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2021年8月の星空

12~13日を中心に、ペルセウス座流星群が好条件で見られます。その翌日の14日は伝統的七夕です。流れ星に願い事を、七夕飾りの短冊にも願い事をと、少し欲張りな夏の星空観察ができそうです。

星空写真

群馬県 渋峠にて
明け方のマジックアワーに昇るオリオン座を星の軌跡で表現しました。アクセントの朝焼け色が星々固有の星色を際立たせ、神秘性が増幅したように思います。

2020年8月20日 3時9分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 28mm f/1.4E ED(ISO 400、露出300秒×8枚を合成、f/4.0)
撮影者:高岡 誠一

8月の星空

南の空

南の空

2021年8月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(16日)、満月(22日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2021年8月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

2日(月) 土星が衝(一晩中見えるので観察の好機です。「今月の星さがし」で解説)
3日(火) 未明~明け方、月とアルデバランが並ぶ
7日(土) 立秋(こよみの上で秋の始まり)
8日(日) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
10日(火) 夕方、細い月と火星が接近
11日(水) 夕方~宵、細い月と金星が接近(「今月の星さがし」で解説)
13日(金) ペルセウス座流星群の活動がピーク(「今月の星さがし」で解説)
夕方~宵、月とスピカが並ぶ
14日(土) 伝統的七夕(「今月の星さがし」で解説)
16日(月) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
宵~深夜、月とアンタレスが並ぶ
20日(金) 木星が衝(一晩中見えるので観察の好機です)
21日(土) 未明、月と土星が並ぶ
22日(日) 満月。次の満月は9月21日です
夕方~翌23日未明、月と木星が並ぶ
30日(月) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
深夜~翌31日明け方、月とアルデバランが並ぶ

8月の惑星

水星

下旬ごろから、夕方の西の低空に見えます。

日の入り30分後(東京で夕方18時50分ごろ)の高度は5度未満と低く、目印になるような天体が近くにないこともあって見つけるのは困難です。スマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめて、見晴らしの良いところで探してみましょう。少し離れていますが、金星との位置関係が頼りになります。慣れれば肉眼でも見える明るさですが、双眼鏡を使うと見やすくなります。

19日ごろに火星と大接近します。低空までスッキリと晴れ渡っていたら観察に挑戦してみてください。

金星

「宵の明星」として、夕方から宵の早い時間帯に西の空に見えます。

日の入り30分後(東京で夕方19時ごろ)の高度は約13度で、先月までと同様に低いままですが、とても明るいため、建物などの陰になっていなければ肉眼でも簡単に見つかります。さらに30分後(つまり日の入り1時間後)には約7度まで高度が下がりますが、空が暗くなることにより金星の輝きが強く感じられるようになります。明星と呼ぶにふさわしい光景が見られるでしょう。

11日に月齢3の細い月と接近して見えます。「今月の星さがし」を参考に、美しい夕景をお楽しみください。

火星

「しし座」にあり、夕方の西の低空に見えます。日の入り30分後(東京で夕方19時ごろ)の高度は上旬に6度、中旬以降は3度未満と非常に低く、そのうえ金星はもちろん水星よりも暗い(1.8等級)ので、見つけるのは非常に困難です。水星と同様にスマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめて、見晴らしの良いところで双眼鏡を使って探してみましょう。

19日ごろに水星と大接近します。

木星

「みずがめ座」と「やぎ座」の境界付近(下旬から「やぎ座」の領域)にあります。21時ごろに南東の空のやや低いところ、0時ごろ南の空、3時ごろに南西の空のやや低いところに見えます。ほぼ一晩中見えるので観察の好期です。

明るさは約マイナス2.9等級でよく目立ちます。木星の右に見える土星と、明るさや色を見比べてみましょう。

双眼鏡を使うと木星を公転する4つのガリレオ衛星が、天体望遠鏡を使うと衛星のほかに木星表面の縞模様が見えます。機材をお持ちの方はぜひ観察してみましょう。

土星

「やぎ座」にあります。20時ごろに南東の空のやや低いところ、23時ごろ南の空に見え、4時ごろに沈みます。明るさは約0.2等級で、土星の左のほうに見える木星よりは暗いものの、肉眼で簡単に見つけられます。

木星と同様にほぼ一晩中見えるので観察の好期です。天体望遠鏡で環を観察してみましょう。

21日の未明、月齢12の月と並びます。

今月の星さがし

11日に細い月と金星の共演、12~13日にペルセウス座流星群がピーク、14日に伝統的七夕と、中旬にイベントが目白押しです。また、土星がほぼ一晩中見え、観察の好期を迎えています。

11日夕方 細い月と金星の共演

5月ごろから、夕方の西の空に宵の明星の金星が見えています。低いためにあまり目立ちませんが、非常に明るいので一目でそれとわかります。日の入りから30分ほど過ぎて空が暗くなり始めたら探してみましょう。日の入りから1時間30分後には金星も沈むので、観察チャンスはおよそ1時間ほどです。

8月11日19時30分の、西の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は拡大イメージ(視野6度)、小さい円は月と金星をさらに拡大したイメージ(正立像。月と金星の拡大率は異なる)

