宵の北天にカシオペヤ座が高く昇ると、秋が深まったことを感じます。隣にあるケフェウス座と一緒に眺めながら、壮大なギリシャ神話のストーリーに思いを馳せてみましょう。他の登場人物や動物も秋の夜空に広がっています。また、木星が観察に絶好のシーズンを迎えています。縞模様やガリレオ衛星の動きを追ってみてください。
星空写真
岐阜県高山市飛騨温泉郷 新穂高ロープウェイにて
新穂高ロープウェイ頂上からの撮影です。滞在時間が1時間余りでしたので撮影計画通りに東西南北4方向にレンズを向け、効率的に撮ったなかの1枚です。秋の天の川を中心に、下方通過する北斗七星とカシオペヤ、ケフェウスを配置しました。
2020年10月20日 19時24分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED(14mm、ISO8000、露出15秒×16枚を合成、f/2.8)
撮影者:石橋 直樹
3日(金) | 木星が衝(一晩中見え観察好期です。「今月の星さがし」で解説) 深夜~翌4日明け方、月とポルックスが大接近 |
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5日(日) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
7日(火) | 未明~明け方、月とレグルスが接近 |
8日(水) | 立冬(こよみの上で冬の始まり) |
9日(木) | 未明~明け方、細い月と金星が並ぶ |
10日(金) | 未明~明け方、細い月と金星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
11日(土) | 未明~明け方、細い月とスピカが並ぶ |
13日(月) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
20日(月) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) 夕方~深夜、月と土星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
25日(土) | 夕方~翌26日未明、月と木星が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
27日(月) | 満月。次の満月は12月27日です |
30日(木) | このころ、未明~明け方に金星とスピカが接近 深夜~翌12月1日明け方、月とポルックスが接近 |
25日ごろから、夕方の南西の低空に見えます。
日の入り30分後(東京で17時ごろ)の高度は5度前後と非常に低く、目印になるような天体もないので、見つけるのは難しそうです。スマートフォンのアプリなどで位置の見当をつけて、地平線付近まで見晴らしが良い場所で探しましょう。双眼鏡を使うと見やすくなります。
「明けの明星」として、未明から明け方の東から南東の空に見えます。
日の出1時間前(東京で5時15分ごろ)の高度は約30度あり、見やすい高さです。マイナス4.3等級前後ととても明るく、山や建物などに隠されていなければ一目でそれとわかります。早起きして、ひんやりとした空気の中で鋭く輝く様子を眺めてみましょう。
9日と10日、それぞれの未明から明け方に、細い月と並んで見えます。細い月と金星の共演には、見飽きることのない美しさがあります。ぜひご覧ください。また、金星は月末に「おとめ座」の1等星スピカと接近します。神々しい金星と控えめなスピカの対比を楽しみましょう。
太陽に近く、見えません。次は来年5月ごろから、明け方の東の空に見えるようになります。
「おひつじ座」にあります。18時ごろに東の空、22時30分ごろに南の空の高いところに見え、5時ごろに沈みます。明るさは約マイナス2.9等級です。
ほぼ一晩中見えていて観察のベストシーズンです。明るいだけでなく高く昇るおかげで、街中でもよく目をひきます。
木星を天体望遠鏡で観察すると、縞模様や4つのガリレオ衛星が楽しめます。ガリレオ衛星は双眼鏡でも見えるかもしれません。衛星の並び方が日々変わる様子は木星の面白さの一つですので、「今月の星さがし」を参考に観察してみてください。
25日の夕方から26日の未明、満月前の明るい月と大接近します。肉眼や双眼鏡で眺める、スマートフォンで撮影する、それぞれを望遠鏡で拡大する、様々な方法で楽しみましょう。
「みずがめ座」にあります。18時ごろに南の空に見え、日付が変わるころに沈みます。明るさは約0.8等級です。
