宵の南の空に土星、東の空に木星と、人気の2大惑星が揃って見えています。天体望遠鏡で環や表面の模様を観察しましょう。木星は29日の宵に明るい月と接近しますが、当日の明け方には部分月食も起こります。8月のスーパームーン、9月の中秋の名月に続き、3か月連続で満月が注目の的です。
星空写真
長野県 八千穂高原にて
2021年11月19日の夕方に起こった月出帯食(食中の月が昇ってくる現象)です。マジックアワーの東天の風景と部分月食を組み合わせました。対照的に、今月29日の明け方に見られる部分月食はマジックアワーの西天の風景とのセットになります。心揺さぶる情景が楽しめることでしょう。
2021年11月19日 16時41分
ニコン Z 6II+NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S+Z TELECONVERTER TC-1.4x(280mm、ISO200、露出1/250秒、f/4.0)
撮影者:高岡 誠一
1日(日) | 深夜~翌2日明け方、月と木星が接近 |
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2日(月) | 宵、月と木星が並ぶ |
6日(金) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
8日(日) | 未明~明け方、月とポルックスが接近 |
10日(火) | このころ、未明~明け方に金星とレグルスが接近(「今月の星さがし」で解説) |
11日(水) | 明け方、細い月と金星、レグルスが並ぶ |
15日(日) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) 北中米などで金環日食 |
18日(水) | 夕方~宵、細い月とアンタレスが接近 |
22日(日) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) |
24日(火) | 金星が西方最大離角(明けの明星として、夜明け前の東の空で明るく輝いています) 夕方~翌25日未明、月と土星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
29日(日) | 満月。次の満月は11月27日です 未明~明け方、部分月食(4時30分ごろ~6時ごろ。「今月の星さがし」で解説) 夕方~翌30日未明、月と木星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
5日ごろまで、明け方の東の低空に見えます。
日の出30分前(東京で5時過ぎ)の高度は5度前後と非常に低く、目印になるような天体もないので、見つけるのは難しそうです。スマートフォンのアプリなどで位置の見当をつけて、地平線付近まで見晴らしが良い場所で探しましょう。双眼鏡を使うと見やすくなります。
「明けの明星」として、未明から明け方の東の低空に見えます。
日の出1時間前(東京で4時45分ごろ)の高度は約30度あり、じゅうぶん見やすい高さです。マイナス4.5等級前後ととても明るく、山や建物などに隠されていなければ一目でそれとわかります。早起きして、刺さるような輝きを目にしてみましょう。
上旬から中旬にかけて「しし座」の1等星レグルスと接近します。「今月の星さがし」を参考にして、並び方の変化を追ってみましょう。11日には月齢26の細い月も加わり、3天体の共演が楽しめます。
太陽に近く、見えません。次は来年5月ごろから、明け方の東の空に見えるようになります。
「おひつじ座」にあります。18時ごろに昇ってきて、1時ごろに南の空の高いところに見えます。明るさは約マイナス2.9等級です。
空が暗くなる時間帯から見え始めてほぼ一晩中見えているので、観察シーズンまっ盛りです。明るいだけでなく南の空高く昇るおかげで、街中でもよく目をひきます。天体望遠鏡で観察すると、縞模様や4つのガリレオ衛星が楽しめます。ガリレオ衛星は双眼鏡でも見えるかもしれません。
1日の深夜から2日の明け方、明るい月と接近します。また、2日の宵にも月と並ぶほか、29日の夕方から30日の未明にも満月直後の明るい月と接近します。双眼鏡で接近する光景を眺めたり、それぞれを望遠鏡で拡大観察したりしてみてください。
