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第七十三夜 Nikon Teleconverter TC-1・2×

学生の強い味方、純正品のテレコンバーターがついに登場
Nikon Teleconverter TC-1・2×

第七十三夜はAi化前夜にタイムスリップしましょう。時は1976年、社内ではニコンとニッコールの大改革、Ai化が着々と進められていました。そんな折、待望のテレコンバーターが発売されます。Ai化が待ちきれないとばかりに非Aiの絞り連動。美しく彩色されたF値目盛。そして蟹爪機構。TC-1には発売を急がなければならない時代背景がありました。
そんな時代の狭間で取り残されたTeleconverter TC-1とはどんなレンズなのでしょう。また、どのように開発されて発売に至ったのか。今夜はその謎多きTeleconverter TC-1の秘話を掘り起こします。

佐藤治夫

テレコンバーターの利便性

昔はテレコンバーターといえば学生、特に中高生の強い味方でした。その頃主なカメラメーカーではテレコンバーターをラインナップしていませんでした。もっぱらサードパーティーが安価で便利な道具という位置付けで販売していたのです。かく言う私も中学生時代にずいぶんお世話になりました。標準レンズが望遠レンズになる夢の道具。50mmが100mm、200mmが400mmに。しかも至近距離はそのままで倍率が倍に。当時の金額で7~8,000円も出せば買えた魔法の玩具。しかし、そんな夢の道具も良いことばかりではありませんでした。装着時の光学性能が明らかに落ちるのです。私の使用していたものは、まず開放は使えません。2,3段絞ったあたりで何とか引き伸ばしに耐えられるものでした。やはり世の中にはそううまい話はないなぁ、と子供ながらに思ったものです。きっと同年代の皆さんも経験があるのではないでしょうか。テレコンバーターがブームになっていた頃は2倍に加え、3倍、2~3倍のズーム(正確にはバリフォーカルレンズ)、光学系が外れて接写リングに早変わりする変わり種など、多種多様な種類がありました。しかしどれも本格的な写りを目指したものではなかったようです。そんな環境が自然とカメラメーカー各社に高性能なテレコンバーターを開発させる動機になったのではないかと考えます。

テレコンバーター TC-1はなぜ生まれたのか。

Teleconverter TC-1は急遽開発されました。なぜ翌年の大改革、Ai化を待てなかったのでしょう。それは大至急開発しなければならない理由があったからなのです。

開発のきっかけは、報道写真家やスポーツ写真家の方々のご要望からでした。なんでも、とある大会の機材持ち込み制限が大きな問題になっていると相談を受けたそうです。社会的風潮でいわゆる「カメラマン席」はどんどん手狭になり、どこの大会や競技会でも持ち込み機材制約が厳しくなってきました。望遠レンズの長さや本数の制約。何を持って行くのか、何を持って行かないのか、写真家にとっては死活問題でした。その時に彼らが出した対策案が「テレコンバーターの利用」だったのです。しかし、巷にあるテレコンバーターは決して満足する性能ではありませんでした。報道、スポーツの写真家たちが望んでいたテレコンバーターは収差劣化なく、増倍した焦点距離の単焦点レンズと変わらぬ光学性能の実現でした。これは最高に気高き目標です。そこでニコンが出した回答がTeleconverter TC-1とTC-2だったのです。焦点距離200mmを境にテレコンバーターを2つに分けて専用設計する。そんな開発陣の発想が的を射ぬきました。そして、急ピッチで開発されたTeleconverter TC-1、TC-2は報道、スポーツ写真家を魅了しました。

開発履歴と設計者

とある研究家の記録によると、TC-1の発売日は1976年3月と言うことになっています。しかし、私の調査結果では、発売日はおろか報道機関やプロ限定の販売だったのか、一般販売されたのかが正確に判断ができませんでした。総生産台数は約5000台。後継機TC-200が1977年5月に発売されていますから、わずか一年足らずの生産、発売期間です。非常に短命でした。まさに謎多きレンズです。

