今から約40年前、岩手県田野畑村の明戸地区は、原子力発電所建設の候補地として取り上げられた。この地域の女性達は「いくら交付金をもらっても、美しい故郷を捨てたくない」と原発建設に反対した。その運動が奏功し、岩手県に原発が建設されることはなかった。
2011年3月11日、東日本大震災。田野畑村の沿岸部は大津波により壊滅的な被害を受けた。もし、この地域に原発が建設されていたなら、東京電力福島第一原発事故以上の大事故になっていたであろうと言われている。ここから北へ約30kmのところに私の生まれた町はある。私は帰る故郷を失っていたかもしれない。田野畑村へ行ってみよう。そして話を聞いてみよう。ただそういう思いで出かけて行った。
(中村 千鶴子)
1957年 岩手県久慈市生まれ
1980年 北海道大学卒業
1980年~2018年 岩手県公立学校勤務
1993年~1996年 モスクワ日本人学校派遣
2020年 東京綜合写真専門学校卒業
2021年5月 個展「潮鳴りは空に響もす」(MUSEE F、東京)
2021年8月 個展「潮鳴りは空に響もす」(Gallery彩園子、盛岡)
2022年2月 個展「断崖に響く」(アイデムフォトギャラリー シリウス、東京)