Nikon Imaging
Japan
プレミアム会員 ニコンイメージング会員

vol.7 デジタル時代の新たなスピードライト・ニコンクリエイティブライティングシステム(CLS)

2.CLSによる、スピードライティング術。

スタンドを立てても、セッティングはわずか10分弱。

SB-800をスタンドに取り付ける。
配置位置を移動。
ブラケットにSB-900を装着し、バウンス撮影する。

今のカットはスピードライトのみの撮影でしたが、スペースに余裕のある場所を想定して、今度は傘を使った撮影をしていただけますか?

では、まずライトスタンドを立てるところから。
今回もサイド光中心に撮りたいので、被写体の右横に立ててみます。ライトスタンドにはすぐスピードライトを装着できるように、スピードライト専用スタンドを付けたままにしています。
ライトスタンドに取り付けるSB-800は、常に「リモート(補助灯設定)」にしてあります。
傘は、全体に光を回して柔らかい写真にしたい場合には使います。コントラストのはっきりとした写真を撮りたい時は、傘は使いません。

背後のスピードライトの位置はいかがですか?

ちょっと変えてみましょうか?先程よりもスピードライトの位置を低くしてみます。被写体の背後にスピードライトを置く場合、被写体と少し距離が取れるようなら真後ろに置くのも良いでしょう。しかしあまり近すぎると、耳が光を通して赤くなるので注意して下さい。
背後のスピードライトは、きちんと被写体に当てなければいけないと思っている人もいますが、必ずしもそうではありません。例えば先程のように被写体の斜め上に配置した場合は、直接光を当てることは出来ませんよね。でもちゃんと光の回った写真が撮れる。壁や天井の反射光で十分なケースも多いので、位置や角度に神経質になりすぎる必要は無いと思いますよ。

今度はマスタースピードライトをカメラに付けるのですね?

ブラケットにSB-900をセッティングします。通常はニコンのSK-6を使っていますが、今日は別のプロブラケットを使用します。
今回は、被写体の背後のSB-900、ライトスタンドに取り付けたSB-800と、あわせて3灯のスピードライトでの撮影となります。
スピードライトを光軸に持って来ると、自然でポピュラーな写真が撮れます。でも縦位置でこの状態で1時間も撮ったら、腕が疲れてしまいますが(笑)。

このシステム、部屋の状況によってフレキシブルに対応できるからいいですね。

そうですね。何枚か撮り、ちょっとライティングを変えたいと思ったら、スピードライトの位置を移動させます。例えば被写体に近づければ、その分強い印象になります。このようにあえてライトスタンドに固定しないことで、手軽にライトの位置が変えられるのもこのシステムの利点です。それでも動かすことの出来ない状況であれば、カメラ側から光量を補正して対応することも出来ますし。

スピードライト3灯とライトスタンドによる撮影状況
傘を立てない場合(2灯)と立てた場合(3灯)の比較。

傘のセッティングも、ずいぶんスピーディでしたね。傘を立てるところから露出決定まで8分程度でした。
照明のセッティングというと、ずいぶん時間がかかるイメージがありましたが…。

そうです。手早く出来るんです。私は照明のセッティングに通常5~10分ほどしかかけません。会社案内などの撮影で、デザイナーの方からライティングに関する具体的な指示がある場合などは別ですが。被写体の人の広報担当者が、後のスケジュールを気にして「セッティングにはどのくらい時間が…」と尋ねられても、私は「いいですよ。すぐ部屋に連れてきて下さい」と(笑)。

今回の撮影に使用したカメラとスピードライト。

作例に見る、CLSの実用性。

写真B:
Nikon D300S
1/250秒 F6.3
写真A:
Nikon D3
1/60秒 F5.6

実際に撮影された写真を拝見できますでしょうか?

