引き続き、宵の明星が注目度ナンバーワン。プレアデス星団との共演や細い月との大接近と、それぞれに趣のある夕景を見せてくれます。20日の部分日食は一部地域のみの現象ですが、次の国内日食は7年後なのでチャンスがある方はぜひご覧ください。
星空写真
妙義山にて
撮影当日は快晴無風の好適なコンディションに恵まれ、明るい月の光に照らされたソメイヨシノがブレることなく高精細に描写されました。会心の一枚です。
2022年4月12日 23時6分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G(ISO400、露出60秒×120枚を合成、f/4.0)
撮影者:高岡 誠一
2日(日) | 夕方~翌3日未明、月とレグルスが接近 |
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6日(木) | 満月。次の満月は5月6日です 宵~翌7日明け方、月とスピカが接近 |
10日(月) | 未明~明け方、月とアンタレスが並ぶ 深夜~翌11日明け方、月とアンタレスが並ぶ |
11日(火) | このころ、夕方~宵に金星とプレアデス星団が接近(「今月の星さがし」で解説) |
13日(木) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
20日(木) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) 14時ごろ、沖縄などで部分日食(「今月の星さがし」で解説) |
22日(土) | 夕方~宵、細い月とプレアデス星団が接近 |
23日(日) | 夕方~宵、細い月と金星が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
24日(月) | 夕方~宵、細い月と金星がやや離れて並ぶ |
26日(水) | 夕方~深夜、月と火星が接近 夕方~翌27日未明、月とポルックスが接近 |
28日(金) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) |
29日(土) | 夕方~翌30日未明、月とレグルスが接近 |
18日ごろまで、夕方の西の低空に見えます。
日の入り30分後(東京で夕方18時45分ごろ)の高度は10度前後で、常に太陽の近くにあるため見づらい水星としては好条件です。5日から15日ごろは0等級ほどの明るさで、この点でも見やすくなります。
好条件で見やすいとはいえ、10度というのはかなり低いので、西の空が低いところまで見渡せるところで探しましょう。スマートフォンのアプリなどを使うと、方角や高さがわかりやすくなります。肉眼でも見える明るさですが、春霞の影響などで見づらいかもしれません。双眼鏡を使うと見やすいでしょう。
「宵の明星」として、夕方から宵の西の空に見えます。
日の入り1時間後(東京で19時15分ごろ)の高度は約25度と、比較的見やすい高さです。実際にはもっと早い時間帯=もっと高いころから見えるので、思った以上に高いところにあると感じられるかもしれません。マイナス4等級ととても明るく、夕空でとても目立ちます。
11日ごろに「おうし座」のプレアデス星団(すばる)と接近します。肉眼でも見えますが、双眼鏡を使うと、さらに美しい光景を楽しめるでしょう。また、23日に月齢3の細い月と大接近します。眺めるだけでなく、地上風景を入れた撮影もしてみましょう。
「ふたご座」にあります。20時ごろに西の空の高いところに見え、0時ごろに沈みます。明るさは約1.2等級です。
地球からさらに遠ざかったため暗くなりましたが、それでもいわゆる「1等星」の輝きを維持しています。西の空に広がる冬の星座たちを眺めるときには、火星の色や明るさも確かめてみましょう。
26日の夕方から深夜、月齢6の上弦前の月と接近します。肉眼や双眼鏡で観察してお楽しみください。
太陽に近いため、見えません。次は5月下旬ごろから、明け方の東の低空に見えるようになります。
「みずがめ座」にあり、明け方の東南東の空に見えます。明るさは約1.0等級です。
