19日の宵に部分月食が起こります。5月に続く今年2回目の月食で、皆既月食に近いくらい月が大きく欠けます。時刻や位置を事前によく確かめて楽しみましょう。木星と土星はそろそろ観察シーズン終盤です。
星空写真
愛知県田原市にて
愛知県田原市の渥美半島は電照菊の一大産地で晩秋の風物詩とされています。ビニールハウスの電灯が灯り、沈んでいく火星を見送っていきます。撮影地は渥美の森という標高50mほどの丘ですが、歩きでしたので汗だくだくの思い出が蘇ります。
2018年11月10日 23時30分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(45mm、ISO400、露出15秒×104枚を合成、f/4.5)
撮影者:石橋 直樹
4日(木) | 明け方、細い月と水星が大接近、細い月とスピカが並ぶ |
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5日(金) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
7日(日) | 立冬(こよみの上で冬の始まり) |
8日(月) | 14時ごろ、金星食(金星が月に隠されます。「今月の星さがし」で解説) 夕方~宵、細い月と金星が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
10日(水) | 夕方~宵、月と土星が並ぶ |
11日(木) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) 宵~深夜、月と木星が並ぶ |
19日(金) | 満月。次の満月は12月19日です 16時過ぎから20時前にかけて、部分月食(「今月の星さがし」で解説) |
20日(土) | 宵~翌21日未明、月とアルデバランが並ぶ |
23日(火) | 深夜~翌24日明け方、月とポルックスが接近 |
24日(水) | 宵~深夜、月とポルックスが並ぶ |
26日(金) | 深夜~翌27日明け方、月とレグルスが並ぶ |
27日(土) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
中旬ごろまで、明け方の東南東の低空に見えます。
日の出30分前(東京で明け方5時40分ごろ)の高度は7度前後で、太陽から大きく離れることがないため見つけづらい水星としては比較的好条件です。とはいえ「水星としては」見やすいというだけであり、建物に隠されたり空の明かりに埋もれてしまったりするのでなかなか見つけられません。見晴らしが良く空が開けたところで、スマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめてから探してみましょう。肉眼でも見える明るさですが、双眼鏡を使うとさらに見やすくなります。
4日の明け方に、月齢28の非常に細い月と大接近して見えます。共演の様子を双眼鏡で観察してみましょう。近くに「おとめ座」のスピカも見えるかもしれません。
「宵の明星」として、夕方から宵に南西の空に見えます。
日の入り1時間後(東京で夕方17時30分ごろ)の高度は約15度とあまり高くはありませんが、とても明るいおかげで、建物などに隠されていなければ簡単に見つかります。このころには西の空もかなり暗くなっているので、金星が眩しいと思うかもしれません。冷たい風の中で見ると、輝きがいっそう強く感じられるでしょう。沈むのは19時20分ごろ(東京の場合)です。
8日の日中に、細い月が金星を隠す現象が起こります。また、同じ日の夕方には細い月と金星が大接近している光景が見られます。「今月の星さがし」を参考にして、美しい共演をお楽しみください。
太陽と同じ方向にあるため、見えません。12月ごろから、明け方の東南東の低空に見えるようになります。
「やぎ座」にあります。18時ごろに南の空に見え、23時ごろに沈みます。明るさは約マイナス2.4等級で、月・金星に次いで明るいので目立ちます。
日付が変わる前に沈むようになり、そろそろ観察シーズンは終盤です。空が暗くなったら早めに見ておきましょう。肉眼では色や明るさを、双眼鏡や天体望遠鏡では木星を公転する4つのガリレオ衛星や木星表面の縞模様を楽しめます。
11日の宵から深夜、月齢7の上弦の半月と並んで見えます。
「やぎ座」にあります。18時ごろに南南西の空に見え、22時ごろに沈みます。明るさは約0.7等級で、土星の左~左上に並んで見える木星よりは暗いものの、街中でも肉眼で簡単に見つけられます。
木星と同様、こちらもそろそろ観察シーズン終盤です。天体望遠鏡で環を観察してみましょう。10日には少し細めの半月と並び、この光景は肉眼や双眼鏡でもよく見えます。
