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vol.16 ニコンFXフォーマット史上 最小・最軽量。D600

3.快適な撮影のための、最新レンズとオートのすすめ。

軽くて明るい、NIKKORレンズ f/1.8ラインアップ。

D600との組み合わせで、おすすめのレンズはありますか?

もしD600の購入を検討されている方で、この24-85mmをお持ちでなければ、ぜひD600のレンズキットを買われることをおすすめします。
私はすでに24-70mmを持っていますが、VRはついていませんし、大きくて少し重たく感じます。もっと気軽にD600を持ちだして撮りたい、そんな時にはこの24-85mmがいいですね。
実はこのレンズ、D600より先に発売されていたのですが、当初はあまり興味がありませんでした。ところがD600と合わせて使ってみて驚きました。価格は手頃なのに、描写がとても良い。またVRがよく効くのです。
これは決して一般の方だけのものではなく、エントリーモデルユーザーからハイエンドユーザーまで、幅広い層におすすめできるレンズです。

24mm ISO100 f/5.6 1/200秒
85mm ISO100 f/5.6 1/160秒

D600のキットレンズになっている24-85mmは、小型軽量だが、気軽に使うには十分な画質を持っている。やはりVRがあるのは便利だ。広角側の周辺光量も豊富で、ディストーションも良く補正されている。こういったクセがないレンズは扱いやすい。(阿部氏談)

ISO100 f/2.8 1/80秒
ニコンユーザなら、ナノクリスタルコートのレンズが1本はほしい。こういう人は多い。これまではマイクロニッコール60mmがその希望に応えていたが、これからこの28mmの時代になる。f1.8という大口径ながら小型軽量で、価格も安価。言うことなしにおススメの1本だ。(阿部氏談)

単焦点ではいかがでしょう?

28mm f/1.8というレンズはいいですよ。
これはD4やD800のユーザーの方にもおすすめ。これまで、ナノクリスタルコートのレンズをとりあえず1本欲しいという方がよく候補に挙げていたのが、AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G EDでした。でもこれを1本つけて散歩に出ても、私には中途半端に長い気がしましたし、VRもついていないので、撮影していてもあまり楽しくなかったのです。
対して28mm f/1.8は小さく軽い上にナノクリスタルコートがついていて、お手軽で楽しいレンズです。写りも非常に良い。すべてのニッコールレンズユーザーにすすめたいですね。
このレンズは28mmなので、24-85mmを買うと焦点距離は重なってしまいますが、なんといってもf/1.8ですから。明るさが全然違います。
f/1.4のレンズだと少し重いので、海外旅行などに行く時は、少しでも軽いf/1.8のレンズが私には丁度良いですね。
他にも50mm f/1.8や85mm f/1.8なども気に入っています。1~2年前はf/1.4のシリーズに力を入れていたニコンでしたが、この1年ほどはf/1.8シリーズが充実してきました。

ISO100 f/2.8 1/100秒
50mmf1.8は少しレトロな描写をするレンズで、デジタル臭さを打ち消してくれるのがいい。絞り開放では口径食の影響があって舟型のボケが出るが、f2.8に絞ると丸く美しボケに変わる。ポートレートにも使いやすい1本だ。(阿部氏談)
ISO640 f/2.2 1/640秒
ポートレートだけを撮るなら、85mmf1.4がいい。しかし、旅行に持って行くとなると、f1.4は大きく重い。その点、f1.8ならずっとコンパクトに収まる。それでも大口径レンズに変わらない。被写体の輪郭が滑らかに崩れていくようなボケ味は素晴らしい。(阿部氏談)

的確にユーザーをフォローする、ニコンのオート機能。

阿部さんはオートで撮られることが多いとおっしゃっていましたが、ニコンのカメラのオートに関しては、どのようにお考えですか?