それでは開発履歴を見ていきましょう。光学設計は1975年11月に完成しています。設計開始時期は不明です。光学系を設計したのは、ニッコール千夜一夜物語に度々登場する、当時光学部第一光学課に所属していた中村荘一氏です。1975年12月、師走の忙しい最中に試作して、その後ただちに量産。1976年3月に発売開始して、ひと段落してから光学設計報告書がまとめられました。このような急ピッチによる製品開発は、可動部が少なく光学系が固定されている鏡筒であるから可能になったと思われます。販売、広報に要する時間がないことからも、一部のプロや報道関係者にのみに販売されたか、または優先的に販売されたと考えるのが自然です。その後1977年3月「ニコンを変えずにニコンを変えた」をキャッチフレーズにAi化の大改革が行われました。Teleconverter TC-1もすぐさまAi対応して、1977年5月に光学系をそのまま流用したテレコンバーターTC-200が誕生します。そして、その流れはさらにTC-201へと続きます。TC-1の役目はテレコンバーターTC-200の発売と共に終わるのです。

レンズ構成と特徴

図1

それではTeleconverter TC-1の断面図(図1)をご覧ください。少々難しいお話をしますがご容赦ください。

テレ(リア)コンバータは全体では凹レンズ(凹のパワー)になっています。したがって焦点距離はマイナスです。前方には凸のマスターレンズ、そしてその後ろに凹レンズが付くのですからテレフォトタイプの望遠レンズになるわけです。それではそのテレコンバーターはどういう構造になっているのでしょうか。図1に示すように、前群に凹群、後群に凸群の2つの群で構成されています。構成上ではレトロフォーカスの様な構造になっているのが特徴です。ではこの構造は何のためなのか。それはひとえに像面平坦性の確保、ペッツヴァール和を正の値に保つためなのです。従来のテレコンバーターはペッツヴァール和の悪化が主な原因で、像面湾曲および非点収差の補正が不十分なものが多く、中心部分の性能は良好でも画面周辺の劣化はやむなしという感じでした。そこで中村氏は球面収差と同時にペッツヴァール和を大きく正に発生させる方法を考えつきました。その方法が凹凸2群構造でした。特に凸の後群に注目すると、全体が凸群なのにもかかわらず凹レンズの枚数の方が多いのです。したがって、凸レンズに大きなパワーを持たせることが可能になります。そこでこの凸レンズに非常に低い屈折率の硝材を使用する。その方法でペッツヴァール和を大きな値にして、更に球面収差やコマ収差の補正も同時に行う構造が作り出せたのです。

それでは収差補正の傾向について観察します。単体では評価が難しいので、50mmF2に装着した状態と50mmF2の単体の収差との比較で考察します。まず色収差ですが、Teleconverter TC-1装着前後で発生量が倍になっています。2倍のテレコンバーターですから、むしろ良く補正されていると思います。球面収差はほぼ変化しないですが、Teleconverter TC-1後群の強い凸レンズの効果か、負の高次収差が発生しています。この傾向は後ボケのボケ味を良化する傾向があります。また像面湾曲はほぼ不変で、むしろ今までのテレコンバーターと異なり若干マイナスに変位しています。ペッツヴァール和はほぼ半減しますが、十分プラスの値をキープしています。コマ収差は中間画角で若干外コマ傾向に変位しますが、結像性能に対する影響は軽度です。歪曲の変化は少ないですが、若干正の方向に変位します。

それでは次にMTFを観察しましょう。10、30本/mmのコントラスト値を確認すると、50mmF2単体のMTFと比較してかなり健闘していることが分かります。センターはほぼ不変。若干メリジオナル像面のMTFが緩やかに湾曲し、像面湾曲が増すような傾向があります。一度、中間部のMTFのピークが後ピン方向に抜け気味になり、その後周辺で前ピン方向に変位すると言えばお分かりいただけますでしょうか。この「クセ」がこのTeleconverter TC-1の唯一のウィークポイントだと思います。

