私は、誰が見ても美しいと思える所やモノではなく、日頃はほとんどかえりみられることもない所やモノにも自分を惹きつける新しい見え方や美があると思い、それを求めて写真を撮りつづけてきた。
その過程で私は夜の街に出会った。それもきらびやかな都心の夜ではなく、裏通りにある時間の重みを背負った夜の街である。そこは、昼にある常套的な意味を払拭し、まるで異世界に迷いこんだような感じを与えた。特に昼の喧噪が消え、微かな灯(ともしび)に照らされ、無音となった街は、私の心と共鳴して、新しい世界や美しさを見せてくれた。そんなとき、私は思わずシャッターをきった。
幸運にもそのような写真の幾枚かをここに展示ができ、望外の幸せである。
1936年大阪府生まれ
まだデジタル写真などがない頃から写真を撮り始めたが、仕事の関係上、時間がとれず、やむなくそれを休止した。しかし、定年退職を機に、再び写真を撮り始め、以後、30年近く持続している。現在は、杉浦正和氏、田中仁氏の指導を受けているが、特に杉浦氏からは月に一度、励ましと綿密な批評を受け、それを楽しみに精進を重ねている。私には、写真を撮ることが第二の人生の中核のひとつとなった。