僕はカメラのオート化には大賛成です。僕はオートでばかり撮るし、オートだからうまく撮れるケースもたくさんあると思います。例えば、F1マシンだってオートマチックでしょう。要するに優れたオートというのは、人を超えているわけです。オートを嫌がっている人は、ぜひ今のニコンのオートを試してみて欲しい。
もちろん、マニュアルが好きな人はマニュアルで撮るのも結構です。でも、写真はあくまで結果がすべて。どんな撮り方をしたって良い写真なら良いわけです。そういった意味でいうと、カメラのオートにはどんどん世話になるべき。むしろ、オートの精度をさらに高めていくことが、ニコンの仕事の一つでもあると考えます。

確かにD4やD800など、高価なカメラほどオートの性能が優れていますよね。

オリンピックなどで、スピード感のある競技をマニュアルフォーカスで撮る人などいないでしょう(笑)。オートフォーカスだからあれだけのものが撮れるわけで、しかも秒間10コマ※ですよ(※D4の場合)。
ところで、ニコンのオート機能について、一つお話しておきたいことがあります。それはニコンのオートというのは、絶対に過剰に補正することはないということです。
逆光を自動的に補正するとしましょう。この場合、カメラが実際の印象より明るく補正し過ぎてしまうと、情報が失われて、取り返しがつかなくなるかもしれません。でもニコンの補正というのは、必ず少しユーザーが手を加えられるほどの、若干の余裕をもって補正をしています。
「ピッタリな補正を目指し、結果オーバーになることもある」といった補正より、常に若干弱めに補正する方がずっと難しい。時々「ニコンのオートはマルチパターン測光などと言いながら、なぜ+0.3しなければいけないんだ」と言う人がいます。そういうケースもあればちょうど良く補正するケースもあるわけですが、重要なのはマイナス補正しなければいけないということはまずない、ということ。
その点は、ニコンは徹底しています。

ポートレートを撮るのなら85mmf/1.4が最強だ。しかし、大きく重く高価なのも事実だ。
その点、同じ85mmでもf/1.8ならグッと小さく価格もお手ごろになる。絞り開放では口径食の影響が見られるが、1段絞るとずいぶんと改善される。単焦点大口径レンズのボケ味を気軽に味わえるお得な1本だ。僕は風景撮影にもよくつかっている。(阿部氏談)
8月の終わりに函館で撮影。夕飯を終えてホテルに戻る途中で、空いっぱいの鯖雲に遭遇。あまりの美しさにシャッターをレリーズした。シャッター速度は1/3秒だったが、VRのおかげだろう。まったくブレていなかった。(阿部氏談)
D600で初めて撮った写真がコレ。美味しそうな夏野菜のサラダ。美味しそうだと思ったものが美味しそうに撮れたら、それは文句なくいいカメラだ。外からの自然光、室内の白熱電球のミックス光だったが、オートホワイトバランスは良好だった。キットレンズの24-85mmの手ブレ補正(VR)もよく効いている。(阿部氏談)

オートでばかり撮ると、初心者のようで気恥ずかしいという方も多い気がします。

そういう方は、昔のフォトグラファーのイメージをまだ引きずっているのかもしれませんね。
昔のフォトグラファーはAFなんてなかったから、自ら的確にピントを合わせる技術が必要でした。でも今はそんな時代ではありません。技術にこだわるよりも、むしろ気持ちの良い写真を撮れるかどうかがフォトグラファーの仕事ではないかと思います。
とにかくニコンの場合、オートがある機能は、オートにしておいた方が良い結果を得られるのではないでしょうか。逆にうまくいかない限り、ニコンはオート機能をつけませんから。

真面目さと柔軟さがニコンの魅力。

阿部さんは長くニコンをお使いですが、ニコンのカメラを使い続けている理由はなんでしょう?

