空の東半分に、春の訪れを告げる「しし座」や北斗七星が昇ります。西天に広がる冬の星々は名残惜しそうに沈んでいきますが、火星と「すばる」の共演や冬のダイヤモンドなど、まだまだ楽しめます。
星空写真
関東平野にて
関東平野を望む山の山頂から春の星座を撮影しました。左側にしし座、右側にうみへび座が見えます。このあと、春の大三角や春の大曲線を形作る星々が昇ってきます。かに座、しし座、おとめ座と続いていきます。
2021年1月4日 22時15分
ニコン D750+AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED(20mm、ISO 1250、露出8秒×100枚を比較明合成、f/5.6)
撮影者:鈴木 祐二郎
2日(火) | 宵~翌3日未明、月とスピカが並ぶ |
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4日(木) | このころ、夕方~深夜に火星とプレアデス星団が接近(「今月の星さがし」で解説) |
5日(金) | このころ、明け方に水星と木星が大接近 |
6日(土) | 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) 未明~明け方、月とアンタレスが接近 |
8日(月) | このころ、小惑星ベスタが見つけやすい(「今月の星さがし」で解説) |
10日(水) | 未明~明け方、細い月と土星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
11日(木) | 明け方、細い月と水星、木星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説) |
13日(土) | 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
19日(金) | 夕方~深夜、月と火星が接近、月とアルデバラン、プレアデス星団が並ぶ(「今月の星さがし」で解説) |
20日(土) | 春分 |
21日(日) | 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) |
23日(水) | 夕方~翌24日未明、月とポルックスが接近 |
26日(金) | 未明、月とレグルスが並ぶ 夕方~宵、月とレグルスが並ぶ |
29日(月) | 満月。次の満月は4月27日です 宵~翌30日明け方、月とスピカが並ぶ |
20日ごろまで、明け方の東南東の低空に見えます。
日の出30分前(東京で朝5時20分ごろ)の高度は5度前後とかなり低いので、低空まで見晴らしの良い場所で探しましょう。スマートフォンのアプリなどで位置の見当をつけてから、まず双眼鏡で眺めると見つけやすくなります。10日ごろまでは近くに明るい木星もあり、目印になるでしょう。一緒に探してみてください。
11日の明け方に月齢27の細い月と並びます。
太陽に近く、見えません。
5月中旬ごろから「宵の明星」として夕方の空に見えるようになります。
「おうし座」にあります。日の入り1時間後(東京で夕方18時50分ごろ)に西の空の高いところに見え、日付が変わるころに沈みます。明るさは約1.1等級です。
上旬は「おうし座」のプレアデス星団(すばる)のそばを通り過ぎていきます。「今月の星さがし」を参考にして、肉眼や双眼鏡で観察したり写真に収めたりしてみましょう。中旬から下旬にかけては「おうし座」の1等星アルデバランと並んで見え、色や明るさを競い合うように輝きます(19日には月も接近します)。「オリオン座」のベテルギウスも含めて、3つの赤っぽい明るい星を眺めてみてください。
「やぎ座」にあり、明け方の東南東の低空に見えます。明るさは約マイナス2等級です。
日の出30分前(東京で朝5時20分ごろ)の高度が10度前後と低く、見つけるのは少し難しいのですが、マイナス2等級と明るいおかげで、同じく明け方の東南東に見える水星や土星よりは目立ちます。木星を目印に、水星と土星も見つけてみてください。低空にあるため、天体望遠鏡での拡大観察には向いていません。
11日の明け方に月齢27の細い月と並びます。
「やぎ座」にあり、未明から明け方の東南東の低空に見えます。明るさは約0.7等級です。
日の出1時間前(東京で朝4時50分ごろ)の高度が10度前後と低く、見つけるのはやや難しいでしょう。日の出30分前には高度15度まで上がりますが、空が明るくなるため、やはり見つけにくそうです。少し離れたところに木星があり、土星よりも低いものの明るいので、まず木星を見つけてから位置関係を頼りにして土星を探してみましょう。低空にあるため、天体望遠鏡での拡大観察には向いていません。
10日の未明から明け方に月齢26の細い月と接近します。
火星がプレアデス星団(すばる)のそばを通り過ぎていきます。赤と青、色の対比を楽しみましょう。東の空に高く昇った「しし座」に位置する小惑星ベスタは、観察の絶好機を迎えます。
今年の干支と同じ「おうし座」は冬に見やすい星座ですが、3月に入ってもまだ宵のころには西の空に見えています。この「おうし座」に輝く星の集まり、プレアデス星団のそばを、今月上旬ごろに火星が通り過ぎていきます。
プレアデス星団は日本では「すばる」と呼ばれ、古くから知られてきた天体です。肉眼でも6個前後の星が群れている様子を見ることができ、星団だけでも美しさを感じられますが、そこに火星が加わることで、いっそうにぎやかで面白い光景となります。プレアデス星団の星々は青白く、火星の赤っぽい色と好対照なので、この対比にも注目してみてください。プレアデス星団は比較的明るく見つけやすい星団ですが、双眼鏡を使うとさらに見やすく印象的な眺めとなりそうです。