Nikon Teleconverter TC-1の謎

私とTeleconverter TC-1との出会いは、日本光学工業(現ニコン)入社直後1986年頃にさかのぼります。会社の備品庫を眺めていたところ見慣れないテレコンバーターが転がっているではありませんか。しかも蟹爪(通称)付。これは面白い!私はTC-1をきっかけにして大先輩たちにご教授願って、難なくリアコンバータ―光学系の知識を持つことができました。しかし、初めの出会いはそこまで。ところが、最近夜中にふとネット販売サイトを覗いていると、Teleconverter TC-1が出ているではありませんか。「Fナンバーの字入れ彫刻が美しく、今となっては、蟹爪付は貴重…。」と自分を納得させ購入。買ってみたら新品同様の品でした。しかし、連動メカがどうもおかしい。単体レンズのFナンバーがF2までしか連動しない。機械的にF2より明るいFナンバーの状態では取りつかないのです。あたかも爪連動が動きそうな溝があるのに、そこまで回らない。これはジャンクを買わされたか、といろいろ調べてみました。しかしこれで正常とのこと。F2より明るいレンズは光線がけられてしまい使えないのです。設計値を確認して納得しました。原因は中村氏が当初50mmF2をマスターレンズと想定して設計を進めていたからだったのです。たとえばF1.4のレンズが取りついたとしても、Teleconverter TC-1の前群でF2に絞られてしまいます。それでは、F1.4、F1.2をマスターレンズとして設計したらどうだったのだろうか?そんな疑問がわきますよね。そこで少しやってみました。結果は光学性能が満足できませんでした。やはりF2制約と言うのは妥当なものでした。結局私のTeleconverter TC-1は問題のない正常品だったのです。

実写性能と作例

次に遠景実写結果を見ていきましょう。マスターレンズは中村さんの設計したAi Nikkor 50mm F1.8をF2~に絞って実写しました。TC-1を取り付けることで100mmF4と同等のレンズになります。また今回はもう1本、New Nikkor Auto 105mmF2.5を使用しました。この2本のレンズを用いたテレコンバーター有無による比較で総合評価を行いました。ボディーはフルサイズミラーレスカメラZ 6+マウントアダプター FTZを使用しました。FTZアダプターは正式にはAi化されているレンズによる使用が前提ですが、今回は設計図と実機を使って確認したうえで特別に使用しています。

各絞り別に箇条書きに致します。評価については個人的な主観によるものです。参考意見としてご覧ください。

Ai Nikkor 50mm F1.8+TC-1

F4(マスターレンズはF2)

全域に薄いベールの様なフレアーがあるものの、センターから中間部、周辺部まで解像力があり立体感もある。ごく周辺部分、最周辺は非点収差の影響と思われる像の流れが発生している。若干マスターレンズも開放近傍ではフレアーが発生しているので、よく健闘していると言えるだろう。

F5.6(マスターレンズはF2.8)

F5.6に絞り込むことによってフレアーが減少し、特にセンターはさらにシャープになり、コントラストも上昇。しかし、依然として最周辺の像の流れは消えない。むしろ、フレアーが無くなる分目立つかもしれない。

F8~11(マスターレンズF4~5.6)

F8ではさらに解像力が増す。周辺の流れは改善。最周辺まで使える画質に変貌。F11ではごく周辺を残して満足する画質になる。特にセンター、中間部の解像力が最良になる。

F16~22(マスターレンズF8~11)

画面全体が平均的な画質になる。しかし、解像力低下。回折の影響か。


New Nikkor Auto 105mm F2.5

F5(マスターレンズはF2.5)

フレアーはごくわずか。解像感があり立体感もある。最も目立った欠点は軸上色収差の増加。周辺性能は比較的良い。最周辺まで解像力は保たれる。このレンズとの組み合わせは相性が良いかもしれない。

F8(マスターレンズはF4)

F8に絞り込むことによってフレアーが減少し、シャープになりコントラストも上昇。結像面の軸上色収差の影響も深度増加にともない消失。

F11(マスターレンズF5.6)