日の出1時間前(東京で4時10分ごろ)の高さが約10度とかなり低いため、観察は困難でしょう。
夕空で、金星がプレアデス星団や細い月と接近します。肉眼や双眼鏡で観察しましょう。20日のお昼過ぎには沖縄などで部分日食が起こります。
一番星として夕方から宵に西の空に見えている「宵の明星」の金星が、引き続き見ごろです。西の空では「おうし座」や「オリオン座」といった冬の星座が今シーズン最後の姿を見せていますが、金星はその「おうし座」の中を動いていきます。そして11日前後に、「おうし座」にある有名な星の集まり「プレアデス星団」の近くを金星が通り過ぎていきます。
日の入りから金星が沈むまでは約3時間あり、観察できる時間帯は比較的長めですが、空が明るいうちはプレアデス星団の星が見づらく、時間が遅くなると金星や星団が低くなってしまうので、日の入りから1時間後(東京で夜19時10分ごろ)から1.5時間後くらいが見やすいでしょう。
プレアデス星団は肉眼でも星が数えられるくらい明るい天体ですが、双眼鏡を使うと星の数が増え、さらに見ごたえが増します。また、双眼鏡なら、多少の街明かりがあっても見ることもできます。フィールドスコープや倍率が低めの天体望遠鏡で観察するのもお勧めです。地上風景を取り入れた写真撮影や拡大撮影にも、ぜひ挑戦してみてください。数日間にわたって観察や撮影をすれば、並び方が変わっていく様子も楽しめます。
プレアデス星団は「すばる」という和名がよく知られています。約1000年前、清少納言は『枕草子』の中で「星はすばる。……ゆうづつ。……」(星といえば「すばる」や「ゆうづつ=宵の明星」が良い)と記しました。はるか昔から親しまれてきた「すばる」と「ゆうづつ」が春の夕景の中で接近する様子を、現代の私たちも楽しみたいですね。
それから約10日後、23日の宵には、金星のそばに月齢3の細い月がやってきます。先月24日の大接近では沖縄などで金星が月に隠される金星食となりましたが、今回は隠されるほどの接近にはなりません。とはいえ、月の見かけサイズの3~4個分の間隔で、とても印象的な光景となることは間違いありません。細い月と金星の共演は毎月のように起こりますが、何度眺めても見飽きることのない美しさと感動があります。肉眼で、双眼鏡で、写真撮影で、様々にお楽しみください。
20日の昼過ぎ、太陽の手前を月が横切って隠す日食が起こり、日本では太陽の一部だけが隠される部分日食として見られます。日本で日食が見られるのは2020年6月以来、約3年ぶりです。
観察可能な地域は南西諸島や小笠原諸島がメインです。那覇では太陽の直径の15%程度、国内で最も大きく欠ける小笠原でも30%弱という、控えめな部分日食です。九州南部から四国南部、紀伊半島から関東の太平洋沿岸地域でも見られますが、これらの場所ではごくわずかしか欠けないため、実質的には観察は難しいでしょう。なお、欠け始める時刻や最も大きく欠ける時刻は場所により異なるので、観察にチャレンジする場合にはよく確かめておきましょう。おおむね13時30分過ぎに始まり、14時30分前後に最大となり、15時ごろに終わります。
見られる場所が限られるうえに欠ける量も小さめと、少し物足りない感はあるかもしれませんが、次に日本で日食が見られる機会は7年後の2030年6月1日までありませんので、チャンスがある方はぜひ観察してみましょう。専用の道具を使う、目を休めるなど、安全にはじゅうぶんご注意ください。
ちなみにこの日食は、地球規模で見るとオーストラリア北西部や東ティモールなどで皆既日食となります。インターネット中継などで楽しみましょう。また、インド洋や太平洋では金環日食となります。一つの日食が見る場所によって皆既日食にも金環日食にもなるという珍しい現象で、「金環皆既日食」と呼ばれます。英語では「ハイブリッド・エクリプス(hybrid eclipse)」、格好良い響きがありますね。地球全体に想像を広げたり、宇宙の中での太陽と月の位置関係に思いを巡らせたりと、複合的な(ある種のハイブリッドな?)観点でもお楽しみください。