さて、「おうし座」には赤っぽい色に輝く1等星アルデバランがあり、火星はアルデバランとも並んで見えます。アルデバランは牛の目の位置に当たる星で、3月中旬ごろにはもう一方の目の位置に火星がある(ただし毎日動いていきます)、と見ることができそうです。19日にはやや細い月も近くに並び、これは牛の口のように見えるかもしれません。
さらに、「おうし座」の隣の「オリオン座」にも、赤っぽい1等星のベテルギウスが輝いています。3つの赤い星の色や明るさを見比べてみましょう。火星が星々の間を動いていく様子を追いながら、気温や空の透明度の変化と合わせて、春がやってくることを感じてみてください。
火星以外の、月と惑星の接近現象もご紹介しましょう。水星と木星、土星は明け方の東の低空にあり、10日と11日に新月前の細い月と接近して見えます。空が明るくなってからの現象で、しかもかなり低いためやや見づらいですが、見晴らしの良いところで観察してみましょう。
小惑星をご覧になったことはあるでしょうか。よく目立つ星や惑星と比べるとずっと暗く控えめなので見つけるだけでも大変ですが、それだけに見えた時の嬉しさは大きいものです。
これまでに100万個近い小惑星が見つかっていて、そのほとんどは研究で用いるような超大型望遠鏡でなければ見ることができませんが、いくつかは比較的明るくなります。そのような明るめの小惑星の一つがベスタです。1807年に、小惑星としては4番目に発見された天体です。直径は600km弱で、月の6分の1ほどしかありません。
ベスタは現在、宵の東の空に昇ってくる「しし座」の領域に位置しています。約6等級の明るさなので、双眼鏡を使えば見つけるのは難しくありません。ぜひ、観察にチャレンジしてみましょう。
見つけるのは難しくないといっても、6等級くらいの星はたくさんあり、しかも惑星と同様に毎日動いていくので、正確な位置を調べておく必要があります。「しし座」の尾に当たる2等星のデネボラと、腰のあたりの3等星シェルタンを目印として探してみましょう。標準的な双眼鏡であれば、ベスタはシェルタンと同じ視野内に入ります。日にちをおいて観察すればベスタが移動していることも確かめられるでしょう。移動の様子は写真で記録するとさらにわかりやすくなります。
まれに地球に降ってくる隕石の一部はベスタに由来することがわかっていて、その分析や研究も進められています。また、かつて「ドーン」という探査機がベスタを周回し、地図の作成や成分調査などを行いました。小惑星の研究は、惑星や太陽系全体の形成、変化などの解明にもつながり、この点でベスタは学術的にも注目されている天体です。そうしたことにも想像を巡らせながら、「しし座」に光るベスタを、ぜひ見つけ出してみてください。
3月中旬の夜21時ごろ、北の空を見上げると、正面に北極星、右手側(北東の空)に北斗七星、左手側(北西の空)に「ぎょしゃ座」のカペラが見つかります。また、頭の真上あたりには「ふたご座」のカストル、ポルックスが輝いています。こうした目立つ星々の間にひっそりと隠れているのが、「きりん座」と「やまねこ座」です。どちらも17世紀に作られた新しい星座です。
星座の位置の見当をつけるのは簡単で、「きりん座」はカペラと北極星の間あたり、「やまねこ座」はカストル、ポルックスと北極星の間あたりに広がっています。ただし、「やまねこ座」で一番明るい星は3等級、「きりん座」のほうは4等級と、星座の領域に含まれる星が暗いため、見つけるのはとても大変です。双眼鏡を使って探してみてください。
たとえ星がほとんど見えないとしても、「何もないように見える空の一角に、キリンやネコが隠れている」と想像してみるだけでも楽しいものです。北斗七星を含む「おおぐま座」や北極星を含む「こぐま座」などと共に、春の星空に踊る動物たちを思い浮かべて、北天を見上げてみましょう。
これら2つの星座には、天体望遠鏡向きの天体(二重星や見やすい星雲、星団)もあまりありません。その少ない中で「きりん座」のIC 342とNGC 2403という銀河は、天体写真の愛好家に人気の天体です(ICやNGCはカタログ名)。IC 342は渦巻銀河を正面から、NGC 2403のほうは渦巻銀河をやや斜めから見る角度です。インターネットで画像を検索するなどしてお楽しみください。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は3月中旬の深夜1時ごろの星空です。4月中旬の深夜23時ごろ、5月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(月や惑星が見えることもあります)。
北の空の高いところに「北斗七星」が昇っています。柄の星々のカーブを南へ伸ばしていくと、オレンジ色の明るい星「うしかい座」のアルクトゥールス、青白い明るい星「おとめ座」のスピカが見つかり、頭上に架かる雄大な「春の大曲線」が描けます。
西から北西の空の低いところには、「こいぬ座」プロキオン、「ふたご座」ポルックス、「ぎょしゃ座」カペラが、こちらもカーブを描いて並んでいます。今月ご紹介した「やまねこ座」もネコが伸びをしたような曲線ですね。こうした星々の並びに、春らしい柔らかさ、伸びやかさを感じられるかもしれません。
「さそり座」のアンタレスや「こと座」のベガなど、夏に見やすい星々も見え始めていますが、深夜の風はまだ冷たいかもしれません。星の美しさに見とれて体調を崩さないようにご注意を。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。