宵の明星・金星の高度が上がり、夕空で見やすくなってきました。2日前後に木星と、24日に細い月とそれぞれ大接近する、今月一番の注目天体です。宵のころには冬の大三角が南西に傾き、東の空に春の大三角が昇り、季節の移ろいを感じられます。
星空写真
長野県南木曾町妻籠にて
昼間の喧騒に反して夜中は誰もいない、貸し切り状態での妻籠での撮影でした。街並みの間に夏の天の川が入る3月から4月の時間帯をあらかじめ調べて撮影に臨みましたが、街並みの光が思いのほか強かったため、試行錯誤して撮影したことが思い出に残っています。
2021年4月15日 3時24分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED(ISO6400、露出15秒×16枚を合成、f/3.2)
撮影者:石橋 直樹
1日(水) | (前夜~)未明、月と火星が接近 |
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2日(木) | このころ、夕方~宵に金星と木星が大接近(「今月の星さがし」で解説) 深夜~翌3日未明、月とポルックスが並ぶ |
6日(月) | 未明、月とレグルスが並ぶ 夕方~翌7日未明、月とレグルスが並ぶ |
7日(火) | 満月。次の満月は4月6日です |
10日(金) | 未明~明け方、月とスピカが接近 |
14日(火) | 未明~明け方、月とアンタレスが接近 |
15日(水) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
21日(火) | 春分 |
22日(水) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
23日(木) | 夕方、細い月と木星が並ぶ |
24日(金) | 夕方~宵、細い月と金星が大接近(九州南部~沖縄で金星食。「今月の星さがし」で解説) |
26日(日) | 夕方~宵、月とプレアデス星団が接近 |
28日(火) | 夕方~翌29日未明、月と火星が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
29日(水) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) |
30日(木) | 夕方~翌31日未明、月とポルックスが大接近 |
月末ごろに、夕方の西の低空に見えます。
日の入り30分後(東京で夕方18時30分ごろ)の高度が5度前後と非常に低いので、見晴らしの良いところで探しましょう。スマートフォンのアプリなどを使うと、方角や高さがわかりやすくなります。肉眼でも見える明るさですが、双眼鏡を使うと見やすいでしょう。
28日ごろに木星と大接近します。明るいほうが木星、暗いほうが水星です。見えるかどうかチャレンジしてみてください。
「宵の明星」として、夕方から宵の西の空に見えます。
日の入り1時間後(東京で18時50分ごろ)の高度は約20度あり、やや低めながらとても明るいのでよく目立ちます。もっと早い時間帯の、空がまだ明るいうちから見ることもできるので、ぜひ探してみましょう。
2日ごろに木星と大接近します。明るい2惑星が寄り添って輝く光景は見ものです。また、24日に月齢3の細い月と大接近します。肉眼や双眼鏡で観察したり、地上風景と共に撮影したりしてみましょう。九州南部から沖縄では、月が金星を隠す現象も見られます。
「おうし座」にあり、月末に「ふたご座」へと移ります。19時ごろに南西の空の高いところに見え、1時ごろに沈みます。明るさは約0.7等級です。
地球から遠ざかり、冬の間よりも暗くなりましたが、火星と同じく赤っぽく光る「おうし座」のアルデバランや「オリオン座」のベテルギウスと似た明るさになったことでバランスは良くなりました。南西の空に輝く赤い三角形を眺めて楽しみましょう。火星が動くにつれて、三角形の形状が日々変わっていく様子も面白いものです。二等辺三角形に見えるのは18日ごろです。
1日の未明に月齢8の上弦過ぎの月と接近します。また、28日の夕方から29日の未明には月齢7の上弦の半月と大接近します。肉眼や双眼鏡で観察してお楽しみください。
「うお座」にあり、夕方の西の低空に見えます。明るさは約マイナス2.1等級です。
かなり低めですが、上旬の間は宵の明星の金星と並んでいるので見つけやすいでしょう。最接近は2日ごろです。
中旬以降はさらに高度が下がって見づらくなります。23日の細い月との共演や、月末ごろの水星との大接近を見るのは困難ですが、意欲のある方は双眼鏡で観察してみましょう。低いので、天体望遠鏡での観察には向いていません。
「みずがめ座」にあり、下旬に明け方の東南東の空に見えますが、日の出30分前(東京で5時10分ごろ)の高さが約10度とかなり低いため、観察は困難です。
夕空で、宵の明星を主役とした注目の大接近現象が2つ起こります。どちらも肉眼や双眼鏡でよく見えるので、気軽にお楽しみください。
春分を迎え、だんだんと日が長くなってきたことを感じます。東京あたりでは17時50分ごろに太陽が沈み、18時30分ごろにはまだ空に明るさが残っています。その明るい空の中、西の方角にひときわ輝く星を見つけることができます。宵の明星の金星です。地平線からの高さは25度ほど(日の入り30分後)とやや低めですが、とても明るいので一目でそれとわかるでしょう。
2月末から3月初めにかけて、この金星のすぐ近くにもう一つ明るい星が光っています。こちらは木星です。金星には及ばないものの、木星も明るいのですぐに見つかるはずです。日の入り1時間後くらいになると空が暗くなり、よりはっきりと見えるでしょう。
