Nikon Imaging
Japan
プレミアム会員 ニコンイメージング会員

2023年5月の星空

暖かくなり、星空観察に適した季節がやってきました。宵のころに空を見上げると、北斗七星から伸びる春の大曲線が天頂を通って南の空へと伸びています。その南の空に広がる春の大三角は、しし座やうしかい座、おとめ座など春の星座たちを見つける目印になります。星座を探したり宵の明星を真っ先に見つけたりと、日常の中で気軽・手軽に星空を楽しみましょう。

星空写真

愛知県豊橋市にて
わが街、愛知県豊橋市の夜景に沈む細い月と金星の様子を5分おきに撮影しました。今月23日にも、細い月と金星の大接近が見られます。この写真を撮影した2017年の時よりも接近するので見ごたえがあり、今から楽しみです。

2017年1月31日 18時13分
ニコン D800E+AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(28mm、ISO400、露出各2秒を合成、f/4.0)
撮影者:石橋 直樹

5月の星空

南の空

南の空

2023年5月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(28日)、満月(6日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2023年5月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

4日(木) 未明、月とスピカが並ぶ
夕方~翌5日未明、月とスピカが並ぶ
6日(土) 立夏(こよみの上で夏の始まり)
満月。次の満月は6月4日です
0時から4時ごろにかけて、半影月食(「今月の星さがし」で解説)
みずがめ座η流星群の活動がピーク(「今月の星さがし」で解説)
7日(日) 宵~翌8日明け方、月とアンタレスが大接近
9日(火) このころ、夕方~深夜に火星とポルックスが並ぶ
12日(金) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
14日(日) 未明~明け方、月と土星が接近(「今月の星さがし」で解説)
18日(木) 明け方、細い月と木星が接近(「今月の星さがし」で解説)
20日(土) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
23日(火) 夕方~宵、細い月と金星が大接近(「今月の星さがし」で解説)
24日(水) 夕方~宵、月と金星がやや離れて並ぶ
夕方~深夜、月と火星が接近(「今月の星さがし」で解説)
夕方~深夜、月とポルックスが接近
27日(土) 夕方~深夜、月とレグルスが接近
28日(日) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
29日(月) このころ、夕方~宵に金星とポルックスが接近
31日(水) 未明、月とスピカが並ぶ
夕方~翌1日未明、月とスピカが接近

5月の惑星

水星

下旬から、明け方の東の低空に見えます。

日の出30分前(東京で4時ごろ)の高度は約5度と低く、見やすくありません。木星が近くにあり、水星よりも高く明るいので目印になります。まず木星を見つけてから、水星を探してみましょう。肉眼でも見えますが、双眼鏡を使うとより見やすくなります。

金星

「宵の明星」として、夕方から宵の西の空に見えます。

日の入り1時間後(東京で19時40分ごろ)の高度は約25度と比較的高く、マイナス4等級ととても明るいのでとても目立ちます。また、日の入りが遅くなっているので、東日本でも22時過ぎまで(西日本なら22時半やそれ以降まで)金星が地平線上にあります。意外と遅い時間まで金星を見ることができるので、思いがけず目にしてびっくりするかもしれません。

23日の夕方から宵に、月齢4の細い月と大接近します。翌24日にも、間隔は広くなりますが並んで見えます。明るく輝く2天体の共演をお見逃しなく。地上風景を入れて撮影もしてみましょう。月末には「ふたご座」の1等星ポルックスに近づきます。

火星

「ふたご座」から「かに座」へと移動していきます。20時ごろに西の空に見え、23時半ごろに沈みます。明るさは約1.5等級です。

明るさの点では目立たなくなってきましたが、中旬ごろまで「ふたご座」のポルックス、カストルと並んでいる光景が目を引きます。さながら「三つ子」のように見えるでしょう。日を追うごとに並び方が変化する様子も見ものです。