19日の宵に、月が大きく欠ける部分月食が起こります。低めの現象なので月の方位や位置をよく確かめておきましょう。8日の日中には細い月が金星を隠す現象もあります。隠される・隠すの両方で、月に要注目です。
今シーズンの金星は「宵の明星」として、夕方から宵のころに南西の空に輝いています。夕方まで見えないかというとそうではなく、位置さえわかっていれば日の入り前から、青空の中でも見つけることができます。スマートフォンのアプリなどで位置を確かめ、太陽の光が目に入らないように気を付けながら探してみてください。双眼鏡を使うとわかりやすいでしょう。
この「日中に見える金星」にとくに注目したいのが11月8日で、細い月が金星の手前を横切って金星を隠してしまう「金星食」という現象が起こります。九州中南部より西では残念ながら超大接近どまりですが、中四国より東の地域では13時40分ごろに金星が月に隠され、14時40分ごろに金星が再び現れます。日本の広い範囲で金星食が見られるのは2012年8月14日以来、約9年ぶりとなります。
当日の金星の見かけサイズは月の約70分の1で、小さいながらも面積があります。天体望遠鏡で観察すると、半月のような形をしていることがわかるでしょう。このように面積があるため、金星は一瞬で消えるのではなく、2分くらいかけて月の暗い部分の裏側へじわじわと入り込んでいきます。見方を変えれば、月が2分くらいかけて金星を覆っていく、ということですね。出現するときも同様で、2分くらいかけて月の明るい部分から金星が現れます。望遠鏡では2天体の位置関係が変わっていく様子がわかりますし、双眼鏡では金星の明るさが変化するように見えるでしょう。明るさの変化は肉眼でもわかるかもしれません(とくに隠されるときが認識しやすいはずです)。
月のどの位置に金星が隠され、どの位置から現れるか、それぞれの時刻がいつか、というデータは観察場所によって異なります。詳しく観察する場合には、シミュレーションソフトなどで見え方をよく確かめておきましょう。また、太陽を見ないように注意を心がけてください(自分だけでなく、周りで一緒にご覧になる方にも注意しましょう)。
金星食が終わった後、2天体の間隔は少しずつ開いていきますが、約3~4時間後となる当日の夕方にはまだ大接近している状態にあります。この大接近は全国で見られ、望遠鏡がなくても肉眼ではっきりと見ることができるので、ぜひ眺めてみましょう。地上風景を入れた写真撮影もおすすめです。先月までと比べて風がずいぶん冷たくなり、空気がいっそう澄んでいるといった、地上の変化も感じながらお楽しみください。
今年5月26日に、地球の影に月が入って月の形や色が変化する皆既月食が起こりました。日本で見られる月食は約3年ぶりで期待度が高かったのですが、多くの地域で雲が広がり、よく見えませんでした。
今月19日にその残念さを晴らすチャンスがやってきます。今回は部分月食で、月全体が地球の影に入るわけではありませんが、ひじょうに大きく欠ける「ほぼ皆既月食」と呼べるほどの現象ですので、皆既月食と同じように楽しむことができそうです。
満月が欠け始めるのは夕方16時19分ごろです。このとき日本では月が昇った直後(北海道、東北の一部)か、まだ地平線の下にあるので、欠け始める様子を見るのは難しそうです。その代わりに「欠けた状態の満月」が昇ってくる光景を見ることができるので、楽しみにしましょう。
その後、月は高度を上げながらさらに大きく欠けていき、18時3分ごろに「食の最大」状態を迎えます。向かって右下の部分に明るい部分が残っているものの、月のほとんど全面が赤暗くなっている様子が見えるでしょう。さらにここから1時間45分かけて月は明るさを取り戻していき、19時47分に月食(本影食)が終わります。
月食は、月が見えるところであれば世界中どこで観察しても、同時刻には同じ割合だけ欠けています。一方で、各時刻における月の方位と高度は観察場所によって多少変わります。日本で見る場合はどこであっても低空での月食になり、食の最大時には高度が10~20度しかありません。視界が開けている場所を事前に探しておきましょう。低いということは地上風景と一緒に見たり撮ったりする上ではメリットにもなりますので、山やランドマークなどの前景を見つけておくと良さそうです。
月食の観察に特別な道具は不要で、月の色や形が変わっていく様子は肉眼でもよくわかります。気軽に眺めてみてください。双眼鏡や天体望遠鏡があれば微妙な色の違いなども楽しめるでしょう。とくに双眼鏡では、欠けた月とプレアデス星団(すばる)が同一視野内に入り、面白い眺めとなります。天気に恵まれなかった場合などは、インターネット中継も選択肢に入ります。複数地点の中継を見比べると、月食が全国で同時進行することがよくわかります。
