地球の表面積の約70%を占める海。そこには、わずか数ミリの小さな生き物から10mを超える大型海洋生物まで、1,000万種類以上もの生き物たちが暮らしているといわれています。
彼らの命の営みを目の当たりにした時、その力強さや儚さに深く感動したとともに、言いようのない愛情と畏敬の念を抱かずにはいられませんでした。
美しく雄大な海。そこに息づく生き物たちそれぞれが、輝くように命のバトンを繋ぎ、やがて静かに消えゆきます。しかし、生き物たちはそこで役割を終えるわけではありません。その灯火が消えた後も、彼らは海の糧となり、再び命の環に加わります。厳しくも美しい、あるがままの自然の姿は、私の心を強く捉え、魅了し続けています。
母なる海に潜り、その豊かさや力強さ、輝く命の営みに触れるひと時。それは私にとって、何ものにも代え難い大切な時間です。
ファインダーを通して捉えた、環になり巡る命の煌き。
この写真展が、海や自然へと思いを馳せるきっかけとなれば幸いです。
(齋藤 利奈)
1984年 大阪府生まれ
同志社大学文学部美学芸術学専攻卒業後、京都市立芸術大学大学院音楽研究科音楽学専攻修了。2012年、沖縄県でダイビングのライセンスを取得。最初は海で見た生き物を記録するために、コンパクトデジカメで写真を撮り始める。その後、水中写真家の作品展を見て感動したことをきっかけに、「作品作り」に関心を持つ。2019年、レンズ交換式カメラでの水中写真撮影をスタート。
青くカラフルな海や大型海洋生物、壮大な魚群に憧れ、インドネシアやモルディブ、タヒチ、フィリピン、ハワイなど海外や沖縄を中心に潜っていたが、コロナ禍をきっかけに日本、とりわけ、西日本の海の魅力を知る。海に暮らす生き物たちが懸命に命を繋ぐ姿に心を動かされ、求愛、産卵、新しい命の誕生のといった生態行動の撮影を開始。輝くような命の瞬間に触れる中、一方で静かに消えゆく命の存在を知る。自然界において「死」は終わりではなく、他の生き物の糧・海の養分となり、環になって繋がっていく。そんな、ありのままの自然の姿を撮りたいと思い、現在は「海の生きものたちの命の環」や「海洋環境」をテーマに撮影を行なっている。
<受賞歴>
・2020年 地球の海フォトコンテスト 自由部門 グランプリ・舘石昭賞
・2021年 串本海中フォトコンテスト 金賞
・2022年 フジフイルムフォトコンテスト ネイチャー部門 銅賞
・2022年 宮古島フォトコンテスト グランプリ
・2022年 JTAフォトコンテスト 中村征夫賞
・2024年 日本水中フォトコンテスト 準グランプリ(グランプリなし)
・2024年 Sony World Photography Award 2024 Open 自然・野生動物部門 shortlist ほか