九鬼の港は 八鬼山下の
忘れられよか 鰤どころ
野口雨情
長年、三重県南部、東紀州と呼ばれる地域に点在する漁村を撮り続けている。
今回の写真は、人口約360人の小さな漁村、三重県尾鷲市九鬼町を撮影したもの。
九鬼町は、江戸時代は風待ちの港として栄え、明治に入り、当地に定置網(大敷網)が始まり、鰤漁で集落が潤う。
好漁場である九鬼では、海の恵みを、集落の人々で分け合う。人智が及ばない自然を相手にする漁師たちは、機械化が進んだ現代においても、昔から親しまれている祭りや行事などの風習を重んじ大切にしている。
自然を愛し、大切にし、漁師という職業に誇りを持っている人々の姿に惹かれ写真を撮っている。
「神も仏もない。神にお祈りを捧げても魚の捕れる量は変わらない」というのは簡単。しかし、神に祈りを捧げ、自然とともに暮らす小さな漁村の姿を見て、人は自然の一部ということを知った。そう、人の力ではどうしようもない自然を相手にする漁師は、森羅万象全ての物に感謝して生きているのである。
(久保 圭一)
1973年和歌山県生まれ
主な個展
■2010 「時を忘れしまち」
銀座リコーギャラリーRING CUBE(銀座)
■2013 うみとやまとのあいだにあるもの
キヤノンギャラリー銀座(銀座)
キヤノンギャラリー名古屋(名古屋)
■2014 あるべきようわ(フォトプレミオ)
コニカミノルタプラザ ギャラリーB(新宿)
■ 2014「やさしさ」
伊勢和紙ギャラリー(伊勢市)
■2017「潮まかせ 風まかせ」
銀座ニコンサロン(銀座)
大阪ニコンサロン(梅田)
■2019 早田町 −海を引き継ぐ若人−
キヤノンギャラリー銀座(銀座)
キヤノンギャラリー大阪(大阪)
■2021 早田町 ―海を引き継ぐ若人―
三重県立熊野古道センター(尾鷲市)