24日の夕方から深夜、月齢5の月と接近します。火星と月、ポルックスとカストルに加えて金星も比較的近く、宵の西の空が大にぎわいです。眺めたり撮ったりしてお楽しみください。月末からは「かに座」のプレセペ星団に近づきます(詳しくは来月ご紹介します)。

木星

「うお座」と「おひつじ座」の境界付近にあり、月の後半ごろから明け方の東の低空に見えます。明るさは約マイナス2.1等です。

日の出30分前(東京で4時ごろ)の高度は約10度と低いのですが、マイナス2等という明るさのおかげで、同じ明け方の空にある水星よりは見やすいでしょう。ただし、建物などに隠されてしまう可能性もあるので、見晴らしの良いところで探してみてください。低いため天体望遠鏡での観察には向いていません。

18日の明け方に月齢28の細い月と接近します。「今月の星さがし」を参考に、早起きして観察に挑戦しましょう。

土星

「みずがめ座」にあります。1時ごろに昇ってきて、日の出1時間前(東京で3時30分ごろ)に南東の空に見えます。明るさは約1.0等級です。

やや低めながら、肉眼や双眼鏡で見るにはじゅうぶんな高さです。夜更かしや早起きした際には眺めてみましょう。望遠鏡での見ごろはもう少し先になりそうです。

14日の未明から明け方、月齢24の月と接近します。

今月の星さがし

6日の未明に半影月食、翌7日の夜明け前に流星群があります。時間帯も条件も見やすいとは言えませんが、気にかけておきたい現象です。月と惑星の共演は、最も見ものの金星を含めて4回起こります。

6日未明~明け方、半影月食

宇宙空間には地球の影が、太陽と反対方向に長く伸びています。この影の中にちょうど月が入ると、月が暗くなって欠けたように見える「月食」が起こります。

地球の影のうち濃い部分を「本影」、薄い部分を「半影」と呼び、本影の周りに半影が広がっています。一般に月食というと本影の中に月が入って月の色や形が変わる現象(部分月食や皆既月食)を指しますが、半影の部分に月が入って起こる「半影月食」というタイプの現象もあります。5月6日の未明から明け方に見られるのが、この半影月食です。

月食が最大となる2時23分の空の様子と月の拡大図(場所の設定は東京)。上がわずかに暗くなる。月食は日食と違い、全国どこで見ても同じ時刻に起こる(開始:0時14分/最大:2時23分/終了:4時32分)が、月の高度や空の明るさは場所によって異なる

半影は月(満月)の明るさに比べるとずっと淡いので、半影月食では月の明るさの変化はわかりにくく、色や形の変化はほとんど見えません。月と半影との重なりが最大となる2時23分前後に、月の上(うさぎ模様の、腰の辺り)が少し暗くなっているので、注意深く観察してみてください。双眼鏡で拡大し、月の欠けているところだけ見る(明るい部分を視野から外す)と、多少は見やすいでしょう。また、眼視でわからなくても、拡大撮影するとほんのり暗い様子が写るかもしれません。必見と言えるほどのお勧め度ではありませんが、微妙な明るさの違いを楽しんでみるのも、ときには面白いものですよ。

7日明け方、みずがめ座η流星群

みずがめ座η(エータ、イータ)流星群は、毎年ゴールデンウィークの終盤に活動がピークとなる流星群です。「みずがめ座」のη星付近にある放射点(流れ星が飛ぶ中心の方向)を中心として四方八方に流れ星が飛ぶように見えることから、このような名前で呼ばれています。

今年は6日の深夜に計算上のピークを迎えると予想されますが、実際に見えるのは日付が変わって7日の明け方ごろになります。先にご紹介したとおり6日が月食、つまり満月ですから、7日の明け方にも月明かりの影響が大きく及びます。そのため、流れ星はほとんど見えないかもしれません。