「みずがめ座」にあります。20時ごろに南の空に見え、2時ごろに沈みます。明るさは約0.6等級です。
沈む時間が早くなってきましたが、宵のころに見やすい高さにあるという点では引き続き好条件です。木星と合わせて惑星観察を楽しみましょう。天体望遠鏡で見ると、環の見え方がかなり細くなっていることがわかります。お持ちでなければ、天文台や科学館などで開催される天体観察会がお勧めです。
24日の夕方から25日の未明、上弦過ぎの月と接近します。肉眼で広く眺める、双眼鏡で2天体だけの世界を切り取る、望遠鏡でそれぞれをクローズアップ、様々な方法でお楽しみください。
一番の注目は29日明け方の部分月食。欠け具合は小さいですが、夜明け空の中に欠けた月が浮かぶ不思議な光景は見ものです。明けの明星の金星は上旬から中旬にかけて、「しし座」の1等星レグルスと共演します。
日の出の1時間ほど前、空が少し明るくなり始めたころに東の空を見ると、とても眩しく輝く光が目に入ります。「明けの明星」の金星で、来年3月の初めごろまで夜明け空に見えます。今月24日に太陽から見かけ上で最も離れるので地平線からの高さが上がり、今月から12月の上旬にかけてが一番見やすい時期になります。秋から冬の冷たい空気の中で眺める金星の輝きには鋭さが感じられそうです。
金星は今月は「しし座」の領域にあり、そのライオンの胸に位置する1等星レグルスの近くを通り過ぎていきます。肉眼でよく見えるので、早起きする以外の特別な準備はいりません。気軽に眺めましょう。空の色と明るさが少しずつ変わっていく様子も同時に感じてみてください。レグルスはやがて空の明るさに負けて見えなくなってしまいますが、金星はいつまでも(条件が良ければ日の出の後も)見えています。
金星とレグルスが最も近づいて見えるのは10日ごろです。日を追って観察すると、並び方が変化することがよくわかります。撮影して記録すると、さらにわかりやすいでしょう。また、11日には細い月も近づいてきて、3つの明るい天体が一堂に会します。何度も見るのはちょっと大変だな、という方も、この日だけでもぜひご覧ください。
明け方の見ものは金星ですが、宵空では晩夏~秋の星座と、木星・土星が見ものです。このうち木星は21時ごろ東の空に、土星は21時ごろ南の空にそれぞれあり、見やすい時間帯に見やすい高さで楽しめます。天体望遠鏡で木星の縞模様や衛星、土星の環を観察してみましょう。天文台や科学館の天体観察会に参加するのもお勧めです。最近は駅前や公園などでも観察イベントが開かれていることがありますが、そうした明るい場所でも木星や土星はよく見えるので格好のターゲットなのです。
肉眼や双眼鏡では、それぞれの惑星と月が並ぶ光景に注目してみてください。木星は29日の宵から30日の未明にかけて、土星は24日の夕方から25日の未明にかけてがチャンスです(木星は1~2日も月と並びます)。上の図に挙げた時刻と方角は一例なので、当夜であれば別の時間帯でも見ることができます。方角や高さは変わりますが、月を目印にして空を見上げてみましょう。
29日の満月は、明け方に少し欠けて見えます。部分月食が起こるためです。日本で(欠けた様子がわかりやすい)月食が見られるのは、昨年11月8日の皆既月食以来となります。
月が欠け始める(部分食の始まり)は4時35分ごろ、最も欠け具合が大きくなるのは5時14分ごろです。夜が明けていくのと同時に月食が進行していくので、青黒い色から明るい色へと移り変わる空の中に欠けた満月が見えるという、不思議な光景を目にすることができそうです。
月食の時刻や月の欠け方は全国どこでも同じですが、その時刻に月がどの方角、どの高さに見えるかは場所によって異なります。日本ではどこで見ても、西の空の低いところでの現象となるため、見晴らしの良いところをあらかじめ探しておきましょう。低いということは地上の風景と一緒に見たり撮ったりしやすいということでもあるので、撮影すると面白いかもしれません。月食(部分食)が終わるのは5時53分ごろで、東日本では月没間近です。
