土星と木星が宵空に輝き、見ごろを迎えています。天体望遠鏡で、土星の環や木星の縞模様などを観察してみましょう。10日の満月は中秋の名月にあたります。街中でも見やすい月の美しさや魅力を、あらためて感じられそうです。
星空写真
群馬県 渋峠にて
渋峠は秋から初冬にかけて、雲海の発生頻度が高くなります。薄明開始直後に雲海から立ち昇る黄道光は、心を揺さぶる神秘の光景です。
2021年9月7日 3時57分
ニコン Z 6II+NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S(20mm、ISO12800、露出5秒×8枚を合成、f/2.8)
撮影者:高岡 誠一
3日(土) | 夕方~宵、月とアンタレスが接近 |
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4日(日) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) |
7日(水) | このころ、深夜~明け方に火星とアルデバランが接近(「今月の星さがし」で解説) |
8日(木) | 夕方~翌9日未明、月と土星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
10日(土) | 満月。次の満月は10月10日です 中秋の名月(「今月の星さがし」で解説) |
11日(日) | 宵~翌12日明け方、月と木星が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
17日(土) | 未明~明け方、月と火星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
18日(日) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
20日(火) | 未明~明け方、月とポルックスが並ぶ |
21日(水) | 未明~明け方、月とポルックスが並ぶ |
22日(木) | 未明~明け方、細い月とプレセペ星団が接近 |
23日(金) | 秋分 |
26日(月) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
27日(火) | 木星が衝(一晩中見えるので観察の好機です) |
3日ごろまで夕方の西の低空に見えますが、日の入り30分後(東京で18時40分ごろ)の高度は3度ほどと非常に低いので、見つけるのは難しそうです。スマートフォンのアプリなどで位置を確かめ、双眼鏡で探してみましょう。
その後は太陽に近づくため、見えません。
20日ごろまで「明けの明星」として、明け方の東の低空に見えます。
日の出30分前(東京で4時50分ごろ)の高度は5度前後とかなり低いので、明るく目立つ金星とはいえ、なかなか見つけられないかもしれません。建物や山などがなく見晴らしの良いところで探してみましょう。
その後は太陽に近づくため、見えません。
「おうし座」にあります。21時30分ごろに昇ってきて、2時ごろに東の空、4時ごろに南東の空の高いところに見えます。明るさは約マイナス0.3等級です。
やや遅い時間帯ですが、「おうし座」の赤い1等星アルデバランと並ぶ光景が目を引きます。色や明るさを見比べたり、間隔の変化を追ったりしてみましょう。「今月の星さがし」も参考にしてみてください。17日に下弦前の半月が火星に接近する様子も見ものです。
見かけのサイズは小さいですが、機会があれば天体望遠鏡でも観察してみましょう。気流が落ち着いて像の揺れが小さい日に見ると、表面の濃淡などの模様がわかるかもしれません。
「うお座」にあります。18時30分ごろに昇ってきて、22時ごろ南東の空、0時ごろ南の空の高いところに見えます。明るさは約マイナス2.9等級です。南の空には明るい星が少ないので、ひときわ目立って見えるでしょう。
夜の早い時間帯から見えるようになり、観察シーズンを迎えます。11日から12日にかけては満月過ぎの明るい月が木星に接近し、明るい2天体の共演という見応えのある現象が楽しめます。肉眼や双眼鏡で眺めてみましょう。
天体望遠鏡では縞模様や4つのガリレオ衛星が見ものです。毎日のように観察すると、ガリレオ衛星が木星を公転して位置を変える様子がよくわかります。土星とともに、望遠鏡での観察もお楽しみください。
