「痛みの唯一の共通点とは、他人と共有できない体験である。しかし、その共有できない痛みから生まれた孤独感はみんな同じだ。」と韓国の人権活動家のオム・ギホ氏は言う。
私が自傷行為を始めて14年も経った。両親や精神科の先生含めた周りの人たちからは、それを知られる度に「死にたいのか?」と聞かれていた。こうした問いに当時の自分ははっきり反論することはできなかったが、その言葉に対して常に違和感覚えていた。
自分の身体に傷をつける理由は人それぞれだと思う。だが理由は何であれ、死より生きづらさを感じながら生きることを選んだからこそ、この結果に至ったのではないかと私は考えている。
生と向き合ってる人々、それぞれの姿勢をレンズに通して記録していく。今までうまく見えてこなかった自分の姿を見ているように。感情の潮が日々満ち引き、それでも時間の流れはいつも静かで、風景の中に光っている。写真になったら、生きている証になれるだろうか。
いつか、その共有できない痛みから生まれた孤独感を和らぐように。
(林 詩硯)
1991年 台湾 台北市生まれ
2015年 台湾科技大学デザイン学科卒業
2020年 東京藝術大学美術研究科先端芸術表現修士課程修了
2021年 Portrait of Japan 選出
2021年 IMA next "Memory" ショートリスト選出
2022年 個展「針の落ちる音」Totem Pole Photo Gallery
2023年 第3回 PITCH GRANT 受賞