2024年も様々な天文現象や美しい星空をたくさん楽しみましょう。今月は派手な現象こそないものの、明るい金星や木星、きらびやかな冬の星座たちといった「いつもの」天体たちが新年の空を飾ってくれます。しっとりと落ち着いた心持ちで、抱負を胸に空を見上げてみてください。
星空写真
群馬県 北軽井沢にて
下弦過ぎの月光に照らされた雪原と冬の星座を全周魚眼で作画しました。月光のレイリー散乱由来でバックグラウンドが群青色になり、厳冬期の凛とした雰囲気が表現できたように思います。
2021年11月29日 1時37分
ニコン D810A+AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E ED(8mm、ISO400、露出300秒×6枚を合成、f5.6)
撮影者:高岡 誠一
1日(月) | 未明~明け方、月とレグルスが接近 |
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4日(木) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
5日(金) | 未明~明け方、月とスピカが接近 |
7日(日) | このころ、未明~明け方に金星とアンタレスが並ぶ |
9日(火) | 未明~明け方、細い月と金星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説) 未明~明け方、細い月とアンタレスが接近 |
11日(木) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
12日(金) | 水星が西方最大離角(明け方の南東の低空に見えます。「今月の星さがし」で解説) |
14日(日) | 夕方~宵、細い月と土星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
18日(木) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) 夕方~深夜、月と木星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
24日(水) | 夕方~翌25日明け方、月とポルックスが接近 |
26日(金) | 満月。次の満月は2月24日です |
27日(土) | 宵~翌28日明け方、月とレグルスが接近 |
明け方の南東の低空に見えます。
日の出45分前(東京で6時ごろ)の高度は7度前後と低いのですが、水星としては見やすいほうです。明けの明星の金星との位置関係を手がかりにして、地平線付近まで見晴らしが良い場所で探しましょう。肉眼でも見えますが、双眼鏡を使うと見つけやすくなります。「今月の星さがし」も参考にしてみてください。
「明けの明星」として、未明から明け方の南東の空に見えます。
日の出1時間前(東京で5時45分ごろ)の高度は約15度で低めですが、マイナス4.0等級前後ととても明るいので、建物などに隠されていなければ簡単に見つかります。日の出30分前になると20度弱まで昇り、明るくなってきた空の中でキラキラ輝く様子が見えるでしょう。
9日の未明から明け方、細い月と並びます。
明け方の南東の低空、水星の近くにありますが、太陽に近いため、ひじょうに見づらい状態です。春にはもう少し見やすくなります。
「おひつじ座」にあります。18時30分ごろに南の空の高いところに見え、1時ごろに沈みます。明るさは約マイナス2.5等級です。
宵の見やすい時間帯に高く昇り、見やすい時期が続いています。高いので建物などに隠されにくく、明るいおかげで街中でもよく目立ちます。
肉眼でもよく見えますが、天体望遠鏡で観察すると縞模様や4つのガリレオ衛星が楽しめます。ガリレオ衛星は双眼鏡でも見えるかもしれません。衛星の並び方が日々変わる様子を追ってみましょう。
18日の夕方から深夜、上弦の半月と接近します。並ぶ様子を眺めたり撮ったり、望遠鏡でそれぞれを拡大したりしてお楽しみください。
「みずがめ座」にあります。日の入り1時間後(東京で18時ごろ)に南西の空のやや低いところに見え、その約2時間後に沈みます。明るさは約1.0等級です。
シーズン終盤で、そろそろ天体望遠鏡での観察は難しいかもしれません。空が暗くなったら、なるべく早めに見ておきましょう。肉眼や双眼鏡で土星を確認するだけであれば、まだしばらくは楽しめます。
14日の夕方から宵、月齢3の細い月と接近します。
9日明け方に細い月と金星が並びます。近くに見える水星と合わせて観察しましょう。木星はシーズン後半に入りますが、まだまだ楽しめます。
昨年の秋から「明けの明星」として夜明けの東の空に見えている金星が、少しずつ高度を下げてきました。日の出1時間前には15度ほどで、建物の陰などに隠れて見えないことが増えてきます。一方で金星はとても明るく輝いているので、位置さえわかればもう少し後の時間帯でも見ることができ、そのころには高さも上がるので多少は見つけやすくなります。
