わたしのおじいちゃんは愉快な人だ。
お酒、特にビールが大好きで、手術の後に病院の先生からお酒を禁止されても呑んじゃうくらい。
1年365日の間に、呑まない日は体調を崩した3日だけだって得意げに話してた。
家族の中で1番のおしゃべりで、2人で話すと止まらなくて、日付けが変わるまで話したこともあったね。
一緒に出かける約束をしたのに、今から仕事に行ってくるからねって、忘れて予定を入れちゃうこともある。
じいの家へ行くと、おかえり〜と呑気な声が返ってくる。
その声が聞こえて良い気持ち。
わたしが小2の時におばあちゃんのまあちゃんが癌で亡くなった。
薬で手足がむくんで苦しそうなまあちゃんを見て、何もできないことが嫌だった。
亡くなった日は学校にいて、なぜか先生に呼ばれて、兄と従姉妹と笑いながらかけっこして帰った。
1番に着いて玄関を勢いよく開ける。なぜかみんな泣いていて、まあちゃんが亡くなったことを理解した。
まだあったかいよって言われたけれど、わたしは触れることができなかった。
それからじいは1人であの家で暮らしている。
家の中は、まあちゃんとの生活が残ったまま、時間が過ぎていった。
じいは元気でやってるよ。
(橋井 彩花)
2002年 神奈川県生まれ
2021年 東京綜合写真専門学校 入学