週末の夕方から夜の早い時間帯に起こる月食なので、多くの方にとって観察しやすい現象です。安全対策、寒さ対策などの準備も整えて、「ほぼ皆既」の部分月食をお楽しみください。
11月中旬の夜21時ごろに頭の真上あたりを眺めると、先月ご紹介した「ペガスス座」の胴体に当たる大きな四角形「秋の四辺形」が見つかります。その一角から北東方向に伸びている星の連なりが「アンドロメダ座」の星々です。
アルフェラッツ、ミラク、アルマクと2等星が似たような間隔で並んでいて、意外と見つけやすい星座です。四辺形からどの方向を見ればいいかわからないときには、北の空に見えているW字形の「カシオペヤ座」を見つけて、「秋の四辺形からカシオペヤ座のほうに伸びる星の並び」を探してみてください。
ギリシャ神話では、アンドロメダは国王ケフェウスと王妃カシオペヤの娘とされています。アルフェラッツが頭、ミラクが腰、アルマクが足の位置にあるとイメージすると、王女の姿を想像しやすくなります。怪物に襲われそうになったアンドロメダを、天馬ペガススに乗った勇者ペルセウスが救ったというストーリーはギリシャ神話の中でも有名なものですが、「アンドロメダ座」の北に「カシオペヤ座」「ケフェウス座」、東に「ペルセウス座」、西に「ペガスス座」と、この神話に登場する星座は今の夜空に勢ぞろいしています(怪物は「くじら座」です)。ページ上部の「11月の星空」の星図などを頼りに見つけてみましょう。
また、「アンドロメダ座」の隣には「さんかく座」という、その名のとおりの形に星が並んだ星座もあります。やや暗めなので見つけづらいのですが、ミラク、アルマクとの位置関係を頼りにして探してみましょう。双眼鏡を使うとわかりやすくなります。
アンドロメダの足先に光るアルマクを天体望遠鏡で観察すると、黄色っぽい2等星と青っぽい5等星が並ぶ二重星であることがわかります。宝石の付いたアンクレットのような美しさを感じられるでしょう。
アンドロメダ座大銀河(M31は「メシエカタログの31番目の天体」の意味)は、私たちのいる天の川銀河から約230万光年離れたところにある巨大な渦巻銀河です。光の速さでも200万年以上かかるというと、途方もなく遠くにあるように思えますが(実際に遠いのですが)、形が整った銀河としては、天の川銀河から一番近い天体です。宇宙の広さを感じさせられますね。天の川銀河とアンドロメダ座大銀河はゆっくりと近づいていて、数十億年後に衝突すると考えられています。
M31は空が暗いところなら肉眼でぼんやりと見え、郊外でも双眼鏡があれば見つけられます。ミラクを目印にして探してみましょう。天体写真でとらえられるような渦巻き構造の詳細な様子は天体望遠鏡を使っても見えませんが、230万年かけて宇宙を旅してきた光を直接自分の目にするのは、写真とは異なる感動があります。
また、「さんかく座」のM33も、M31よりは暗いものの比較的見つけやすい銀河です。ミラクを挟んでM31の正反対の位置、と見当をつけて双眼鏡を向ければ、淡い光の広がりをとらえられます。ただしM31よりも暗いので、空の条件の良いところで探してみましょう。距離は約300万光年で、これも宇宙のスケールで考えれば私たちのすぐそばと言える近さです。渦巻き構造を正面から見るので、天体写真では「これぞ渦巻銀河」という形が楽しめます。
さらに、アルマクの近くには、渦巻構造を真横から見るNGC 891銀河(NGCは別のカタログの名前)もあります。こちらはM31やM33よりもずっと暗く、写真向きの天体です。
秋の夜長、銀河までの距離に思いを巡らせたり、角度によって渦巻き模様の見え方が変わる様子を楽しんだりしてみてください。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は11月中旬の深夜1時ごろの星空です。12月中旬の深夜23時ごろ、来年1月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(月が見えることもあります)。
「秋の四辺形」が西の空に低くなりました。アンドロメダは頭を地平線に、足を上に向けた体勢で、少し苦しそうです。
秋の四辺形から南西の空にかけては明るい星が少ないですが、南から南東の空には色とりどりの明るい星々たちが踊っています。星の明るさや色の違いも感じながら眺めてみましょう。目が慣れてくると暗い星々も見えてきて、星座の形がわかりやすくなります。目が慣れたところで再び西の空に戻ると、「さんかく座」「うお座」なども見つかるかもしれません。
東の空には「しし座」が、北東の空には「北斗七星」も見え始めました。どちらも地平線からまっすぐ立ち上がって、立派に見えますね。
深夜から明け方にはかなり冷える季節です。防寒をしっかりとして星空散歩をお楽しみください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。