明け方の惑星集合から土星が離れはじめ、入れ替わるように木星が近づいてきます。月初の金星との大接近から月末の火星との大接近まで、1か月を通じて楽しみましょう。夜空には「春の大三角」が、文字通り大きく広がっています。
星空写真
長野県 渋峠にて
紅葉の名所として知られている、『横手山のぞき』と呼称されるスケールの大きい谷と夏の天の川を組み合わせました。宇宙船地球号的なイメージが表現できたように思います。
2020年4月28日 2時57分
ニコン Z 7+NIKKOR Z 20mm f/1.8 S(ISO12800、露出5秒×8枚を合成、f/2.2)
撮影者:高岡 誠一
1日(日) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) このころ、明け方に金星と木星が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
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2日(月) | 夕方~宵、細い月と水星、プレアデス星団が接近 |
5日(木) | 立夏(こよみの上で夏の始まり) |
6日(金) | みずがめ座η流星群の活動がピーク(「今月の星さがし」で解説) 宵~深夜、月とポルックスが並ぶ |
7日(土) | 夕方~深夜、月とポルックスが並ぶ |
9日(月) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) 深夜~翌10日未明、月とレグルスが並ぶ |
14日(土) | 未明、月とスピカが並ぶ |
16日(月) | 満月。次の満月は6月14日です |
17日(火) | 1~2時ごろ、さそり座ジュバの食(明るい星が月に隠されます。「今月の星さがし」で解説) 宵~深夜、月とアンタレスが並ぶ |
23日(月) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
25日(水) | 未明~明け方、月と火星が接近、月と木星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説) |
27日(金) | 未明~明け方、細い月と金星が接近(「今月の星さがし」で解説) 13~14時ごろ、沖縄などで金星食(金星が月に隠されます) |
28日(土) | 明け方、細い月と金星がやや離れて並ぶ |
30日(月) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) このころ、未明~明け方に火星と木星が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
5日ごろまで、夕方の西北西の低空に見えます。
日の入り30分後(東京で19時ごろ)の高度は約10度です。太陽から大きく離れることがない水星の見え方としては好条件ですが、薄明るさが残る夕空の中で地平線近くを探す必要があるので、簡単に見つかるというわけではありません。スマートフォンのアプリなどで位置を確かめて、見晴らしが良いところで探してみましょう。双眼鏡を使うとわかりやすくなります。「おうし座」のプレアデス星団(すばる)と並んでいる様子も見えるかもしれません。
2日に、月齢2の細い月と接近します。双眼鏡で、月・水星・すばるの共演を楽しみましょう。
「明けの明星」として、明け方の東の低空に見えます。
日の出1時間前(東京で3時30分ごろ)の高度は10度未満とかなり低いのですが、明るく目立つので、建物などに隠されていなければ見つけるのは難しくありません。非常に明るいので、位置がわかれば日の出直前でも肉眼で見えます。
月初めに木星と大接近して見えます。明るい2惑星が並び輝く光景をお見逃しなく。また、27日に月齢26の細い月と並びます。この日、沖縄や小笠原などでは13~14時ごろに金星食(月が金星を隠す現象)も見られます。
「みずがめ座」から「うお座」へと動き、未明から明け方の東南東の低空に見えます。明るさは約0.8等級です。
日の出1時間前(東京で3時30分ごろ)の高度は約20度とやや低めですが、肉眼で簡単に見つけられます。とくに、月末に木星と大接近する光景が見ものです。早起きして観察してみましょう。25日には月齢24の月も加わった3天体の共演が楽しめます。
まだ低めなので、天体望遠鏡での観察には向いていません。
「うお座」にあり、未明から明け方の東南東の低空に見えます。明るさは約マイナス2.2等級です。
