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2023年2月の星空

ズィーティーエフ彗星が観察の好機を迎えます。双眼鏡で眺めたり、写真に撮ったりして楽しめそうです。宵空で目立つ「オリオン座」の下にいる、今年の干支と同じ「うさぎ座」も探してみましょう。

星空写真

北軽井沢にて
ズィーティーエフ彗星(C/2022 E3)を560mmで撮影し、800mm相当にトリミングしました。ダストテイル(上方向)とイオンテイル(右上方向)が分離した、彗星らしい姿を見せてくれています。太陽活動が活性化している時期なので、その影響を受けてイオンテイルが今後どのように変化するか、楽しみに注目しています。

2023年1月3日 4時44分
ニコン Z 6II+FTZ+AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR+TELECONVERTER TC-14E III(560mm、ISO6400、露出60秒×48枚を合成、f/5.6)
撮影者:高岡 誠一

2月の星空

南の空

南の空

2023年2月1日ごろの22時、15日ごろの21時、28日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(27日)、満月(6日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2023年2月1日ごろの22時、15日ごろの21時、28日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

1日(水) (前夜~)未明、月と火星が接近
2日(木) ズィーティーエフ彗星が地球と最接近(「今月の星さがし」で解説)
3日(金) 夕方~翌4日未明、月とポルックスが接近
4日(土) 立春(こよみの上で春の始まり)
6日(月) 満月。次の満月は3月7日です
このころ、ズィーティーエフ彗星が「ぎょしゃ座」のカペラに接近(「今月の星さがし」で解説)
宵~翌7日明け方、月とレグルスが接近
11日(土) このころ、ズィーティーエフ彗星が火星に接近(「今月の星さがし」で解説)
未明~明け方、月とスピカが並ぶ
深夜~翌12日未明、月とスピカが並ぶ
14日(火) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
15日(水) このころ、ズィーティーエフ彗星が「おうし座」の1等星アルデバランに接近(「今月の星さがし」で解説)
未明~明け方、月とアンタレスが大接近
20日(月) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
22日(水) 夕方~宵、細い月と金星が接近(「今月の星さがし」で解説)
23日(木) 夕方~宵、細い月と木星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説)
26日(日) 夕方~深夜、月とプレアデス星団が接近
27日(月) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
28日(火) 未明、月と火星が並ぶ
夕方~翌1日未明、月と火星が接近(「今月の星さがし」で解説)

2月の惑星

水星

中旬ごろまで、明け方の東南東の低空に見えます。

日の出30分前(東京で明け方6時ごろ)の高度は1日で約10度、15日で約5度あり、太陽から大きく離れることがない水星としては比較的見やすい条件です。とはいえ、山や建物に遮られて見えないことも少なくないので、見晴らしが良いところで探してみましょう。スマートフォンのアプリなどを使うと、方角や高さの見当をつけやすくなります。双眼鏡を使うと見やすくなり、位置がわかれば肉眼でも見えます。

金星

「宵の明星」として、夕方から宵の西南西の低空に見えます。

日の入り30分後(東京で夕方17時50分ごろ)の高度は約20度で、先月に比べて高く見やすくなりました。一番星の輝きの鋭さを実感できそうです。

22日に月齢2の細い月と接近します。肉眼や双眼鏡で観察したり、地上風景と共に撮影したりしてみましょう。また、月末から来月初めにかけて木星と大接近します。明るい2つの惑星が夕空に並ぶ光景を、ぜひお楽しみください。

火星

「おうし座」にあります。19時ごろに頭の真上あたりに見え、2時ごろに沈みます。明るさは約0.1等級です。

昨年12月1日に地球と最接近したころと比べると暗くなりましたが、それでも0等級の輝きは良く目立ち、冬の星々と一緒に宵空を彩っています。2つの赤っぽい星、火星とその近くにある「おうし座」の1等星アルデバランが並ぶ様子は、とくに目を引くでしょう。

1日の未明に月齢10の上弦過ぎの月と接近します。また、28日の夕方から3月1日の未明にかけても月齢7の上弦の半月と火星が接近して見えます。肉眼でよく見えるので、暖かくして眺めてみましょう。さらに、11日前後には今月の注目天体のズィーティーエフ彗星が火星に接近します。こちらは双眼鏡で観察してみてください。

遠ざかったことにより見かけのサイズが小さくなったので、天体望遠鏡での観察は難しいでしょう。

木星

「うお座」と「くじら座」の境界付近にあります。日の入り1時間後(東京で18時20分ごろ)に西南西の空の低いところに見え、20時ごろに沈みます。明るさは約マイナス2.1等級です。