写真A:
例えばこの写真は、時間が10分しか無い状況で撮影しました。まず椅子に座ってもらい、椅子の横にライトスタンドを1台立て、逆サイドはロッカーの上にスピードライトを設置。ここまでで5分。残り5分で撮影です。20コマくらいしか撮れませんでしたが…。
でもこんなケースは特別ではなく、この仕事をやっていると良くありますよ。とにかく部屋に入ったら出来るだけ早く部屋の状況をつかみ、スピードライトの設置位置をイメージすることがポイントです。

写真B:
ホテルに吹き抜けの空間があったので、そこをバックに撮影しました。被写体の真上には通路の天井がある。場所を移動しながらの撮影なので、急いでスタンドをたて、SB900を取り付け主灯とし、天井ぎりぎりまで伸ばして斜め上に設定したんです。
2灯シンクロできれいに決まりました。被写体の笑顔も良かったですね。新人のホテルマンでした。

手間もかからずに、作品の質も上がるというわけですね。

しかも機材も少なくて済む。ライトスタンドも軽量タイプの物が一本で足りますし。カメラやレンズだけでも相当な重さになりますから、荷物は出来るだけコンパクトに収まる方が良いのです。
例えば飛行機で地方に撮影に行く時、荷物が大きいと預けなければなりませんよね。でも到着後、すぐに移動しなければならないのになかなか荷物が出てこない、などということもよくあります。荷物全てを機内に持ち込めれば、現地に着いてからすぐに動けるでしょう。

写真D:
Nikon D700
1/60秒 F6.3
写真C:
Nikon D3S
1/50秒 F8

こちらは、何の写真ですか?

写真C:
医療関係の教科書に使う写真です。
白いシーツに、淡いオレンジの枕、肌の色、黄色いタオル。淡色ばかりで少々面倒なケースですが、それぞれの色や質感がきっちりと表現できているでしょう?これは傘1灯と、スピードライト2灯で撮影しました。定常光を活かしながら、色かぶり防止と明るさをキープするために、あまり絞らず両サイドから距離を置いて光を当てています。
これをカメラ側から当てれば、まず白飛びするでしょう。このような状況では、サイド光の使い方が重要です。

このような集合写真も大変そうですね。

写真D:
ここは看護学校の実習室。奥の方で学生さんが実際に実習をやっている中、撮影しました。かなり広い部屋でしたから、光が反射すること無く、逃げてしまうような状況です。
向かって左側にライトスタンドを配置。右側にはロッカーがあったのでその上にSB-900を設置しました。全体に光を回すために、この時はカメラ側からもSB-900を当てています。
ライトスタンドの位置が良くなかったため、奥正面の人のライティングがちょっと失敗していることを除けば、3灯で素早く撮影したことを考えると、悪くないと思います。

写真F:
Nikon D3
ISO400 1/250秒 F8
写真E:
Nikon D700
ISO800 1/30秒 F3.5

この写真は、個人宅のようですね。

写真E:
そうです。このケースもライティングが難しかった。
一般家庭の部屋にピアノが4台も置いてある状況で、空間的に余裕がほとんどありませんでした。そのためライトスタンドが立てられず、テレビの上などにもスピードライトを置いて撮影しました。

こちらの写真は、このような状況をセットして撮ったのですか?

写真F:
いえ。この写真は撮影に行った現場で、その状況のまま撮りました。夕方の4時頃。夕焼けのオレンジの光が当たっていますでしょう。影の部分がつぶれてしまうので、反対側からは傘を使って光を当てています。
最初からこのような光を狙ったわけではなく、撮影がたまたまこの時間で、せっかくだから夕暮れの光を利用しようと。
デジタルの良い点はすぐに確認できることですよね。ライトをセットして、すぐに1~2枚撮ってみる。それを元に微調整して、メインのカットに進みます。
非常にスムースに仕事が進むので、時間に余裕が出来ることも少なくありません。そんな時は予定外のカットも撮影。実際に使う・使わないは別にして、クライアントも被写体も喜びますよ。そういったサービスが、信頼に繋がるのです。

丹羽 諭氏

本当にいろんな状況で撮影をされていますね。

スタジオのように、きちんと照明をセットできるとは限りません。実際に当日部屋を見てみないと、どのようにセットすべきかわからないケースが多いので、ワイヤレスは大変助かります。
ところでワイヤレスの良い点として、ケーブルを引っかける危険が無いことも挙げられます。以前行った、工場内部の全景を撮る仕事の時。1200Wのスピードライトとジェネレーターを4セット配置したのですが、いざ撮る段になって誰かがコードを引っかけて4台とも一気に倒された、などという苦い経験があります。これは極端な例としても、スムースに撮影するために不安要素は出来るだけ少ない方が良いですよね。
「何とかワイヤレスで快適に撮る方法は無いか?」とずっと考えていたのですが、CLSに出会い、まさに「これだ!」という感がありました。以降、このような仕事はほとんどワイヤレスで行っています。

ニコンイメージングプレミアム会員
ニコンイメージング会員