両惑星が最も近づいて見えるのは2日で、満月の見かけサイズほどの間隔にまで接近します。満月全体が見えるくらいの倍率の天体望遠鏡(80倍程度)で観察すれば、2つの惑星を同時に拡大して見ることができるということになります。明るい2惑星がこれほど近づく機会はなかなかありませんので、望遠鏡をお持ちであればぜひ観察してみましょう。
望遠鏡がなくても、肉眼や双眼鏡で眺めるだけでもじゅうぶん楽しめます。最接近の日だけでなく前後の日も観察すると、並び方が変わる様子もわかって面白いでしょう。梅や早咲きの桜などの風景と一緒に撮影するのもおすすめです。思い思いの方法で、明るい2惑星が並ぶ光景をお楽しみください。
木星との大接近以降も、金星は一番星として夕方の西の空に輝き続けます。そして24日には、この金星のすぐそばに月齢3の細い月(いわゆる「三日月」)がやってきて、非常に美しい共演を見せます。月と明るい星や惑星の接近、あるいは金星と他の惑星との会合など、天体同士が並ぶ現象には様々なパターンがありますが、そのなかで細い月と金星の組み合わせは最も幻想的、印象的なものと言えるでしょう。
鹿児島や沖縄などでは、金星が月に隠される「金星食」が見られます。鹿児島市では21時9分ごろ、那覇市では20時56分ごろから、月の暗い縁が金星をゆっくりと隠していきます(全部隠すまでに20秒ほどかかります)。地平線近くの現象なので、観察可能な地域の方は見晴らしの良いところで挑戦しましょう。
その4日後の28日には月と火星の大接近も起こります。金星ほどの輝きはなくても火星もじゅうぶん明るく、半月がそばにあってもよく見えます。「おうし座」のアルデバラン、「オリオン座」のベテルギウスと合わせてこの冬限定の「赤い大三角」を作っている火星と月との接近も、ぜひ観察してお楽しみください。
3月中旬の夜21時ごろ、南西の空に輝く「おおいぬ座」のシリウスの左、真南の空の低いあたりには明るい星が少なく、目立った星の並びもありませんが、ここには大きな船の星座「アルゴ座」が広がっています。ギリシャ神話では勇者ヘルクレスや双子のカストルとポルックスを乗せて冒険を繰り広げた船とされています。
実は、「アルゴ座」は現存しない星座です。もともとは2世紀ごろに定められた歴史の長い星座でしたが、現在このあたりは「とも(船尾)」「ほ(帆)」「らしんばん(羅針盤)」「りゅうこつ(竜骨)」という4つの星座になっています。
日本(本州あたり)から見ると南の水平線(地平線)近くを左から右(東から西)へと進んでいくように見え、いかにも船らしい姿に感じられるのですが、低いためあまり注目されません。
一方、オーストラリアなどでは頭の真上近くに見え、大きな船が天を渡っていくように見えます。この付近には天の川も流れているので、肉眼や双眼鏡で美しい眺めを楽しめます。南半球で星空を眺める機会があれば、ぜひご堪能ください。
「りゅうこつ座」のカノープスは、夜空に見える星としてはシリウスに次いで2番目に明るい星です。東京付近では冬の宵のころ、地平線すれすれに見えますが、大気の影響でかなり暗くなってしまうため、全天2位の明るさを実感することはなかなかできません。機会があれば、南の見晴らしが良いところでぜひ探してみましょう(見やすいのは1~2月ごろです)。
日本には「昇ったと思ったらすぐに沈んでしまう」ことから「横着星」という呼び方があります。また中国では「南極老人星」や「寿星」と呼び、一目見ることができれば寿命が延びる縁起の良い星とされています。
エータカリーナ星雲は宇宙に漂うガスが星の光を受けて光って見える天体で、先月ご紹介した「オリオン座大星雲」と同種の天体です。双眼鏡で観察すると、白く淡い雲のように見えます。南天の名所の一つで、南半球では見逃せません。
「にせ十字」は、「ほ座」と「りゅうこつ座」の4つの2等星でできる星の並びです。本物の南十字星より大きいため目立ち、見間違えられることがあります。
また、「にせ十字」と本物の南十字星(「みなみじゅうじ座」)の間には、やはり4つの星が十字に並ぶ「ダイヤモンド十字」があります。他の2つと反対向きで、やや細長く見えます。
エータカリーナ星雲と同様、南半球では見やすく見逃せない星の並びなので、ぜひ3つの十字を見つけてみましょう。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は3月中旬の深夜1時ごろの星空です。4月中旬の深夜23時ごろ、5月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。
北の空の高いところに「北斗七星」が昇っています。ひしゃくの柄のカーブを北から南へと延ばすと、「うしかい座」のアルクトゥールス、「おとめ座」のスピカへと連なる「春の大曲線」が描けます。アルクトゥールスの暖かい色合いとスピカの冷たい印象は、今の季節にピッタリです。この2つの星と「しし座」のデネボラでできる「春の大三角」が、南の空に大きく広がっています。
北東の空には「はくちょう座」のデネブと「こと座」のベガ、南東の空には「さそり座」のアンタレスと、夏の1等星も見え始めました。さらに夜が更けると「わし座」のアルタイルも昇り、東の低空に「夏の大三角」が見えるようになります。宵のうちに「冬の大三角」を見ておけば、一晩で3つの大三角を見ることができますね。大きさや形、星の色などを比べてみると面白いでしょう。
寒さが少しずつ和らぎ、深夜の星空観察も冬の間ほどには苦になりませんが、空気が冷たい日もまだありそうです。体調に気を付けてお楽しみください。
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