11日には月齢3の細い月が金星の右上にやってきて、美しい共演を見せます。肉眼でもよく見えるので、気楽に眺めてみましょう。地上風景を入れた写真撮影もおすすめです。

双眼鏡を使うと、月の模様がわかりやすくなったり金星の輝きが強くなったりして、肉眼とは違う印象を楽しめます。月の暗いほうがほんのり光って見える地球照も見やすくなります。天体望遠鏡では両天体を同時に見ることはできませんが、月のクレーターが見えたり金星の欠けた形がわかったりして、拡大像ならではの姿が面白いでしょう。夕涼みしながら、いろいろな方法で月と金星を愛でてみてください。

12~13日、ペルセウス座流星群

毎年8月13日ごろに活動がピークとなるペルセウス座流星群は、夏の定番の天文現象です。条件が良ければ1時間あたり数十個の流れ星を見ることができる、一年のうちでも指折りの「流れ星が見やすい夜」です。速く明るい流星が多いので印象に残りやすいのもポイントです。流れ星が飛んだあとに、ぼんやりとした煙のような「流星痕」が見えることもあります。

今年ペルセウス座流星群の活動が最も活発になるのは13日明け方4時ごろと予想されていますので、12日深夜から13日明け方にかけての夜が一番の見ごろとなります。とくに空が明るくなり始める直前の13日3時から3時30分ごろが最も見やすいでしょう。今年は月明かりの影響がないという絶好条件のおかげで、街明かりがなければ1時間あたり50個前後の流れ星が見えそうです。街明かりがあったり高い建物などで視界の一部が遮られたりすると、この半分から3分の1くらいに減りますが、それでも1時間あたり約20個なので、かなり多いといえるでしょう。

8月13日3時30分ごろの東京の空。流れ星は放射点(「ペルセウス座」の方向)を中心とした空全体に飛ぶように見える

流れ星観察の重要なポイントは、空を広く見渡すことです。流れ星はペルセウス座の方向「だけ」でなく、空のあちこちに飛ぶので、なるべく広い範囲を眺めましょう。広く見ることが大切ですから、双眼鏡や天体望遠鏡は不要です。郊外などで観察する場合には、街灯から離れた方向や街明かりの影響を受けにくい天頂方向を中心にすると見やすくなります。西の空に流れれば夏の大三角の近くに、南西の空なら木星や土星のそばに、東では「おうし座」「オリオン座」と一緒に、見えるかもしれません。

1時間に50個見えるとすると平均では約1分に1個見えることになりますが、流れるペースは不規則なので、立て続けに数個見えることもあれば5分以上も流れ星を目にできないということもあります。虫よけを準備して、安全やマナーに気をつけながら、少し気長に10~15分くらいは空を見上げてみてください。また、ピークの前後数日間も、数は少なくなるものの流れ星を見られるチャンスはあります。天候や体調とのバランスも考慮しながら星空を見上げてみましょう。1つでも多くの流れ星が見えますように。

14日 伝統的七夕

7月7日は七夕でしたが、例年この日にはまだ梅雨明けしていない地域が多く、晴れた夜空に織り姫星(「こと座」のベガ)と彦星(「わし座」のアルタイル)が見えないことも少なくありません。

七夕は古くからの行事で、もともとは旧暦の7月7日に行われていました。そこで、この旧暦7月7日(※)を「伝統的七夕」と呼び、天文行事として楽しむことも広く行われています。伝統的七夕の日は毎年日付が変わり、今年の場合は8月14日です。

※旧暦は現在公的には使われていないため、伝統的七夕の日は「太陽太陰暦と同じような方法で求めた7月7日に近い日」として、太陽の位置や月の満ち欠けをもとにして決められます。

伝統的七夕の8月14日と新暦七夕の7月7日、旧暦の7月1日にあたる8月8日の、夜21時の空(場所は東京)。7月7日には地平線(図の円周)に近いベガとアルタイルが、8月14日には天頂(図の中心)付近まで高く昇ることがわかる。
また、8月8日は月明かりがないので、この前後の日は天の川が見やすい

8月中旬ともなれば梅雨も明け、晴れた夜空が見られる確率が高くなります。7月7日の夜21時ごろには東の空に見えていたベガとアルタイルは、伝統的七夕の夜21時には頭の真上あたりまで高く昇っています。また、旧暦では1日が新月なので、その6日後となる旧暦7日は必ず(ほぼ)上弦の半月になります。南西の空に見えるこの半月が沈む深夜以降、空が暗いところではベガとアルタイルの間に天の川も見えるでしょう。今年の場合はベガとアルタイルだけでなく、南東の空に木星と土星もペアで見えています。

7月7日の七夕にはイベント的な楽しみや宇宙に親しむきっかけとしての意味合いがあり、伝統的七夕には古くからの人と宇宙のつながりを感じたり暗い星空に思いを馳せたりという良さがあります。伝統的七夕の夜にもぜひ、織り姫星と彦星を見上げてみてください。

土星が見ごろ

夜21時ごろに南東の空を眺めると、やや間隔をあけて明るい星が左右に並んでいる光景が目に入ります。向かって左の明るいほうが木星、右が土星です。どちらの惑星もほぼ一晩中見えるので見ごろを迎えています。

