曇りや雨の日が増え、夜の時間が短いシーズンです。星空観察にはやや不向きですが、数少ないチャンスを逃さず、空を見上げてみましょう。今月はとくに、宵の西の空でかに座のプレセペ星団付近を通り過ぎていく火星と金星が見ものです。北天高く昇るりゅう座の星探しにもチャレンジしてみましょう。
星空写真
北軽井沢にて
梅雨の晴れ間に、浅間山を前景に立ち昇る銀河を撮影しました。偶然に大気光が加わってバックグラウンドが緑色になり、心揺さぶる神秘的描写となりました。昼の時間が長い6月は、大気光の発生が多い時期です。
2021年6月18日 1時46分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 28mm f/1.4E ED(ISO12800、露出5秒×8枚を合成、f/2.5)
撮影者:高岡 誠一
1日(木) | (前夜~)未明、月とスピカが接近 |
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2日(金) | このころ、夕方~宵に火星とプレセペ星団が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
3日(土) | 夕方~翌4日未明、月とアンタレスが接近 |
4日(日) | 満月。次の満月は7月3日です 金星が東方最大離角(夕方から宵に西の空で目立っています。「今月の星さがし」で解説) |
10日(土) | 未明~明け方、月と土星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
11日(日) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
13日(火) | このころ、夕方~宵に金星とプレセペ星団が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
14日(水) | 未明~明け方、細い月と木星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説) |
16日(金) | 明け方、細い月とプレアデス星団が接近 |
18日(日) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
20日(火) | 夕方~宵、細い月とポルックスが接近 |
21日(水) | 夏至(北半球では、一年のうちで一番夜が短い日) 夕方~宵、細い月と金星がやや離れて並ぶ 夕方~宵、細い月とプレセペ星団が接近 |
22日(木) | 夕方~宵、細い月と金星、火星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
23日(金) | 夕方~宵、月とレグルスが接近 |
26日(月) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) |
27日(火) | 夕方~深夜、月とスピカが接近 |
中旬ごろまで、明け方の東の低空に見えます。
日の出30分前(東京で3時50分ごろ)の高度は約5度と低く、見やすくありません。少し離れていますが右上に木星があり、水星よりも高く明るいので目印になります。まず木星を見つけてから、水星を探してみましょう。水星も0等級前後と明るいので肉眼でも見えますが、双眼鏡を使うとより見やすくなります。
「宵の明星」として、夕方から宵の西の空に見えます。
日の入り1時間後(東京で20時ごろ)の高度は約20度とやや低めですが、マイナス4等級と明るいのでとても目立ちます。21時ごろには10度まで低くなりますが、建物などに隠さなければよく見えるでしょう。
13日前後に「かに座」のプレセペ星団に大接近します。「今月の星さがし」を参考にして、双眼鏡で観察してみましょう。また、下旬からは火星と接近していきます。日に日に間隔が小さくなっていく様子を追ってみてください。22日には月齢4の細い月も加わり、3天体の共演が楽しめます。
「かに座」から「しし座」へと移動していきます。日の入り1時間後(東京で20時ごろ)に西の空に見え、22時ごろに沈みます。明るさは約1.7等級です。
暗くなったためあまり目立ちませんが、2日ごろに「かに座」のプレセペ星団に大接近する様子は見ものです。双眼鏡で観察しましょう。「今月の星さがし」も参考にしてください。
下旬からは金星が接近してきます。日を追うごとに間隔が小さくなっていく様子を確かめてみましょう。最接近は7月1日ごろです。また、22日にはこの接近に月齢4の細い月も加わり、3天体の共演が楽しめます。
「おひつじ座」にあります。2時ごろに昇ってきて、日の出1時間前(東京で3時20分ごろ)に東の空のやや低いところに見えます。明るさは約マイナス2.1等です。
あまり高くないので天体望遠鏡での観察には向いていませんが、マイナス2等という明るさのおかげでよく見え、肉眼や双眼鏡で眺めるのはじゅうぶん楽しめます。
14日の未明から明け方、月齢25の細い月と並びます。
「みずがめ座」にあります。深夜23時ごろに昇ってきて、2時ごろに南東の空に見えます。明るさは約0.9等級です。
周りに明るい星がないエリアに位置しているので目立ちます。夜更かしや早起きした際には眺めてみましょう。天体望遠鏡で観察すると、環の見え方がかなり細くなっていることがわかります。
10日の未明から明け方、月齢22の下弦前の半月と接近します。
宵の西の空に金星と火星が並んでいます。上旬から中旬にかけて、この2惑星が「かに座」のプレセペ星団のすぐそばを通り過ぎていきます。双眼鏡で観察してみましょう。
宵の明星の金星が、今月も夕方の西の空で明るく見えています。この金星が4日に「東方最大離角」という状態になります。西の空に見えているのに東方、というのは不思議な感じがしますが、これは「太陽に対して東」ということを表しています。西の地平線に沈んだ太陽を基準にすると、宵の明星は東に位置しているので「東方」です。
また、離角というのは天体の見かけの間隔を表す言葉です。最大離角というのは、見かけ上で金星が太陽から一番離れた状態である、という意味です。太陽から離れるということは、一般的には地平線からも遠く高くなり、太陽の明るさの影響が小さくなるので、最大離角のころはとくに金星が見ごろになります。