0時ごろには沈みますが、宵のころに見やすい高さなので条件良く観察できます。木星と合わせて惑星観察を楽しみましょう。天体望遠鏡で見ると、環の見え方がかなり細くなっていることがわかります。お持ちでなければ、天文台や科学館などで開催される天体観察会がお勧めです。
20日の夕方から深夜、上弦の半月と接近します。木星と同様、様々な方法で観察や撮影をお楽しみください。
木星が一晩中夜空にあり見ごろを迎えています。天体望遠鏡で模様やガリレオ衛星を観察しましょう。月と惑星の接近は3回起こり、どれも肉眼や双眼鏡で楽しめます。
夜20時ごろに南東の空を見上げると、とても明るく輝く星が見つかります。太陽系の惑星の一つ、木星です。直径は地球の約11倍で太陽系最大、太陽からの距離は太陽~地球の5倍ほどで、約12年かけて太陽の周りを公転しています。
木星は今月3日に、地球を挟んで太陽と反対の方向に来る「衝(しょう)」という状態を迎えます。太陽と反対ということは一晩中見ることができ、地球からの距離が一番近くなって大きく明るく見えるので、観察するのに絶好のタイミングです。宵のころにはじゅうぶんな高さまで昇っているので、一般的な生活時間帯の間に見やすいのも嬉しいポイントです。
まずは肉眼や双眼鏡で気軽に眺めてみましょう。圧倒的な明るさに力強さを感じますが、同時に優しさや温かみも感じられそうです。また、一般に惑星は恒星よりも瞬きが小さいので、木星の光には落ち着いた安定感もあります。皆さんにはどのように感じられるでしょうか。実際に確かめてみてください。
天体望遠鏡で観察すると、木星の周囲を公転するガリレオ衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)が見えます。木星の衛星は100個近く見つかっていますが、そのなかでもガリレオ衛星は大きく明るいので、一般的な望遠鏡で簡単に見ることができます。とくに面白いのは、衛星の並び方が日々変化する様子です。
4つのうち一番内側のイオは2日弱、一番外側のカリストは17日ほどで木星を一周し、数時間から数日で並び方が変わります。観察するたびごとに、お互いの位置関係や木星からの離れ具合が変化しているのがわかるでしょう。木星の左右に2個ずつ見えたり、片側に4つ集まっていたり、ときには衛星が木星の裏に回ったり木星の影に入ったりして3つ以下しか見えないこともあります。衛星が木星のすぐそばにあるときには、木星が明るいため衛星が見づらいこともありますが、反対にガニメデやカリストが木星から離れているときには双眼鏡でも見えます。三脚などに固定すると見やすくなるでしょう。
また、木星の縞模様も見もので、小型の望遠鏡でも2~3本ほど見えます。色の違いは大気の成分や移動方向の違いによるものと考えられています。木星の自転(約10時間周期)のタイミングと合えば、目玉のような「大赤斑」という模様も見えるかもしれません。
ガリレオ衛星や縞模様の観察には大きい望遠鏡は不要ですので、お手持ちのものがあればぜひ木星に向けてみてください。宵のころには南西寄りの空に土星も見えているので、こちらにもぜひ望遠鏡を向けて環を観察しましょう。望遠鏡をお持ちでなければ、科学館や公開天文台などの天体観察会に参加してお楽しみください。
明るい天体同士が夜空で並ぶ光景は、肉眼でもよく見えるので手軽に観察することができます。月と惑星の共演のような現象は見やすくわかりやすいので、街の風景と合わせて眺める、ご家族ご友人と一緒に見上げるなど、普段の生活の一部として楽しめます。
今月は3回、月と惑星の接近を見るチャンスがあります。まず1回目は10日の未明から明け方にかけて、細い月と明けの明星の金星の共演です。早起きして、東から南東の空を眺めてみましょう。月の暗いほうがほんのりと見える「地球照」もよく見えます。夜明けの空の色がどんどん変わっていく様子と共に楽しみましょう。風景を入れて撮影するのも面白いですね。
2回目は上弦の半月と土星の接近で、20日の夕方から深夜に見られます。図では20時の様子を表していますが、18時ごろから22時ごろまでずっと見える(方向や高さは変わります)ので、手の空いた、晴れたタイミングで眺めましょう。それぞれに天体望遠鏡を向けてみるのもお勧めです。天体観察会では「ほぼ同じ方向に向けた2台の望遠鏡が、それぞれ別の天体(月と土星)を見ている」という、ちょっと不思議なことが起こるかもしれません。
最後は25日の夕方から26日の未明にかけて、月と木星の接近です。前述のとおり木星は見ごろを迎えていてほぼ一晩中見えるので、この接近もほぼ一晩中(17時ごろから4時ごろまで)見られます。とくに25日の宵のころは月と木星の間隔が小さいので、見ごたえのある大接近が楽しめるでしょう。月がそばにあると眩しさのために明るい星といえでも少し見づらくなるものですが、満月2日前の明るく大きな月の横で存在感を失わない木星、貫禄たっぷりですね。また、こちらも望遠鏡での観察もしてみましょう。