F11ではさらに解像力が増す。ごく周辺を残して満足する画質になる。このF値が最適な条件のように思う。

F16~32(マスターレンズF8~22)

画面全体がさらに均一な描写になるが解像感低下。回折の影響で解像感を若干損ねる。


2つのレンズでテストしたが良像を望むなら、F8~11(1~2絞り込む)の絞りで使用すると良好な結果を得られると思われます。

それでは、作例写真で描写特性を確認してみましょう。

今回の作例もレンズの素性を判断していただくためにあえて特別な補正、シャープネス・輪郭強調の設定はしておりません。作例でもZ6を使いAi Nikkor 50mm F1.8+TC-1とnewNikkorAuto105mmF2.5+TC-1の組み合わせで撮影しました。撮影条件は一般ユーザーの撮影を想定したポートレートに致しました。特に三次元描写特性が判断できるように、背景映り込み、距離を微妙に変化させました。

作例1

Z 6+FTZ Ai Nikkor 50mm F1.8+Teleconverter TC-1(100mm相当)
絞り:F2位置(F4相当)
シャッタースピード:1/250sec(-0.7EV)
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:晴天日陰
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:ポートレート
撮影日 2019年1月

作例1は前記したAi Nikkor 50mm F1.8との組み合わせで撮影しています。絞りはF4(マスターレンズはF2)です。木塀の様子、顔や髪の毛などを見ると、十分なシャープネスは持っていることが分かります。像高の中間部分、周辺も破綻はない様子が読み取れます。中心、中間、周辺と同等の描写が保たれています。また背景のボケ味、後ボケは残念ながら固めです。しかし全体としてはピント面の色滲みが少なく好感が持てます。

作例2

Z 6+FTZ  Ai Nikkor 50mm F1.8+Teleconverter TC-1(100mm相当)
絞り:F2位置(F4相当)
シャッタースピード:1/200sec(-0.7EV)
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:晴天日陰
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:ポートレート
撮影日 2019年1月

作例2も作例1のレンズと同様Ai Nikkor 50mm F1.8との組み合わせで撮影しています。シャープネスは満足いくのですが、やはりボケ味に欠点が表れています。

作例3

Z 6+FTZ  Ai Nikkor 50mm F1.8+Teleconverter TC-1(100mm相当)
絞り:F2位置(F4相当)
シャッタースピード:1/125sec(-0.7EV)
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:晴天日陰
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:ポートレート
撮影日 2019年1月

作例3も50mmF1.8との組み合わせです。背景との距離感を若干変えてみました。やはりボケ味はあまり改善しません。少し絞ることで改善させる方法以外、改善方法はないようです。マスターレンズ性能を引き出していますが、さすがにボケ味までは手が回らなかったと言うところでしょうか。

作例4

Z 6+FTZ  New Nikkor Auto 105mm F2.5+Teleconverter TC-1(210mm相当)
絞り:F2位置(F4相当)
シャッタースピード:1/100sec(-0.7EV)
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:晴天日陰
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:ポートレート
撮影日 2019年1月

作例4はマスターレンズをNew Nikkor Auto 105mmF2.5に変更し、TC-1と組み合わせることで210mmF5相当で撮影しています。マスターレンズが狭角になったため、シャープネスや平面性が向上しています。やはりこのレンズとの組み合わせでも、TC-1の劣化分が最小に抑えられていることが分かります。ボケ味も改善しました。軸色収差の影響がより大きくなりボケの色付きが増しました。

作例5

Z 6+FTZ  New Nikkor Auto 105mm F2.5+Teleconverter TC-1(210mm相当)
絞り:F2位置(F4相当)
シャッタースピード:1/250sec(-0.7EV)
ISO:400
画質モード:RAW
ホワイトバランス:晴天日陰
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:ポートレート
撮影日 2019年1月

作例5もマスターレンズをNew Nikkor Auto 105mmF2.5に変更し、TC-1と組み合わせることで210mmF5相当で撮影しています。背景までの距離、映り込みを変えました。ボケ味に破綻はありません。

