レンズとしての基本性能にも優れた、PCレンズ。
レンズの解像力について、以前のレンズと比べていかがですか?
格段にあがっていると感じました。撮ったものを見て、すぐにわかりましたから。このレンズはシフト・ティルトの状態での解像力も意識して作ったと言う話を、ニコンの方からも聞きました。だから広角でもここまでシャープな画像が撮れるのですね。以前は特に周辺部の解像力に少々不満を持っていましたが、今回のレンズは大幅に改善されています。
事前に、他社レンズとの比較撮影も行ってみました。部分を拡大していただけるとよくわかると思います。ニコンのレンズは単焦点、対して比較に使ったレンズメーカーのレンズは「12-24mm」ですから全くの同条件では有りませんが、それを差し引いてもこの差は非常に大きい。このレンズメーカーのレンズも、もともと評価の高いレンズなんですよ。
作例:PC-E NIKKOR 24mm F3.5D EDとレンズメーカーの12-24mm F4.5-5.6で撮影した写真で作成したパノラマ写真
- 撮影場所:雨堤スタジオ
最近のニコンレンズの傾向についてはいかがでしょう?
このレンズに限らず、全体的に優れているように思えます。私自身がデジタルに移行して以来、もっとデジタルカメラに適したシャープな描画力のレンズを出して欲しいとニコンに要望してきました。その甲斐有ったか、最近のレンズは全くストレスを溜める事なく撮影ができています。ナノクリスタルといった技術も、この描画力に貢献していると思います。
例えばこのところのモデル写真は、自然な雰囲気が好まれる傾向が有ります。十分な光量を得るためライトを強めにするとどうしても固い印象になるので、ライティングは抑えがちにしなければなりません。そんな状況でも、このようなレンズと高感度のカメラなら、十分に対応出来そうです。
他になにか、今回のレンズについて気づかれた点はございますか?
電磁絞りによる自動絞りが可能になったのはいいですね。ファインダーが明るいので、ぼけ味などもきちんと確認してシャッターを押せます。たたし、D3や D300・D700等電子制御式絞り対応の機種ならば良いのですが、未対応の機種では電磁絞りの機能は使えないので、注意が必要です。
今回ラインナップは3点ですが、雨堤さんが一番汎用性の高いと感じるレンズはどれでしょうか?
私の好みでは45mmです。イメージ重視で撮りたい場合などには最適です。でも一般の方なら、85mmと言う意見が多いんじゃないかな?
これからこのレンズで試してみたい被写体は有りますか?
今度、料理の写真に使ってみたいと思っています。普段から、料理の写真にはあまり絞りに変化のない写真が多い気がしていました。このレンズを使う事で、写真に新鮮味を加える事が出来るのではないかと。料理やデザイン関係の本は、美しさが重要ですよね。クライアントも喜んでくれるんじゃないでしょうか。
それから人物もやってみたいですね。全身でも顔のアップでも、アオってみたり、逆アオリにしてみたり、今まで撮ってきたポートレートとは違う表現が出来そうで楽しみです。
また、こういったレンズで表現の幅を広げれば、それが写真家としてのアドバンテージになるとも思います。
現場の視点による、ニコンへの要望。
ニコンに今後の要望などは有りますか?
PCレンズについて言えば、もっと長いレンズがあるといいかな。例えば135mmとか。商品を撮るには、正直85mmだとちょっと足りないと感じる事があるかもしれません。また逆に、建築物を撮る人からすると、さらに広角のレンズも用意して欲しいのではないでしょうか。
レンズ以外ではいかがですか?
今D3を使っているのですが、私の希望としては、ちょうどD3とD3Xの中間のくらいのカメラがあるとうれしいですね。D3自体かなり完成度が高く、非常に気に入っているのです。D3で増感できて2100万画素くらいであれば、ほとんどの仕事はクリア出来ると思うのですが…。また私の場合、スタジオ撮影が多いので、感度は100があるとさらに理想的です。
それから、今少し興味があるのが動画機能ですね。
雨堤さんは、今後動画も撮影される予定なんですか?
いえ、当面その予定は有りません。でも現在各メーカーとも力を入れていて、ニコンでも最近動画撮影出来る一眼レフを何機種か発売していますよね。今後ニーズが広がるのかなと。
これまでプロ向けのムービー用カメラは、本体が2~3000万円、レンズも1~200万円ほどして、レンタル料も高い。専門家でなければとても手が出せません。さすがにムービー専用機と同等とはいかないでしょうが、デジタル一眼の最新性能を活かしたムービーを、写真を撮る感覚で撮影出来ると言うのがいいですね。ここに新しい表現の可能性を感じます。そんなカメラにPCレンズをつけて動画を撮影すれば、さらに面白い表現が出来るのではないでしょうか。
WEBの仕事など、いいと思いますよ。例えば取材などで、スチルを撮りながら、動画で押さえた方が良い場面では動画に切り替えるとか。逆にムービーとして撮影しながらあるシーンをスチルとして使う、などと言う事も出来るでしょう。
特に今後写真家として仕事をしたいと思っている人にとっては、両方出来るのは良いのでは。これからはスチルとムービーの垣根が取り払われてくるかもしれませんね。
最後に、はじめてPCレンズを使う方へ一言お願い出来ますか?
特に広告写真を撮られている方で、「高価で取扱いも大変な4×5には手が出ない」「短時間に多くのカットをこなさねばならない」「スタジオ外で頻繁に商品撮影を行っている」、それでいて「今まで以上にクオリティの高い写真を撮りたい」といった方にはまさに最適のレンズではないでしょうか。また自分なりの表現を増やすといった点においても、かなり有効かと思います。ぜひ実際に一度、テストして見る事をお勧めします。
写真家として活動を始めた時から、ずっとニコンのユーザーだという雨堤氏。しかし比較的最近まで、商品撮影に関しては主に4×5をお使いでした。ところが新しいPCレンズで商品撮影をしたところ、その使用感や解像力は予想を超えていたとのことです。
テスト撮影でありながら、微妙なライトの調整にもじっくり時間をかけていた雨堤氏を見て、イメージにこだわって撮影をされている方ほど今回のレンズの性能を実感していただけるのではないかと感じたインタビューでした。
雨堤 康之 あまづつみ やすゆき
1956年 | 大阪府生まれ。 |
1979年 | 大阪写真専門学校(現ビジュアルアーツ)卒業。 |
1981年 | 佐藤弘氏に師事。 |
1985年 | フリーフォトグラファー。 |
1987年 | スタジオ設立 |
1989年 | (有)雨堤写真事務所設立。 |
1995年 | ニューヨークADCメリットアワー受賞 |
1996年 | グラフィックポスター展入賞 |
第51回日経広告賞コンピュータシステム部門優秀賞
第45回日本雑誌広告賞情報通信メディア部門銀賞など、受賞多数。
*社団法人 日本広告写真家協会正会員
*スタジオでの商品撮影(時計、ジュエリー、化粧品、フード)及び人物、風景なども手掛ける。
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