年中いつでも観察できます。
カノープスを探すときには「おおいぬ座」や冬の大三角が目印になります。双眼鏡を使うと見やすいでしょう。チャンスがあればぜひ探し出して(見えない地域の場合には地平線の下を想像して)、カノープスに健康と長寿を願いましょう。ちなみにカノープスは「りゅうこつ(竜骨)座」という星座の星です。辰年の今年、ぜひ見ておきたいですね。
明るい惑星と月の接近は、天体望遠鏡などがなくても気軽に眺められ、街中からも見ることができるので親しみやすい天文現象です。とくに、見やすい時間帯に見やすい高さで、ほど良い間隔に並んでいる共演はお勧め度が高くなり、今月は15日の「月と木星」の接近が一番の見ものです。
当夜の月は上弦の半月の少し前でやや細めに見えます。その左下に、マイナス2等級ととても明るい木星が輝いていて、目を引く光景となるでしょう。19~21時ごろと見やすい時間帯に、ちょうど良い高さであることも好条件です。
肉眼では地上の風景や雲などと一緒に広く眺め、双眼鏡では2天体だけの世界を切り取って見ることができます。望遠鏡は見える範囲がとても狭いので共演として見ることはできませんが、月のクレーターや木星の縞模様などを楽しめます。様々な方法でお楽しみください。
夜明けの東の空には「明けの明星」の金星が眩しく輝いていますが、高度がかなり低くなってきました。日の出30分前で10度前後しかなく、建物の陰などに隠れて見えないことも多くなりそうです。見晴らしが良い場所で探しましょう。
この金星の近くに、火星も見えています。火星は、昨年の夏に夕空で見送って以来、ずっと太陽と同じ方向にあり見づらかったのですが、およそ半年ぶりに明け方の空に戻ってきました。
夜空であれば火星を見つけるのは難しくありませんが、明るい背景の中で低空の火星を見つけるのは難しいものです。星図を参考にして金星との位置関係を確かめて、できれば双眼鏡を使って探し出してみましょう。火星は今後、来年夏までの約1年半にわたって見ることができます。今月、まず一目、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
2月中旬の夜21時ごろ、南の空に1等星3つで形作られる「冬の大三角」が見えます。3つの星のうち一番下(南)にあるのが「おおいぬ座」のシリウス、左(東)にあるのが「こいぬ座」のプロキオンです。
「おおいぬ座」はシリウスを犬の顔(鼻や口)と考えて、周囲の星々をつなぐと何となく犬の姿に見えてきます。後ろ足から尻尾のあたりに2等星が小さく三角形に並んでいるのも目印になるでしょう。一方の「こいぬ座」の主な星は、プロキオンのほかには3等星のゴメイサしかありません。この2つの星から犬の姿を思い浮かべるのは相当な想像力と思い切りが必要です。「犬に見えたから『こいぬ座』にした」というよりは、「『おおいぬ座』やシリウスと、ペアになるように星座を見出した」と考えるほうが自然でしょう。
そしてもう一つ、ちょうど冬の大三角の中に位置するのが「いっかくじゅう座」です。額に角の生えた馬という想像上の生き物「一角獣」の星座ですが、英語の「ユニコーン」のほうがわかりやすいかもしれません。最も明るい星でも4等級なので、街中で見つけることは困難ですが、「見えないけどいる」と思いながら眺めてみてください。
シリウスという名前は「焼き焦がすもの」という意味の言葉に由来します。明るさはマイナス1.4等級で、夜空に見える恒星の中では一番明るい天体です。星そのものが高温で強いエネルギーを放射していることに加えて、太陽系から比較的近くにあることが、明るく見える理由です。
プロキオンのほうは「犬の先駆け」という意味の言葉に由来する名前で、シリウスよりも先に昇ってくる様子から名付けられました。ただし、プロキオンがシリウスよりも先に昇ってくる条件は時代や場所(緯度)によって異なります。たとえば現在の東京ではプロキオンのほうが10分ほど早く昇ってきますが、沖縄ではシリウスのほうが10分ほど早くなります。シリウスよりは少し遠いですが、既知の恒星のなかではトップ10に入る近さです。
日本ではシリウスを「青星」、プロキオンを「白星、色白」などと呼んでいて、やはりペアの星として見ていたことがうかがえます。
シリウスの下(南)にM41(Mはカタログの符号)という番号が付けられた散開星団(星の集団)があります。位置がわかりやすく見つけやすいので、ぜひ観察してみましょう。空の条件が良ければ肉眼でも存在がわかり、双眼鏡や低倍率の天体望遠鏡を使うと星の色や並び方まで見えてさらに楽しめます。
星座としては目立たない「いっかくじゅう座」ですが、望遠鏡での見ものや写真撮影の好対象がいくつかあります。
まず望遠鏡では、ユニコーンの前足あたりに位置する星「いっかくじゅう座β(ベータ)」が見ものです。肉眼では1つの星ですが、望遠鏡で観察すると、明るさも白っぽい色もよく似ている3つの星が集まっていることがわかります。
また、ユニコーンの鼻先あたりには「ばら星雲」、胸の下(大犬の頭の上)あたりには「かもめ星雲」の愛称で知られる、美しい星雲(ガスや塵が光っている天体)があります。淡いため望遠鏡でもほとんど見えませんが、天体写真では大輪のバラの花や翼を広げて飛ぶカモメのような姿を見ることができます。図鑑やインターネットの画像検索などで鑑賞しましょう。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は2月中旬の深夜1時ごろの星空です。3月中旬の深夜23時ごろ、4月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(月が見えることもあります)。
冬の星座が西の空に傾き、「オリオン座」のリゲルはもう沈んでしまいました。今月ご紹介した「おおいぬ座」は南西の大地にしっかりと足を下ろしています。地球の大気の影響によって低空のシリウスが激しく瞬き、その見た目の色が様々に目まぐるしく変化する様子がわかるでしょう。「こいぬ座」は大犬の後を元気よく追いかけ、2匹の間にはユニコーンがひっそりと隠れています。
西天の犬とユニコーンに代わり、南の空の高いところに見えるのは「しし座」です。その尻尾から南東の空に「春の大三角」が大きく広がっています。「冬の大三角」の星々と色や明るさ、三角形の大きさ比べをしてみましょう。北東には早くも、夏に見やすい「こと座」の1等星ベガの光も見え始めています。
暦の上では春が来たとはいえ、非常に寒い日が続きます。万全の寒さ対策をして、春の訪れを待ちながら星空をお楽しみください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。