春から続いてきた明け方の惑星集合がいよいよフィナーレ。下旬には、月と全惑星が並ぶという豪華な期間もあります。夜の短さや梅雨など、天体観察には不利なシーズンですが、天気予報とにらめっこしながら計画を立てましょう。
星空写真
愛知県設楽町 津具川にて
設楽町の空の暗さを生かした天の川の表現と蛍の乱舞のコラボ作品です。6月も下旬になると天気がおもわしくなく星撮影ができないですが、そうした天気には蛍がたくさん舞います。反対に天気が良いと蛍が舞いません。星と蛍両方の撮影には毎年苦労させられます。4日連続で通ったことも思い出されます。
2021年6月29日 21時12分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED(14mm、ISO6400、露出15秒×16枚を合成、f/2.8)
撮影者:石橋 直樹
3日(金) | 夕方~宵、細い月とポルックスが接近 |
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6日(月) | 夕方~深夜、月とレグルスが接近 |
7日(火) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) |
10日(金) | 夕方~翌11日未明、月とスピカが接近 |
13日(月) | 夕方~翌14日未明、月とアンタレスが接近 |
14日(火) | 満月。次の満月は7月14日です |
19日(日) | 未明~明け方、月と土星が接近 |
21日(火) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) 夏至(北半球では、一年のうちで一番夜が短い日) |
22日(水) | 未明~明け方、月と木星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
23日(木) | 未明~明け方、月と火星が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
24日(金) | このころ、未明~明け方に金星とプレアデス星団が並ぶ(「今月の星さがし」で解説) |
26日(日) | 未明~明け方、細い月と金星が並び、細い月とプレアデス星団が接近(「今月の星さがし」で解説) |
27日(月) | 未明~明け方、細い月と水星、金星が並ぶ |
29日(水) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
10日ごろから、明け方の東北東の低空に見えます。
日の出30分前(東京で3時50分ごろ)の高度は約8度です。水星としては比較的見やすい条件ですが、明るい空の中で地平線近くを探す必要があるので、簡単に見つかるというわけではありません。スマートフォンのアプリなどで位置を確かめて、見晴らしが良いところで探してみましょう。やや離れていますが、金星との位置関係が参考になります。双眼鏡を使うと見つけやすいでしょう。
27日に月齢27の細い月と並びます。
「明けの明星」として、明け方の東の低空に見えます。
日の出1時間前(東京で3時20分ごろ)の高度は約10度とかなり低いのですが、明るく目立つので、建物などに隠されていなければ見つけるのは難しくありません。見晴らしの良いところで探してみましょう。ビルや木々の合間に見つけるのも楽しいものです。
26日に月齢26の細い月と、翌27日にも月齢27の細い月と、それぞれ並んで見えます。うまく梅雨の晴れ間に当たることを願いましょう。また、このころには「おうし座」のプレアデス星団とも並んで見えます。双眼鏡で観察してみましょう。
「うお座」にあり、未明から明け方の東南東の空に見えます。明るさは約0.6等級です。
夜明けの東天では金星や木星の輝きが目立ちますが、火星の印象的な赤い色合いも楽しみです。7日ごろまでは火星と木星が接近している光景も見えるでしょう。さらに、23日に下弦過ぎのやや細い月と火星が大接近する現象も見逃せません。肉眼でも双眼鏡でもよく見えるので、早起きして観察しましょう。
まだ地球から遠く見かけのサイズが小さいので、天体望遠鏡での観察にはあまり向いていません。
「うお座」にあります。0時30分ごろに昇ってきて、日の出1時間前(東京で3時20分ごろ)に東南東の空に見えます。明るさは約マイナス2.3等級です。
7日ごろまで火星と接近しています。色や明るさの対比、日ごとの並び方の変化などに注目してみましょう。また、22日に下弦過ぎの月と接近します。
天体望遠鏡を使うと、縞模様や4つのガリレオ衛星が見えます。明け方に望遠鏡を準備するのは大変ですが、意欲のある方は観察してみてください。
「やぎ座」にあります。23時30分ごろに昇ってきて、2時ごろに南東の空に見えます。明るさは約0.7等級です。