5月7日 3時30分(場所は東京)の空全体の様子。流れ星は、放射点が位置する東の空だけではなく、あちこちに飛ぶ

放射点は東の低空、ちょうど土星が見えるあたりに位置しています。とはいえ流れ星は空のどの方向にも飛ぶので、東に集中するのではなく、なるべく広く見渡すと良いでしょう。眩しさを避けるために月や街灯から離れた方向を中心に眺めるのがお勧めです。連休最終日の明け方ということもあり、無理に夜更かしするほど注目の現象ではありませんが、もし起きていたら、ちょっと運試しとして空を見上げてみてはいかがでしょうか。

月と惑星の接近:今月は4回の共演

月と惑星の接近現象をまとめてご紹介しましょう。先月までは「月と金星」「月と火星」の2つだけでしたが、今月からは木星と土星も見え始めるので、4回チャンスがあります。

まず最初は14日の未明から明け方にかけて、下弦を過ぎてやや細くなった月と土星が並びます。続いて18日の明け方、月齢28という非常に細い月と木星が接近します。こちらはかなり低いので、東の空がよく開けているところで観察しましょう。地平線まで見渡せて空気が澄んでいれば、月の下のほうに水星も見えるかもしれません。

5月14日と15日の明け方の、東から南東の空の様子(場所の設定は東京)。大きい円は拡大イメージ(視野6度)、小さい円はさらに拡大したイメージ(正立像、月と惑星で拡大率は異なる)

20日の新月を挟んで、月は明け方の空から夕方、宵の空へと移ります。そして23日に細い月と宵の明星の金星が大接近し、翌24日には細めの月と火星が並びます。この2日間の現象はセットで観察したいですね。「ふたご座」の1等星ポルックスと2等星カストルも近くにあり、にぎやかな雰囲気です。

5月23日と24日の20時の、西の空の様子(場所の設定は東京)。大きい円は拡大イメージ(視野6度)、小さい円はさらに拡大したイメージ(正立像、月と惑星で拡大率は異なる)

「月と惑星の接近」とまとめていますが、惑星の色や明るさ、月の形、周りの星々の様子はそれぞれ異なります。また、見える時間帯や方角、高さもそれぞれなので、空気感や地上の様子も変化します。生活リズムや天候などの都合で全部の共演を見ることは難しいかもしれませんが、ぜひ1回でも多くご覧になってみてください。個々の接近の美しさ面白さが、他と比較することでさらに引き立つかもしれませんよ。

今月の星座

ケンタウルス座、みなみじゅうじ座、おおかみ座

5月中旬の夜21時ごろ、南の空に「春の大三角」が大きく広がっています。そのずっと下のほう、地平線近くに広がるのが「ケンタウルス座」と「おおかみ座」です。聞き慣れない名前かもしれませんが、「ケンタウルス座」は半人半馬のケンタウルスを描いた星座で、「おおかみ座」はケンタウルスの槍に突かれています。

さらに、ケンタウルスの後ろ足あたりには「南十字星」として知られている「みなみじゅうじ座」があります。

「ケンタウルス座」「みなみじゅうじ座」「おおかみ座」(NGC 5128とNGC 5139の画像クレジット:ESO DSS2 (AURA))

本州あたりでは地平線に近く、ケンタウルス座の一部や南十字星はまったく見えませんが、沖縄や小笠原では5月の真夜中ごろ、南の地平線ギリギリのところにケンタウルスの足先や南十字星が昇ります。さらに南、シンガポールあたりでは多少見やすくなり、オーストラリアあたりまで南下すればほぼ一年中見ることができます。

「ケンタウルス座」や南十字星を見つける際に目印になるのは、ケンタウルスの2つの1等星、リギルケンタウルスとハダルです。明るいほうのリギルケンタウルスからハダルへと線を結んで延ばした先に、南十字星があります。実は南十字星のアクルックス(図で十字の下の星)とミモザ(左の星)も1等星なので、この付近には4つも1等星が集まっていて華やかです。ちなみに「みなみじゅうじ座」は、全天88星座の中で一番小さい(領域が狭い)星座です。