この最大離角のころに金星を天体望遠鏡で拡大して観察すると、半月状に見えます。地球から見ると金星のちょうど半分が照らされているような位置関係にあるからです。今後は地球から金星までの距離が近づいていくので金星の見かけサイズが大きくなり、一方で太陽に照らされて見える部分の割合が減っていくので形はどんどん細くなっていきます。機会があれば形を確かめてみてください。
夕空の金星は火星と並んでいて、どちらも「かに座」のあたりを動いていきます。「かに座」の中央付近にはプレセペ星団という星の集団があり、2日ごろに火星が、13日ごろに金星が、それぞれ大接近します。
プレセペ星団は空が暗ければ肉眼でも見えるほど目立つ天体で、多少の街明かりがあるところでも双眼鏡を使えばいくつかの星を見ることができます。星団を探そうとしなくても、火星や金星に双眼鏡を向ければ一緒に見えるはずです。星図を参考にして、それぞれの惑星と星団との位置関係や離れ具合を確かめてから観察してみましょう。時間帯が早いと空が明るく(星団の星が見づらく)、遅いと天体が低くなってしまうので、20~21時ごろがおすすめです。かにの「あぶく」のような星々と明るい惑星(とくに金星)の輝きの対比の美しさを、ぜひご堪能ください。
さて、プレセペ星団のそばを通り過ぎていった火星と金星は少しずつ近づいていき、下旬から双眼鏡の同一視野に入るようになります。金星も火星も惑星なので、私たちから見ると背景の星々に対して動きますが、今の時期、金星と火星は見かけ上同じ方向に動いており、金星のほうが見かけの動きが大きいので、金星が火星に追い付いていくように見えるのです。最接近は7月1日ごろです(詳しくは来月ご紹介します)。
22日の宵には両惑星の近くに月齢4の細い月もやってきて、3天体の共演が起こります。地球の衛星、地球の1つ内側の惑星、1つ外側の惑星が並んで見えるわけですね。比較的バランスの良い、形が整った三角形の並びになり、見ごたえがあります。肉眼でもじゅうぶん楽しめますし、双眼鏡で3天体を閉じ込めたように観察するのも面白いでしょう。地上風景を入れた写真撮影もおすすめです。
また、日付はさかのぼりますが、10日の未明から明け方には下弦前の半月と土星が接近して見え、14日の未明から明け方には細い月と木星が並んで見えます。宵空と比べると見づらい時間帯の現象ですが、ぜひこちらも観察してみてください。
接近・共演は毎月のように起こるので、物珍しさや目新しさは感じないかもしれません。とはいっても、天候や生活リズムの都合で毎回見られるとは限りませんし、日常の中で空を見上げるきっかけとしては良いものです。気軽に気楽に、楽しみましょう。
「りゅう座」は北天の星座で、「おおぐま座」(北斗七星)や「こぐま座」と同じように、日本ではほぼ一年中見ることができます。夜21時ごろに高く昇って見やすいのは6月ごろです。北斗七星と北極星、「こと座」の1等星ベガに囲まれた、平仮名の「て」のように並んだ星々が「りゅう座」を構成しています。
「りゅう座」には目立って明るい星はありませんが、竜の頭に位置する2等星のエルタニンは意外と目立ちます。宵のころ、北東の空に昇ったベガの近くに星が見えれば、きっとエルタニンでしょう。他の星は3等級より暗いため、空の条件が良いところでなければ見えないかもしれません。北斗七星や北極星、ベガとの位置関係を手掛かりにして、竜の長い体をたどったり想像したりしてみましょう。
竜の頭に位置する4つの星々は、2等級のエルタニンと3等級のラスタバン、そして4、5等級の明るさです。どの星まで見えるかによって、夜空の暗さをおおまかに知ることができます。郊外でも双眼鏡を使うと4つとも見えるので、観察してみましょう。
竜の首の辺りには、猫の目のように見えることからその名が付けられた「キャッツアイ星雲」(カタログ番号ではNGC 6543)という天体があります。
太陽のような星は一生の終わりに差し掛かると、宇宙空間にガスを放出します。そのガスが中心の星に照らされて光っているのが、キャッツアイ星雲のような「惑星状星雲」に分類される天体です。
星図の画像はハッブル宇宙望遠鏡が撮影したもので、複雑に入り組んだ構造や同心円状の模様などが見えます。インターネットで検索すると、さらに外側の様子やX線で観測した画像など様々な表情を楽しめます。曇りや雨の夜には天体画像を眺めて、宇宙を楽しみましょう。
竜の尾にある4等星トゥバンは目立つ星ではありませんが、歴史的には重要な意味のある天体です。
約4000~5000年前のエジプト文明が栄えたころは、このトゥバンが北極星でした。「北極星」とは地球の自転軸を天に伸ばした先の辺りに位置する星を指し、地球の歳差という運動(不安定なコマが見せる首振りに似た運動)によって時代と共に移り変わっていきます。現在は「こぐま座」のポラリスが北極星ですが、過去や未来の北極星は別の星なのです。
明るい夜空でトゥバンを見つけるのは難しそうですが、エジプト文明当時の空なら肉眼でも簡単に見え、北の方角を示す星として重宝されていたことでしょう。人類の歴史や当時から続く天体観察の意義、楽しさなどを想像しながら、ぜひトゥバンを探してみてください。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は6月中旬の深夜1時ごろの星空です。7月中旬の深夜23時ごろ、8月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます)。
頭の真上(図の真ん中)に輝くのは、七夕の織り姫星として有名な「こと座」のベガです。ベガと、その南にある「わし座」のアルタイル(彦星)、そして「はくちょう座」のデネブを結ぶと「夏の大三角」ができあがります。また、ベガと北西の空に見える「北斗七星」の間に、「今月の星座」でご紹介した「りゅう座」があります。深夜になれば街明かりが減り、竜の頭の四角形も見つけやすくなるかもしれません。
南の空の低いところに見えるのは「さそり座」や「いて座」です。空の条件が良ければ、これらの星座と夏の大三角との間に天の川も見えそうです。また、南東の空には土星も姿を現しています。
2時半から3時ごろにはもう夜明けが始まってしまいますが、短時間でも空を見上げてお楽しみください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。