4月中旬の夜21時ごろ、北の空の高いところに、北極星を見つける目印として有名な「北斗七星」が昇っています。この北斗七星を含むのが「おおぐま座」です。星図を見ると、北斗七星の水を汲む部分が熊の腰、柄の部分が尻尾にあたるのがわかります。
一方、北極星は「こぐま座」に含まれる星で、熊の尻尾の先で光っています。「こぐま座」の星々もひしゃくのような形に並んでいることから、「小柄杓(こびしゃく)」と呼ばれることもあります。
北斗七星の星々は2等級(真ん中のメグレズだけ3等級)、小柄杓のほうも北極星(ポラリス)とコカブは2等級です。街中からでも見つけられるので、ぜひ探してみましょう。これらの星々を手掛かりにすると、熊の顔や足の部分もイメージできるようになります。
「おおぐま座」は、日本からはほぼ一年中いつでも北の空のどこかに見えますが、宵のころに高く昇るのは今の時期です。一番高く昇ると、北斗七星は伏せた傾きになり、大熊は走り高跳びの背面跳びのような仰向けの角度になります。同じころ、小熊のほうは地面に足をついているような角度で見えます。季節や時間帯によって、この角度は変わってきます。ギリシャ神話では親子とされている熊の姿を、北の空に思い描いてみましょう。
北斗七星の柄の端から2番目の星、ミザールのすぐそばには、よく見ると別の暗い星があります。4等級のアルコルです。
古くから知られている二重星で、兵士の視力検査に使われたと言われています。視力が良い人なら肉眼でも2つの星が見えますが、アルコルは暗いので空の条件が良いことも大切です。双眼鏡を使えば見やすくなるでしょう。
天体望遠鏡を使うと、さらにもう1つ、アルコルとは別の星があることもわかります。お持ちの方は観察してみてください。
M81とM82(Mはカタログの符号)は、北斗七星の水を汲む部分の星、フェクダとドゥベを結んだ線を同じ長さほど延ばしたあたりに並んでいる銀河です。眼視ではぼんやりと見えるだけですが、天体写真ではM81の美しい渦巻きとM82の葉巻のような不規則な形がとらえられ、好対照を楽しめます。
この2つの銀河は見かけ上たまたま並んでいるのではなく、実際に同じくらいの距離(約1200万光年)のところにあり、お互いに重力的な影響を及ぼしあっています。また、その影響によってM82では激しい勢いで星が生み出されています。
一方、北斗七星の柄の先あたりにはM101という銀河があります。M81と同様に美しい渦巻きが特徴で、「回転花火銀河」という愛称があります。距離はおよそ1900万光年です。やはり眼視では渦巻きの細かい様子までは見えませんが、天体写真では人気のターゲットになっています。
どれも、銀河としては明るく見やすい天体です。明るいとはいっても、空の条件の良いところで双眼鏡や天体望遠鏡を使わなければ見えませんが、光の速さで1000万年以上もかかるところにある天体の光を目にできるチャンスですので、機会があればぜひ探して観察してみましょう。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は4月中旬の深夜1時ごろの星空です。5月中旬の深夜23時ごろ、6月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星が見えることもあります)。
北斗七星がやや北西に傾き、小柄杓が北天に真っすぐ立っています。北を正面にして空を見上げる(図を180度回転させて見ることになります)と、北斗七星はちょうど、水に柄杓を差し入れるような角度になっています。この柄のカーブを南へと延ばしていくと、頭の真上を通って「うしかい座」のアルクトゥールス、そしてスピカへと続く「春の大曲線」が描けます。大きく伸びをしながら眺めてみましょう。
東の空には夏の星座たちも見え始めています。南東の空に赤く輝く「さそり座」のアンタレスや、東から北東に見える「夏の大三角」が目立ちます。アンタレスの赤と大三角の白、という色の違いも楽しめます。空が暗ければ、低いところに天の川もうっすらと見えるかもしれません。
だいぶ暖かくなり、深夜の星空観察もしやすくなってきました。春から夏へと移り変わる星空をお楽しみください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。