日付が変わる前に昇るようになり、先月よりもさらに見やすくなっています。後に続いて昇ってくる他の惑星たちの道案内をしているようにも感じられますね。天体望遠鏡を使うと環も見えます。
19日の未明から明け方、下弦前の月と接近します。肉眼や双眼鏡でもよく見えるので、晴れていたら気軽に眺めてみましょう。
明け方に集う惑星たちはお互いの間隔が広がりました。集合というよりも整列という印象ですが、端から端まで、空を広く見渡してみましょう。
3月ごろから未明~明け方の空で、見やすい4つの惑星、金星・火星・木星・土星が集合し、お互いの間隔や並び方が毎日変化していく光景が楽しめました。狭い範囲に大接近するタイミングなどもありましたが、今月はそれぞれの間隔が広がり、きれいに並んだ状態になっています。先頭(南寄り)に土星があり、少し離れて南東に火星と木星が並び、さらに少し離れて東の低空に金星があります。
実はこの4惑星のほかにも、残る3つの水星・天王星・海王星も同じ時間帯に見えています。水星は低く、天王星と海王星は暗いため見つけるのは難しいのですが、同じ空の中に全惑星がある、と想像しながら見上げるだけでも楽しいものです。水星は位置がわかれば肉眼でも見つけられるので、見晴らしの良いところで「水・金・(地球)・火・木・土」を探してみましょう。天王星と海王星を見るには天体望遠鏡と詳しい星図が必要です(また、もう少し空が暗い時間帯のほうが見やすいでしょう)。
ところで、地球から見ると惑星が一列に並んでいるのは偶然ではありません。地球を含めて惑星は太陽の周りを公転していますが、その軌道の傾きはどれもほぼ同じです。つまり、全惑星が同じような軌道面上にあるので、これを地球から見れば(軌道面の真横方向から見ると)他の惑星が並ぶというわけです。太陽系内の惑星を想像しながら惑星たちを眺めると、空に奥行きや立体感が感じられて面白さや不思議な印象が得られるかもしれません。
下旬には下弦を過ぎて細くなっていく月と惑星が並ぶ様子も楽しめます。肉眼や双眼鏡で眺めてみましょう。一年で最も日の出が早い時季で、思った以上に早い時間帯から空が明るくなりますので、観察のタイミングにご注意を。
9月下旬から10月中旬ごろに誕生日を迎える人の星座として名前が知られている「てんびん座」、宵空で見やすいのは6月ごろです。6月中旬の21時ごろに、南の空に見えます。
最も明るい星でも3等星なので街中ではやや見つけにくいのですが、西(右)隣の「おとめ座」の1等星スピカと東(左)隣の「さそり座」の1等星アンタレスの間に「てんびん座」があるので、位置の見当はつけやすいでしょう。3つの3等星でできる、「〉」のような星の並びを探してみてください。
「てんびん座」のモデルは「おとめ座」のモデルの一神である女神アストライアーが人の心の善悪を計るために用いた秤だというギリシャ神話があります。
「てんびん座」は一時期、「さそり座」の一部とされたことがありました。「南のつめ」という意味のアラビア語に由来するズベンエルゲヌビ、「北のつめ」に由来するズベンエシャマリという星の名前に、その名残が見られます。
ズベンエルゲヌビは3等星と5等星のペアで、双眼鏡を使うと2つの星が仲良く並ぶ様子を見ることができます。
ズベンエシャマリの西(右)にあり双眼鏡の同一視野内に見えるδ(デルタ)星(赤い矢印の先の星)は、約2.3日の規則正しい周期で、5等級から6等級まで明るさが変わる変光星です。2つの星がお互いの周りを回りあっていて、地球から見て横並びのときに明るく、重なったときに暗く見えます。このようなタイプの変光星を「食(しょく)変光星」と呼びます。
肉眼で見るには暗い星ですが、双眼鏡があれば楽に見つかります。ズベンエシャマリを目印にしてときどき観察し、変光の様子を確かめてみると面白いでしょう。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は6月中旬の深夜1時ごろの星空です。7月中旬の深夜23時ごろ、8月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。
頭の真上に「こと座」の1等星ベガが輝いています。そこから南東に視線を下げると「わし座」の1等星アルタイルが、北東に目を移すと「はくちょう座」の1等星デネブが見つかり、3つをつなげば「夏の大三角」のできあがりです。空が暗ければ、夏の大三角から南の地平線へと流れる天の川も見えるかもしれません。南から南西の空には「さそり座」や「いて座」が広がっています。
南東の低空には土星が輝き、東の地平線近くには火星と木星が並んでいます。日付が変わる前にはもう惑星が見えるようになっているのですね。
一年のうちで最も夜が短く、そのうえ雨が多い時季なので、夜空を眺める機会があまりないかもしれません。少ないチャンスを逃さずに、惑星めぐりや星座探しをお楽しみください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。