欠ける割合が小さいので「とても見応えがある」というわけではありませんが、次に日本の広範囲で見やすい月食は2025年9月8日までないことを考えると、今回の月食も見ておこう、という気持ちになるのではないでしょうか。8月末の満月はブルームーンのスーパームーンとして、9月末の満月は中秋の名月として、それぞれ話題になりました。今月の「夜明けの空に浮かぶ欠けた満月」も、ぜひお楽しみください。
10月中旬の夜21時ごろ、頭の真上あたりに「秋の四辺形」が見えています。この四辺形の西側の辺(南を正面として右側の辺)を南の地平線に向けて伸ばしていくと、南の空の低いところに1つ、他よりも明るく輝く星が見つかります(ページ上部「10月の星空」の星図参照)。これが「みなみのうお座」を見つける目印となる1等星のフォーマルハウトです。日本には「秋のひとつぼし」「南のひとつぼし」という呼び方もあります。今シーズンは南の空に土星もあるので「ひとつぼし」ではありませんが、明るい惑星がない年にはポツンと寂しげに輝く星です。
フォーマルハウトは魚の口に当たる位置にあり、そこから右(西)の星々をつなぐと魚の姿が描けます。とはいえ、フォーマルハウト以外の星は暗いので、イメージするのは少し難しいかもしれません。星座の絵を見るとお腹を上にしてひっくり返っていますが、一説によればこれは「みなみのうお座」の上(北)にある「みずがめ座」から注がれるお酒を飲んで酔っているためだということです。
さて、このフォーマルハウトが真南の空に見えるころ、そこからさらに低いところに「つる座」も姿を見せています。左右に並ぶアルナイルとティアキは2等星で、空の条件が良ければ肉眼で簡単に見つけられますが、街明かりや大気の影響で見えにくいこともあります。双眼鏡などでこの2つの星を探し、そこから星座の全体像をイメージしてみてください。良い空に恵まれれば、長く伸びた鶴の首の星々まで見えるでしょう。
夜空に輝く星のなかには、太陽と同じようにその周りに惑星が存在するものが多数あります。これらは太陽系以外の惑星ということで「系外惑星」と呼ばれ、現時点では4000個以上の恒星に対して5500個以上の系外惑星が発見されています。
星図中の緑の矢印のあたりに光る星には2個の系外惑星が見つかっています。太陽系からこの星までの距離は約11光年、つまり光や電波が11年で届くということです。もし文明が存在すれば往復約20年で通信できる可能性があります。また、赤の矢印のあたりに光る16光年彼方の星にも1個の系外惑星が見つかっています。
以前はフォーマルハウト(25光年)にも惑星が存在するという観測成果があり、その惑星には公募で「ダゴン」という名前が付けられました。しかし現在は見失われていて、ダゴンが実在するかどうかははっきりしていません。
こうした系外惑星の探査や太陽系外生命・文明の可能性の研究は、太陽系や地球の生命について深く知ることにもつながります。秋の夜長に星空を眺めながら、学術の世界にも思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は10月中旬の深夜1時ごろの星空です。11月中旬の深夜23時ごろ、12月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます)。
南の空の高いところに木星がまぶしく輝いています。南東の空に光る「おおいぬ座」の1等星シリウスは、星座を形作る恒星としては最も明るい星ですが、木星の明るさはさらにその4倍にも達します。また、木星は瞬きがほとんど感じられない一方、シリウスは地球の大気の影響でチカチカと瞬いて見えます。木星の落ち着き、風格のようなものが感じられますね。
さらに今シーズンの木星は、ちょうど秋と冬の星座の境目のあたりに位置しています。明確な決まりや定義はありませんが、木星が輝く「おひつじ座」付近より西が秋の星座、東が冬の星座というイメージです。控えめで物静かな秋の星々と、明るくにぎやかな冬の星々の間に木星、という構図を、実際の夜空で確かめてみましょう。
深夜には肌寒さを感じることが増えてきます。暖かい服装で星空観察をお楽しみください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。