リギルケンタウルス

「ケンタウルス座」のリギルケンタウルスは、様々な点でとても興味深い星です。

まず、リギルケンタウルスを天体望遠鏡で観察すると、2つの1等星(0等級と1.4等級)に分離して見えます。公式には明るい0等級の星がリギルケンタウルスで、暗い1.4等級の星には「トリマン」という別の名前が付いています。つまり実は、「ケンタウルス座」にはハダルを含めて1等星が3つもあることになります。

次に、リギルケンタウルス&トリマンは、太陽系から最も近い恒星系です。最も近いといっても光の速さで4.3年ほどかかります(時速1000kmの飛行機なら約470万年かかります)。この恒星系にはもう1つ暗い星も含まれていて、この「プロキシマケンタウリ」という名前の星が太陽系に最も近い恒星です。距離は約4.2光年です。

さらに、プロキシマケンタウリにはその周りを回る惑星が2つ見つかっています。太陽系の惑星以外で一番近くにある惑星たちということになります。

ω星団、ケンタウルス座A電波源

「ケンタウルス座」にある別の見どころ天体に「ω(オメガ)星団」(カタログ番号ではNGC 5139)があります。数百万個もの恒星がボール状に集まった球状星団というタイプの天体で、空の条件が良ければ肉眼でも見えるほどの明るさと大きさを誇ります。

また、NGC 5128というカタログ番号の天体は、中央を暗黒部が横切る姿が印象的な銀河です。非常に強力な電波を放っていることから「ケンタウルス座A電波源」という名前で呼ばれることもあります。双眼鏡でもボンヤリとした像が見えますが、天体望遠鏡や天体写真向けの対象です。

日本ではどちらも高く昇らないため見づらいのですが、南半球では必見の天体です。インターネットの画像検索などで調べておいて、いつかぜひご自身の眼でも観察してみてください。

コールサック、宝石箱星団

「みなみじゅうじ座」にもいくつか見どころがあります。まず1つ目は「コールサック(石炭袋)」という愛称が付けられた領域で、天の川の流れの中に、穴が開いたように見える部分です。星図(文字や線がないもの)の、アクルックスとミモザのすぐ左が不自然に暗くなっているのがわかるでしょうか。

コールサックの正体は、ガスや塵が濃く集まった暗黒星雲というタイプの天体です。背景の星の光を遮ってしまうので、まるで何もないように見えるというわけです。天の川が見えるくらい空の条件が良ければ、肉眼で簡単に存在がわかります。

2つ目の見どころは「宝石箱星団」(カタログ番号ではNGC 4755)という星の集団で、ミモザのすぐ隣にあります。観察には天体望遠鏡が必要ですが、星の配列や色、明るさのバランスがよく、まさに宝石箱と呼ぶにふさわしい美しさです。

緑の線:各星座の領域(境界線)/オレンジの線:この線より上(北)の星が、札幌・東京・那覇のそれぞれで見られる。札幌ではω星団は見えない。東京ではω星団は低空に見えるがリギルケンタウルスや南十字星は見えない。那覇では非常に低空ではあるが南十字星が全部見える

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は5月中旬の深夜1時ごろの星空です。6月中旬の深夜23時ごろ、7月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星が見えることもあります)。

2023年5月中旬 深夜1時ごろの星空

「春の大曲線」や「春の大三角」が西の空に移りました。西を向いて空を見上げる(図を時計回りに90度回転させて見る)と、春の大曲線が北西(右)から南西(左)へと大きなアーチを描きます。北斗七星からアルクトゥールス、スピカと、アーチをたどってみましょう。

南の空では「さそり座」のアンタレスの赤さが目立ちます。近くに「おおかみ座」の星もいくつか見えるかもしれません。また、東の空の高いところに「夏の大三角」が輝いています。アンタレスの赤い色と、大三角の星々の白い色を見比べてみてください。天の川も見えるかもしれません。

明け方が近づくと土星や木星も東の低空に姿を見せます。うっかり夜更かしし過ぎた日には、ひと目ご覧になってからお休みください。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

星空観察のワンポイントアドバイス

ニコンイメージングプレミアム会員
ニコンイメージング会員