日の出1時間前(東京で3時30分ごろ)の高度は約15度と低めですが、明るく目立つので、建物などに隠されていなければ見えるでしょう。月初めに金星と、月末に火星と、それぞれ大接近します。最接近のころだけでなく1か月を通じて、惑星たちの並び方が変化する様子を追ってみましょう。「今月の星さがし」も参考にしてください。
低めなので天体望遠鏡での観察にはあまり向いていませんが、金星や火星と最接近するタイミングは視野内に2惑星が見える珍しい機会なので、お持ちの方は観察してみましょう。
「やぎ座」にあります。0時半ごろに昇ってきて、日の出1時間前(東京で3時30分ごろ)に南東の空に見えます。明るさは約0.8等級です。
先月までと比較して高度が上がってきたおかげで見つけやすくなっています。明け方の空に集う明るい4惑星の先頭を引っ張っているようなイメージで眺めてみましょう。
天体望遠鏡で観察すると環が見えます。本格的な観察には難しい時間帯ですが、望遠鏡をお持ちの方は今年の「環はじめ」をしてみてはいかがでしょうか。
明け方の惑星集合が終盤に差し掛かり、土星が離れていく一方で木星が加わってきます。惑星たちの色・明るさ・動きを今月も追いかけましょう。流星群や恒星食も楽しみです。
3月ごろから明け方の東~南東の空で、金星・火星・木星・土星の共演が続いています。地球から見ると各惑星はそれぞれの速さで別々の方向へと動いているので、惑星同士の間隔や並ぶ角度は日々変化していきます。そのなかで今月は特に木星が主役を演じます。
まず月初めに、木星は明けの明星の金星と大接近します。最接近するのは1日ごろで、満月の見かけサイズの半分ほどまで近づくという超大接近です。マイナス4等の金星とマイナス2等の木星という輝星の共演は見逃せません。ぜひ早起きして観察してみてください。かなり低めなので、見晴らしの良いところを事前に探しておきましょう。天体望遠鏡では同一視野に2惑星が入り、半月状に欠けた金星と木星の縞模様、ガリレオ衛星が一度に見えるかもしれません。夜明け前の空の明るさと低空という条件のため、見づらい可能性が高いですが、お持ちの方は望遠鏡を向けてみましょう。
10日ごろになると木星と金星の間隔は開きますが、肉眼ではまだ並び輝いているように見えるでしょう。その後、金星・木星間がさらに開いていくと同時に、木星と火星との間隔が小さくなっていきます。月末の30日ごろに両惑星は最接近し、その間隔は満月ほどになります。こちらもじゅうぶん大接近と呼べるでしょう。
木星を主体として考えれば、1か月かけて金星から火星へと移動していくようなイメージです(もちろん実際には、金星も火星もそれぞれ動いています)。少し離れてしまった土星も含めて、また日によっては月も含めて、各天体の色や明るさといった個性にも目を向けながら、明け方の空の移り変わりをお楽しみください。
みずがめ座η流星群(η(エータ、イータ)は星の符号)は、毎年ゴールデンウィークの終盤に活動がピークとなる流星群です。「みずがめ座」のη星付近にある放射点(流れ星が飛ぶ中心の方向)を中心として四方八方に流れ星が飛ぶように見えることから、このような名前で呼ばれています。
今年は6日の明け方と7日の明け方が見ごろと予想されています。月明かりの影響はまったくありませんが、ピーク(6日の夕方予想)から半日ほどずれているので、やや少なめとなるかもしれません。空が開けたところで街明かりなどがなければ1時間あたり10個ほど、郊外などでは5~7個ほど見られそうです。
放射点は東の低空にありますが、流れ星は空のどの方向にも飛ぶので、空を広く見渡すようにしましょう。街灯から離れた方向や見晴らしがよい方向を中心に眺めるのがお勧めです。東天の惑星たちの近くを流れる可能性も、天頂付近に広がる「夏の大三角」の中を飛ぶ可能性もあります。好天と幸運に恵まれますように。
月が太陽を隠す現象を「日食」と呼ぶように、月が恒星を隠す現象は「恒星食」(より正確には「掩蔽(えんぺい)」)と呼ばれます。暗い星を含めれば恒星食は比較的よく起こりますが、明るい星が隠される機会はあまりありません。17日未明(16日から17日にかけての夜)に起こる2等星の食は、そのような珍しい現象の一つです。
この夜に月に隠されるのは、「さそり座」のジュバという星です。「さそり座」の赤っぽい1等星アンタレスの右にあり、さそりの顔の位置で輝いています。
