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撮影者プロフィール
1952年、京都府福知山市出身。過去の個展に「里暦(さとごよみ)」(2016年/ニコンサロンbis大阪、ニコンサロンbis新宿)などがある。1985年第33回ニッコールフォトコンテスト第1部ニッコール大賞、2011年サロン・ド・ニッコール年度賞1位、14年第62回ニッコールフォトコンテスト第1部ニッコール大賞・長岡賞を受賞。
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「岩」の表情や趣が好きで、丹後半島から鳥取県までの山陰海岸やジオパークを撮り歩いていました。その中で京都府北部の「間人(たいざ)」という地域に寄ったことがきっかけです。間人は、関西の“難読地名”として知られる場所。その由来は飛鳥時代にまで遡ります。
聖徳太子の母・間人皇后(=はしうどこうごう)が、蘇我氏と物部氏の騒乱を避けるため身を寄せたのがこの地域でした。間人皇后は感謝の気持ちを込めて自らの名を地名に残しましたが、村人たちは呼び捨てを避けて「たいざ(=退座)」と読んだといわれています。この経緯に興味を持ち、それから4年かけて通うようになりました。
最初の1年は寄ったり引いたり、さまざまな角度から工夫して撮っていましたが、2年目からは「間人皇后の視線」を意識して、少し距離感を保つようにしました。
皇后が1400年の時を経て、今この地域を歩いたらどう思うかということです。間人(たいざ)では年々過疎化が進み、かつて丹後ちりめんの機織りの音が響いていた路地も、今は静まりかえっています。きっと皇后が想像した景色とはまったく違ったことでしょう。
ひとりの人物が見ている景色を表すため50ミリの単焦点レンズだけを使い、視点を一定の高さにしました。また、上下への視線の動きを意識して、すべての作品をタテ位置で揃えています。
個展(「里暦」2016年)の開催をきっかけに、作品づくりに対する意識が180度変わりました。今は、しっかりとひとつのテーマを据えて同じ土地に何度も通い、長期間の撮影に取り組むことに意義を感じます。これといった特長がない小さな町や村の、その日常をとらえることが面白く、また大切だと思っています。
時代が「平成」から次へと移り行く今、私たちの近隣を落ち着いて見つめていく時間は大事だ。これまで細やかなまなざしを村々に向けてきた荒井さんならではの記録。「はしうど」のみならず、過疎化と暮らしという普遍的な問題を提示し、歴史に支えられた穏やかな風土をしっかり描いている。