土星と言えば環が見ものです。環は土星だけでなく木星・天王星・海王星にもありますが、一般的な天体望遠鏡でも環が見えるのは土星だけです。レンズの直径が5~10cmで100倍程度もあれば、じゅうぶん見ることができます。小さなものでもお持ちであれば、ぜひ土星に向けてみましょう。双眼鏡でも、楕円っぽく見えることはわかります。

この環の見え方は数日といった短期間では変わりませんが、年の単位で考えると少しずつ変わります。現在は少しずつ細く(幅が小さく)なっているところですが、最も「土星らしい」角度ともいえます。じっくりと観察してみてください。2025年には見かけ上、環が消えてしまいます。

土星の環の傾きの変化

また、80個以上見つかっている衛星のうち、最大のタイタンも小型の望遠鏡で見ることができます。約8等級と暗いので、空の条件の良いところで探しましょう。約16日間で土星を一周しているので毎日位置が変わりますが、土星本体の4~5倍くらい離れたとこを注意深く探してみてください。

夏は科学館などで天体観察会が企画されることが多く、そうした機会に望遠鏡で惑星を観察できたのですが、今夏は人数制限やイベント中止といった対応があるかもしれません。情報をチェックし、参加される場合には安全に留意しながら土星の環や衛星を楽しみましょう。

今月の星座

こと座、わし座

伝統的七夕のところでもご紹介したように、8月中旬の夜21時ごろ頭の真上あたりに「夏の大三角」が見えます。3つの星のうち一番明るいのがベガ(0.0等級)、次に明るいのがアルタイル(0.8等級)で、ベガの周りに「こと座」が、アルタイルの周りに「わし座」が広がっています。

「こと座」「わし座」
(M57の画像クレジット:NASA, ESA, and the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration)

「こと座」は、ベガを含む3つの星でできる小さい三角形と、その三角形につながる平行四辺形に並んだ星々で形作られます。ベガのほかは3等星かそれより暗く、やや見つけづらいので、双眼鏡を使って探してみましょう。整った形の竪琴(たてごと)がイメージできます。

「わし座」のほうはアルタイルの両隣に星があり、そこからさらに星をつなぐと鷲の胴体や翼を描くことができます。とはいえ、「こと座」と同様に「わし座」もアルタイルのほかは暗い星ばかりです。天空を悠々と飛ぶ鷲の姿をイメージするには、澄んだ夜空と想像力が必要でしょう。

どちらの星座も1等星以外の星はあまり目立ちませんが、ベガとアルタイルは街中でも見つけられます。伝統的七夕の夜だけでなく晴れた夜にはいつでも、空を見上げて2つの星を探し、周りの星々も想像してみてください。

四重星ダブルダブルスター

ベガのそばにある「こと座ε(エプシロン、イプシロン)星」は、肉眼では1つの星にしか見えませんが、双眼鏡で観察すると5等星が2つ並んだ二重星であることがわかります。天体望遠鏡を使うとそれぞれが2つずつに分かれ、全部で4つの星が見えます。「二重の二重星」なので「ダブルダブルスター」という愛称で呼ばれ、観察会で人気の天体です。

環状星雲M57

「こと座」の平行四辺形に並んだ星のうちベガから遠い2つの星の間に、広がったガスが丸く見える天体があります。その形から「環状星雲、リング星雲、ドーナツ星雲」などの愛称で知られています。太陽のような星が一生の終末期に放出したガスが紫外線を受けて光る、「惑星状星雲」という種類の天体です。M57という番号は、天文学者メシエが編集したカタログの57番目の天体という意味です。

環状星雲は淡いので、空の条件の良いところで望遠鏡を使わないと見ることができませんが、機会があればぜひ観察してみましょう。なお、星図中の画像はハッブル宇宙望遠鏡が撮影したものでカラフルですが、眼視では光が弱いため色彩を感じられず、白っぽく見えます。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は8月中旬の深夜1時ごろの星空です。9月中旬の深夜23時ごろ、10月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。

2021年8月中旬 深夜1時ごろの星空

「夏の大三角」が西の空に移ってきました。同じ星の並びでも、東の空や頭の真上にあるときとは違った印象を受けるかもしれません。土星と木星も真南を過ぎて西寄りの空に輝いています。比較的高いおかげでよく見えるので、夜更かしできる日にはじっくりと天体望遠鏡で観察してみたいものです。

南西の地平線から夏の大三角を通って、北天の「カシオペヤ座」、さらに北東のカペラへと続くあたりには天の川が流れていて、空が暗ければ肉眼で淡い光の帯が見えます。双眼鏡を使うとたくさんの星が見え、さらに美しさを感じられるでしょう。街中では天の川は見えませんが、双眼鏡を向ければ肉眼よりは多くの星が見えるので、ぜひ観察してみてください。

夜になっても暑い時季ですが、頭の真上には「秋の四辺形」が広がり、東の空には冬の星座「おうし座」も見え始めています。夏バテや疲れに気をつけながらゆったりと、星空散歩を楽しみましょう。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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