ニコンを使い始めてから、現場でカメラが故障して写せなかったことは一度もなかったからでしょうか。もちろん機械だから調子が悪くなる時はあります。でも、どのような状態でもなにかしら写すことができました。報道カメラマンのような方とは使用環境も使い方も違うので、全てのカメラがそうだとは言いませんが。
丈夫だし、だから信頼できる。
先日も旅行に行くとき、カメラは何を持っていくのか聞かれ、D800を1台とレンズ数本と答えたことがありました。さらに、予備のカメラはと聞かれたので、ニコンのカメラは壊れないので1台しか持って行かない。それにニコンのカメラは世界中で売っているから、と答えました。
例えば、昔F-801を持って海外に行った時、現地でリモートコードを忘れたことに気がついたんです。フランスの田舎で、街にはカメラ屋さんは1軒しかない。それでも売っていましたからね。ニコンは世界的なブランドだから、どこでも手に入るんです。

ニコンへの要望などはありますか?

そうですねぇ。特にないかな(笑)。
細かな希望としては、新しい70-300mmを出してほしいですね。
ニコンは800mmなどの大口径の望遠レンズには力を入れるのですが、私たちが使いたい手頃な望遠レンズのラインアップをもう少し充実させてほしい。
例えば今の70-200mmはすごくいいのだけれど、その上の望遠レンズで、気軽に旅行に持っていけるようなf/4くらいのレンズがあるといいですね。
それからズームレンズのF値について。ズームレンズの場合、もちろんF値が固定であれば、特にマニュアルの人は撮りやすいでしょう。でも暗い側で固定されてしまうとせっかくのレンズがもったいない。だから、例えば「マニュアルの時にはF値を固定できる」といったモードも作ってもらえると便利かな。

COOLPIX S01

長くニコンに付き合われて、阿部さんのニコンのイメージって、どのようなものですか?

一般の方の中には、ニコンに堅苦しいイメージを持たれている方がいらっしゃるかもしれません。実際、ニコンは本当に真面目な会社だと思います。性能を実力以上に謳うこともないし、自社の製品で少し問題があると思うとはっきりとアナウンスするし。
例えば、このD600のシャッター部にしてもそう。
ニコンは、カメラに実装した状態で約15万回のレリーズテストをしています。実際に使う状態をきちんと考慮してテストしているわけです。あまり目に見えない部分にも手を抜かず、ユーザーの立場で商品開発をしてくれる。
そんな一面もありつつ、でも実際ニコンの人たちはすごく柔軟な方が多い気がしますね。だから付き合っていて、とても面白い。そこがニコンの良いところ。
コンパクトカメラでも、盛んに新しい技術を搭載したカメラを出していますよね。最近発売になった一番小さいCOOLPIX S01、あれもいいですね。超コンパクトでカラーバリエーションも多く、スタイリッシュ。プレゼントなどにも喜ばれるんじゃないかな?またそのために、メモリや電池は全て内蔵という割り切り方にも感心しました。
実直さとチャレンジ精神。ぜひこの両面を大切にしていただきたいですね。

インタビューを終えて・・・

一般ユーザーにも手の届く価格でありながら、上位機種並みの性能と、ユーザー本位の各種機能。D800との相違点について気になっていた方も少なくないかと思われますが、D600はさらに幅広いカメラファンに支持されそうな、魅力的なカメラに仕上がっているようです。
近年、技術革新のスピードと人々のニーズの多様化には、目をみはるものがあります。今メーカーには、ものづくりに対するこだわりを持ちながら、ユーザーのこだわりにも迅速に対応する柔軟性が求められているのではないでしょうか。
阿部さんのお話をうかがいながら、2012年に発表されたニコンの3台のFXフォーマット機にも、そんな時代の要請に応えようとするニコンの企業姿勢があらわれているように思えました。

プロフィール

阿部 秀之 氏

阿部 秀之 あべ ひでゆき

東京生まれ。86年よりフリー。

ヨーロッパの風景、ポートレート、コマーシャルなど、幅広いジャンルを撮影。
フリーになると同時にカメラ専門誌にも執筆をはじめ現在は、月刊カメラマンに『アベっち 色いろ 119番』。ニコンイメージングジャパン nikkor clubの会報誌には「自分だけの旅写真」を連載中。日本カメラグランプリ選考委員(1987-2012)。撮影だけでなく、技術的な解説も得意とする。

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