本展は田淵行男記念館(長野県安曇野市)で開催された個展「五分の魂2016/2021」(会期:2020/12/8~2021/2/7)に新作を加え再構成したものです。
「五分の魂2016/2021」展は、コロナ禍による緊急事態宣言下での開催でした。そのため、写真誌で私の作品を見て興味をもたれた方々から、見に行きたくても行けなかったとの声が多数寄せられました。今回、改めて展示の機会を与えていただいたことに、心より感謝いたします。
モチーフは、どれも私が飼育したり採ってきたりした本物の虫で、なるべく生きた状態で撮影しており、画像ソフトによる合成はしていません。作画の上では、極限までシンプルにし、虫を季語とする俳句のような写真にすること、黒を基調としたメゾチント版画のように仕上げることを心掛けています。
私のような造形写真家は、今の日本では絶滅危惧種のようなものかもしれません。それでも私は、造形写真を見たり撮ったりする楽しさを、より多くのヒトに知ってもらいたいと思っています。私はこれからも、造形写真の可能性を追究し、誰も見たことのない写真を撮り続けていくつもりです。
(たけうち かずとし)
1962年 東京都生まれ
小学生の頃から写真を趣味とし、中学生になって各種写真コンテストへの応募を始める。横浜国立大学教育学部を卒業後、長野県の公立中学校で美術教師をしながら藤森順二氏(元二科会写真部常任理事)に師事し、撮影技術を学ぶ。その後、野山の自然物を用いたシュルレアリスティックな静物写真の制作がライフワークとなる。写真誌の月例コンテスト年度賞受賞など各種コンクールで入賞・作品掲載多数。2003~04年、上越教育大学大学院で環境教育を学ぶ。2014年、作品制作に専念するため教員を早期退職。2017~20年、安曇野市豊科近代美術館で学芸員補として勤務。同時期、武蔵野美術大学造形学部で学ぶ。2021年より、松本市の私立学校で美術教師として勤めながら制作を続けている。
・2014年「第74回 国際写真サロン」入選(審査委員長:田沼武能)
・2015年 個展「quiet life-ものいわぬものたち-」リコーイメージングスクエア
・2016年「第5回 田淵行男写真作品公募」特別賞受賞(選考委員長:飯沢耕太郎)
・2018年 個展「妄想植物園」ソニーイメージングギャラリー銀座
・2020-21年 個展「五分の魂2016/2021」田淵行男記念館(長野県安曇野市)