作例6

Z 6+FTZ  New Nikkor Auto 105mm F2.5+Teleconverter TC-1(210mm相当)最至近距離R=1.0m
絞り:F2位置(F4相当)
シャッタースピード:1/250sec
ISO:800
画質モード:RAW
ホワイトバランス:晴天日陰
D-ライティング:オート
ピクチャーコントロール:ポートレート
撮影日 2019年1月

作例6は近距離の作例です。テレコンバーターは至近距離が変わらず倍率を増倍してくれる効果があります。手軽にマイクロ撮影が楽しめるのも利点の1つです。マスターレンズはNew Nikkor Auto 105mmF2.5で最至近(R=1m)で撮影しました。ワーキングディスタンスは変わらず倍率が増倍するので、簡易マクロの道具としても使い道があります。TC-1はこのレンズとの相性が良いようで、至近性能も十分満足できるものでした。

ズームテレコンバーターとAF(オートフォーカス)テレコンバーター

テレコンバーターの種類は多種多様です。中には変わり種と言うか、さらなる発展の可能性を秘めたものも多数発売されました。その中でも特に利便性が良く、夢のあるコンバータがズームテレコンバーター(ズーム・テレコンバーター)とAFテレコンバーター(オートフォーカス・テレコンバーター)でしょう。

ズームテレコンバーターは「KOMURA TELEMORE-ZOOM 2X⇔3X 」と言う名称で1964年に三協光機株式会社から販売されました。アマチュアをターゲットに「単焦点レンズが2~3倍のズームになる」というもふれ込みで発売していたものです。テレコンバーターを2つの群に分割し、それぞれ違うスピードでマスターレンズに近づけることによって、2倍の倍率を3倍まで変倍する。正確にはバリフォーカルレンズですが、2倍から3倍に変倍する画期的なコンバータでした。私がちょうど中学2年の時でした。その仕様が魔法のように思えたものです。50mmに付けると、なんと100~150mmのズームレンズになる。私はカメラ屋のウィンドーにぽつんと置かれた小さな魔法の道具を、時間を忘れていつまでも見つめていました。しかしその反面、子供の私にもなにか狐につままれている様な、何とも言えない気持ちになっていたのも事実です。結局私はさんざん迷った結果、ズームテレコンバーターは買わずに普通の2倍テレコンバーターを買いました。しかし心の奥底に何か引っかかっていました。そうです、あれが本当に魔法の道具だったのか。私は試したこともないのです。巷のうわさも不思議なくらいありませんでした。その後40年以上たってから突然の再会。私はそれを即買い求めました。そして試写。しかし残念ながら、それは魔法の道具ではありませんでした。私はこの時やっと胸のつかえがとれたような思いがしました。

ズームテレコンバーターは、どういう仕組みでズーミングをするのでしょうか。それは、凸のマスターレンズと凹のテレコンバーターの間隔を変える事によって変倍する仕組みになっているのです。「変倍する」と言う物理現象は、ズーミングだけではなくフォーカシングにも同様に当てはまります。そうです、ピント合わせにも応用できるのです。ついに本物の夢の道具が完成したのです。1983年にF3AF用にマニュアルレンズをAFレンズにする夢の道具、AF(オートフォーカス)Teleconverter TC-16が生まれるのです。TC-16は焦点距離が1.6倍になりますが、内蔵モーターでテレコンバーター部分を移動させることで、AF合焦を行う画期的なテレコンバーターでした。まさに「変倍」のためにレンズ群を移動させるのです。1980年代の光学設計は十分使用に耐える高性能なものでした。手元にあるAiニッコールが片端からAFレンズになる。まさに魔法の道具。AFテレコンバーターはその後、F-501用、F4用にTC-16Aと言う形に進化していきます。

コンバータレンズと言うのは、取り付けることによって大きな付加価値を与えるもの。まだまだ色々な可能性を秘めています。ソフトフォーカスやDC(Defocus image Controlボケ像(ボケ味)コントロール)も可能です。夢の機構を秘めたコンバータの話はまたこの次の機会に致しましょう。

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