「やぎ座」にあります。19時ごろに南東の空のやや低いところ、22時ごろに真南の空に見え、0時ごろには南西の空に移ります。明るさは約0.4等級です。
夜半過ぎまで見えていて、先月に引き続き観察しやすい時期です。火星や木星と色・明るさを見比べてみましょう。8日から9日にかけては、満月前の明るい月と並ぶ光景が見られます。
天体望遠鏡を使うと環が見えます。地球と土星との位置関係により、環の見え方がかなり細くなっているので、その姿をぜひ確かめてみましょう。
今年の「中秋の名月」は9月10日。ちょうど満月のタイミングにあたり、白く丸い月が夜空に映えます。その前後の日には土星や木星、火星といった目立つ惑星と月の共演も見られます。
7月の七夕や8月の伝統的七夕、ペルセウス座流星群が夏の風物詩とすれば、「中秋の名月(十五夜の月)」は秋の風物詩と言えるでしょう。澄んだ秋の夜空に昇る丸い月は、たいへん美しいものです。明かりに溢れた街中でも月はよく見えるので、気軽にお月見を楽しみましょう。
「中秋」とは、秋のちょうど真ん中を指す言葉です。日本でかつて使われていた暦(いわゆる旧暦)では7~9月が秋なので、旧暦の8月15日が中秋ということになります。この日付は現行の暦(新暦)では毎年異なり、今年は9月10日です。そしてこの夜の月が「中秋の名月(十五夜の月)」と呼ばれています。
※旧暦は現在公的には使われていないため、中秋の名月の日は「太陽太陰暦と同じような方法で求めた8月15日に近い日」として、太陽の位置や月の満ち欠けをもとにして決められます。
十五夜の月は必ずしも満月になるとは限らないのですが、今年は10日が満月でもあり、日付が一致します。10日の宵のころに東の空に昇ってくる満月の名月は、真夜中に南の空の高いところに見え、11日の明け方に沈むまで一晩中、空を明るく照らします。
十五夜前後の月にも様々な呼び名があります。前日は、名月を待っていることから「待宵(まつよい)」、翌日は十五夜よりやや遅く昇ることから、「ためらう」という意味の「いざよい(十六夜)」と呼ばれます。十六夜の翌日は「立って待っていると昇ってくる」ので「たちまちづき(立待月)」(以降、「いまち(居待)」「ねまち(寝待)」「ふけまち(更待)」)となります。こうした名前は、月が古来より親しまれてきたことの証です。近年では「○○ムーン」という満月の呼び方を耳にすることもあり、もちろんこれらも面白く親しみやすいものですが、伝統的な呼び方も大切にしたいですね。
満ち欠けによる形の変化や「ウサギ」として有名な表面の暗い模様は肉眼でもわかりますが、天体望遠鏡で観察すると、海と呼ばれる暗い部分(ウサギの正体)や数々のクレーターも見ることができます。さらにしっかりと観察すると、月の見かけの大きさが変化したり、月縁の部分の見え方が変わったりすることもわかるかもしれません。大きさが変わるのは月と地球との距離が変わるため(近いほど大きく見える)、縁付近の見え方が変わるのは月が地球に向けている面が微妙に変わるためです。
普段、星空を見るにはまぶしすぎるため月明かりはないほうが嬉しいのですが、反対にその明るさから、月はどんな場所からでも手軽に楽しむことができる天体です。お供え物を用意して、月の魅力を存分に味わってみてください。
10日の中秋の名月(満月)の前後には、欠けた月が明るい3つの惑星と並ぶ光景が見られます。肉眼や双眼鏡ではシンプルに、共演の様子を眺めましょう。雲や地上の風景との組み合わせも面白く、そういったシーンを撮影するのも楽しそうです。夜景モードなどを利用すると明るさのコントロールがしやすくなります。
上の星図の時刻は一例で、同じ夜の間なら似たような間隔で見えます。たとえば月と土星の接近は8日の21時ごろだけでなく、空が暗くなる19時ごろから月が沈む翌9日2時ごろまでずっと見えます(方角や高さは変化します)。前後の日でも、間隔が少し開いて月の形がやや変わりますが、やはり並んで見えます。「ピンポイントでこの日のこの時刻だけ接近している」わけではないので、気軽に楽しみましょう。
天体望遠鏡では、それぞれの天体を拡大して観察できます。月は欠け際のクレーターを観察すると、立体的に感じられます。土星は環、木星は縞模様とガリレオ衛星が見どころです。火星は小さいので模様は見づらいのですが、濃淡がわかるかもしれません。それぞれを同じ倍率で観察して、各惑星と月のクレーターとの見かけの大きさ比べをするのも面白いでしょう。肉眼で気軽に眺める、撮影してみる、望遠鏡でじっくり観察する、様々にお楽しみください。