日常の中で夜空を見上げる気持ちを忘れずに、気軽で手軽な天体観察をお楽しみください。
「カシオペヤ座」と「ケフェウス座」はどちらも北の空にある星座です。日本ではほぼ一年中見ることができますが、宵の時間帯に高く昇って見やすいのは11月ごろです。夜21時ごろに北の空を見上げると、5つの星がアルファベットのMの字形に並んでいるのが見つかり、このあたりが「カシオペヤ座」です。このカシオペヤと北極星(ポラリス)の間からやや左(西)寄りに広がるのが「ケフェウス座」で、細長い五角形に星が並んでいます。
「カシオペヤ座」にはカフ、シェダルという2等星が、「ケフェウス座」にはアルデラミンという2等星があり、これらを目印にすると星座の位置の見当がつけやすくなります。残りの星も主に3等星なので、街明かりを避ければ肉眼でじゅうぶん見つけられます。5つの星で作られる、それぞれの特徴的な形を探してみてください。
ギリシャ神話ではこの二人は夫婦で、ケフェウスが国王、カシオペヤは王妃とされています。カシオペヤの口が災いして神の怒りをかい、国を荒らされたり二人の娘の王女アンドロメダを生け贄に差し出す羽目になったりと散々な目に遭ってしまいます。2等星があるとはいえ少し目立たないのは、反省しているのかもしれません。
シェダルのそばの3等星アキルドは、天体望遠鏡で観察すると黄色とオレンジ色の2つの星に見える二重星です。暗いほうのオレンジの星は紫色に見えると表現されることもあります。美しいペアを観察してみましょう。
「ケフェウス座δ(デルタ)星」は5日ほどの周期で明るさが変わる変光星です。明るさが変わる以外に特徴がなさそうに思える星ですが、実は天文学で非常に重要な意味を持つ天体です。
ケフェウス座δ星に代表されるタイプの星は、その変光周期と星本来の明るさの間に一定の関係があることが知られています。たとえば、遠く離れた銀河の中にこのタイプの変光星を見つけて変光周期を調べると、本来の明るさがわかります。その明るさと見かけの明るさを比べ、遠くなるほど見かけが暗くなるということと併せて考えると、変光星(すなわち銀河)までの距離がわかるのです。
ちょうど100年前の1923年、天文学者ハッブルがアンドロメダ座の銀河M31にこのタイプの変光星を発見し、M31までの距離を測定して「M31は天の川銀河の外にある、遠い天体である」ことを見出しました。私たちの宇宙に対する認識を大きく変える手掛かりとなった変光星を、ちょっと意識して探してみてはいかがでしょうか。
「カシオペヤ座」「ケフェウス座」の辺りは天の川が流れていて、双眼鏡で眺めているだけでも夜空の美しさを堪能できるエリアです。星の集団である星団も点在していて、天体望遠鏡で面白い姿が見られるものもあります。NGC 457(NGCはカタログの符号)には「ET星団、とんぼ星団」などの愛称がありますが、見えるでしょうか?
また、このエリアには星雲も数多く存在しています。眼視で楽しむのは少し難しいのですが、天体写真では人気のスポットです。「ハート星雲」「パックマン星雲」「くわがた星雲」などユニークな名前のものもたくさんあるので、画像検索などでお楽しみください。赤い星雲が多いのですが、NGC 7023は美しい青色の星雲で「アイリス星雲」という愛称があります。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は11月中旬の深夜1時ごろの星空です。12月中旬の深夜23時ごろ、来年1月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます)。
今月ご紹介した「カシオペヤ座」は北西の空の高いところ、「ケフェウス座」はその下のほうに見えています。北を正面にすると、「カシオペヤ座」は北極星の左上、「ケフェウス座」は北極星のちょうど左あたりになります。上の図を180度回転させて(北が下になるようにして)位置関係をつかみ、実際の空で探してみましょう。
南西の空の高いところには木星が眩しく輝いています。その木星を追うようにして、南から南東の空には冬の星座の華やかな星々がたくさん昇ってきています。肉眼で眺めるだけでなく、木星の衛星や「おうし座」のプレアデス星団などを双眼鏡で観察するのも面白いでしょう。
深夜にはすっかり冬の寒さです。手袋やマフラーなどの準備をしっかり整えて、星空散歩をお楽しみください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。