ジュバが月に隠されるのは1時15分ごろ、月から出てくるのは2時20分ごろです。見る場所によって、時刻や月のどこに出入りするかは異なるので、事前によく確かめておきましょう。ほぼ満月ですがわずかに欠けているため、ジュバが出てくるときには暗い部分から突然現れます。明るい月がすぐそばにあると2等星でも見づらいので、双眼鏡や天体望遠鏡での観察をお勧めします。
隠される・出てくる瞬間が見えなくても、現象の前後で月とジュバが大接近している光景を見るのも面白いものです。アンタレスも含めて、食や接近の様子をお楽しみください。
8月下旬から9月中旬ごろに誕生日を迎える人の星座として名前が知られている「おとめ座」、宵空で見やすいのは5月ごろです。5月中旬の20時から21時ごろ、南の空に大きく広がっています。
「おとめ座」の目印は、青白く輝く1等星スピカです。スピカはアルクトゥールス、デネボラと共に「春の大三角」を構成する星で、南の空に三角形があるときには一番低いところに見えます。この春の大三角の内側に「おとめ座」が大きく広がっています。
スピカは「麦の穂」という意味の語に由来する名前で、星座の絵ではその由来どおりに女神が左手に持った麦穂の位置に輝いています。ギリシャ神話における農業の女神デーメーテールが「おとめ座」のモデルとされているので、麦を持っているのも納得ですね。別の説ではデーメーテールの娘ペルセポネーや、正義の女神アストライアーともされています。
「おとめ座」は全天で2番目に大きい星座ですが、スピカ以外は3等星より暗い星ばかりなので、全体像をイメージするのは少し難しいかもしれません。形にとらわれず大きく広い心持ちで、夜空を眺めてみましょう。
「おとめ座」の北(上)、春の大三角から少し外に出たあたりに、微光星が集まっているところがあります。ここには「かみのけ座」という星座があります。歴史上実在した王妃ベレニケが神に捧げた美しい髪の毛が星座になったものとされていますが、髪そのものというよりもキラキラした髪飾りという印象に見えます。
「かみのけ座」の星の集まりは、空の条件が良ければ肉眼でもわかるほど明るい星団です。双眼鏡を使うと街中でも存在をとらえられるでしょう。春の大三角との位置関係を確かめながら探してみましょう。
「おとめ座」と「かみのけ座」の境界あたりには銀河が多数集まっています。星がたくさん集まった天体を「星団」と呼ぶのと同様に、銀河の集団は「銀河団」と呼び、この「おとめ座銀河団」の場合には銀河が1000個近くも含まれています。
おとめ座銀河団までの距離は約5900万光年、つまり光の速さで5900万年かかるところにあります。一般的な感覚では途方もなく遠いところですが、銀河団としては私たちから一番近いところにあり、様々な観測や研究の対象となっています。2019年4月に「人類史上初めてブラックホールの撮影に成功した」というニュースが発表されましたが、そのブラックホールが存在するM87銀河もおとめ座銀河団の一員です。
「おとめ座」や「かみのけ座」の領域にはこのほかにも非常に多くの銀河が存在しています。ほとんどは見かけ上とても暗いので、天体望遠鏡を使っても観察は難しいかもしれません。天体写真愛好家や天文台、宇宙望遠鏡などが撮影した画像を検索して、銀河の形状の違いなどを楽しんでみてください。たとえば「おとめ座」の南端には「ソンブレロ(帽子の一種)銀河」という愛称を持つM104銀河があります。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は5月中旬の深夜1時ごろの星空です。6月中旬の深夜23時ごろ、7月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。
「春の大三角」が西の空に移り、「春の大曲線」が北西から南西の空に大きなアーチを架けています。大三角と大曲線に共通する2つの1等星、アルクトゥールスとスピカの、色や明るさはとくに印象的です。
一方、反対の東の空には「こと座」のベガ、「わし座」のアルタイル、「はくちょう座」のデネブでできる「夏の大三角」が高くなってきています。春から夏へ、三角形の引き継ぎをしているようなイメージですね。真南の空の低いところに見える「さそり座」のアンタレスの、赤っぽい輝きも目を引きます。空の条件が良ければ、夏の大三角から「さそり座」にかけて天の川も見えるでしょう。
惑星集合や流星群など、今月も未明~明け方に見ごろとなる天文現象があります。安全や体調管理にはじゅうぶんお気をつけください。夜更かしは計画的に。
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