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ニッコールクラブ会員展

「広重 名所江戸百景 NOW!」浮世写真家 喜千也

撮影者プロフィール

1961年、東京都出身。家電メーカーで携帯電話などの広告宣伝に携わり、商品のスタジオ撮影に立ち会った影響で自らも写真を始める。1998年に独立し、商品企画/商品開発支援の会社を設立。2017年、「喜千也vs廣重 江戸百今昔比較 DIGITAL LIVE」をスタート。「浮世写真家 喜千也」を名乗り、朝日カルチャーセンターにて講師も勤める。

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インタビュー

作品制作のきっかけは?

新しいレンズを買って、試し撮りをしようと亀戸天神へ行ったときのことです。咲いていたフジの花がとてもきれいで、歌川広重の「名所江戸百景 亀戸天神境内」を思い出しました。写真を元の絵と並べてfacebookに掲載したところ、予想外に多くの反響があり、シリーズで制作を始める原動力になりました。

こだわりを教えてください。

写真としてのクオリティはもちろんのこと、なるべく広重の絵と同じになるよう、場所や季節、天候、時間帯、構図にこだわり、事前にロケハンを行ってから撮影しています。江戸時代の絵では日にちに多くの意味を含んで描かれることもあるので、旧暦なども入念に調べました。広重の作品をなぞる写真は昔からよく撮られてきましたが、季節の花が咲いていなかったり、天気が絵と異なっていたりと不完全なものも多くあります。それらとは一風違うものを作ってみたいと考え、元の絵をデジタルコラージュし、和紙に印刷しました。

作品制作を通して感じたことは?

元の絵や古地図と比較しながら撮影していると、川が埋め立てられ、ビルや高速道路に変わっていてガッカリすることもあります。しかしファインダーを通して見ることで、構図に広重らしい演出(デフォルメ)が施されていたり、私が幼少の頃は公害で汚かった川に生き物が戻ってきたことに気づいたりと、さまざまな発見があって面白いです。今後の目標は「名所江戸百景」の残りを完成させるほか、「東海道五十三次」の再現にも挑戦してみたいと考えています。

顧問講評 大西みつぐ

歌川広重の絵は、その大胆にして美しい構図と色彩が世界的に知られています。作者は広重が安政3年から5年に描いた「江戸名所百景」を現代にデジタルコラージュとしてよみがえらせました。それも構図はもちろんのこと、季節や天候さえも反映させています。浮世絵の「浮世」とは「つらい世の中、儚い世の中」といったイメージがありますが、庶民が「今」を生き抜いていくためのポジティブな力強さといったものが絵に表現されていました。また江戸=東京は「水の町」。今回の喜千也さんの作品にもそれらがしっかり伺えます。