金星は9日の早朝に、南東の低空で月齢27の月と並んで見えます。新月2日前の細い月と金星が新春の空で共演する光景は、美しさと共におめでたさも感じられそうです。早起きして眺めましょう。前述のとおり低めなので、南東方向の空が開けている場所で観察してください。ランドマークがあれば一緒に撮影するのも面白いものです。近くには「さそり座」の1等星アンタレスも見えます。
明け方の空には金星だけでなく、水星も見えています。水星は金星よりも暗く低いので観察の難度は高めですが、肉眼でも見えます。金星との位置関係を手がかりにして探してみましょう。双眼鏡を使うと見つけやすくなります。
また、月末には水星のそばに火星も見えます(星図には入っていません)。今の時期の火星は水星よりもさらに暗いので双眼鏡を使っても見づらいのですが、意欲のある方は観察に挑戦してみてはいかがでしょうか。
明け方の空に見える惑星は水星と金星(と火星)ですが、宵空には木星と土星が見えています。とくに木星のほうは明るいので、日没後しばらくして南東から南の空を見上げればすぐに見つけられるでしょう。昨年11月に地球と最も近くなって一番の見ごろを迎えましたが、2か月後の現在でもまだまだ見ごろです。天体望遠鏡で、縞模様や4つの衛星を観察してみてください。
一方の土星は、夜20時ごろには沈んでしまうのでそろそろ見納めです。肉眼や双眼鏡で「あれが土星だ」と確認するだけであればもうしばらく見えますが、低空の天体は望遠鏡での観察にあまり適していない(揺れたり暗くなったりする)という点で、シーズン終盤というわけです。望遠鏡で環を見たい場合は、なるべく早く、少しでも高い位置にある時間帯に観察しましょう。
木星は18日の夕方から深夜に、また土星は14日の夕方から宵に、それぞれ月と接近して見えます。望遠鏡がなくても、街明かりがあるような場所でも観察できますので、肉眼や双眼鏡で気軽に眺めてみましょう。土星のほうはやや低めなので、南西の空がよく見える場所を探しておいてください。
1月中旬の夜21時ごろ、南の空に「オリオン座」が見えます。その「オリオン座」の足元に輝く青白い1等星リゲルのあたりから蛇行しながら地平線に向かって伸びているのが、川をモチーフにした星座の「エリダヌス座」です。明るい星が少ないため、街中で川の流れをたどるのは難しいのですが、双眼鏡で眺めながら一つずつ星をつないでみましょう。源流にあたるクルサや上流に位置するザウラクはいずれも3等級で、肉眼でも比較的見やすい星です。
エリダヌス川の終点には、「川の果て」という意味の語に由来する1等星のアケルナルが輝いています。日本(平野部)では九州南部よりも南でしか見られない珍しい星なので、旅行などで南の地域へ行く機会があれば、ぜひアケルナルを見つけてみてください。シンガポール、オーストラリアと、南に行くほど見やすくなります。クルサからアケルナルまで、大河の川下りを楽しめるでしょう。
中流付近の3等星にはアカマルという面白い名前があります。かつてはこのアカマルが「エリダヌス座」の果てとされていましたが、中世に星座の領域が拡張され、アケルナルが端になりました。
アカマルを天体望遠鏡で観察すると、白色の星が並ぶ美しい二重星であることがわかります。本州付近ではあまり高くなりませんが、機会があれば目を向けてみましょう。
ザウラクとアカマルの間あたりに、NGC 1300という番号が付いた銀河があります。中心を横切る棒構造と、その両端から1本ずつ伸びる長い腕が印象的な銀河です。川の流れの途中にある渦巻きのようにも見えますね。
望遠鏡を使っても見るのは難しいので、インターネットの画像検索などでお楽しみください。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は1月中旬の深夜1時ごろの星空です。2月中旬の深夜23時ごろ、3月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。
「エリダヌス座」はほとんど西の地平線に沈んでしまいました。かつての川の果てであるアカマルも見えず、源流だけしかわかりません。川らしさは感じられないですね。西北西の地平線あたりに木星も沈みかけています。
南西の空に「冬の大三角」、東の空には「春の大三角」が広がっています。明るさでは冬のほうが目立ち、大きさでは春のほうが目立ちます。カラフルさは互角でしょうか。見比べて確かめてみましょう。2つの三角形の間には「かに座」「しし座」なども見えます。北東の空に高く昇った「北斗七星」も見つけてみましょう。
深夜の寒さは身に沁みますが、短い時間でも星空を見上げてみると楽しいものです。しっかりと防寒して、色とりどりの星々や星座たちを眺めてみてください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。