深夜になると東の空に、赤く明るい星が昇ってきます。その色が特徴的な惑星、火星です。
火星は現在「おうし座」に位置し、牛の眼にあたる位置に輝く1等星アルデバランと並んでいます。アルデバランも赤っぽい色なので、2つの星が色や明るさを競い合っているかのようです。アルデバランの付近にV字形に並ぶ星々が牛の顔にあたりますが、4~8日ごろは牛の両眼が赤いようなイメージになるでしょう。
火星とアルデバランの下のほうには「オリオン座」の1等星ベテルギウスがあり、これも赤っぽく見えます。3つの星を見比べてみましょう。
火星は今年12月に地球と最接近するので、この秋はどんどん距離が小さくなっているところで、それに合わせて日を追うごとに明るくなっていきます。見かけの位置の変化と共に、火星の明るさの変化にもご注目ください。
12月下旬から1月中旬ごろに誕生日を迎える人の星座として名前が知られている「やぎ座」、宵空で見やすいのは9月ごろです。9月中旬の21時ごろに、南の空に見えます。
「やぎ座」は一番明るい星でも3等星なので、街中で見つけるのは少し難しいのですが、今年は土星が目印になるので位置の見当はつけやすいでしょう。南西に見える「わし座」の1等星アルタイルと、南東に輝く「みなみのうお座」の1等星フォーマルハウトの間あたり、という見つけ方もできます。
全体としては、下向きにとがった三角形を描くように星々が並んでいます。オペラグラスや双眼鏡を使うと見やすいでしょう。
ギリシャ神話では、「やぎ座」は牧神パーンが変身した姿がモデルとされています。怪物に襲われそうになったパーンは川に飛び込み泳いで逃げようとしましたが、慌てたせいか変身に失敗し、上半身が山羊、下半身が魚という不思議な格好になってしまいました。「やぎ座」が少し目立たないのは、パーンが恥ずかしがっているからかもしれません。
「やぎ座」の頭の位置にある2つの星は、それぞれが二重星です。
α(アルファ)星の「アルゲディ」は、黄色い4等星が並んでいます。双眼鏡を使えば街中でも簡単に2つに分かれて見えます。
β(ベータ)星の「ダビー」は黄白色の3等星と白色の6等星のペアです。アルゲディより暗く間隔が小さいですが、やはり双眼鏡があれば2つに見えます。
双眼鏡ではアルゲディとダビーが同一視野に入るので、2組の二重星が一緒に見えます。明るさや色の違いに注目しながら眺めてみましょう。
土星は現在「やぎ座」の尻尾の付近にあり、20~21時ごろの見やすい時間帯に南の空で輝いています。環を観察するには天体望遠鏡が必要ですが、レンズの直径が5~10cm、倍率は80~100倍程度でもじゅうぶん見ることができます。お持ちであればぜひ土星に向けてみましょう。環の上下から本体がはみ出している様子がわかります。これは裏を返すと、環の見え方が細くなっているということです。来年以降はもっと細くなり、2025年にはほぼ見えなくなります(その後、再び見えるようになります)。
科学館や公開天文台などに行けば、大きい望遠鏡で観察できる機会があるかもしれません。健康や安全にじゅうぶん注意したうえでお楽しみください。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は9月中旬の深夜1時ごろの星空です。10月中旬の深夜23時ごろ、11月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。
南の空で木星が威光を放ち輝いています。明るい星が少ない領域なので、とくに目立ちます。「夏の大三角」は西に低くなり、土星や「やぎ座」も南西の低空に空に沈みかけています。
東の空には「おうし座」「オリオン座」といった冬の星座たちが姿を見せ始めました。アルデバラン、ベテルギウスといった明るく赤っぽい星々に、今年は火星も仲間入りして、赤い星のお祭りのような空模様です。「今月の星さがし」でご紹介したように火星の動きも面白いので、ぜひ追ってみましょう。
日中は暑さの残る日もありますが、深夜には涼しさが感じられそうです。心地よい初秋の星見、月見をお楽しみください。
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