宵の明星の金星と並んで輝く光景が目を引きます。金星には及ばないものの、木星の明るさも強烈です。2つの輝星の間隔が、日に日に小さくなっていく(最接近は3月2日ごろ)様子を確かめながら観察してみましょう。23日に月齢3の細い月と並ぶ様子も楽しみです。

低いので、天体望遠鏡での観察には向いていません。

土星

太陽に近いため、見えません。4月上旬ごろから、明け方の東南東の低空に見えるようになります。

今月の星さがし

ズィーティーエフ彗星が宵空で高くなり、見ごろです。明るい星を目印にして双眼鏡で観察しましょう。22日には細い月と金星が並び、美しい夕景が楽しめます。

ズィーティーエフ彗星を見よう

先月もご案内したズィーティーエフ彗星(ZTF彗星、C/2022 E3)が、1月末から2月中旬ごろまで双眼鏡で観察できそうです。ちなみにズィーティーエフとはアメリカで行われている天体観測プロジェクトの名前で、同プロジェクトでは他にも多くの彗星や小惑星、超新星などを発見しています。今回の彗星は昨年3月に発見されました。先月太陽に最接近、今月2日に地球と最接近するので、このころ明るくなって見ごろというわけです。宵のころに高くなり、夜更かしや早起きの必要がないのも好条件です。

地球最接近のころには5等級前後になると予想されていて、双眼鏡を使うと簡単に見つけられるでしょう。空の条件が良ければ肉眼でも見える可能性もあります。毎日位置が変わるので、星図を参考にして探してみてください。6日ごろ「ぎょしゃ座」の1等星カペラ、11日ごろ火星、15日ごろ「おうし座」の1等星アルデバランに近づくので、このころはとくに明るい星が目印になります(ただし、星が明るすぎてかえって彗星が見づらくなる可能性もあります)。

1月29日から2月17日までの、彗星を中心とした空の様子(21時、場所の設定は東京)。尾は模式的に描いている。円は拡大イメージ(視野6度)

彗星の像は光の点ではなく、少し広がった姿をしています。ちぎれ雲や綿のような見え方をイメージしてみてください。尾も見えるかもしれません。上の図は強調して描いてあり、これほど長くはっきりと見えるとは限りませんが、方向を意識して観察してみましょう。

ページ最初の「星空写真」のような見事な画像を撮るためには、彗星の動きに合わせてカメラを制御したり、多数枚の画像を処理したりといった工夫が必要になるので,一筋縄ではいきません。しかし「存在がわかる」くらいの画像であれば、スマートフォン等でも写せる可能性があります。三脚等に固定したり長時間(数秒)の露出が可能なアプリが必要だったりしますが、記念として記録として、ぜひ撮影にも挑戦してみてはいかがでしょうか。

多くの彗星がそうであるように、このズィーティーエフ彗星も今後は地球から離れ太陽系の彼方へと飛び去っていってしまいます。日々の星空も一期一会ですが、そのことをさらに感じさせてくれる彗星観察、暖かい服装でぜひお楽しみください。

月と惑星の共演

今月の月と惑星の接近現象をまとめてご紹介しましょう。土星は太陽と近づいて見えなくなったので、見やすい惑星としては金星・火星・木星それぞれと月との接近が起こります。

東京で見た月と惑星の共演の様子。大きい円は拡大イメージ(視野6度)、小さい円はさらに拡大したイメージ(正立像、月と惑星で拡大率は異なる)

とくに楽しみなのは22日の夕方から宵に起こる、細い月と金星の共演です。やや低めなので、空が暗くなりはじめたら早いうちに、西南西の空がよく開けたところで見たり撮ったりしてみましょう。

これから7月まで毎月下旬に、夕空で細い月と金星の共演が見られます。そのなかでも今月の接近は冷たい空気の中で見ることから、金星の輝きの鋭さを強く感じたり、細い月のシャープさが印象に残ったりしそうです。春霞のなかや梅雨の晴れ間に見るのとは違う感覚を味わうためにも、ぜひ今月の様子を空気感と共に眺めてみてください。

今月の星座

オリオン座

全天で88個ある星座の中で、最も有名で最も見つけやすい星座と言える「オリオン座」は、冬に見ごろを迎えます。2月中旬の夜20時ごろ、南の空に見えます。赤っぽい1等星ベテルギウスと青白い1等星リゲル、その間に並ぶ三ツ星が、「オリオン座」を見つける目印です。

「オリオン座」(星雲の画像クレジット:ESO DSS2 (AURA))

「オリオン座」が見つけやすい理由の一つは、2等星より明るい星が7個も含まれていることです。1等星や2等星は多少の街明かりがあるような場所でも見えるので、都市部でも「オリオン座」の主な星を見つけることができます。よく見ると、7つのうちベテルギウス以外はすべて青白い色をしていること、三ツ星のうち一番西(右)にあるミンタカが少し暗いことなどもわかるでしょう。

この7つの星がバランスよく並んでいることも、「オリオン座」が見つけやすく有名な星座である理由でしょう。ギリシャ神話に登場する狩人オリオンの頭や肩、腰、足にあたる星々をたどってみてください。少し暗い星も見つけられれば、手に持つこん棒や楯も想像できます。日本には和楽器の鼓に見立てた「つづみぼし」という呼び方もあります。リボンや砂時計のようにも見えますね。

ベテルギウスとリゲル

ベテルギウスとリゲルはどちらも太陽よりもはるかに大きく重い、超巨星に分類されるタイプの恒星です。色の違いは表面温度の違いによるもので、赤色超巨星のベテルギウスは低温、青色超巨星のリゲルは高温の星です。その色を源平合戦の旗の色にたとえて、ベテルギウスには平家星、リゲルには源氏星という和名もあります。

オリオン座大星雲M42、馬頭星雲

「オリオン座」には双眼鏡や天体望遠鏡でぜひ観察したい、見逃せない天体があります。三ツ星のすぐ南(下)にある「オリオン座大星雲M42」です(Mはカタログの符号)。空の条件が良ければ肉眼でもボンヤリと見え、双眼鏡などを使うと天体の広がりやおおまかな形もわかるようになります。写真では赤っぽい色や、鳥が羽を広げたような形もとらえられます。

オリオン座大星雲の正体は宇宙空間に漂うガスや塵の集まりで、星の光を受けて光っている星雲(輝線星雲)です。こうした星雲は新しい星が誕生する場所であることから、「星のゆりかご」と呼ばれることもあります。

また、三ツ星の東(左)にある「馬頭星雲IC 434」も有名です(ICはカタログの符号)。眼視ではわかりにくいのですが、写真に撮るとその名のとおり馬の顔や首のような形がとらえられます。星図の画像を90度、反時計回りに回転させるとわかりやすいでしょう。

馬頭星雲は「暗黒星雲」というタイプの天体です。濃く集まった低温のガスや塵が背景の光を遮り、そのシルエットが見えています。内部では、オリオン座大星雲と同様に新しい星が作られています。

うさぎ座、はと座

「オリオン座」の下(南)には「うさぎ座」「はと座」という小動物の星座が並んでいます。オリオンに踏まれているような位置にあるのは少しかわいそうですが、乱暴者とも言われるオリオンの気持ちを鎮めるようにと、この場所に置かれたのかもしれません。やや暗めであまり目立たない星座たちですが、リゲルや「おおいぬ座」のシリウスとの位置関係を手掛かりにして、ぜひ探してみてください。

「うさぎ座」「はと座」

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は2月中旬の深夜1時ごろの星空です。3月中旬の深夜23時ごろ、4月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。

2023年2月中旬 深夜1時ごろの星空

「うさぎ座」が西の地平線の下に姿を隠し、「オリオン座」も沈みかけています。冬の星座たちが少しずつ高度を下げていく一方で、南の空の高いところには「しし座」が駆けています。春が待ちきれないかのようですね。北天の「北斗七星」も高く見やすくなってきました。北斗七星を含む「おおぐま座」もそろそろ、冬眠から目覚めようとしているのかもしれません。

図の上でも説明しているように、3月にも4月にも、もう少し早い時間帯に似たような配置の夜空を見ることができます。時間帯も気温も、そのころを待ったほうがもちろん見やすいのですが、できれば2月の深夜にもぜひ、この空を眺めてみてください。そうすると来月や再来月、同じような星や星座を見たときに、春が訪れて暖かくなっていることを実感できるはずです。火星がアルデバランから離れていくこともわかるでしょう。

同じ配置の空を違う時刻に見ることで季節の移り変わりを感じられるのも、星空観察の面白いところです。防寒をしっかりとして、冬の深夜の星座巡りをお楽しみください。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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